自力で始める異世界建国記

モリタシ

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第一章 建国前夜編

33話 決行

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俺は暗闇の中をひたすら歩いた。
味方に見つからないようにかなり遠回りをしながらだ。
月が雲から姿を見せるたび、息を潜めて屈む。

ドラグーンの陣は松明が煌々とたかれていて、数人が見張りに立っていた。

俺は両手を上げてゆっくりと陣へと近づく。

「何者だ。」

俺に気づいた見張りの一人が剣を構えながら近づいてきた。

「タケルというものだ。ライに用があって来た。」

「お前がタケルか、話は聞いている。ライのところに案内するからついてこい。」

見張りの男は俺の後ろに人影がないかを確認してから俺を陣の中へと案内してくれた。

外から見るとかなりでかい陣に見えるが、中に入るとテントはまばらで、実際の人数は多くないっていうのがわかる。

少し歩いたところで、男は一つのテントを指差し、そこにライがいると言う。
俺はその言葉にしたがいテントへと入った。

「本当に来てくれたんだな。」

表情を変えずライが言った。
きっと期待はしていなかったんだろうと言うのがわかる。

「ああ、ちゃんとライたちを逃すための方法も考えて来た。」

俺はさっきゲンマと話した通りどう逃すのかについてを説明していった。

「………。」

「ライ、警戒するのはわかるが時間がない。早く決断してくれ。」

もう間も無くゲンマの部隊が来てもおかしくない頃だ、日の出の前にことを進めなければいけない。
少しずつ焦り始めていた。

「わかった…。それで頼む。ひとまず、タケルの味方が来ると言う陣の裏に行こう。」

俺とライはテントを出て、裏へと急ぐ。
向かう途中すれ違った数人に、全員陣の裏に移動するようにと伝達を頼んだ。

裏に着いてしばらくすると、遠くから近づいてくる影が見える。
ゲンマが隊を率いてやって来た。

「ンフフ、待たせちゃいましたかあ?ごめんなさいねえ。」

「神出鬼没のゲンマか、タケルからあんたが今回の絵を描いてくれたと聞いた。感謝する。」

下馬したゲンマとライが挨拶を交わす。

「正面の見張り以外はもう全員集まってる。このまま陣に入って何人かは正面の見張りと入れ替わってくれ。」

「タケルちゃんも人使いが荒いわあ。」

そう茶化しながらゲンマが部下たちと陣の中へと入っていった。
日の出まではまだ時間がありそうだ。
なんとか間に合ったか…。

「ライ、まだ少し時間はあるが、じきに日の出だ。追撃が届かない距離まで出来る限り早く離れるように頼む。あとは俺たちに任せてくれ。」

「タケル、ありがとう。俺たちはこのまま西の未開地帯へ身を隠す、この恩は忘れない、本当にありがとう。」

ライは深々と頭を下げた。
俺は気にしないでくれと伝え、ライたちを陣の外へと促し、走り去っていくライたちを見送った。

さあ、ここからが本番だ。
日の出までに最後の仕上げに入らなければ、ただの茶番がバレてしまう。

俺はゲンマの元へ行き、首尾を確認した。

「問題ないわあ、あと1時間もしたら私の隊が突撃してくる。そこに私たちは合流してそのまま陣に戻りましょう。」

「わかった。ただ、俺が一緒にいるのは不自然すぎないか?それについてはなんて説明する気だ?」

「あっ、考えてなかった。ンフフ、タケルちゃんも私と一緒に怒られることねえ。」

ゲンマら笑うが俺は全く笑えない。
はじめての依頼で独断の奇襲に勝手に参戦してたなんて知れたらグロウあたりにコンコンと詰められそうだ。

まあ、考えても仕方ないか。
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