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1巻

1-3

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「ようっ!! そこの兄ちゃん、うちの串焼きを買わないか?」
「串焼き?」
「お、その格好は……もしかして兄ちゃんは旅人かい?」

 ルノは串焼きを食べたいと思ったが、持っているお金に心配があった。買うかどうか悩みつつ、その前に屋台の店主に自分の格好について尋ねる。

「あの、俺の格好って、おかしくないんですか?」
「おかしいって何が?」
「えっと、何か変な格好なような気がしていて」
「確かに変わってはいるが、この国には世界中からいろんな奴が訪れるからな。変わった格好をした奴等なんてごろごろいるだろ」

 ルノは改めて周囲を見渡してみた。

「なるほど」

 確かに、道行く人々の中には変わった格好をした者がたくさんいる。ルノの学生服姿も、ここでは珍しい物でもないのだろう。
 ルノはふと思いついて尋ねる。

「すみません、この辺に質屋とかありますかね? ここに来たばかりであんまりお金がなくて……売ればお金になりそうな物とかは、一応持ってそうなんですけど……」
「質屋かぁ。それならこの通りの向かい側にあるぜ。売って金ができたら、俺の串焼きを買ってくれよ」
「分かりました。ありがとうございます」

 ルノは屋台の男に礼を伝え、教えてもらった向かいの建物に行く。
 店の看板には、ルノが見たこともないような文字が書かれていた。それにもかかわらず、彼はその内容を理解することができた。

「あれ? 何で文字が読めるんだろう」

 ルノは少し考えてすぐに気づく。所持していた「翻訳」スキルのおかげらしい。彼は納得しつつ質屋に入る。

「いらっしゃいませ」

 彼を出迎えたのは、妙に身長が小さい、眼鏡をかけた老人だった。
 背丈は一メートル二十センチ程度しかなく、顔は半分以上がひげで覆われている。ファンタジーでお馴染みのドワーフである。
 ドルトンという名のそのドワーフは、ルノに興味深げな視線を向けつつ、髭を撫で回した。

「ほう。あまり見たことがない服装ですな。今日はどのような用件で?」
「あ、えっと……買い取りをお願いできますか?」
「買い取りですか? 構いませんよ。こちらへどうぞ」

 ドルトンに店の奥に案内され、ルノは彼の後に続いた。ルノは今になって、自分の所有物に高価で買い取ってもらえるような物があるのか、不安になり始める。
 ドルトンは長机の前に大きな椅子を置くと、どっしりと腰を下ろした。そして、ルノに対面に座るように促し、ゆっくりと口を開く。

「で、どんな品をお持ちで?」
「あっ、これなんですけど……買い取ってくれますか?」
「ほほう、これは面白そうな物ですね」

 ルノは、服のポケットに入っていた中身をすべて取りだした。
 糸くずやゴミなどろくな物がなかったが、その中にドルトンの興味を引く物があった。高校入学の際に買ってもらったスマートフォンだ。
 ドルトンはそれを手に取ると、大きな声を上げた。

「これは……す、すごい!! このような道具、見たことがありませんな!」
「あ、それは……」
「いったい、どんな道具なのですか!?」
「え、ええっ?」

 ドルトンはよほど興味が湧いたのか、身を乗りだすようにルノに詰め寄る。
 ルノは戸惑いながらも、スマートフォンの使用方法を教えていった。ちなみに彼はソーラー充電器も持っていた。
 ドルトンはルノの説明を熱心にメモしながら、とても感心していた。

「素晴らしい品ですな! あかりになるだけではなく、目の前の景色を一瞬にして記録してしまうとは。その他にも様々な機能が付いている……これほどの品ならば金貨二枚で購入しましょう!!」
「金貨二枚?」

 ルノがよく分からずに首を傾げると、ドルトンは慌てたように告げる。

「おっと、これは手厳しい! やはり金貨二枚程度では満足できませんか? それでは金貨三枚でどうでしょうか? これ以上の金額は私の店では出せませんが……」
「あ、えっと……すみません。実は俺、別の国から来たばかりで、こちらの国の硬貨の価値がよく分からなくて」
「そういうことでしたか。これは失礼しました」

 ドルトンは安堵あんどした様子を見せると、ルノに帝国の硬貨の価値を教える。
 帝国では五種類の硬貨が流通していて、下から鉄貨、銅貨、銀貨、金貨、白金貨の順で高額になっていくらしい。
 それぞれの硬貨の価値は、ルノなりに日本のお金の価値に換算してみると、鉄貨=100円、銅貨=1000円、銀貨=1万円、金貨=10万円、白金貨=100万円といった感じのようだ。
 ドルトンは何も知らないルノを面白がり、続けてこの世界にまつわる様々なことを説明してくれた。
 ここはバルトロス帝国というところで、ヒューマン族が支配する領域の中で最大規模の国家であるとのこと。ちなみにこの世界には、ヒューマン族、森人エルフ族、獣人ビースト族、巨人ジャイアント族、人魚マーメイド族、魔人デモン族の六種類の種族が存在しているらしい。
 バルトロス帝国以外に人間が治める国は、あと二つある。人間以外が治める国家は五つあり、基本的には、各種族それぞれが一つの国家を治めているようだ。
 なお、ルノが今いる帝都には、ヒューマン族に限らず世界中の様々な種族がつどっているとのことだった。
 ルノはドルトンに頭を下げる。

「いろいろと教えてくれてありがとうございます」
「いえいえ。他にお聞きになりたいことがありましたら説明しますよ」

 ルノは一瞬考え、すぐに思いつく。

「あ、それなら、ここでは服って売ってますか? ……あとは食べ物とか水とかは、さすがにないですよね?」
「服はありますが、食料と水はちょっと……」
「服だけでいいです。このスマートフォンの代金から差し引いてください」
「分かりました。それではすぐに見繕いましょう」

 ドルトンはそう言うと、ルノの身体のサイズに合わせた衣服を用意してくれた。
 これで、ルノの服装もこの世界の一般人らしくなった。それから様々な道具を購入したが、それでも十分なおつりが返ってきた。
 ルノはドルトンに別れを告げて質屋を離れると、その足で串焼き屋のもとに戻る。


「お、帰ってきたか、兄ちゃん。その様子を見ると金はできたのかい?」
「あ、はい。串焼きはおいくらですか?」
「一つ、鉄貨三枚だよ」

 ルノは小袋の中から銅貨を取りだし、串焼き屋の男に手渡す。鉄貨三枚は日本円に換算すると300円である。
 ルノはようやくありつけた串焼きを味わいながら、ふと思いつく。
 この店主に、ステータスに表示されている、スキルについて聞いてみようと思ったのだ。

「変なことをお尋ねするかもしれませんが……あの、スキルについて教えてくれませんか?」
「は? スキル?」

 思ってもみなかった質問をされ、眉根を寄せる店主。
 ルノは、自分でもおかしなことを聞いてしまったと思いつつも、せっかくのチャンスなので質問を続ける。

「えっと、スキルの種類のことなんですけど……技能とか固有とか、どう違うのかなって……」

 店主は呆れたような表情を浮かべる。

「兄ちゃん、もしかして箱入り息子か? 今どきスキルのことを知らないなんて、生まれてきたばかりの赤ん坊か、勉強嫌いのガキぐらいだぜ」
「はははっ。すみません」

 ルノはそう謝りつつ、串焼きを再び購入した。店主が親切に説明してくれたのは、次のようなことだった。
 スキルは基本的には「職業スキル」「技能スキル」「戦技」「固有スキル」の四つに分かれる。
「職業スキル」は、就いている職業が得意とするスキルである。
 職業を設定していなければ、覚えられないスキルもあるが、必ずしもその職業でなければ使えないというわけではない。
「技能スキル」は、潜在的な才能のようなものである。
 例えば「狙撃そげき」を身に付ければ、弓矢や銃の命中力は上がる。しかし、弓矢や銃の扱い方を知らなければ利用できない。
「戦技」は、RPGゲームでお馴染みの魔法や技など、戦闘に役立つスキル。
 職業が「剣士」であれば多彩な剣技を覚えることができ、「魔術師」であれば魔法を扱えるようになる。
「固有スキル」は特別な条件下でなければ修得できないスキルで、常時発動するパッシブスキルである。なお、自分の意思でオンオフの切り替えも可能。希少なため滅多に覚えている者はいないらしい。

「……というところだな。冒険者の奴等はたくさんのスキルを覚えてるらしいが、さすがに修得方法までは俺も知らねえな」
「そうなんですか。ありがとうございます」
「おう、また来てくれよっ!!」

 その後、ルノは串焼き屋の店主から、値段が安くて食事を用意してくれる宿屋を紹介してもらった。
 こうして彼は、ひとまず今日泊まれる場所を見つけるため歩きだすのだった。




 3



 ルノは、目的の宿屋にたどり着く。
 なぜかその外観は、和風の旅館風だった。
 この世界には、過去に召喚された勇者が持ち込んだという日本文化が残っており、日本建築を彷彿ほうふつさせる建物もいくつか存在していた。
 宿屋の名前は黒猫旅館くろねこりょかん。その看板には、でかでかと黒猫の絵が描かれていた。
 ルノは宿屋の入り口に立つと、恐る恐る声を上げる。

「す、すみません、誰かいますか?」
「うぃっす!! 今行きます!!」

 慌ただしく階段を下りてくる足音が聞こえ、金髪の女性がルノの目の前に現れた。
 年齢はルノの一、二歳ほど年上で、掃除の途中だったのか、両手にほうきとチリトリを持っている。名前はエリナというらしい。
 エリナはそそくさと掃除用具を片付けると、受付に入った。

「いらっしゃいませ! お客様は何名様でしょうか?」
「あ、一人です。えっと、値段はおいくらですか?」
「宿泊だけの料金は、一日のお泊まりで銅貨五枚。朝、昼、夜の三食の食事付きなら、銅貨八枚になりま~す」

 日本円に換算してみると、食事なしは5000円で、食事付きならば8000円らしい。
 ルノは迷うことなく後者を選択した。お金にそれほど余裕があるわけではないが、食事付きというのはそれだけでありがたい。
 ルノはエリナに、ひとまず一週間ほど宿泊すると告げ、金貨を手渡した。

「おっ? お客さんは実は金持ちなんすか? 金貨なんて豪勢ごうせいっすね」
「そうなの?」
「金貨なんて滅多に見ないっすからね。どんなに高額な支払いでも、金貨より銀貨を利用する人が多いっすよ。はい、おつり」
「どうも」
「では、部屋まで案内するっす」

 おつりを受け取ったルノはエリナに案内され、二階の部屋に連れてこられた。彼女からかぎをもらい、食事の時は一階の食堂に来るように言われる。
 エリナがいなくなると、ルノはベッドの上で横になった。

「ふぅっ、やっと落ち着けるな」

 この世界を訪れてから初めて、身体を休められる安全な場所を確保できた。
 そのことに安心したルノは、しばらく横になっていた。だがやがて身体を起こすと、荷物を確認することにした。
 今持っている物は、質屋で購入した衣服と日用品だけ。金銭は、金貨一枚、銀貨八枚、銅貨と鉄貨が数十枚ある。
 お金がこれだけあれば当面の生活費は問題ないだろう。そう思う彼だったが、いずれ尽きてしまうのは間違いなかった。

「早く元の世界に帰る方法を見つけたいけど……でもその前に、生きていくためにはお金を稼がないと」

 ルノの所持金を日本円にすると20万円程度。決して少ない額ではないが、宿泊しているだけで一月も保たない計算になる。
 ルノは硬貨を数えつつ、早めに働ける場所を探すことに決めた。

「しかし、何でこんなことになったんだろう……皆、心配してるかな」

 ベッドの上に座りながら、ふとそんなことを考えてしまった。それから、元の世界の両親や友人達のことに思いをせたものの、頭を振って気持ちを切り替える。
 ステータス画面を開き、今日上昇した魔法の熟練度を確認する。
 彼は「成長」という能力を持っている。経験値を通常より多く獲得できるというものだ。その影響なのだろうか、熟練度の上昇率が異常に高いように感じられた。
『風圧』の魔法は数回使用しただけにもかかわらず、その熟練度は3まで上昇していた。


「戦技」

 ・風圧――風属性の初級魔法(熟練度:3)。
 ・火球――火属性の初級魔法(熟練度:2)。
 ・氷塊――水属性の初級魔法(熟練度:2)。
 ・電撃――雷属性の初級魔法(熟練度:2)。
 ・土塊――地属性の初級魔法(熟練度:2)。
 ・闇夜――闇属性の初級魔法(熟練度:2)。
 ・光球――聖属性の初級魔法(熟練度:2)。


 それ以外の各属性の熟練度も上昇している。
 ルノは、熟練度が一番上がっている『風圧』がどう変化したのか試してみようと考えた。さっそく彼は手のひらを前に出すと魔法を唱える。

「『風圧』……うん、前よりもだいぶ操作しやすくなったな」

 風属性の初級魔法の変化を感じ取った彼は、今度は手のひらではなく指先に意識を集中させ、風を生みだしてみた。
 指先から小さな風の渦巻うずまきが誕生する。そのまま指を動かし、フリスビーを投げるような感じで前方に放つ。

「あ、消えちゃった」

 渦巻は二メートルくらい飛んだものの、呆気あっけなく消失してしまった。
 続いて彼は、別の使い方も試してみることにした。ルノは拳に意識を集中させると、そこに風を纏わせる。そして風に覆われた拳を突きだした。
 風の渦巻が前方に向かって凄まじい勢いで飛んでいく。

「へえ、これは面白いな。あ、また熟練度が上がってる」

 デキンは初級魔法は役に立たないと馬鹿にしていたが、そんなことないように感じる。ルノは実際に初級魔法を使ってみて、その自由な可能性に気づきつつあった。
『風圧』の熟練度がどこまで上昇するか確かめるため、さらに試してみることにした。ちなみに熟練度が上がると精度が高まるだけでなく、魔力の消費量まで減少するのは確からしい。
 ルノは風の渦巻を操作しながら呟く。

「今度は形状を変えられないかな? えっと、こんな感じか?」

 それから彼は部屋の窓を開け、外の様子を見る。
 外に目立つ物が何もないのを確認し、窓から離れた場所に移動して手のひらを構える。そして渦巻以外の形状にすべく、彼は意識を集中させる。

「『風圧』!!」

 ルノの手のひらから発生したのは、三日月形みかづきがたの風のやいばだった。
 刃は開け放たれた窓をすごい勢いですり抜け、向かいの民家の屋根をかすめて飛んでいった。

「お、おおっ。何かすごいのが出た気がする」

 ルノは戸惑い、窓が壊れていないか確かめる。
 窓には異常はなかったものの――彼は目の端に映ったステータス画面に違和感を覚えた。よく見てみると、『風圧』の熟練度がとんでもないことになっていた。

「あれ? 熟練度がいつの間にか10になってる……何だこれ?」

 さらに別の画面が現れる。


《『風圧』の熟練度が限界値に到達しました。これにより強化スキル『暴風ぼうふう』が解放されます》


 熟練度が限界値に到達?
 よく分からなかったが、どうやらそのことで「強化スキル」というのを覚えたようで、固有スキルの項目に『暴風』というのが追加されていた。


「戦技」

 ・風圧――風属性の初級魔法(熟練度:10)。
 ・火球――火属性の初級魔法(熟練度:2)。
 ・氷塊――水属性の初級魔法(熟練度:2)。
 ・電撃――雷属性の初級魔法(熟練度:2)。
 ・土塊――地属性の初級魔法(熟練度:2)。
 ・闇夜――闇属性の初級魔法(熟練度:2)。
 ・光球――聖属性の初級魔法(熟練度:2)。


「固有スキル」

 ・暴風――風属性の魔法の威力を上昇させる。


 ルノは魔法を試したに過ぎない。魔物と戦ったわけでもなければ、激しい修業をしたわけでもない。それにもかかわらず彼は、風属性の魔法の熟練度を限界値である10まで上げ、新たな能力まで獲得してしまった。
 手に入れたのは、風属性の魔法を強化するものらしい。さっそくその能力を試してみることにして、再び手のひらを構える。

「威力を上昇させるか……どれくらい上がるんだろう」

 窓は開いたままである。ルノが先ほどのように窓に向けて魔法を発動させようとした、その瞬間――
 さっきとは比べ物にならないほどの魔力が集まり、螺旋状らせんじょうの風が放たれた。

「うわっ!?」

 衝撃でルノは後ろへ吹き飛ばされる。
 一方、彼の手のひらから放たれた風の弾丸は猛スピードで窓を抜けると、向かいの建物の屋根を一瞬にしてえぐり取った。
 その光景を見て、ルノは唖然とする。

「や、やばい。謝らなくちゃ。でもあの建物……」

 よく見ると、向かいの建物はかなり古びている印象だった。どうやらルノが屋根を壊してしまう前から老朽化していたらしい。
 彼は起き上がると慌ただしく部屋を出て、建物に向かう。
 途中でエリナと遭遇する。

「お? お出かけっすか、お客さん?」
「あ、エリナさん! あの、聞きたいことがあるんですけど。この宿屋の向かい側の建物って、人が住んでたりしますか?」
「あ~、あそこは廃屋はいおくですよ? 何年か前には住んでいた人がいたみたいですけど、全員失踪しっそうしたようで、それ以降誰も住んでないっす」
「あ、そうなんですか」

 ルノは、安堵の息を吐きだした。
 彼の妙な反応に、彼女は不思議そうに首を傾げる。そして、変な人を見るような視線を向けながら業務に戻っていった。
 安心したルノは部屋に帰ってきた。そしてさっきの不用意な行動を反省しつつ、先ほどの風の弾丸を思い返す。

「初級魔法は役に立たないって……やっぱりそうは思えないな」

 ルノは呟くと、窓の外に視線を向ける。
 古いとはいえしっかりした煉瓦製れんがせいの屋根である。それがルノの魔法によって、綺麗に破壊されていた。
 ルノのレベルは1だ。『風圧』の熟練度こそ限界に達しているが、魔術師としてまだそのスタートラインに立ってさえいない。

「初級魔術師……初級魔法しか扱えない魔法使いか」

 デキンの言葉を思い返しながら、ルノは再びステータス画面を確認する。
 画面には、『風圧』の他に、『火球』『氷塊』『電撃』『土塊』『闇夜』『光球』の六つの初級魔法が表示されていた。
 これらすべての魔法の熟練度を限界まで伸ばしたらどうなるのか――
 窓の外を見ると、すでに夕方を迎えようとしていた。

「……頑張れば、明日の朝までには全部上げられるかな」

『風圧』の熟練度を限界まで上げるのにかかった時間からすれば、それも可能かもしれない。
 ルノは初級魔法がどこまで強くなるのか確かめるため、すべての初級魔法の熟練度を限界まで上げると決意する。

「でも危ないから別の場所に移動しよう。宿屋の裏庭でも貸してもらおうかな」

 部屋の中だと宿屋に迷惑がかかってしまう。彼はそう考えて、できる限り広い場所に移動して、初級魔法の訓練を行うことにした。

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