自力で始める異世界建国記

モリタシ

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第一章 建国前夜編

34話 帰陣

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「で、いったいどういうこと?」

…………。

怒りが滲み出るトーンでカナが言い、場の空気は凍りつく。
まるで祖の仇を前にしたかのような威圧感に、ただ立ってるだけでもしんどいくらいだ。


手筈通り自作自演の奇襲劇を繰り広げたあと帰陣した俺たちは、すぐにカナの元へいくようにと騎士に言われ足取り重くカナの元へと向かった。

で、今だ。
氷のように冷たい目で俺とゲンマはカナに詰められている。

「タケルちゃんは悪くないのよ、私が無理矢理連れ出しただけなの。」

ナイスだゲンマ。
この威圧感に長時間は耐えられる自信がない。

「タケルさん?何か勘違いしてない?無理矢理だろうがなんだろうが軍律違反は軍律違反よ?」

ゲンマの言葉にホッとしたのが態度に出てしまったのか、カナの怒りの矛先が俺に向かう。

「申し訳ない…。」

ここはとにかく全力で反省してることを全面に押し出していこう。

「もう!ゲンマはまだしも、どうしてタケルさんまで一緒になって行動してるのよ!ーー」

その後1時間くらいひたすらカナに詰められ、怒り疲れたのかもういいから行ってと言われ解放された。

「タケル!無事だったんだな!はじめての任務だってのに、無茶しすぎだろ。」

テントに戻るとカインが心配そうに声をかけて来た。

「悪かった、心配かけたな。」

亜人とのことをカインにも話そうか…
いや、今はまだ分からないことが多すぎる、もう少しわかってからカインにも話そう。

「この後の事だけど、敵陣の検分をしてから陣を引き払うことになったんだ。国軍はそのままゴルティアに入り、俺たちはそのまま解散とのお達しだ。折角だしゴルティアの街でも見ていくか?」

「そうだな、アーナの街以外も見てみたいし、そうするか。」

少し休んだ後荷物をまとめ、陣の引き払いを手伝ってからゴルティアに向かい始めた。

ゴルティアに入りカインの他に、グロウも同行することになった。
ゴルティアの傭兵ギルド長に用事があるとか。

「タケル、アーナのギルド長として言わせてもらうが、今回のお前の行動は決して褒められたものじゃない。ただ、結果として犠牲者が少なく済んだのは事実だ。」

道中グロウはそう言った。
今回の行動を少しは認めているらしく、立場的に手放しで褒めることはできないがって感じで遠回しに褒めてくれるように感じた。

まあはじめての依頼参加にしては上出来だったか?
スキルのおかげか思った以上に精神的なストレスも少なく済んだ。

ただ、今回のことでさらに亜人排除に対する謎が深まったのは間違いない。

この世界は狂っている。
ゲンマはそう言っていたけど、それには何か理由があるはずで、俺は無性にその理由が気になっていた。
できることなら亜人の立場を変えることができないかと思っていたからだ。

ゴブの時もそうだし、今回のライたちもそうだが、亜人は姿が少し人間と違うだけで、悪い奴らじゃないと思う。

最初に交流を持ったのがゴブリンだからっていうのもあるかもしれないが、亜人排除の考えや動きに関しては正直怒りすら覚える。

まあ、ライたちが住んでいたゴルティアに行けば、小さなヒントでも得られるだろう。
今できることをまずやっていくことにしよう。
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