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「それでね。アルヤさんのお祖父さんは最初、コレッティ子爵家から婚約破棄するって言ってたんだけど、ベルツ子爵家のお祖父様と話し合って、今後のためにも解消で手を打とうってことになったらしいよ。こちらが強気に出ても、アルヤさんが僕に懸想したのが始まりだと騒がれたら面倒だし、揉めるとアルヤさんが次の婚約をしにくくなると判断したみたい。でも、アルヤさんが雨の中置きざりにされたことはかなり抗議したって言ってたし、お見舞い金は送られてきたって言ってたよ。あと、ベルツ子爵家には頭のいい次男がいて、子爵家はその子に継がせようって話が出てるみたい。で、それを聞いた僕はすぐに父を説得してアルヤさんに結婚の申し込みをする許可をもらって、コレッティ子爵家のお二人に結婚させて下さいってお願いをしたんだ」
「そんな重大な話を全く聞かされずに、次の婚約者はいい男だからと言われたんですけど……一体いつそんな話を……」
「アルヤさんがタルコット公爵家にいるうちに全部済んだ話だけど……僕、いい男なんて言われてるの? 照れるなぁ」
展開が早くてついていけない。
アルヤが遠い目をしていたら、カールは笑いながら頬を掻いていた。
教室で見ていた無口なカールと同じ人とは思えない。
そのあと不意に見せた表情は、少し怖かったけれど。
「ざまぁなんて、じわじわやるほうがいいしね」
「……ざまぁって、なんですか?」
「ん? なんでもない。こっちの話」
カールは得意げに胸を反らせて「到着したよ~」と言いながら軽やかな足取りで馬車を降りた。
降り口で手をさしのべられ、ゆっくり歩を進めて見上げると、王城の門の前だった。
「庭園に行くには、ここで降りたほうが近いんだ。歩ける?」
「お、王城の庭園に入れるんですか!?」
「うん。許可書もあるよ」
カールは胸のポケットから書類を取り出し、門番に見せていた。
「なんだカール、今日は可愛い子連れて。デートか」
「そうなのー。いいでしょう?」
「ったく、隅に置けねぇな!!」
気安く肩を叩かれたカールは、まんざらでもない顔をしながらアルヤの手を取り、自分の腕に乗せると、アルヤの歩調に合わせて歩いてくれた。
(城の門番と顔見知りなんて……さすがはタルコット公爵夫人の護衛ね……)
なんだか少し遠い人に感じる。
庭園へ続く道は、石畳の左右をビオトープが飾り、小さな水の流れる音がそよそよと心地いい。
先を見渡せば季節の花々が植えられているのが見える。
「素敵……」
「広いよねー」
「広い……そうね?」
これを見て広いという感想になるカールが可笑しくて少し笑ってしまった。
「やっと笑った。アルヤさん笑ってたほうが可愛いのに」
「いえ、私は……」
可愛いなんて言われたことがない。
「可愛いよ。ふくふくのほっぺたとか。僕は好きだなー。アルヤさんの顔」
「……うそ」
「嘘じゃないよ。マイナ様が作る『にくまん』みたいでさぁ。実はずっと触ってみたかったんだよねぇ」
「にくまん……」
「うん。美味しいよ。そのうちアルヤさんも食べられるよ」
「……??」
コレッティ子爵家の言葉の足りなさもさることながら、カールもなかなかではないだろうか。
「そんな重大な話を全く聞かされずに、次の婚約者はいい男だからと言われたんですけど……一体いつそんな話を……」
「アルヤさんがタルコット公爵家にいるうちに全部済んだ話だけど……僕、いい男なんて言われてるの? 照れるなぁ」
展開が早くてついていけない。
アルヤが遠い目をしていたら、カールは笑いながら頬を掻いていた。
教室で見ていた無口なカールと同じ人とは思えない。
そのあと不意に見せた表情は、少し怖かったけれど。
「ざまぁなんて、じわじわやるほうがいいしね」
「……ざまぁって、なんですか?」
「ん? なんでもない。こっちの話」
カールは得意げに胸を反らせて「到着したよ~」と言いながら軽やかな足取りで馬車を降りた。
降り口で手をさしのべられ、ゆっくり歩を進めて見上げると、王城の門の前だった。
「庭園に行くには、ここで降りたほうが近いんだ。歩ける?」
「お、王城の庭園に入れるんですか!?」
「うん。許可書もあるよ」
カールは胸のポケットから書類を取り出し、門番に見せていた。
「なんだカール、今日は可愛い子連れて。デートか」
「そうなのー。いいでしょう?」
「ったく、隅に置けねぇな!!」
気安く肩を叩かれたカールは、まんざらでもない顔をしながらアルヤの手を取り、自分の腕に乗せると、アルヤの歩調に合わせて歩いてくれた。
(城の門番と顔見知りなんて……さすがはタルコット公爵夫人の護衛ね……)
なんだか少し遠い人に感じる。
庭園へ続く道は、石畳の左右をビオトープが飾り、小さな水の流れる音がそよそよと心地いい。
先を見渡せば季節の花々が植えられているのが見える。
「素敵……」
「広いよねー」
「広い……そうね?」
これを見て広いという感想になるカールが可笑しくて少し笑ってしまった。
「やっと笑った。アルヤさん笑ってたほうが可愛いのに」
「いえ、私は……」
可愛いなんて言われたことがない。
「可愛いよ。ふくふくのほっぺたとか。僕は好きだなー。アルヤさんの顔」
「……うそ」
「嘘じゃないよ。マイナ様が作る『にくまん』みたいでさぁ。実はずっと触ってみたかったんだよねぇ」
「にくまん……」
「うん。美味しいよ。そのうちアルヤさんも食べられるよ」
「……??」
コレッティ子爵家の言葉の足りなさもさることながら、カールもなかなかではないだろうか。
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