貧弱の英雄

カタナヅキ

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ゴブリンキングの脅威

第412話 ミスリルの鎖帷子

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フックショットを改造して刃を放つだけではなく、手の甲の部分に刃を固定化させる事が出来る様になったらしく、この状態ならば隠し武器として利用できる。ナイの手元に武器がない時でも闘拳に内蔵された刃で戦えるようになった。


「どうじゃ?それならば隠し武器として役に立つぞ」
「うわぁっ……これ、格好いいですね」
「へえ、面白いじゃないかい……もしも敵と戦う時もまさかそんな場所から刃が飛び出すとは思わないだろうね」
「どちらかというと暗殺者の暗器みたいね」
「う~ん、でもそれを付けているといきなり刃物が飛び出しそうで怖いなぁっ……」


隠し武器の機能も搭載したした闘拳を見てテンとヒナは感心するが、モモは若干怖がる。ナイとしては隠し武器は色々と実戦でも役立ちそうで嬉しく思う。


「さあ、次の装備はこいつじゃな」
「あ、それは……」
「しかし、随分とボロボロだな……無茶な使い方をしたな?」


ハマーンが次に取り上げたのは刺剣であり、これまでの戦闘で刺剣の刃は刃毀れが酷く、研ぎ直す必要があった。だが、この際にハマーンは刃を作り直すように助言する。


「こいつはもう限界じゃな……鋼鉄程度の金属ではゴーレムのような魔物には通じんぞ。それに見た所、どうやら風属性の魔石で強化しておるのじゃな」
「はい……前にアルトが取り付けてくれました」
「やはりそうか……それならばもうすこし頑丈な金属の刃でないとこの武器の性能は生かせんぞ」


以前にアルトに改造を施して貰った刺剣だが、彼のお陰で風属性の魔石を利用する事で刺剣を投擲する際は回転力と速度が上昇し、威力を向上させる事に成功した。しかし、その反面に刃の負担が大きくなり、肉体が硬い魔物と戦う時は今のままの刃では限界があった。

ゴーレムとの戦闘ではナイは刺剣を利用しなかったのは硬すぎるからであり、仮にゴーレム種のような相手に刺剣を撃ち込めば刃が壊れる可能性もある。だが、魔法金属製の刃に作り替えれば簡単に壊れたりはしない。


「お前さんが良いのであればこの武器の刃をミスリルに変えてやってもいいが、どうする?」
「えっ!?でも、それってナイ君のお爺ちゃんの……」
「……お願いします」
「ナイ君!?本当に良いの!?」


刺剣がアルの形見である事はヒナとモモも知っており、ナイが武器を改造する事を承諾した事に驚きを隠せない。しかし、ナイは吹っ切れた様に告げる。


「平気だよ。確かに爺ちゃんの形見だけど、壊さない様に大切にしまっておくよりも武器として使った方が爺ちゃんも喜ぶと思うんだ」
「でも……」
「いいじゃないかい、あたしはそういう考えは嫌いじゃないよ。ナイの好きなようにさせてやりな」
「うむ、安心しろ!!必ずや儂の手でこの短剣を強化するからな!!」


ハマーンは刺剣を受け取ると、流石に今すぐにミスリルを加工して刃を作り出す事はできず、一晩貸してほしい事を告げる。最後に彼はナイの鎖帷子に視線を向け、流石にこの装備の強化は彼も無理だった。


「こいつの場合は直したり強化するよりも、新しい防具を身に付けた方が良いと思うぞ」
「そうですか……」
「ふむ、うちの商品の中で防御に優れているのはミスリルの鎖帷子じゃな。確か、一つだけ余っているはずだから持っていくか?」
「ミスリルの鎖帷子!?それってかなり高いんじゃないのかい?」
「いや、前にうちと契約している商人から依頼されて作り出した品物なんじゃが、実は発注の数を誤って一つだけ余分に作ってしまってな……余り物で悪いが、良かった着て見てくれんか?」
「そういう事なら……」


ナイはハマーンが用意してくれたミスリル製の鎖帷子を渡され、試しに装着してみた。前の鎖帷子と重さはそれほど変わらず、それでも魔法金属で構成されているので以前よりも衝撃に強くなって簡単には壊れる事はないという。


「へえ、ミスリルって意外と軽いんですね」
「うむ。重さ自体は鋼鉄よりも軽く、硬度は鋼鉄の数倍は誇るし耐久力も高い。それに魔法に対する耐性も高いから魔法攻撃を受けても損傷を抑えられるぞ」
「それにしてもミスリルの鎖帷子なんて豪勢な物を誰が頼んで作ったんだい?」
「うちのお得意さんだったんだが、最近捕まって商会も解体されたからな……名前は確か、リーバだったか?」
「……それ、もしかしてバーリじゃないかい?」
「おおっ!!そうじゃった!!そんな名前な気がする!!」


テンの言葉にハマーンは頷き、この時にナイ達は何とも言えない表情を浮かべる。どうやらバーリはハマーンから商品を購入していたらしく、ナイ達はハマーンのお得意先の一つを潰してしまったらしい。

バーリとハマーンの意外な繋がりに驚きながらも、ナイはミスリルの鎖帷子を身に付けた状態で動き回り、動作は問題ないことを確認した。これでナイの装備の強化は終わったかと思われたが、ここでハマーンはナイがまだ身に着けている魔法腕輪に視線を向けた。
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