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王国の闇
第725話 闘技場に待ち構えていた者
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「ふむ……どうやら儂の考え過ぎのようじゃな、お主等が裏切り者だとは思えん」
「と、当然ですわ!!」
「……信用してくれるのか?」
「はははっ、お主等のどちらかが裏切り者ならばこの状況で儂を帰そうとするはずがないからのう。それにお主等との付き合いもそれなりに長いからな……ここは信じてやろう」
ハマーンは笑みを浮かべると、リンとドリスは安堵した。黄金級冒険者であるハマーンに離脱されると戦力的にも不安はあり、一先ずは信用する事にした。
だが、ハマーンの推理が正しければ今後は飛行船に乗り合わせていた者と接触する時は注意しなければならない。そんな事を考えながらリンは先に進もうとした時、不意にドリスの足が止まっている事に気付く。
「……どうした?何か気になるのか?」
「いえ、ちょっと……ハマーンさんの話を聞いて引っかかる事がありますわ」
「引っかかる事?何だそれは?」
「ん?何か犯人に繋がる証拠を思い出したのか?」
「そういわけではないんですけど……」
ドリスはハマーンの先ほどの推理の中で王国騎士が怪しいという結論に至ったが、ドリスは王国騎士ではない人物の中に出入りが許されている者がまだ残っている事を伝えようとした。
「さっきの推理ですと、あの方達は……」
「っ!?ドリス、頭を下げろ!!」
「えっ!?」
「ぬうっ!?」
彼女が言葉を言い切る前にリンは殺気を感じ取り、ドリスに頭を下げる様に指示した。咄嗟の彼女の言葉にドリスは反射的に頭を下げると、ハマーンも鉄槌を構えた。
闘技場の廊下にて立ち尽くしていたドリスに目掛けて何処かから剣が投げ放たれ、それに対してリンは咄嗟に暴風を抜いて風の斬撃を放ち、剣を弾き飛ばす。結果としてドリスを救う事は出来たが、廊下の奥から足音が響く。三人の前に姿を現したのは両手にカトラスを握りしめたリザードマンだった。
「お前は……!?」
「……ヤハリキタカ、マッテイタゾ」
「リザードマン!?ど、どうしてここに!?」
「こいつは……最近、闘技場で有名な魔物の王か」
先ほどは街中で遭遇したはずのリザードマンが闘技場内に待ち伏せていた事にリンは驚き、ドリスとハマーンも武器を構える。リザードマンは先ほどリンと遭遇したとは姿が少し異なり、人間のように武具を装備していた。
リザードマンの手にはカトラスが握りしめられ、しかも尻尾の方には先端部分にミスリル製の刃が固定されていた。先ほどとは異なり、武装したリザードマンを見てリンは目つきを鋭くさせる。
「トカゲ風情がおしゃれのつもりか?そんな物で私達に勝てると思っているのか?」
「サッキハジャマガハイッタガ、コンドハノガサン……ココデゼンインコロシテヤル」
「なっ!?リザードマンが本当に人の言葉を……」
「話は聞いていたが、こいつは驚いたな……」
片言ではあるがリザードマンが人語を話した事にドリスとハマーンは動揺し、その一方でリンは嫌な予感がした。先ほど苦戦したばかりの相手であり、しかも今回は武器を装備していた。
闘技場で魔物に武具や防具を装備させるときは使い古しで壊れかけた物を装着させるが、このリザードマンだけは別であり、彼の装備している2本のカトラスや尻尾に取り付けているミスリル製の刃物はどう見ても鈍らには見えない。それはハマーンも見抜いているらしく、彼は非常に焦った声をあげる。
「おい、待て!!よく見たらそれは儂の店の商品ではないか!?何処から盗み出してきた!!」
「ソトニイル、ニンゲンドモカラウバッタ……コンドハニガサン、ココデコロス」
「ふざけるな……天下の王国騎士が魔物如きに後れを取ると思うな!!」
「リンさん、待ってください!!後ろを見て!!」
リンは今度こそリザードマンを切り捨てようと暴風を鞘に納めた途端、ドリスが声を上げる。今度は何事かとリンは後方を振り返ると、反対側の方向から赤色の体毛で覆われた体長が三メートル近くの体躯を誇るゴブリンが出現した。
「――ギアアアアッ!!」
巨人族のような体躯を誇るゴブリンの方向が廊下に響き渡り、その姿を見たリンたちは動揺する。こちらのゴブリンはかつてレナが倒した「ゴブリンキラー」と非常によく似ていた。
実はイチノから帰還した際、アッシュは後にゴブリンキラーと名付けられる「ゴブリン亜種」を回収し、闘技場で管理させていた。しかし、彼が知らない間にゴブリンキラーは闘技場内部で同じ檻の中に閉じ込められていたゴブリンと交配し、子供が生まれる。
その子供はゴブリンキラーの性質を受け継ぎ、父親と同様に他の魔物を喰らう事で特徴を奪う力を持っていた。その力を生かし、新しく誕生したゴブリンキラーは闘技場の魔物を喰らって急成長する。
リンたちの前に現れたゴブリンキラーはこの闘技場内で管理されていた魔物を喰らい、様々な魔物の特徴を受け継ぎ、遂には父親を越えた存在と化す。現在のゴブリンキラーはトロールのような体躯に赤毛熊のような赤色の体毛を生やし、更に頭にはミノタウロスのような角を生やした異形の怪物とかしていた。
※リザードマンの台詞は今後はカタカナ表示ではなく、次からは『』で普通の文字で表示します。そちらの方が分かりやすいと思いますが、登場人物達からすればリザードマンが片言で話しているように聞こえているように表現します。
「と、当然ですわ!!」
「……信用してくれるのか?」
「はははっ、お主等のどちらかが裏切り者ならばこの状況で儂を帰そうとするはずがないからのう。それにお主等との付き合いもそれなりに長いからな……ここは信じてやろう」
ハマーンは笑みを浮かべると、リンとドリスは安堵した。黄金級冒険者であるハマーンに離脱されると戦力的にも不安はあり、一先ずは信用する事にした。
だが、ハマーンの推理が正しければ今後は飛行船に乗り合わせていた者と接触する時は注意しなければならない。そんな事を考えながらリンは先に進もうとした時、不意にドリスの足が止まっている事に気付く。
「……どうした?何か気になるのか?」
「いえ、ちょっと……ハマーンさんの話を聞いて引っかかる事がありますわ」
「引っかかる事?何だそれは?」
「ん?何か犯人に繋がる証拠を思い出したのか?」
「そういわけではないんですけど……」
ドリスはハマーンの先ほどの推理の中で王国騎士が怪しいという結論に至ったが、ドリスは王国騎士ではない人物の中に出入りが許されている者がまだ残っている事を伝えようとした。
「さっきの推理ですと、あの方達は……」
「っ!?ドリス、頭を下げろ!!」
「えっ!?」
「ぬうっ!?」
彼女が言葉を言い切る前にリンは殺気を感じ取り、ドリスに頭を下げる様に指示した。咄嗟の彼女の言葉にドリスは反射的に頭を下げると、ハマーンも鉄槌を構えた。
闘技場の廊下にて立ち尽くしていたドリスに目掛けて何処かから剣が投げ放たれ、それに対してリンは咄嗟に暴風を抜いて風の斬撃を放ち、剣を弾き飛ばす。結果としてドリスを救う事は出来たが、廊下の奥から足音が響く。三人の前に姿を現したのは両手にカトラスを握りしめたリザードマンだった。
「お前は……!?」
「……ヤハリキタカ、マッテイタゾ」
「リザードマン!?ど、どうしてここに!?」
「こいつは……最近、闘技場で有名な魔物の王か」
先ほどは街中で遭遇したはずのリザードマンが闘技場内に待ち伏せていた事にリンは驚き、ドリスとハマーンも武器を構える。リザードマンは先ほどリンと遭遇したとは姿が少し異なり、人間のように武具を装備していた。
リザードマンの手にはカトラスが握りしめられ、しかも尻尾の方には先端部分にミスリル製の刃が固定されていた。先ほどとは異なり、武装したリザードマンを見てリンは目つきを鋭くさせる。
「トカゲ風情がおしゃれのつもりか?そんな物で私達に勝てると思っているのか?」
「サッキハジャマガハイッタガ、コンドハノガサン……ココデゼンインコロシテヤル」
「なっ!?リザードマンが本当に人の言葉を……」
「話は聞いていたが、こいつは驚いたな……」
片言ではあるがリザードマンが人語を話した事にドリスとハマーンは動揺し、その一方でリンは嫌な予感がした。先ほど苦戦したばかりの相手であり、しかも今回は武器を装備していた。
闘技場で魔物に武具や防具を装備させるときは使い古しで壊れかけた物を装着させるが、このリザードマンだけは別であり、彼の装備している2本のカトラスや尻尾に取り付けているミスリル製の刃物はどう見ても鈍らには見えない。それはハマーンも見抜いているらしく、彼は非常に焦った声をあげる。
「おい、待て!!よく見たらそれは儂の店の商品ではないか!?何処から盗み出してきた!!」
「ソトニイル、ニンゲンドモカラウバッタ……コンドハニガサン、ココデコロス」
「ふざけるな……天下の王国騎士が魔物如きに後れを取ると思うな!!」
「リンさん、待ってください!!後ろを見て!!」
リンは今度こそリザードマンを切り捨てようと暴風を鞘に納めた途端、ドリスが声を上げる。今度は何事かとリンは後方を振り返ると、反対側の方向から赤色の体毛で覆われた体長が三メートル近くの体躯を誇るゴブリンが出現した。
「――ギアアアアッ!!」
巨人族のような体躯を誇るゴブリンの方向が廊下に響き渡り、その姿を見たリンたちは動揺する。こちらのゴブリンはかつてレナが倒した「ゴブリンキラー」と非常によく似ていた。
実はイチノから帰還した際、アッシュは後にゴブリンキラーと名付けられる「ゴブリン亜種」を回収し、闘技場で管理させていた。しかし、彼が知らない間にゴブリンキラーは闘技場内部で同じ檻の中に閉じ込められていたゴブリンと交配し、子供が生まれる。
その子供はゴブリンキラーの性質を受け継ぎ、父親と同様に他の魔物を喰らう事で特徴を奪う力を持っていた。その力を生かし、新しく誕生したゴブリンキラーは闘技場の魔物を喰らって急成長する。
リンたちの前に現れたゴブリンキラーはこの闘技場内で管理されていた魔物を喰らい、様々な魔物の特徴を受け継ぎ、遂には父親を越えた存在と化す。現在のゴブリンキラーはトロールのような体躯に赤毛熊のような赤色の体毛を生やし、更に頭にはミノタウロスのような角を生やした異形の怪物とかしていた。
※リザードマンの台詞は今後はカタカナ表示ではなく、次からは『』で普通の文字で表示します。そちらの方が分かりやすいと思いますが、登場人物達からすればリザードマンが片言で話しているように聞こえているように表現します。
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