貧弱の英雄

カタナヅキ

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ゴブリンキングの脅威

第540話 再び依頼

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「あの……実は、こういう人探しとか得意そうな人が知り合いに居るんですけど」
「本当かい!?」
「はい、でもちょっと依頼するならお金が掛かると思うんですけど……」
「金か……仕方ないね、とりあえずはそいつに話をさせてくれないかい?交渉はあたしが行う」
「そういう事なら……多分、もう少ししたら来ると思います」
「来る?ここにかい?」


ナイの言葉にテンは疑問を抱くが、この時に部屋の扉が開かれると、申し訳なさそうな表情を浮かべてヒナとモモが中に入ってきた。


「え、えっと……た、ただいま~」
「ひ、久しぶりですね、テンさん……」
「あんたら……今まで何処に行ってたんだい!?」
「「ひうっ!?」」


部屋の中に入ってきたヒナとモモを見てテンは激怒し、彼女達は勝手に飛行船へと乗り込み、無断で王都を出て行った。その事にテンは厳しく説教しようとしたが、今はそれどころではない。


「まあ、説教は後にしてやるよ。それよりもナイ、まさかあんたが言っていた人探しが得意な奴というのはこいつらの事じゃないんだよね?」
「あ、はい。二人の後ろに隠れている子です」
「後ろ?」
「……び、びっくりしたでござる」


ヒナとモモの背後から現れたのはクノであり、初めて見る顔にテンは不思議に思うと、改めてナイはテンに紹介を行う。


「彼女の名前はクノです。元々はニーノの冒険者でしたけど、これから王都で活動するそうです」
「どうも、初めましてでござる」
「クノ……聞いた事もないね、何者だい?」


クノとは初対面のテンは何者なのかと疑い、流石に白銀級冒険者といってもクノが活動していたニーノは王国の辺境の領地であり、王都に暮らすテンが知らないのも無理はない。

ちなみにクノはヒナとモモと行動を共にしていたのは、この数日の間に3人は仲が良くなったからである。今後はクノも王都で冒険者活動に専念する事に決め、これからも顔を合わせる事が多くなると思い、二人はクノを招いたのだった。


「拙者は忍者でござる。忍者は知っているでござるか?暗殺者とよく間違われるでござるが、全く違うでござるよ」
「忍者……悪いけど、聞いた事もないね。で、その忍者がどうしてうちに来たんだい?」
「拙者はヒナ殿とモモ殿の友人でござる。今日は二人に招かれてここへ来たのでござるが……」
「招かれたって、ここはアルト王子の屋敷なんだけどね……まあいい、それよりもあんたは人探しは得意なのかい?」
「人探し?どういう意味でござる?」


テンはクノに対して質問すると、彼女は首を傾げながらもナイへ振り返る。ナイはテンの代わりに軽く事情を説明すると、納得した様に頷く。


「なるほど、そういう事でござるか。ならば拙者の出番でござるな、この少女を見つけて連れて帰ればいいのでござるな」
「それはそうだけど……随分と自信がありそうだね」
「人探しならば得意中の得意でござる。拙者の索敵の技能ならばすぐに見つけ出すでござるよ」
「成程、そいつは心強いね。それで報酬の方なんだけど……」
「そちらも不要でござる。今回は拙者の実力を知ってもらう良い機会という事で報酬はいらないでござるよ」
「そうかい?そいつは助かるね、ならもしも見つけ出した場合はあんたの事は覚えておくよ。また、仕事を頼む事があるかもしれないしね」
「承知したでござる」


クノは自信ありげに羊皮紙を受け取ると、彼女はルナの顔をしっかりと覚え、早速だが捜索へ向かう。他の者達もクノに続き、テンのためにルナの捜索を開始した――





――クノは独自で捜索を行い、他の者達はとりあえずは街中を歩き回る。王都の方は討伐隊の面子が不在の間も特に大きな事件も起きず、いつも通りに活気に満ちていた。


「一週間ぐらい離れてたけど、ここは全然変わってないね」
「それはそう」
「王都にはバッシュ王子もテンさんも残っていましたし、それにあの聖女騎士団が正式に復活するんですよ!?危険な事が起きるはずなんてありませんよ!!」
「ヒイロ、声が大きい」


ヒイロは興奮した様子で聖女騎士団が復活する事を待ち望み、それほど彼女にとっては嬉しい事らしい。聖女騎士団は十数年前までは王国最強の騎士団と謳われ、解散した今も憧れを抱く女性は多い。

女性兵の中には聖女騎士団に憧れて入隊した者も多く、ヒイロもその一人だった。聖女騎士団は名前の通りに女性しか所属しておらず、それでいながら王国最強の称号を手にしていたのだから武を志す女性の間では人気が高い。

そんな聖女騎士団に所属していたルナを助けるためにヒイロは張り切り、ナイとミイナもテンには色々と世話になっているので力にはなりたかった。だが、ルナを探すといっても相手は警備兵や聖女騎士団の面子が探し回っても見つからず、当てもなく探しまわっても仕方がなかった。
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