114 / 1,110
逃れられぬ運命
第114話 封じられた旋斧
しおりを挟む
「おい、見ろ!!ここにもあったぞ!!」
「くそ、すぐに塞ぐんだ!!奴等が出てくる前にな!!」
「まさか下水道から入ってきたなんて……」
ナイが入ってきた出入口の方から兵士の声が響き、その声を聞いたナイは慌てて戻ると、兵士達が出入口の塞ごうとしていた。
慌ててナイは声を掛けようとしたが、彼が梯子に訪れる前に出入口は封鎖され、地上の光が閉ざされてしまう。その様子を見ていたナイは呆然とするが、これでもう引き返す事は出来ない。
(しまった……やっぱり、他の人も下水道から魔物が侵入してきた事に気付いている人もいたのか)
少し前に遭遇した兵士は魔物の侵入経路が分からない様子だったのでナイは他の兵士も気づいていないかと思ったが、どうやら既に兵士達の間にも魔物の侵入経路が下水道である事が知れ渡っているらしく、現在は街中で下水道を繋がる場所を塞いでいる様子だった。
(これで引き返す事は出来なくなったか……でも、まだ塞がれていない場所もあるはずだ。すぐに脱出しないと……)
町全体の下水道の出入口が全て封鎖されたとは思いにくく、兵士達が出入口を塞ぐ前にナイは新しい出入口を探す事にした。
(気配感知を使えれば敵の接近も気づけるけど……やっぱり、上手く発動できないな)
今の所は戦闘でも扱える技能は「跳躍」「投擲」「剛力」ぐらいであり、他に役立ちそうな技能は殆どが使用できず、何度か試していけばいずれは使える様になるだろうが、それでは時間が掛かり過ぎた。ここから先は技能だけに頼らず、ナイ自身が培った技術で対応しなければならない。
(なんだか技能が使えない時に戻ったみたいだな……いや、あの時とは違うか)
まだ水晶の破片を利用して新しい技能を覚えていない頃を思い出すが、違う点があるとすれば今のナイは成長しており、以前よりも力を身に付けている。仮に技能がなくとも今のナイならば魔物と戦える力を持っている。
掌から放たれる魔法の光を頼りにナイは通路内を歩いていると、ここで足音を耳にした。前方の通路から何かが近付いてくる音を耳にしたナイは掌を前方に向け、足音の正体を確かめようとした。
「誰だ!!」
「グギィッ……!?」
光に照らされたのは武装したホブゴブリンである事が判明した。ナイの前に現れたホブゴブリンは皮鎧を身に付け、両手には短剣を握りしめていた。それを見たナイは咄嗟に背中の旋斧に手を伸ばし、戦闘態勢を整える。
(ホブゴブリン……やっぱり、ここにいるという事はこいつらは下水道を通じて入ってきたのか!!)
下水道に魔物が存在する事を確認したナイは自分の推測が当たっていたと確信を抱き、彼は旋斧を引き抜いてホブゴブリンに切りかかろうとした。相手は暗闇の中から出現したナイに驚き、更に彼の掌から放たれる光に目が眩む。
「グギャッ……!?」
「やああっ!!」
目が眩んだホブゴブリンにナイは接近すると、背中の旋斧を引き抜いて叩き込もうとした。だが、ホブゴブリンは咄嗟に後方へ跳んで攻撃を回避すると、ナイの旋斧は通路の壁にめり込んでしまう。
(しまった!?)
ナイは壁にめり込んだ旋斧を見て焦り、攻撃の際にいつもの癖で「剛力」を発動した事が仇となった。刃は完全に壁にめり込んでしまい、慌ててナイは引き抜こうとするが上手く行かない。
壁にめり込んだ旋斧を必死に抜こうとしているナイを見てホブゴブリンは笑みを浮かべ、両手に握りしめた短剣で切りかかろうとした。
「グギィッ!!」
「うわっ!?」
旋斧を回収する前に攻撃を仕掛けられたナイは後ろに下がってホブゴブリンの攻撃を回避するが、ホブゴブリンは軽快な動きで短剣を繰り出す。繰り出される短剣に対してナイは攻撃を躱しながらも反撃を試みようとしたが、ホブゴブリンの動きが早過ぎて反撃する暇もない。
(こいつ、戦い慣れしてる!?)
動きが早過ぎてナイは相手の動きが捉えきれず、ゴマンの盾で防ごうとしても上手くいかず、執拗にナイの急所を狙う。
(まずい、このままだと……せめて迎撃が発動できれば!!)
武器で対抗しようにも刺剣の場合は投げ込む暇がなく、盾で防ごうとしても相手が盾に直接攻撃を仕掛けない限りはどうしようもない。ならば刺剣を武器にして反撃する方法もあるが、どうやらホブゴブリンが手にしている短剣の方が刃は長く、そもそもナイとホブゴブリンでは体格に差があった。
短剣を使用した戦闘経験はナイもそれなりに積んでいるが、旋斧を手にしてからは殆ど短剣を使用する事もなくなり、昔ほどに上手く戦えない。今のナイに頼れる武器は存在せず、このままではやられると思った時にナイはアルの言葉を思い出す。
「くそ、すぐに塞ぐんだ!!奴等が出てくる前にな!!」
「まさか下水道から入ってきたなんて……」
ナイが入ってきた出入口の方から兵士の声が響き、その声を聞いたナイは慌てて戻ると、兵士達が出入口の塞ごうとしていた。
慌ててナイは声を掛けようとしたが、彼が梯子に訪れる前に出入口は封鎖され、地上の光が閉ざされてしまう。その様子を見ていたナイは呆然とするが、これでもう引き返す事は出来ない。
(しまった……やっぱり、他の人も下水道から魔物が侵入してきた事に気付いている人もいたのか)
少し前に遭遇した兵士は魔物の侵入経路が分からない様子だったのでナイは他の兵士も気づいていないかと思ったが、どうやら既に兵士達の間にも魔物の侵入経路が下水道である事が知れ渡っているらしく、現在は街中で下水道を繋がる場所を塞いでいる様子だった。
(これで引き返す事は出来なくなったか……でも、まだ塞がれていない場所もあるはずだ。すぐに脱出しないと……)
町全体の下水道の出入口が全て封鎖されたとは思いにくく、兵士達が出入口を塞ぐ前にナイは新しい出入口を探す事にした。
(気配感知を使えれば敵の接近も気づけるけど……やっぱり、上手く発動できないな)
今の所は戦闘でも扱える技能は「跳躍」「投擲」「剛力」ぐらいであり、他に役立ちそうな技能は殆どが使用できず、何度か試していけばいずれは使える様になるだろうが、それでは時間が掛かり過ぎた。ここから先は技能だけに頼らず、ナイ自身が培った技術で対応しなければならない。
(なんだか技能が使えない時に戻ったみたいだな……いや、あの時とは違うか)
まだ水晶の破片を利用して新しい技能を覚えていない頃を思い出すが、違う点があるとすれば今のナイは成長しており、以前よりも力を身に付けている。仮に技能がなくとも今のナイならば魔物と戦える力を持っている。
掌から放たれる魔法の光を頼りにナイは通路内を歩いていると、ここで足音を耳にした。前方の通路から何かが近付いてくる音を耳にしたナイは掌を前方に向け、足音の正体を確かめようとした。
「誰だ!!」
「グギィッ……!?」
光に照らされたのは武装したホブゴブリンである事が判明した。ナイの前に現れたホブゴブリンは皮鎧を身に付け、両手には短剣を握りしめていた。それを見たナイは咄嗟に背中の旋斧に手を伸ばし、戦闘態勢を整える。
(ホブゴブリン……やっぱり、ここにいるという事はこいつらは下水道を通じて入ってきたのか!!)
下水道に魔物が存在する事を確認したナイは自分の推測が当たっていたと確信を抱き、彼は旋斧を引き抜いてホブゴブリンに切りかかろうとした。相手は暗闇の中から出現したナイに驚き、更に彼の掌から放たれる光に目が眩む。
「グギャッ……!?」
「やああっ!!」
目が眩んだホブゴブリンにナイは接近すると、背中の旋斧を引き抜いて叩き込もうとした。だが、ホブゴブリンは咄嗟に後方へ跳んで攻撃を回避すると、ナイの旋斧は通路の壁にめり込んでしまう。
(しまった!?)
ナイは壁にめり込んだ旋斧を見て焦り、攻撃の際にいつもの癖で「剛力」を発動した事が仇となった。刃は完全に壁にめり込んでしまい、慌ててナイは引き抜こうとするが上手く行かない。
壁にめり込んだ旋斧を必死に抜こうとしているナイを見てホブゴブリンは笑みを浮かべ、両手に握りしめた短剣で切りかかろうとした。
「グギィッ!!」
「うわっ!?」
旋斧を回収する前に攻撃を仕掛けられたナイは後ろに下がってホブゴブリンの攻撃を回避するが、ホブゴブリンは軽快な動きで短剣を繰り出す。繰り出される短剣に対してナイは攻撃を躱しながらも反撃を試みようとしたが、ホブゴブリンの動きが早過ぎて反撃する暇もない。
(こいつ、戦い慣れしてる!?)
動きが早過ぎてナイは相手の動きが捉えきれず、ゴマンの盾で防ごうとしても上手くいかず、執拗にナイの急所を狙う。
(まずい、このままだと……せめて迎撃が発動できれば!!)
武器で対抗しようにも刺剣の場合は投げ込む暇がなく、盾で防ごうとしても相手が盾に直接攻撃を仕掛けない限りはどうしようもない。ならば刺剣を武器にして反撃する方法もあるが、どうやらホブゴブリンが手にしている短剣の方が刃は長く、そもそもナイとホブゴブリンでは体格に差があった。
短剣を使用した戦闘経験はナイもそれなりに積んでいるが、旋斧を手にしてからは殆ど短剣を使用する事もなくなり、昔ほどに上手く戦えない。今のナイに頼れる武器は存在せず、このままではやられると思った時にナイはアルの言葉を思い出す。
21
あなたにおすすめの小説
神様、ちょっとチートがすぎませんか?
ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】
未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。
本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!
おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!
僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。
しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。
自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
---------------
※カクヨムとなろうにも投稿しています
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
【完結】おじいちゃんは元勇者
三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話…
親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。
エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…
~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる
静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】
【複数サイトでランキング入り】
追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語
主人公フライ。
仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。
フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。
外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。
しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。
そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。
「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」
最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。
仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。
そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。
そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。
一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。
イラスト 卯月凪沙様より
英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜
駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。
しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった───
そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。
前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける!
完結まで毎日投稿!
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした
桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。
勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~
名無し
ファンタジー
突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。
自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。
もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。
だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。
グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。
人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる