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王都の異変
第581話 ナイVSイゾウ
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「いいや、あんたの負けさ……おい、ここだよ!!」
「何だと!?」
ネズミの言葉にイゾウは眉をしかめたが、すぐに彼は異様な気配を感じとる。まるで猛獣が自分の背後にまで迫っているような圧迫感を受けると、咄嗟に彼は上空を見上げた。
イゾウの視界に映し出されたのは廃墟の上空にて浮揚する白い毛皮の狼と、その背中に乗り込む二つの大剣を背負った少年の姿だった。白狼はクノ達の前に着地すると、背中に乗っていた少年は赤色の大剣を握りしめてイゾウに目掛けて突っ込む――
――旋斧を掲げたナイはイゾウに目掛けて突っ込み、全身の筋肉を利用して旋斧を放つ。
「だぁあああっ!!」
「ぐうっ!?」
強烈な一撃が叩き込まれたイゾウはまるで巨人族に切り付けられたような錯覚を覚え、防御しても耐え切れずに後方へ吹き飛ぶ。廃墟の壁にイゾウは叩きつけられ、苦痛の表情を浮かべる。
「がはぁっ……!?」
「ふうっ……間に合った」
「ウォンッ!!」
ナイはイゾウと向き合うと、ビャクが鳴き声を放つ。その光景を見ていたテンとクノは呆気に取られ、この状況下でナイとビャクが駆けつけてきた事に驚く。
イゾウも何が起きているのか分からず、どうして彼が駆けつけてきたのか理解できなかった。クノの犬笛を破壊した時点で彼女は他の仲間との連絡手段を絶たれたはずだが、どうしてナイは異変を察知してここまで駆けつけたのかを問う。
「な、何故貴様が!?」
「ナイ殿、どうして!?」
「あんた、何で……」
「その子のお陰だよ」
イゾウだけではなく、倒れているテンとクノも疑問を抱くと、ナイはビャクの頭を指差す。いったいどういう意味なのかと3人は視線を向けると、そこにはビャクの毛皮の中から一匹の灰鼠が姿を現す。
「チュチュッ♪」
「灰鼠……だと!?」
「はっ……あたしが何の考えも無しにここで待ち合わせしていると思ったのかい?」
呆然とするイゾウに対して倒れているネズミは笑みを浮かべ、実は彼女は事前に灰鼠をナイ達の元に送り込み、監視させていた。
最初にテンとクノが教会へ向かう際にナイ達も動く事をネズミは読み取り、彼等の動向を掴むために灰鼠に監視させていた。しかし、イゾウが現れた時に彼女は監視させていた灰鼠を動かし、ナイ達の元に送り込む。
「その子が急に僕達の前に現れて、何かを訴えかけてきたんです。きっとテンさん達に何かあったと思ってビャクに乗って駆けつけてきたんです」
「そ、そうだったのか……」
「ネズミ殿、やるでござるな!!」
「はっ……あたしを誰だと思ってるんだい?この王都一番の情報屋だよ、何の手も打たずに待ち合わせするはずないだろう」
「くっ……貴様ぁっ!!」
風魔を構えたイゾウはネズミに対して刃を振りかざし、風の魔力を放出させて斬撃を飛ばす。しかし、それに対してナイはネズミの元へ移動すると、彼は反魔の盾で風の斬撃を正面から跳ね返す。
「させないっ!!」
「何っ!?」
「おおっ……それが噂に聞く反魔の盾でござるか」
ナイが右腕に身に着けている反魔の盾を利用してイゾウの風の斬撃を弾き返すと、それを見たクノが驚いた声を上げる。反魔の盾は衝撃と魔法攻撃を跳ね返す性質を持ち、風の魔力で構成された斬撃であろうと弾き返す事は容易い。
「……なるほど、話は聞いてたけど本当にリンさんのように斬撃を飛ばす事ができるのか。でも、リンさんの攻撃と比べたら大した事ないな」
「な、何だと!?」
風の斬撃を操るのはシノビやイゾウだけではなく、銀狼騎士団の副団長であるリンも得意とする攻撃だった。彼女の場合は魔剣「暴風」を利用し、風の斬撃を生み出す。
リンが放つ風の斬撃は鋭く、しかも目では捉えにくい。それに対してイゾウの放つ風の斬撃は威力は大きいが魔力を込め過ぎているせいで視界でも捉えやすく、簡単に対処できた。
「ナイ殿、油断しては駄目でござる!!ここは拙者と一緒に……」
「クノさんも無理はしない方が良いよ。大丈夫、ここは僕一人で十分だから……ビャク、三人を頼むよ」
「ウォンッ!!」
クノは共闘を申し出るが、ナイは一人でイゾウと戦うつもりだった。その態度にイゾウは苛立ちを抱き、まだ成人年齢にも達していないような小僧に自分が舐められていると思った彼は風魔の力を解放させた。
「小僧……人を舐めるのもたいがいにしろ!!」
「これは……ナイ殿、気を付けて!!また何か仕出かそうとしているでござる!!」
イゾウは風魔を構えると、今度は風属性の魔力が刃に渦巻き、それを見たナイは旋斧を構える。イゾウは風魔を構えると、ナイへ向けて刃を放つ。
「何だと!?」
ネズミの言葉にイゾウは眉をしかめたが、すぐに彼は異様な気配を感じとる。まるで猛獣が自分の背後にまで迫っているような圧迫感を受けると、咄嗟に彼は上空を見上げた。
イゾウの視界に映し出されたのは廃墟の上空にて浮揚する白い毛皮の狼と、その背中に乗り込む二つの大剣を背負った少年の姿だった。白狼はクノ達の前に着地すると、背中に乗っていた少年は赤色の大剣を握りしめてイゾウに目掛けて突っ込む――
――旋斧を掲げたナイはイゾウに目掛けて突っ込み、全身の筋肉を利用して旋斧を放つ。
「だぁあああっ!!」
「ぐうっ!?」
強烈な一撃が叩き込まれたイゾウはまるで巨人族に切り付けられたような錯覚を覚え、防御しても耐え切れずに後方へ吹き飛ぶ。廃墟の壁にイゾウは叩きつけられ、苦痛の表情を浮かべる。
「がはぁっ……!?」
「ふうっ……間に合った」
「ウォンッ!!」
ナイはイゾウと向き合うと、ビャクが鳴き声を放つ。その光景を見ていたテンとクノは呆気に取られ、この状況下でナイとビャクが駆けつけてきた事に驚く。
イゾウも何が起きているのか分からず、どうして彼が駆けつけてきたのか理解できなかった。クノの犬笛を破壊した時点で彼女は他の仲間との連絡手段を絶たれたはずだが、どうしてナイは異変を察知してここまで駆けつけたのかを問う。
「な、何故貴様が!?」
「ナイ殿、どうして!?」
「あんた、何で……」
「その子のお陰だよ」
イゾウだけではなく、倒れているテンとクノも疑問を抱くと、ナイはビャクの頭を指差す。いったいどういう意味なのかと3人は視線を向けると、そこにはビャクの毛皮の中から一匹の灰鼠が姿を現す。
「チュチュッ♪」
「灰鼠……だと!?」
「はっ……あたしが何の考えも無しにここで待ち合わせしていると思ったのかい?」
呆然とするイゾウに対して倒れているネズミは笑みを浮かべ、実は彼女は事前に灰鼠をナイ達の元に送り込み、監視させていた。
最初にテンとクノが教会へ向かう際にナイ達も動く事をネズミは読み取り、彼等の動向を掴むために灰鼠に監視させていた。しかし、イゾウが現れた時に彼女は監視させていた灰鼠を動かし、ナイ達の元に送り込む。
「その子が急に僕達の前に現れて、何かを訴えかけてきたんです。きっとテンさん達に何かあったと思ってビャクに乗って駆けつけてきたんです」
「そ、そうだったのか……」
「ネズミ殿、やるでござるな!!」
「はっ……あたしを誰だと思ってるんだい?この王都一番の情報屋だよ、何の手も打たずに待ち合わせするはずないだろう」
「くっ……貴様ぁっ!!」
風魔を構えたイゾウはネズミに対して刃を振りかざし、風の魔力を放出させて斬撃を飛ばす。しかし、それに対してナイはネズミの元へ移動すると、彼は反魔の盾で風の斬撃を正面から跳ね返す。
「させないっ!!」
「何っ!?」
「おおっ……それが噂に聞く反魔の盾でござるか」
ナイが右腕に身に着けている反魔の盾を利用してイゾウの風の斬撃を弾き返すと、それを見たクノが驚いた声を上げる。反魔の盾は衝撃と魔法攻撃を跳ね返す性質を持ち、風の魔力で構成された斬撃であろうと弾き返す事は容易い。
「……なるほど、話は聞いてたけど本当にリンさんのように斬撃を飛ばす事ができるのか。でも、リンさんの攻撃と比べたら大した事ないな」
「な、何だと!?」
風の斬撃を操るのはシノビやイゾウだけではなく、銀狼騎士団の副団長であるリンも得意とする攻撃だった。彼女の場合は魔剣「暴風」を利用し、風の斬撃を生み出す。
リンが放つ風の斬撃は鋭く、しかも目では捉えにくい。それに対してイゾウの放つ風の斬撃は威力は大きいが魔力を込め過ぎているせいで視界でも捉えやすく、簡単に対処できた。
「ナイ殿、油断しては駄目でござる!!ここは拙者と一緒に……」
「クノさんも無理はしない方が良いよ。大丈夫、ここは僕一人で十分だから……ビャク、三人を頼むよ」
「ウォンッ!!」
クノは共闘を申し出るが、ナイは一人でイゾウと戦うつもりだった。その態度にイゾウは苛立ちを抱き、まだ成人年齢にも達していないような小僧に自分が舐められていると思った彼は風魔の力を解放させた。
「小僧……人を舐めるのもたいがいにしろ!!」
「これは……ナイ殿、気を付けて!!また何か仕出かそうとしているでござる!!」
イゾウは風魔を構えると、今度は風属性の魔力が刃に渦巻き、それを見たナイは旋斧を構える。イゾウは風魔を構えると、ナイへ向けて刃を放つ。
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