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「王太子妃殿下であるヘンリエッタ様や御側室のカロリーナ様とは違い、クリスティーヌ様と王太子殿下は婚姻関係にはなりません」
ロジェはクリスティーヌがどこを読んでいるのか視線でわかるらしく、目を通してる箇所を的確に説明してくれた。
「私が宰相として王宮に出仕しているのと同じですね。クリスティーヌ様は王宮勤めという扱いになります」
契約書には雇用期間一年、継続の可能性あり。
継続の際は再度雇用契約を交わすこと、自動継続は不可であることなどが続き、休日や賃金にまで及んでいた。
「役職名は古い慣わしで申し訳ありませんが、ご愛妾様と呼ばれます。ベツォ国では公妾制度がなく、特例になるためです。王太子殿下はクリスティーヌ様を第二側室にしたかったようですが、例がありません。それと、失礼ですがご側室になるには少々身分が足らず、特例とするにも無理があると、議会にて判断されました。ご理解いただけると幸いです」
言いにくそうに眉を寄せたロジェに、クリスティーヌは頷いた。
(側室なんて冗談じゃない!!)
王太子殿下と出会ってしまった夜会は、アーレ伯爵夫人の陰謀だった。
コレッティ子爵には申し訳ないと何度も頭を下げられ、首を振るのが精いっぱいだった。
(むしろ私によいお婿さんを見つけてあげたいと言って下さって、それで夜会に招いてくれたのに、本当に申し訳ないことをしてしまったわ……)
あの時、もう少し人目のある場所にいればよかったのだ。
三度目の人生だというのに、上手く立ち回れない自分が嫌になる。
「賃金はクリスティーヌ様ご自身の資産となりますので、ご実家に送金されることはありません」
「えっ……」
思わず顔を上げる。
ロジェは銀縁眼鏡からアイスブルーの瞳を真っ直ぐクリスティーヌに向けて頷いた。
「王宮で厳重に管理されます。お役目を終えられた際には退職金も支払われます。さらに、契約終了後は身元の確かな紳士の元へ嫁ぐことも可能です」
(まさか!?)
そんな都合のいい話はあるのだろうか。
慌てて契約書の続きを読む。そこには確かに説明された通りのことが書いてあった。
「必要なものは年間の予算が組まれていますから、ここで生活する上で必要なお金はありません。特にご実家から支援していただく必要もありませんので、どうぞご安心を」
ロジェに優しく心を撫でられたような気持ちになり、うっかりすると涙が出そうだった。
二度目のループのときの、ロジェとの抱擁を忘れたことなどない。
切なさは癒えたというのに、再会がこんな場面なのは少しだけ辛かった。
「ありがとう……ございます……」
声を詰まらせながら顔を上げ、ロジェの表情を窺ってみたけれど、眉ひとつ動かす様子は見られなかった。
相変わらずの無表情ぶりに、懐かしさがこみ上げる。
そんな気持ちで数秒ほど見つめ続けていたら、僅かにロジェの口元が、ふと、ほころんだように見えたではないか。
(笑った!?)
人生三周目の今世であるクリスティーヌは、一周目でも二周目でも、見ることのなかったロジェの僅かばかりの笑顔に魅入ってしまった。
(大人の余裕……?)
今世のロジェは、なぜか三十一歳だ。
これまで出会ってきたロジェは若く、宰相候補と呼ばれていた。
まさか宰相になったロジェに会えるとは思ってもみなかった。
ロジェはクリスティーヌがどこを読んでいるのか視線でわかるらしく、目を通してる箇所を的確に説明してくれた。
「私が宰相として王宮に出仕しているのと同じですね。クリスティーヌ様は王宮勤めという扱いになります」
契約書には雇用期間一年、継続の可能性あり。
継続の際は再度雇用契約を交わすこと、自動継続は不可であることなどが続き、休日や賃金にまで及んでいた。
「役職名は古い慣わしで申し訳ありませんが、ご愛妾様と呼ばれます。ベツォ国では公妾制度がなく、特例になるためです。王太子殿下はクリスティーヌ様を第二側室にしたかったようですが、例がありません。それと、失礼ですがご側室になるには少々身分が足らず、特例とするにも無理があると、議会にて判断されました。ご理解いただけると幸いです」
言いにくそうに眉を寄せたロジェに、クリスティーヌは頷いた。
(側室なんて冗談じゃない!!)
王太子殿下と出会ってしまった夜会は、アーレ伯爵夫人の陰謀だった。
コレッティ子爵には申し訳ないと何度も頭を下げられ、首を振るのが精いっぱいだった。
(むしろ私によいお婿さんを見つけてあげたいと言って下さって、それで夜会に招いてくれたのに、本当に申し訳ないことをしてしまったわ……)
あの時、もう少し人目のある場所にいればよかったのだ。
三度目の人生だというのに、上手く立ち回れない自分が嫌になる。
「賃金はクリスティーヌ様ご自身の資産となりますので、ご実家に送金されることはありません」
「えっ……」
思わず顔を上げる。
ロジェは銀縁眼鏡からアイスブルーの瞳を真っ直ぐクリスティーヌに向けて頷いた。
「王宮で厳重に管理されます。お役目を終えられた際には退職金も支払われます。さらに、契約終了後は身元の確かな紳士の元へ嫁ぐことも可能です」
(まさか!?)
そんな都合のいい話はあるのだろうか。
慌てて契約書の続きを読む。そこには確かに説明された通りのことが書いてあった。
「必要なものは年間の予算が組まれていますから、ここで生活する上で必要なお金はありません。特にご実家から支援していただく必要もありませんので、どうぞご安心を」
ロジェに優しく心を撫でられたような気持ちになり、うっかりすると涙が出そうだった。
二度目のループのときの、ロジェとの抱擁を忘れたことなどない。
切なさは癒えたというのに、再会がこんな場面なのは少しだけ辛かった。
「ありがとう……ございます……」
声を詰まらせながら顔を上げ、ロジェの表情を窺ってみたけれど、眉ひとつ動かす様子は見られなかった。
相変わらずの無表情ぶりに、懐かしさがこみ上げる。
そんな気持ちで数秒ほど見つめ続けていたら、僅かにロジェの口元が、ふと、ほころんだように見えたではないか。
(笑った!?)
人生三周目の今世であるクリスティーヌは、一周目でも二周目でも、見ることのなかったロジェの僅かばかりの笑顔に魅入ってしまった。
(大人の余裕……?)
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これまで出会ってきたロジェは若く、宰相候補と呼ばれていた。
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