【完結】余命三年ですが、怖いと評判の宰相様と契約結婚します

咲楽えび@改名しました(旧 佐倉えび)

文字の大きさ
18 / 57

4-2

しおりを挟む
「王太子妃殿下であるヘンリエッタ様や御側室のカロリーナ様とは違い、クリスティーヌ様と王太子殿下は婚姻関係にはなりません」

 ロジェはクリスティーヌがどこを読んでいるのか視線でわかるらしく、目を通してる箇所を的確に説明してくれた。

「私が宰相として王宮に出仕しているのと同じですね。クリスティーヌ様は王宮勤めという扱いになります」

 契約書には雇用期間一年、継続の可能性あり。
 継続の際は再度雇用契約を交わすこと、自動継続は不可であることなどが続き、休日や賃金にまで及んでいた。

「役職名は古い慣わしで申し訳ありませんが、ご愛妾様と呼ばれます。ベツォ国では公妾制度がなく、特例になるためです。王太子殿下はクリスティーヌ様を第二側室にしたかったようですが、例がありません。それと、失礼ですがご側室になるには少々身分が足らず、特例とするにも無理があると、議会にて判断されました。ご理解いただけると幸いです」

 言いにくそうに眉を寄せたロジェに、クリスティーヌは頷いた。

(側室なんて冗談じゃない!!)

 王太子殿下と出会ってしまった夜会は、アーレ伯爵夫人の陰謀だった。
 コレッティ子爵には申し訳ないと何度も頭を下げられ、首を振るのが精いっぱいだった。

(むしろ私によいお婿さんを見つけてあげたいと言って下さって、それで夜会に招いてくれたのに、本当に申し訳ないことをしてしまったわ……)

 あの時、もう少し人目のある場所にいればよかったのだ。
 三度目の人生だというのに、上手く立ち回れない自分が嫌になる。

「賃金はクリスティーヌ様ご自身の資産となりますので、ご実家に送金されることはありません」
「えっ……」

 思わず顔を上げる。
 ロジェは銀縁眼鏡からアイスブルーの瞳を真っ直ぐクリスティーヌに向けて頷いた。

「王宮で厳重に管理されます。お役目を終えられた際には退職金も支払われます。さらに、契約終了後は身元の確かな紳士の元へ嫁ぐことも可能です」

(まさか!?)

 そんな都合のいい話はあるのだろうか。
 慌てて契約書の続きを読む。そこには確かに説明された通りのことが書いてあった。

「必要なものは年間の予算が組まれていますから、ここで生活する上で必要なお金はありません。特にご実家から支援していただく必要もありませんので、どうぞご安心を」

 ロジェに優しく心を撫でられたような気持ちになり、うっかりすると涙が出そうだった。
 二度目のループのときの、ロジェとの抱擁を忘れたことなどない。
 切なさは癒えたというのに、再会がこんな場面なのは少しだけ辛かった。

「ありがとう……ございます……」

 声を詰まらせながら顔を上げ、ロジェの表情を窺ってみたけれど、眉ひとつ動かす様子は見られなかった。
 相変わらずの無表情ぶりに、懐かしさがこみ上げる。
 そんな気持ちで数秒ほど見つめ続けていたら、僅かにロジェの口元が、ふと、ほころんだように見えたではないか。

(笑った!?)

 人生三周目の今世であるクリスティーヌは、一周目でも二周目でも、見ることのなかったロジェの僅かばかりの笑顔に魅入ってしまった。

(大人の余裕……?)

 今世のロジェは、なぜか三十一歳だ。
 これまで出会ってきたロジェは若く、宰相候補と呼ばれていた。
 まさか宰相になったロジェに会えるとは思ってもみなかった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました

鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」 そう言ったのは、王太子アレス。 そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。 外交も財政も軍備も―― すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。 けれど功績はすべて王太子のもの。 感謝も敬意も、ただの一度もない。 そして迎えた舞踏会の夜。 「便利だったが、飾りには向かん」 公開婚約破棄。 それならば、とレイナは微笑む。 「では業務も終了でよろしいですね?」 王太子が望んだ通り、 彼女は“確認”をやめた。 保証を外し、責任を返し、 そして最後に―― 「ご確認を」と差し出した書類に、 彼は何も読まずに署名した。 国は契約で成り立っている。 確認しない者に、王の資格はない。 働きたくない公爵令嬢と、 責任を理解しなかった王太子。 静かな契約ざまぁ劇、開幕。 ---

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

侯爵家のお飾り妻をやめたら、王太子様からの溺愛が始まりました。

二位関りをん
恋愛
子爵令嬢メアリーが侯爵家当主ウィルソンに嫁いで、はや1年。その間挨拶くらいしか会話は無く、夜の営みも無かった。 そんな中ウィルソンから子供が出来たと語る男爵令嬢アンナを愛人として迎えたいと言われたメアリーはショックを受ける。しかもアンナはウィルソンにメアリーを陥れる嘘を付き、ウィルソンはそれを信じていたのだった。 ある日、色々あって職業案内所へ訪れたメアリーは秒速で王宮の女官に合格。結婚生活は1年を過ぎ、離婚成立の条件も整っていたため、メアリーは思い切ってウィルソンに離婚届をつきつけた。 そして王宮の女官になったメアリーは、王太子レアードからある提案を受けて……? ※世界観などゆるゆるです。温かい目で見てください

辺境伯へ嫁ぎます。

アズやっこ
恋愛
私の父、国王陛下から、辺境伯へ嫁げと言われました。 隣国の王子の次は辺境伯ですか… 分かりました。 私は第二王女。所詮国の為の駒でしかないのです。 例え父であっても国王陛下には逆らえません。 辺境伯様… 若くして家督を継がれ、辺境の地を護っています。 本来ならば第一王女のお姉様が嫁ぐはずでした。 辺境伯様も10歳も年下の私を妻として娶らなければいけないなんて可哀想です。 辺境伯様、大丈夫です。私はご迷惑はおかけしません。 それでも、もし、私でも良いのなら…こんな小娘でも良いのなら…貴方を愛しても良いですか?貴方も私を愛してくれますか? そんな望みを抱いてしまいます。  ❈ 作者独自の世界観です。  ❈ 設定はゆるいです。  (言葉使いなど、優しい目で読んで頂けると幸いです)  ❈ 誤字脱字等教えて頂けると幸いです。  (出来れば望ましいと思う字、文章を教えて頂けると嬉しいです)

この度娘が結婚する事になりました。女手一つ、なんとか親としての務めを果たし終えたと思っていたら騎士上がりの年下侯爵様に見初められました。

毒島かすみ
恋愛
真実の愛を見つけたと、夫に離婚を突きつけられた主人公エミリアは娘と共に貧しい生活を強いられながらも、自分達の幸せの為に道を切り開き、幸せを掴んでいく物語です。

余命僅かな大富豪を看取って、円満に未亡人になるはずでした

ぜんだ 夕里
恋愛
傾きかけた家を救うため、私が結んだのはあまりにも不謹慎な契約――余命いくばくもない大富豪の辺境伯様と結婚し、彼の最期を穏やかに看取ることで莫大な遺産を相続する、というものだった。 しかし、人の死を利用して富を得るなど不正義! そう考えた私が立てたのは、前代未聞の計画。 「そうだ、遺産が残らないくらい贅沢の限りを尽くしてもらえば、すべて丸く収まるじゃない!」

崖からポイ捨てされた不運令嬢ですが、銀髪イケメン竜王に『最愛の伴侶』としてスカウトされました!

有賀冬馬
恋愛
不作も天災も、全部わたしのせい!? 「不運な女」と虐げられ、生贄として崖から捨てられたわたし、ミラ。 でも、落ちた先で待っていたのは、まぶしいほど綺麗な銀髪の竜王・アルベルト様でした! 「君がいたから、この国は守られていたんだよ」 えっ、わたしって実はすごい聖女だったの!? 竜宮城で贅沢三昧&溺愛生活スタート! そんな中、わたしを捨てて大ピンチになった元婚約者が「ミラ、戻ってきて!」と泣きついてきて……。

悪役令嬢と誤解され冷遇されていたのに、目覚めたら夫が豹変して求愛してくるのですが?

いりん
恋愛
初恋の人と結婚できたーー これから幸せに2人で暮らしていける…そう思ったのに。 「私は夫としての務めを果たすつもりはない。」 「君を好きになることはない。必要以上に話し掛けないでくれ」 冷たく拒絶され、離婚届けを取り寄せた。 あと2週間で届くーーそうしたら、解放してあげよう。 ショックで熱をだし寝込むこと1週間。 目覚めると夫がなぜか豹変していて…!? 「君から話し掛けてくれないのか?」 「もう君が隣にいないのは考えられない」 無口不器用夫×優しい鈍感妻 すれ違いから始まる両片思いストーリー

処理中です...