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4.再会
しおりを挟むマノロ王太子殿下の愛妾となり、王城へ召し上げられることが決定してしまった。
バルト男爵家に迎えにきた馬車で王城に着くと、騎士が三人も待機しており、クリスティーヌを左右と後方から囲むように歩いてくれた。先導するのはクリスティーヌの侍女となるマルティンだ。元は王太子妃ヘンリエッタの侍女の一人だったという。
物々しい警護のせいか、城内ですれ違う人は足を止め、クリスティーヌたちを見ていた。
顔を寄せ合い、こちらをチラチラ見ながら話をする人たちの横を通り抜けた。
案内された先は、鉢植えのひとつもない殺風景な執務室で、正面の執務机に座っていた銀髪に銀縁の眼鏡をかけた宰相のロジェがクリスティーヌを見て立ち上がった。
シンプルな白いシャツに黒いトラウザー姿であることが、かえって彼のスタイルの良さを引き立てている。
記憶よりもずっと大人びたロジェの姿に息が止まりそうだった。
ロジェは無駄のない動きで近づいてくると、すっと手のひらをソファーに向けて、座るよう勧めてくれた。
「宰相のロジェ・カヌレです」
「クリスティーヌ・バルトと申します」
「どうぞ、おかけください」
お礼を言って腰を掛ける。
マルティンはソファーの後ろに控え、護衛たちは扉の横で待機した。
ロジェの侍従のジャンが紅茶を出してくれる。
緊張から手を出せずにいると、ロジェが飲むように勧めてくれた。
ひと口含めば、優しい香りに包まれて、ほっと息が漏れた。
音もなくソーサーにカップを戻す仕草を、ロジェが無表情のまま見ていた。
「こちらはクリスティーヌ様の雇用契約書です。目を通していただけますか?」
「雇用、契約書?」
「そうです」
ロジェの声は落ち着きのある低い声で、とても聞き取りやすい。
歳を重ねたせいか渋みも加わり、耳に心地よかった。
並べられた契約書の一枚目を手に取って読みはじめる。
ロジェに会えた嬉しさなのか、それともこれから起こることへの不安なのか。自分の気持ちがわからないまま手が震えていた。
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