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第一部 番外編

豊穣祭と林檎酒 3(※)

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行為に関する描写が入りますので苦手な方はご注意ください。
キーワード的に該当するのは、乳首責め/結腸責め/潮吹き/言葉責め/喘ぎ/赤ちゃんプレイ(!?)あたりです。
あと長いですwwwwwww EROに気合いを入れてしまう呪い

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 ネフィリムは視線を彷徨さまよわせた後、おずおずと手を伸ばしてシグルズの服の袖を掴んだ。

 部屋は灯りをつけていないため、窓から差し込む祭りの明かりと月の輝きがうっすら室内を照らす程度。

 妙に緊張した空気が2人の間を流れる。シグルズはこの空気の正体を知っている。

 例の件を聞くならば今しかないと思った。

「言いたくなければ答えなくていい。―――ファフニルが君に使用した薬の副作用は、もう大丈夫なのか?」

 出会ったとき、ネフィリムは心身ともにもっとも不安定な状況にあった。
 それはファフニルの行った行為のせいだ。

 その傷は完全に癒えたのだろうか。自分自身の体調回復に追われていたせいで、未だにそのことが聞けてはいなかった。

 ネフィリムの黒い瞳がシグルズの目を射貫く。
 大きく、宇宙を閉じ込めたような瞳に吸い込まれそうになったことはこれまでも何度もある。

 飲み込まれたらどうなるのだろうか。

 案外、


「大丈夫だ、と思う。が」



 とても心地よいのかもしれない。



「お前の体に触れるたびに、私の熱も上がってしまう。これは……副作用なのだろうか」




 シグルズは覆いかぶさるようにしてネフィリムの紅く火照った唇に自分のそれを重ねた。
 ネフィリムが目を見開き、驚く様子が伝わってくる。だが彼は何の抵抗も示さなかった。

「ん、んぅ……」

 むしろ、酒の影響で燃えるように熱くなった柔い舌をシグルズの粘膜に積極的に接触させてくる。それでも動きの拙さはどうにもならず、ぐちゅぐちゅとシグルズの舌に絡めとられてしまった。

「ふぁ……むぅ、ん……」

 酒は人の理性を緩める。
 明らかにキスはネフィリムの脳を溶かしていた。

 シグルズとネフィリムの舌がお互いを求めて自身の形を巧妙に変える。さながらお互いの手足がもつれあうダンスのようだった。

「君はいろいろと考えすぎだな、ネフィル。現実を忘れて心地よい時間を堪能することも必要だ」

 口づけを終わらせた後、とても下手くそな誘い口上を述べた。
 しかしそれは、今のネフィリムに一番必要な言葉であることもシグルズには分かっている。

 シグルズは性急な手つきでネフィリムのシャツの前を開き、わずかに汗ばんでいる首筋にキスを落とす。
 普段よりも体温が高い体。
 淡く紅く色づいた肌を見たときに、シグルズは予想以上に興奮している自分に気付いた。

「熱い……。シグルズも脱いで」

 今日は向こうがやけに仕掛けてくる。酒のせいだろうか。
 悪くない。
 特に返事はしなかったが、彼の言葉に応じて自身の着衣を外していった。

 シグルズの鍛えられた半身が薄暗い部屋で露わになった。ネフィリムはベッドから体を起こすと騎士の腹筋の横に手を添え、チロリと舐める。

「しょっぱい」
「汗をかいたからな。どうした、今日はずいぶんと積極的じゃないか」
「気持ちいいことは悪いことじゃないと私に教えたのはシグルズだ」
「そうだな」

 先ほどまでの不調はどこへやら。
 もしかしたらこの黒猫、酔いは真実だったにせよその不調の程度を謀ったのかもしれない。

 ネフィリムはシグルズの肌をそっと撫でると、胸元に顔を預けた。
 酔いを乗せた口調で呟く。

「これが騎士の体か、貧弱な私のものとは大違いだ。……でも、この体が私のことをずっと守り通してくれたんだな。傷を負っても、なお」

 まるでシグルズの心臓の音を聞いているかのように、目をつぶり顔をすり寄せる。

 初心なくせに色恋の謀をしてくる黒猫の仕草が、シグルズの我慢の限界を招く。

 ガバとネフィリムをベッドに押し付け、上から覆いかぶさる。
 まさにこれから行為に至らんとするための姿勢であり、月明かりを背に受けたシグルズの表情は逆光で見えない。

「シグルズっ……」
「熱いんだろう? すぐに気持ちよくしてやる。ただし、もっと熱くなってしまっても責任は取らんぞ」

 そう言うと、わずかに膨らんだ胸部の実りを二つ、交互に舐めてしゃぶり始めた。

「あ、ああっ!」

 ネフィリムは胸が弱い。そこを執拗に吸ってやればすぐに声は甘くなる。

「ん、あんっ……や、ぁ……」

 乳房を手で優しく揉みしだき、左胸の乳頭を口の中で転がし、強く吸う。
 もう片方の胸では、淡い桜色の実りを収穫せんとばかりに指でコロコロと弄び最後に強く引っ張った。

「ひゃあっ!」

 酒の影響を受けているネフィリムは最初から積極的で従順だった。胸への刺激はそんな彼を悦ばせる。

「むね、あ、きもちい、……もっと吸って」
「乳を吸われるのが好きか。ネフィルには母の素質がある」

 冗談めかして言うシグルズだったが、ネフィリムの脳の溶け方は尋常ではなかった。

「あ、んん……おいでシグルズ、……ほら」

 自分に被さる男に向かって手を広げ、己の乳頭に招く。シグルズが無言でその手の中に収まると、頭を抱いたネフィリムは銀髪を優しく撫でた。

「いい子だ……、いっぱい……吸って? ん、シグルズ……」
「……ネ、フィル」

 まるで幼子をあやすように扱われて、シグルズはたかぶった。
 子は母の望み通りにもう一度乳に吸い付き、快楽を堪能し善がる声に耳を傾ける。

「あ、ああっ……。ふ、ふ……いい子」

 倒錯的な状況に興奮する自分を誤魔化したくて、ネフィリムの足に自分の下半身を絡ませ己の存在を擦りつける。
 ネフィリムのソレも十分に反応し、すでに下肢の布はぐっしょりと濡れていた。それを刺激するように、太ももで圧迫する。

「ひゃっ……あ、そこは、ダメ……でちゃう、からぁ」
「もうずいぶんと濡れているぞ、ネフィル」
「や、やだ……言うな…」
「これ以上濡れては大変だな」

 言うが早いが、シグルズはネフィリムの下半身の纏いを慣れた手つきで脱がす。

 シグルズのほうも怪我の療養期間があったから“こういう状況”は久しぶりで、ようするに溜まっていた。下着はすでに濡れている。自身の纏いも取り払った。

 お互いの性器がこれ以上なく反応し、すでに蜜を垂らしている。
 上半身ではネフィリムがシグルズを我が子のように抱きしめながら、下半身ではお互いの性器を相手の体に擦りつけて絡み合っている。

「シグ、ルズ、シグルズぅ……」
「ここにいるよ、ネフィル」
「ああ……きもちいい……なんだろ、あついのに、すごく……あんしん、する」

 お前とこんなことをしているのに、なぜだろうな。
 そう呟くネフィリムの目から涙が流れた。

 すでにどちらの蜜か分からぬほど絡んだ粘液を指先にたっぷりとつけて、ネフィリムの双丘の奥を指で暴いた。
 久しぶりの感覚に当初は身を固くしていたネフィリムだったが、前立腺の周辺をトントンと刺激してやると声も体も一瞬にして蕩けてしまう。

「ふあぁ……きもちい、とけちゃう」

 過ぎた快感に涙するネフィリムの顔はなんとも嗜虐心をそそる。

「ここだろう? ネフィルはここが大好きだったものな」
「ダメ、頭がふわふわして……あ、ん、それ以上トントンすると、おかしく、なっちゃう」

 胎内を優しく撫でたりトントンと叩くたび、ネフィリムの腰がいじらしく揺れるのが可愛かった。彼の性器からはピュッピュッと透明の蜜に白濁が交じったものが射出されていた。

「おかしくなる、か。じゃあこれで擦ったらどうなるか試してみるか?」

 自分の男根を扱きながらネフィリムの眼前に持ってくる。

 涙を浮かべた黒い瞳、半開きになった口からわずかに零れる涎と、本来色白の美しい体を覆う桜色の熱。そして、小鳥のような声で快楽を訴えるネフィリムの痴態はシグルズに劣情を抱かせるには十分だった。
 血管の浮き出た男根は天を向いている。

「あ……」

 ネフィリムは夢うつつといった状態でシグルズの性器に手を伸ばす。

「これ……ああ……」
「はっきり言わないと分からないと言ったろう? ネフィル」

 意地の悪い顔をした雄は、雌が自ら罠に落ちてくるのを待っている。

「ちょうだい……ほしい……」

 のそりと起き上がると、ネフィリムは自ら双丘を突き出す格好を取った。
 両手で穴を広げれば、紅く熟れたひだがわずかにシグルズの目に映る。

 こんなあさましいポーズを取るネフィリムも、
 みだらな願いを持つネフィリムも、
 知っているのは自分だけだと思えば全身の征服欲が満ちる。

「シグルズので、いっぱいにして」
「いいとも。たくさん擦って、掻き回してやる」

 ネフィリムのそこは貪欲で、平均よりも大きい性器も難なく飲み込んだ。
 胎内の熟れたひだが、シグルズを抱きしめ、絞り、刺激を与えてくる。

「ぐ、……本当に、すごい締め付けだな。持っていかれそうだ……!」
「あっ! ひゃあん!! やっ……そこダメ……あっああ!」

 ばちゅん!ばちゅん!と肌と肌がぶつかるたびに艶やかな嬌声が上がった。

 胎内を突くと襞がゆるりと溶けていくのが分かる。シグルズは奥の突き当たりを徹底的に突いた。
 後ろを向き尻を大きく突き上げているネフィリムの体が震え、臀部がみだらな動きを見せる。

「しぐ、ダメぇ…! 本当に、それ以上は……」
「これ以上、奥へ行く、と、どうなる、んだ?」

 同性同士の性交はそれほど慣れていない。が行き止まりなのだろうと思っていた。
 だがなぜか、最奥を突けばつくほど襞がドロつく。その快感がまたたまらない。
 雄の本能がさらに先へと促す。

「なんか、でちゃうから……! ほんとに、あっ……ダメダメえ!! こわい!」
「ネフィル、俺がいる。怖くはない。狂うなら一緒に狂ってしまおう」

 犬のような姿勢になっているネフィリムの背から再び覆いかぶさる。お互いの体温が交錯して燃えてしまうかと思うほどだった。

 シグルズはネフィリムの顎に手を添えた。自分のほうを向かせて柔らかなキスをする。

「続き……いいか?」
「………うん」

 返事を聞くやいなや、シグルズは律動を再開した。胎内の至るところを性器で擦りつけ、最後は奥を突く。
 ネフィリムはもはや意味のある言葉を発することはできず、ひたすらに喘いでいた。それぞれに高みに昇っていくような感覚があった。

「もう限界だ……! 出すぞ」
「あ、ああ……私も……もう……出る…」

 勢いをつけてシグルズが奥を突いたとき、グポン、と何かがハマる音がした。

 最奥だと思っていた胎内が急に柔らかくなり、シグルズの先端がさらに奥へとハマったのだ。
 それは性器の先端を離さないとばかりに強く柔らかく締め付ける。

「ぐっ……!」

 腸壁の快感に屈服し、シグルズはその瞬間に達した。

「あひっ……? あ……ぁ……!」

 一方ネフィリムは声にならない声をあげてのけ反ると、全身を震わせて性器から大量の白濁とともに無色透明の液体を放出した。ぷしゃあっと勢いよく出された液体はベッドだけでなく床まで濡らす始末だった。



「ふー……。ネフィル、体は大丈夫か」

 濡れた前髪をかきあげて、シグルズはネフィリムの肩に触れる。
 ネフィリムは「あ…、ぁ」と小さく呟きながらベッドの上で突っ伏していた。

「ネフィル?」
「シグルズ……これ、何だ……まだ体がイって」

 見れば、わずかにネフィリムの体は震えていた。口は開きっぱなしで、目の焦点が合っていない。

「ふわふわ、するぅ……気持ちい、すぎ、こわい……」

 シグルズはクスと笑ってネフィリムを抱きしめた。二人の鼓動が早くなっている。

「こわい、でも、ふわふわって、ああ……? なんだか、とても……いい…」

「ネフィル、それは君が俺を奥まで受け入れてくれたからいつもより強い快感が生まれているだけだ。潮も上手に吹けたな」

「し、お……?」

「透明の水が吹き出たろう? あれは俺との行為を楽しむネフィルの体が出してくれたものだ。ああ……後ろだけでイって潮を吹くネフィルの顔、食べてしまいたいほどに可愛かった」

 そういってさらに力を入れて抱きしめてくるシグルズの笑顔は普段よりも凶暴だった。ペロリと舌なめずりをしている。

 狼に食べられてしまったみたいだな、とネフィリムは思った。

 シグルズとの行為はとても気持ちがよくて、すぐに理性が吹き飛んでしまう。

 彼と体を重ねるたびに過激な知識を刷り込まれているような気もするが、その背徳感と享楽的な快感はそれまで自分を律することでしか生きられなかったネフィリムにとって、新しい世界を知るほの暗い期待にも通じている。


「ネフィル?……おい、ネフィル?」

 シグルズの呼び声が聞こえるものの、全身を覆う強い睡魔がその返事を許さなかった。


 ◆


 案の定、帰ってきたヴィテゲには説教をされた。

 というかヴィテゲはすでに帰ってきていたのだが、行為の声が聞こえてくる部屋の中に入れるほど空気が読めない男ではなかった。

「なんとなくそういう雰囲気になりそうだとは思っていました。だから席を外したのもあります。でもね、過激なやつはいかんでしょう。一方は傷が癒えたばかり、一方は酒酔いで体調不良だというのに、いきなり激しくするやつがありますか」

「それほど激しくもなかったと思うが」

 シグルズは返した。自分の経験上、潮を吹いたくらいでは“激しい”には該当しない。

「俺も溜まっていたし、何より体の相性がいいらしい。お互い“良かった”ならそれでいいと思わないか」

 今の一言が逆鱗に触れたとすぐに分かった。本気で怒っているときのヴィテゲは片眉だけが異常に上がる。

「おい」

 そしてたまに昔の口調に戻る。

「はい」

 シグルズも呼応して昔の口調に戻ってしまう。
 まだ自分がヴェルスング家の養子になる前。同じ騎士見習いとして鍛錬を積んでいた頃、ヴィテゲは兄貴分だった。

「明日朝になったらちゃんと謝っておくこと。いいな?」
「はい」

 無駄な発言を控え、若当主は頷く。

「は~~~~~~~~。ほんっとーにあなたの性的な乱れはなんとかなりませんかね!? 別に抱き合ったりキスするだけだっていいじゃないですか。なにも挿入までいかんでもいいでしょうが……」
「ヴィテゲ」
「それをそんな、奥までなんて……相手の体には相応の負担があるのに、もしクセにでもなったら、」
「ヴィテゲ、それ以上はやめておけ」

 シグルズはネフィリムのベッドを指さした。
 ネフィリムは起きていた。カッと真っ黒な目を見開いている。
 どうやらヴィテゲの声で起きたらしい。

「……ヴィテゲは全部聞いていたのだな…………」

 ネフィリムは布団にくるまってそれだけ言った。
 瞬きもせず、その大きな目を開いたまま以降は何も発言しなかった。


 夜はそうして更けていった。
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