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王国の闇
第769話 その頃の闘技場の地下では
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「――よし、開いたぞ」
「おおっ!!助かったぜ、爺さん!!」
「これで全員か……」
闘技場の地下で捕らえられていた人間達はハマーンのお陰で全員が抜け出す。一人だけ壁に拘束されていたアッシュも解放され、他の者の肩を借りながら立ち上がる。
「ぐうっ……オロカめ、よくも俺を鞭打ちしてくれたな。この借りは必ず返すぞ」
「アッシュ公爵、大丈夫ですの!?」
「問題ない、怪我は見た目ほど酷くはない。それよりも外の状況を確認しなければ……」
「まあ、待て……迂闊に外に飛び出しても捕まるだけじゃ。今の儂等には武器も防具も持っておらんのだぞ」
捕まった際に全員が身に付けていた装備は剥がされており、当然ではあるがドリスとリンの魔剣も奪われてしまった。恐らくだが階段を上った先には見張りも待ち構えているはずであり、武器無しの状態で挑むのは危険過ぎる。
拘束された人間の中には格闘技の心得もある者もいるが、全員が疲労と怪我を負っており、死なない程度の最低限の治療しか受けていない。こんな状態で地上に出たとしてもシンと繋がる王国騎士や兵士に見つかればすぐに捕まってしまう。
「まずは武器だけでもどうにか調達せねば話にもならん。なにか武器になりそうな物はこの部屋には無いのか?」
「それならば魔物を拘束するための鉄球と繋げた足枷が存在する」
「て、鉄球?そんな物をどうするんだよ?」
「知れた事、それを武器代わりにして戦えばいい」
「そんな事ができるのはアッシュ公爵ぐらいですわ……」
本来は魔物の拘束具として作り出された鉄球付きの足枷を、武器として使う事を提案するアッシュに全員が呆れる。だが、唐突に地上に続く階段から足音が鳴り響く。それに気づいた全員が警戒心を抱き、階段から見えない位置に姿を隠す。
(足音から察するに一人のようだが……よし、全員がかりで抑え付けるぞ)
(それしかありませんわね)
(一人ぐらいならばなんとかなるかもしれんな)
(よし、合図したら飛び掛かるぞ)
声を潜めながらリンたちは階段から死角の位置に隠れ、階段を降りてくる者を待ち構える。全員に緊張が走る中、遂に階段から人影が現れるとガオウが合図を出して地下に捕まっていた男達が飛び掛かる。
「今だ!!」
「「「うおおおおっ!!」」」
「えっ……うわぁっ!?」
階段から現れた人物に対してガオウは声を上げると、拘束されていた人間の中で男性が飛び掛かり、その中にはハマーンやアッシュの姿も存在した。
数人がかりで階段から降りてきた人間を捕まえようとするが、この時にガオウ達の耳には聞きなれた声が響き、その人物は自分にのしかかってきた者達を全員持ち上げる程の怪力を発揮する。
「い、いきなり何するんですか!?」
「「「うわぁあああっ!?」」」
「ナイさん!?」
「ナイ!?」
数名の男性を持ち上げたのは「ナイ」であり、彼は全員を地面に降ろす。階段から降りてきた人物の正体がナイだと知ってドリスとリンも驚き、彼に飛び掛かったガオウ達も戸惑う。
「ぼ、坊主!?どうしてお前さんがここに!?」
「それはこっちの台詞ですよ!!皆さんの方こそ大丈夫ですか!?」
「あ、ああ……いや、大丈夫というわけではないが」
ナイは地下に捕まっている人間達の姿を見て驚き、アルトの読み通りに本当の闘技場の地下にここまで大勢の人間が捕まっているとは思いもしなかった。しかも全員が酷い怪我を負っており、すぐにナイは仙薬を取り出す――
――その後、ナイは重傷者を優先して治療を行い、重傷者には回復魔法を施す。仙薬には限りがあるため、全員の治療は行えない。だから身体が動かせる人間の治療は後回しにして動けない程に怪我が酷い人間の治療を優先する。
「どうですか?もう大丈夫だと思いますけど……」
「ああ、身体が楽になった。助かったよ……感謝する」
「よし、これで俺達も戦えるぜ」
「ふむ、こんな薬は初めて見るのう。いったいどうやって作ったのだ?」
「そんなの今はどうでもいいだろ?」
「そうだな、怪我も治った以上はこんな場所に長居する理由はない」
アッシュを始めにハマーンとガオウ、そしてドリスとリンを万全な状態までナイは回復させると、回復魔法で消耗した体力と魔力も回復するために彼自身も仙薬を使い、これでもナイの手持ちの仙薬は全て失ってしまった。本来ならヒイロとミイナが来れば彼女達に分け多分の仙薬で治療できるのだが、未だに二人が辿り着く様子はない。
ここから先はナイは怪我をした場合は再生術で自力に回復しなければならず、モモの煌魔石も3、4回ほど強化術か再生術を使えば完全に魔力を失ってしまう。
「おおっ!!助かったぜ、爺さん!!」
「これで全員か……」
闘技場の地下で捕らえられていた人間達はハマーンのお陰で全員が抜け出す。一人だけ壁に拘束されていたアッシュも解放され、他の者の肩を借りながら立ち上がる。
「ぐうっ……オロカめ、よくも俺を鞭打ちしてくれたな。この借りは必ず返すぞ」
「アッシュ公爵、大丈夫ですの!?」
「問題ない、怪我は見た目ほど酷くはない。それよりも外の状況を確認しなければ……」
「まあ、待て……迂闊に外に飛び出しても捕まるだけじゃ。今の儂等には武器も防具も持っておらんのだぞ」
捕まった際に全員が身に付けていた装備は剥がされており、当然ではあるがドリスとリンの魔剣も奪われてしまった。恐らくだが階段を上った先には見張りも待ち構えているはずであり、武器無しの状態で挑むのは危険過ぎる。
拘束された人間の中には格闘技の心得もある者もいるが、全員が疲労と怪我を負っており、死なない程度の最低限の治療しか受けていない。こんな状態で地上に出たとしてもシンと繋がる王国騎士や兵士に見つかればすぐに捕まってしまう。
「まずは武器だけでもどうにか調達せねば話にもならん。なにか武器になりそうな物はこの部屋には無いのか?」
「それならば魔物を拘束するための鉄球と繋げた足枷が存在する」
「て、鉄球?そんな物をどうするんだよ?」
「知れた事、それを武器代わりにして戦えばいい」
「そんな事ができるのはアッシュ公爵ぐらいですわ……」
本来は魔物の拘束具として作り出された鉄球付きの足枷を、武器として使う事を提案するアッシュに全員が呆れる。だが、唐突に地上に続く階段から足音が鳴り響く。それに気づいた全員が警戒心を抱き、階段から見えない位置に姿を隠す。
(足音から察するに一人のようだが……よし、全員がかりで抑え付けるぞ)
(それしかありませんわね)
(一人ぐらいならばなんとかなるかもしれんな)
(よし、合図したら飛び掛かるぞ)
声を潜めながらリンたちは階段から死角の位置に隠れ、階段を降りてくる者を待ち構える。全員に緊張が走る中、遂に階段から人影が現れるとガオウが合図を出して地下に捕まっていた男達が飛び掛かる。
「今だ!!」
「「「うおおおおっ!!」」」
「えっ……うわぁっ!?」
階段から現れた人物に対してガオウは声を上げると、拘束されていた人間の中で男性が飛び掛かり、その中にはハマーンやアッシュの姿も存在した。
数人がかりで階段から降りてきた人間を捕まえようとするが、この時にガオウ達の耳には聞きなれた声が響き、その人物は自分にのしかかってきた者達を全員持ち上げる程の怪力を発揮する。
「い、いきなり何するんですか!?」
「「「うわぁあああっ!?」」」
「ナイさん!?」
「ナイ!?」
数名の男性を持ち上げたのは「ナイ」であり、彼は全員を地面に降ろす。階段から降りてきた人物の正体がナイだと知ってドリスとリンも驚き、彼に飛び掛かったガオウ達も戸惑う。
「ぼ、坊主!?どうしてお前さんがここに!?」
「それはこっちの台詞ですよ!!皆さんの方こそ大丈夫ですか!?」
「あ、ああ……いや、大丈夫というわけではないが」
ナイは地下に捕まっている人間達の姿を見て驚き、アルトの読み通りに本当の闘技場の地下にここまで大勢の人間が捕まっているとは思いもしなかった。しかも全員が酷い怪我を負っており、すぐにナイは仙薬を取り出す――
――その後、ナイは重傷者を優先して治療を行い、重傷者には回復魔法を施す。仙薬には限りがあるため、全員の治療は行えない。だから身体が動かせる人間の治療は後回しにして動けない程に怪我が酷い人間の治療を優先する。
「どうですか?もう大丈夫だと思いますけど……」
「ああ、身体が楽になった。助かったよ……感謝する」
「よし、これで俺達も戦えるぜ」
「ふむ、こんな薬は初めて見るのう。いったいどうやって作ったのだ?」
「そんなの今はどうでもいいだろ?」
「そうだな、怪我も治った以上はこんな場所に長居する理由はない」
アッシュを始めにハマーンとガオウ、そしてドリスとリンを万全な状態までナイは回復させると、回復魔法で消耗した体力と魔力も回復するために彼自身も仙薬を使い、これでもナイの手持ちの仙薬は全て失ってしまった。本来ならヒイロとミイナが来れば彼女達に分け多分の仙薬で治療できるのだが、未だに二人が辿り着く様子はない。
ここから先はナイは怪我をした場合は再生術で自力に回復しなければならず、モモの煌魔石も3、4回ほど強化術か再生術を使えば完全に魔力を失ってしまう。
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