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第一部 第四章 お互いを知るまで

26話 人の営みを教えて②(※)

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 これからネフィリムを食おうとする獰猛どうもうな雄はニヤリと笑った。
 だが、その雄のおりにはネフィリムが自ら足を踏み入れたのだ。

 雄がどれほど凶暴な表情で舌なめずりをしたとしても、ネフィリムの心はすでにその雄に囚われている。やはり格好いいなあと、心臓が余計に高鳴るだけ。

「ああ、ネフィリム。俺の姫、俺の主」

 シグルズは器用な手つきでネフィリムのまといをいでいく。

「大丈夫だ。怖いことも痛いこともしない。ただ俺の下で気持ちよくなってくれればそれでいい」

「私は……シグルズになら何をされても……いい」

 だって私の騎士は私を害することは決してしないから。
 それはネフィリムにとって全面的信頼を示す決意でもあったのだが、手をかけていた騎士のほうはなんとも言えない表情で「まいったな」と呟いて目を泳がせた。

 シグルズがワイシャツをパサリと草の上に投げる。

 日に焼けていない肌は白くありながら柔く、シグルズの指に吸い付くようだった。胸の突起は滑らかで健康的な実りを思わせる。淡いピンク色をしていた。

「んっ」

 首筋に舌を這わせると、刺激に耐えようと固く目をつぶっているネフィリムがピクリと反応した。
 快楽になじみのない高潔な彼が必死に耐えているがゆえのかわいらしい震えだと思うと、シグルズは一層興奮した。

 首、鎖骨、胸部、と徐々にシグルズの舌がネフィリムの体を下りていく。それが花の周りを縁取る乳輪に至ると、僅かな凹凸さえも余すことなく執拗しつように舌を立てて感度を探った。

「ちょ、なんでそこばか……あっ…んん」

 ネフィリムは何度も抗議の声をあげようとしたが、そのたびに舌を突き立てたり思い切り吸われたりして言葉が宙に消えた。

 そのうち乳輪への刺激によってぷっくりと膨らんだ花の実りも、摘み頃だと主張せんばかりに濃いピンク色に変化した。

 媚薬を塗りこめられたというネフィリムの乳頭は、普通の男性のものよりは柔らかく張りがある。
 シグルズは女性の豊満な乳房も好きだったが、今目の前にあるのは男のものでも女のものでもない。女にしては小さすぎ、男のものにしては庇護欲ひごよくをそそられるそれ。

 背徳的な感覚が男の脳を焼く。今すぐ吸い付きたい衝動に駆られた。
 ピンクの実りに口を寄せ、シグルズはちうちうと音を立てて味わった。

「あぁ、ん、やぁ…! 吸う、なぁ」

 次第に意味のある言葉を発することはなくなっていく。

「いっ……ひぃ、ん、あ、あっ、そ、こ……やぁっ」
「そこ、とはどこだ? ちゃんと言ってもらわないと分からない」

 下唇を乳首に当てたまま話すものだから、言葉さえも刺激になった。

「ばっ……含みながら……はなす……あっあん!」

 隠すことのできない甘さがネフィリムの口から言葉とともに漏れる。

「いい感度だな」

 人がいないとはいえ、野外で立ちながら乳を吸われて感じ入る自分。
 女でもないのに、こんなに感じてしまうなんて。
 恥ずかしい。


 でも、
 とても、気持ちがいい。


 快感で頭がぼんやりとしている。
 それとも自分がもともといやらしい性質の持ち主なのか。
 それも、もうどうでもいいか。

 ここはニーベルンゲンではない。戦乙女ヴァルキリーを演じる必要もない。
 オンナになる儀式も強制されることはない。

 ただ自分が感じたままに。

 男でもオンナでもない、ネフィリムが感じたままをシグルズに見せれば、受け入れてくれる。

「きもち、いい……」
「どこがだ」
「むね、吸われるの……」
「いい子だ、素直に言えたな。ご褒美だ」

 じゅうっ。歯を立てて乳首を吸われる。
 すさまじい快感の波が自分を攫って行く。目の前をチカチカと光が点滅した。

「あっ!!やら、あっ、ああーっ!!」

 放った欲が下着を濡らしたのが分かった。


 ネフィリムは自分がどんな状態なのか分からず、達した快感からぼんやりと宙を見上げていただけだった。
 木によりかかったネフィリムに覆いかぶさるように、シグルズが優しいキスを贈る。

「気持ちよかっただろう」
「う、ん……」
「服を全部脱がしてやる。湖で清めればいい」

 ネフィリムは無心で服を全て脱ぎ捨てた。
 シグルズと抱き合う形で膝まで湖にかった。

「美しいな。以前見たときも思ったが、陽光に照らされた君の肌はまるで絹のようだ。湖の女神と見間違えてもおかしくはない」
「な、にを馬鹿なことを……」

 双丘の奥に伸びるシグルズの指が、戦乙女の胎内を探る。

「あ、やあ……そこ、」
「大丈夫だ。痛みのないよう、ゆっくりとほぐす。ああ……ネフィルの中は熱くて柔らかいな。早く挿入はいりたくてたまらない」

 期待でナカがきゅうと締まる。
 本当はずっと欲しかった。
 ぽっかり空いたその空洞に、熱い塊を。
 かゆくてじわじわするナカの一番奥をめちゃくちゃに擦ってほしかった。

 湖の水はひんやりとしているが、抱き合っている二人の体温は上昇していた。
 ネフィリムの肌は白いシルクから憂いを帯びた桃色へと変化する。

 どうすればもっと気持ちよくなれるかを知っているネフィリムの体は、本人の意思とは裏腹に、細く長い足を徐々に開いていった。
 さらけ出してはいけない秘部を、指で弄っている相手にさらに晒すように。

「いいぞ、もっと開くんだ。そうしたら愛しやすくなる」
「ふ、んんっ……ぁ、……」

 片手を口にあて、己の醜い声が周囲に漏れないように必死に目をつぶるネフィリムだったが、その様子を見てシグルズは口の端を上げた。

「声を出せ、ネフィル。鳥が歌をさえずるように美しい声を、もっと聞きたい」
「で、も」

 恥ずかしい。
 女のような高い声、快楽を享受する喘ぎ。男に支配され、快楽に敗北する声。
 どれもが本来の自分の性質とは遠くかけ離れたものとしか感じない。

「ネフィル、それは治療や儀式のときの話だ。今、俺とネフィルが行っているのは人が愛を確認するための行為。気持ちいい今この瞬間を楽しむための行為、性交だ」

 耳をベロリと舐められて、低い声で吹きこまれる。

「ひゃ、」
「さあ、もっと開いて。君の恥ずかしいところをたくさん見せて。そうして気持ちいいと思ったら存分に声を上げなさい。それは悪いことじゃない」

 そう、なのか。彼がそう言うなら……。
 今はなにも考えず、ただシグルズの言いなりになりたかった。

 おずおずと両足を開く。ちゃぷ、と湖の水面に静かな波紋が広がる。
 肩幅程度に開かれた湖の女神の双丘の奥。内ひだがぐにゅぐにゅと動くと連動して入口がヒクリと反応した。シグルズの3本の指がゆっくりと動く。

 ちゅぷ、ぐちゅ。

「ふあ、だ、めぇ……そ、こは」
「そこは?」

 シグルズはネフィルの裸身をぐっと抱きしめて問う。

「そんなに動かした、ら……ぁあっ」
「どうなってしまうんだ? ネフィル、教えてくれ」

 シグルズに抱きしめられ、彼の熱と心臓の鼓動がネフィルの皮膚に伝う。
 自分のナカでゆっくりと、それでいてバラバラと動く指。知覚するだけでネフィリムの下半身が熱くなる。

「ひゃ、ああ……! や、ら……」

 腰を引いて強烈な快感をやり過ごそうとするが、強く抱き込まれたまま動くことはできなかった。

「ネフィリム。先から蜜が溢れてる。感じてくれているんだな」

 ネフィリムの性器はうっすらと色づき、天を向いて蜜をこぼしていた。

 時折シグルズの服が先端に擦れると、ネフィリムの体に電流が走る。思わずのけ反った。

「やあ! だめぇ……!!あっああ―――!!」

 後ろと前からの刺激に耐えられるわけもなかった。
 シグルズの腕の中で体を震わせ、ネフィルは達した。

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