自力で始める異世界建国記

モリタシ

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第一章 建国前夜編

28話 乱入者

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その直後、突然全てがスローモーションになった。

ポンッ
『軍神が発動します』

なっ、なんだ…?
音と共にいきなり目の前に小さなウィンドが現れた。

スキルが発動した?のか…?
何にしてもカインがやばい、何とかしないと間違いなくやられる!

ポンッ
『勇気が発動します』

また視界にウィンドウが飛び出してきたが、すぐに目線を敵に移し剣を振りかぶり斬りかかる。

敵は変わらずゆっくりと動いていて、俺が振り下ろした剣は敵の左肩から斜めに上半身を斬りつけた。

次の瞬間周りがスローモーションじゃなくなり、剣を振り上げたまま敵は膝から崩れ落ちた。

「なっ、何だ今の動き…、全く目で追えなかった…。」

カインが驚いた顔で俺を見る。
俺にも何が起こったのかわからない。
でもさっきのウィンドウ…。
多分軍神の奇跡とやらが起こったんだろう…。

「何にしても助かった!ボサっとしてないで離脱するか戦うかしないとマジでやばいぞ!」

カインはそう言って体制を直し乱戦に戻る。

「ゴライアスをやらせるなっ!敵の狙いは戦力を削ることだっ!」

カインが懸命に叫ぶ。

ドドドドドド!!!!!!!!

前方からいきなり馬の蹄の音が聞こえてきた。
よく見ると遠くから木の枝を薙ぎ払いながら密林を爆走する騎馬隊が見えた。

「ンフフ!やっぱりドラグーンがいるわ!ゴライアスさん、ちょっとお邪魔するわよぉ!」

先頭に躍り出た騎馬に乗る男が不気味な笑みを浮かべ叫びながら乱戦に入ってきた。

「くそっ![神出鬼没]だっ!半分はあっちにあたれ!!」

ドラグーンの1人がそう叫ぶ。

神出鬼没?ってことはあれがゲンマか!
喋り方からしていかれてるじゃないか!!
でもこれで押し返すことができるか?!

俺は何かが吹っ切れたように敵と剣を交わす。
さっき一瞬見えた勇気の効果か?
今はもう恐怖心も躊躇もない。

皆懸命に応戦するが、ゲンマ乱入後も状況は良くならない、このままだとジリ貧だ…。
このままじゃまずい、一旦乱戦を解いて体制を整えるべきだ!

ポンッ
『決断が発動します、あなたとあなたの半径50メートル以内にいる味方に攻撃力アップのバフがかかります』

また出た!しかも今度は長文!
バフって何のことだ!でも今はそんなこと考えてる場合じゃない!

「ゴライアス!!!敵を引きつけながらこっちに引いてくれ!ゲンマはそのままの勢いでゴライアスを先導してほしい!カイン!他の奴らを集めてくれ!」

「ガッハハ!タケルが指示だしか!」

「誰だかわかりませんが、状況も状況なので乗ることにしましょうかねえ。」

ゴライアスとゲンマが呼応して動き始める。
流石に指揮官クラスは少し余裕を感じさせる。

併せてカインも声を張り上げ他の者たちに呼び掛けを始めた。

敵を退けながら陣形を整えると、ドラグーン達も奇襲の有利性を失ったことで、少し動きに迷いが出始めた。

敵は数人減り、逆にこちらはゲンマ達300人ほどが加わり500人ほどの一団となった。
それでも後方部隊400人が半分ほどに減っていることを考えるとドラグーンの奇襲に見事やられたと言ってもいいだろう。

「カインは左翼に100で展開、ゲンマも右翼に100で展開してくれ!ゴライアスはゲンマの隊も加えた300で正面から押し上げろ!部隊を広げて包囲する形を取る!」

一瞬の静寂のあと、決着をつけるべく部隊を動かす。

「くそっ、引くぞ!囲まれたら損失が広がる!」

ドラグーンの指揮官らしき男がそう叫び、一斉に引き始めた。

「ンフフ、追撃はやめた方がいいわね、今は隊の立て直しが優先よ。」
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