4 / 657
1巻
1-3
しおりを挟む
「ようっ!! そこの兄ちゃん、うちの串焼きを買わないか?」
「串焼き?」
「お、その格好は……もしかして兄ちゃんは旅人かい?」
ルノは串焼きを食べたいと思ったが、持っているお金に心配があった。買うかどうか悩みつつ、その前に屋台の店主に自分の格好について尋ねる。
「あの、俺の格好って、おかしくないんですか?」
「おかしいって何が?」
「えっと、何か変な格好なような気がしていて」
「確かに変わってはいるが、この国には世界中からいろんな奴が訪れるからな。変わった格好をした奴等なんてごろごろいるだろ」
ルノは改めて周囲を見渡してみた。
「なるほど」
確かに、道行く人々の中には変わった格好をした者がたくさんいる。ルノの学生服姿も、ここでは珍しい物でもないのだろう。
ルノはふと思いついて尋ねる。
「すみません、この辺に質屋とかありますかね? ここに来たばかりであんまりお金がなくて……売ればお金になりそうな物とかは、一応持ってそうなんですけど……」
「質屋かぁ。それならこの通りの向かい側にあるぜ。売って金ができたら、俺の串焼きを買ってくれよ」
「分かりました。ありがとうございます」
ルノは屋台の男に礼を伝え、教えてもらった向かいの建物に行く。
店の看板には、ルノが見たこともないような文字が書かれていた。それにもかかわらず、彼はその内容を理解することができた。
「あれ? 何で文字が読めるんだろう」
ルノは少し考えてすぐに気づく。所持していた「翻訳」スキルのおかげらしい。彼は納得しつつ質屋に入る。
「いらっしゃいませ」
彼を出迎えたのは、妙に身長が小さい、眼鏡をかけた老人だった。
背丈は一メートル二十センチ程度しかなく、顔は半分以上が髭で覆われている。ファンタジーでお馴染みのドワーフである。
ドルトンという名のそのドワーフは、ルノに興味深げな視線を向けつつ、髭を撫で回した。
「ほう。あまり見たことがない服装ですな。今日はどのような用件で?」
「あ、えっと……買い取りをお願いできますか?」
「買い取りですか? 構いませんよ。こちらへどうぞ」
ドルトンに店の奥に案内され、ルノは彼の後に続いた。ルノは今になって、自分の所有物に高価で買い取ってもらえるような物があるのか、不安になり始める。
ドルトンは長机の前に大きな椅子を置くと、どっしりと腰を下ろした。そして、ルノに対面に座るように促し、ゆっくりと口を開く。
「で、どんな品をお持ちで?」
「あっ、これなんですけど……買い取ってくれますか?」
「ほほう、これは面白そうな物ですね」
ルノは、服のポケットに入っていた中身をすべて取りだした。
糸くずやゴミなどろくな物がなかったが、その中にドルトンの興味を引く物があった。高校入学の際に買ってもらったスマートフォンだ。
ドルトンはそれを手に取ると、大きな声を上げた。
「これは……す、すごい!! このような道具、見たことがありませんな!」
「あ、それは……」
「いったい、どんな道具なのですか!?」
「え、ええっ?」
ドルトンはよほど興味が湧いたのか、身を乗りだすようにルノに詰め寄る。
ルノは戸惑いながらも、スマートフォンの使用方法を教えていった。ちなみに彼はソーラー充電器も持っていた。
ドルトンはルノの説明を熱心にメモしながら、とても感心していた。
「素晴らしい品ですな! 灯りになるだけではなく、目の前の景色を一瞬にして記録してしまうとは。その他にも様々な機能が付いている……これほどの品ならば金貨二枚で購入しましょう!!」
「金貨二枚?」
ルノがよく分からずに首を傾げると、ドルトンは慌てたように告げる。
「おっと、これは手厳しい! やはり金貨二枚程度では満足できませんか? それでは金貨三枚でどうでしょうか? これ以上の金額は私の店では出せませんが……」
「あ、えっと……すみません。実は俺、別の国から来たばかりで、こちらの国の硬貨の価値がよく分からなくて」
「そういうことでしたか。これは失礼しました」
ドルトンは安堵した様子を見せると、ルノに帝国の硬貨の価値を教える。
帝国では五種類の硬貨が流通していて、下から鉄貨、銅貨、銀貨、金貨、白金貨の順で高額になっていくらしい。
それぞれの硬貨の価値は、ルノなりに日本のお金の価値に換算してみると、鉄貨=100円、銅貨=1000円、銀貨=1万円、金貨=10万円、白金貨=100万円といった感じのようだ。
ドルトンは何も知らないルノを面白がり、続けてこの世界にまつわる様々なことを説明してくれた。
ここはバルトロス帝国というところで、人族が支配する領域の中で最大規模の国家であるとのこと。ちなみにこの世界には、人族、森人族、獣人族、巨人族、人魚族、魔人族の六種類の種族が存在しているらしい。
バルトロス帝国以外に人間が治める国は、あと二つある。人間以外が治める国家は五つあり、基本的には、各種族それぞれが一つの国家を治めているようだ。
なお、ルノが今いる帝都には、人族に限らず世界中の様々な種族が集っているとのことだった。
ルノはドルトンに頭を下げる。
「いろいろと教えてくれてありがとうございます」
「いえいえ。他にお聞きになりたいことがありましたら説明しますよ」
ルノは一瞬考え、すぐに思いつく。
「あ、それなら、ここでは服って売ってますか? ……あとは食べ物とか水とかは、さすがにないですよね?」
「服はありますが、食料と水はちょっと……」
「服だけでいいです。このスマートフォンの代金から差し引いてください」
「分かりました。それではすぐに見繕いましょう」
ドルトンはそう言うと、ルノの身体のサイズに合わせた衣服を用意してくれた。
これで、ルノの服装もこの世界の一般人らしくなった。それから様々な道具を購入したが、それでも十分なおつりが返ってきた。
ルノはドルトンに別れを告げて質屋を離れると、その足で串焼き屋のもとに戻る。
「お、帰ってきたか、兄ちゃん。その様子を見ると金はできたのかい?」
「あ、はい。串焼きはおいくらですか?」
「一つ、鉄貨三枚だよ」
ルノは小袋の中から銅貨を取りだし、串焼き屋の男に手渡す。鉄貨三枚は日本円に換算すると300円である。
ルノはようやくありつけた串焼きを味わいながら、ふと思いつく。
この店主に、ステータスに表示されている、スキルについて聞いてみようと思ったのだ。
「変なことをお尋ねするかもしれませんが……あの、スキルについて教えてくれませんか?」
「は? スキル?」
思ってもみなかった質問をされ、眉根を寄せる店主。
ルノは、自分でもおかしなことを聞いてしまったと思いつつも、せっかくのチャンスなので質問を続ける。
「えっと、スキルの種類のことなんですけど……技能とか固有とか、どう違うのかなって……」
店主は呆れたような表情を浮かべる。
「兄ちゃん、もしかして箱入り息子か? 今どきスキルのことを知らないなんて、生まれてきたばかりの赤ん坊か、勉強嫌いのガキぐらいだぜ」
「はははっ。すみません」
ルノはそう謝りつつ、串焼きを再び購入した。店主が親切に説明してくれたのは、次のようなことだった。
スキルは基本的には「職業スキル」「技能スキル」「戦技」「固有スキル」の四つに分かれる。
「職業スキル」は、就いている職業が得意とするスキルである。
職業を設定していなければ、覚えられないスキルもあるが、必ずしもその職業でなければ使えないというわけではない。
「技能スキル」は、潜在的な才能のようなものである。
例えば「狙撃」を身に付ければ、弓矢や銃の命中力は上がる。しかし、弓矢や銃の扱い方を知らなければ利用できない。
「戦技」は、RPGゲームでお馴染みの魔法や技など、戦闘に役立つスキル。
職業が「剣士」であれば多彩な剣技を覚えることができ、「魔術師」であれば魔法を扱えるようになる。
「固有スキル」は特別な条件下でなければ修得できないスキルで、常時発動するパッシブスキルである。なお、自分の意思でオンオフの切り替えも可能。希少なため滅多に覚えている者はいないらしい。
「……というところだな。冒険者の奴等はたくさんのスキルを覚えてるらしいが、さすがに修得方法までは俺も知らねえな」
「そうなんですか。ありがとうございます」
「おう、また来てくれよっ!!」
その後、ルノは串焼き屋の店主から、値段が安くて食事を用意してくれる宿屋を紹介してもらった。
こうして彼は、ひとまず今日泊まれる場所を見つけるため歩きだすのだった。
3
ルノは、目的の宿屋にたどり着く。
なぜかその外観は、和風の旅館風だった。
この世界には、過去に召喚された勇者が持ち込んだという日本文化が残っており、日本建築を彷彿させる建物もいくつか存在していた。
宿屋の名前は黒猫旅館。その看板には、でかでかと黒猫の絵が描かれていた。
ルノは宿屋の入り口に立つと、恐る恐る声を上げる。
「す、すみません、誰かいますか?」
「うぃっす!! 今行きます!!」
慌ただしく階段を下りてくる足音が聞こえ、金髪の女性がルノの目の前に現れた。
年齢はルノの一、二歳ほど年上で、掃除の途中だったのか、両手に箒とチリトリを持っている。名前はエリナというらしい。
エリナはそそくさと掃除用具を片付けると、受付に入った。
「いらっしゃいませ! お客様は何名様でしょうか?」
「あ、一人です。えっと、値段はおいくらですか?」
「宿泊だけの料金は、一日のお泊まりで銅貨五枚。朝、昼、夜の三食の食事付きなら、銅貨八枚になりま~す」
日本円に換算してみると、食事なしは5000円で、食事付きならば8000円らしい。
ルノは迷うことなく後者を選択した。お金にそれほど余裕があるわけではないが、食事付きというのはそれだけでありがたい。
ルノはエリナに、ひとまず一週間ほど宿泊すると告げ、金貨を手渡した。
「おっ? お客さんは実は金持ちなんすか? 金貨なんて豪勢っすね」
「そうなの?」
「金貨なんて滅多に見ないっすからね。どんなに高額な支払いでも、金貨より銀貨を利用する人が多いっすよ。はい、おつり」
「どうも」
「では、部屋まで案内するっす」
おつりを受け取ったルノはエリナに案内され、二階の部屋に連れてこられた。彼女から鍵をもらい、食事の時は一階の食堂に来るように言われる。
エリナがいなくなると、ルノはベッドの上で横になった。
「ふぅっ、やっと落ち着けるな」
この世界を訪れてから初めて、身体を休められる安全な場所を確保できた。
そのことに安心したルノは、しばらく横になっていた。だがやがて身体を起こすと、荷物を確認することにした。
今持っている物は、質屋で購入した衣服と日用品だけ。金銭は、金貨一枚、銀貨八枚、銅貨と鉄貨が数十枚ある。
お金がこれだけあれば当面の生活費は問題ないだろう。そう思う彼だったが、いずれ尽きてしまうのは間違いなかった。
「早く元の世界に帰る方法を見つけたいけど……でもその前に、生きていくためにはお金を稼がないと」
ルノの所持金を日本円にすると20万円程度。決して少ない額ではないが、宿泊しているだけで一月も保たない計算になる。
ルノは硬貨を数えつつ、早めに働ける場所を探すことに決めた。
「しかし、何でこんなことになったんだろう……皆、心配してるかな」
ベッドの上に座りながら、ふとそんなことを考えてしまった。それから、元の世界の両親や友人達のことに思いを馳せたものの、頭を振って気持ちを切り替える。
ステータス画面を開き、今日上昇した魔法の熟練度を確認する。
彼は「成長」という能力を持っている。経験値を通常より多く獲得できるというものだ。その影響なのだろうか、熟練度の上昇率が異常に高いように感じられた。
『風圧』の魔法は数回使用しただけにもかかわらず、その熟練度は3まで上昇していた。
「戦技」
・風圧――風属性の初級魔法(熟練度:3)。
・火球――火属性の初級魔法(熟練度:2)。
・氷塊――水属性の初級魔法(熟練度:2)。
・電撃――雷属性の初級魔法(熟練度:2)。
・土塊――地属性の初級魔法(熟練度:2)。
・闇夜――闇属性の初級魔法(熟練度:2)。
・光球――聖属性の初級魔法(熟練度:2)。
それ以外の各属性の熟練度も上昇している。
ルノは、熟練度が一番上がっている『風圧』がどう変化したのか試してみようと考えた。さっそく彼は手のひらを前に出すと魔法を唱える。
「『風圧』……うん、前よりもだいぶ操作しやすくなったな」
風属性の初級魔法の変化を感じ取った彼は、今度は手のひらではなく指先に意識を集中させ、風を生みだしてみた。
指先から小さな風の渦巻が誕生する。そのまま指を動かし、フリスビーを投げるような感じで前方に放つ。
「あ、消えちゃった」
渦巻は二メートルくらい飛んだものの、呆気なく消失してしまった。
続いて彼は、別の使い方も試してみることにした。ルノは拳に意識を集中させると、そこに風を纏わせる。そして風に覆われた拳を突きだした。
風の渦巻が前方に向かって凄まじい勢いで飛んでいく。
「へえ、これは面白いな。あ、また熟練度が上がってる」
デキンは初級魔法は役に立たないと馬鹿にしていたが、そんなことないように感じる。ルノは実際に初級魔法を使ってみて、その自由な可能性に気づきつつあった。
『風圧』の熟練度がどこまで上昇するか確かめるため、さらに試してみることにした。ちなみに熟練度が上がると精度が高まるだけでなく、魔力の消費量まで減少するのは確からしい。
ルノは風の渦巻を操作しながら呟く。
「今度は形状を変えられないかな? えっと、こんな感じか?」
それから彼は部屋の窓を開け、外の様子を見る。
外に目立つ物が何もないのを確認し、窓から離れた場所に移動して手のひらを構える。そして渦巻以外の形状にすべく、彼は意識を集中させる。
「『風圧』!!」
ルノの手のひらから発生したのは、三日月形の風の刃だった。
刃は開け放たれた窓をすごい勢いですり抜け、向かいの民家の屋根を掠めて飛んでいった。
「お、おおっ。何かすごいのが出た気がする」
ルノは戸惑い、窓が壊れていないか確かめる。
窓には異常はなかったものの――彼は目の端に映ったステータス画面に違和感を覚えた。よく見てみると、『風圧』の熟練度がとんでもないことになっていた。
「あれ? 熟練度がいつの間にか10になってる……何だこれ?」
さらに別の画面が現れる。
《『風圧』の熟練度が限界値に到達しました。これにより強化スキル『暴風』が解放されます》
熟練度が限界値に到達?
よく分からなかったが、どうやらそのことで「強化スキル」というのを覚えたようで、固有スキルの項目に『暴風』というのが追加されていた。
「戦技」
・風圧――風属性の初級魔法(熟練度:10)。
・火球――火属性の初級魔法(熟練度:2)。
・氷塊――水属性の初級魔法(熟練度:2)。
・電撃――雷属性の初級魔法(熟練度:2)。
・土塊――地属性の初級魔法(熟練度:2)。
・闇夜――闇属性の初級魔法(熟練度:2)。
・光球――聖属性の初級魔法(熟練度:2)。
「固有スキル」
・暴風――風属性の魔法の威力を上昇させる。
ルノは魔法を試したに過ぎない。魔物と戦ったわけでもなければ、激しい修業をしたわけでもない。それにもかかわらず彼は、風属性の魔法の熟練度を限界値である10まで上げ、新たな能力まで獲得してしまった。
手に入れたのは、風属性の魔法を強化するものらしい。さっそくその能力を試してみることにして、再び手のひらを構える。
「威力を上昇させるか……どれくらい上がるんだろう」
窓は開いたままである。ルノが先ほどのように窓に向けて魔法を発動させようとした、その瞬間――
さっきとは比べ物にならないほどの魔力が集まり、螺旋状の風が放たれた。
「うわっ!?」
衝撃でルノは後ろへ吹き飛ばされる。
一方、彼の手のひらから放たれた風の弾丸は猛スピードで窓を抜けると、向かいの建物の屋根を一瞬にして抉り取った。
その光景を見て、ルノは唖然とする。
「や、やばい。謝らなくちゃ。でもあの建物……」
よく見ると、向かいの建物はかなり古びている印象だった。どうやらルノが屋根を壊してしまう前から老朽化していたらしい。
彼は起き上がると慌ただしく部屋を出て、建物に向かう。
途中でエリナと遭遇する。
「お? お出かけっすか、お客さん?」
「あ、エリナさん! あの、聞きたいことがあるんですけど。この宿屋の向かい側の建物って、人が住んでたりしますか?」
「あ~、あそこは廃屋ですよ? 何年か前には住んでいた人がいたみたいですけど、全員失踪したようで、それ以降誰も住んでないっす」
「あ、そうなんですか」
ルノは、安堵の息を吐きだした。
彼の妙な反応に、彼女は不思議そうに首を傾げる。そして、変な人を見るような視線を向けながら業務に戻っていった。
安心したルノは部屋に帰ってきた。そしてさっきの不用意な行動を反省しつつ、先ほどの風の弾丸を思い返す。
「初級魔法は役に立たないって……やっぱりそうは思えないな」
ルノは呟くと、窓の外に視線を向ける。
古いとはいえしっかりした煉瓦製の屋根である。それがルノの魔法によって、綺麗に破壊されていた。
ルノのレベルは1だ。『風圧』の熟練度こそ限界に達しているが、魔術師としてまだそのスタートラインに立ってさえいない。
「初級魔術師……初級魔法しか扱えない魔法使いか」
デキンの言葉を思い返しながら、ルノは再びステータス画面を確認する。
画面には、『風圧』の他に、『火球』『氷塊』『電撃』『土塊』『闇夜』『光球』の六つの初級魔法が表示されていた。
これらすべての魔法の熟練度を限界まで伸ばしたらどうなるのか――
窓の外を見ると、すでに夕方を迎えようとしていた。
「……頑張れば、明日の朝までには全部上げられるかな」
『風圧』の熟練度を限界まで上げるのにかかった時間からすれば、それも可能かもしれない。
ルノは初級魔法がどこまで強くなるのか確かめるため、すべての初級魔法の熟練度を限界まで上げると決意する。
「でも危ないから別の場所に移動しよう。宿屋の裏庭でも貸してもらおうかな」
部屋の中だと宿屋に迷惑がかかってしまう。彼はそう考えて、できる限り広い場所に移動して、初級魔法の訓練を行うことにした。
「串焼き?」
「お、その格好は……もしかして兄ちゃんは旅人かい?」
ルノは串焼きを食べたいと思ったが、持っているお金に心配があった。買うかどうか悩みつつ、その前に屋台の店主に自分の格好について尋ねる。
「あの、俺の格好って、おかしくないんですか?」
「おかしいって何が?」
「えっと、何か変な格好なような気がしていて」
「確かに変わってはいるが、この国には世界中からいろんな奴が訪れるからな。変わった格好をした奴等なんてごろごろいるだろ」
ルノは改めて周囲を見渡してみた。
「なるほど」
確かに、道行く人々の中には変わった格好をした者がたくさんいる。ルノの学生服姿も、ここでは珍しい物でもないのだろう。
ルノはふと思いついて尋ねる。
「すみません、この辺に質屋とかありますかね? ここに来たばかりであんまりお金がなくて……売ればお金になりそうな物とかは、一応持ってそうなんですけど……」
「質屋かぁ。それならこの通りの向かい側にあるぜ。売って金ができたら、俺の串焼きを買ってくれよ」
「分かりました。ありがとうございます」
ルノは屋台の男に礼を伝え、教えてもらった向かいの建物に行く。
店の看板には、ルノが見たこともないような文字が書かれていた。それにもかかわらず、彼はその内容を理解することができた。
「あれ? 何で文字が読めるんだろう」
ルノは少し考えてすぐに気づく。所持していた「翻訳」スキルのおかげらしい。彼は納得しつつ質屋に入る。
「いらっしゃいませ」
彼を出迎えたのは、妙に身長が小さい、眼鏡をかけた老人だった。
背丈は一メートル二十センチ程度しかなく、顔は半分以上が髭で覆われている。ファンタジーでお馴染みのドワーフである。
ドルトンという名のそのドワーフは、ルノに興味深げな視線を向けつつ、髭を撫で回した。
「ほう。あまり見たことがない服装ですな。今日はどのような用件で?」
「あ、えっと……買い取りをお願いできますか?」
「買い取りですか? 構いませんよ。こちらへどうぞ」
ドルトンに店の奥に案内され、ルノは彼の後に続いた。ルノは今になって、自分の所有物に高価で買い取ってもらえるような物があるのか、不安になり始める。
ドルトンは長机の前に大きな椅子を置くと、どっしりと腰を下ろした。そして、ルノに対面に座るように促し、ゆっくりと口を開く。
「で、どんな品をお持ちで?」
「あっ、これなんですけど……買い取ってくれますか?」
「ほほう、これは面白そうな物ですね」
ルノは、服のポケットに入っていた中身をすべて取りだした。
糸くずやゴミなどろくな物がなかったが、その中にドルトンの興味を引く物があった。高校入学の際に買ってもらったスマートフォンだ。
ドルトンはそれを手に取ると、大きな声を上げた。
「これは……す、すごい!! このような道具、見たことがありませんな!」
「あ、それは……」
「いったい、どんな道具なのですか!?」
「え、ええっ?」
ドルトンはよほど興味が湧いたのか、身を乗りだすようにルノに詰め寄る。
ルノは戸惑いながらも、スマートフォンの使用方法を教えていった。ちなみに彼はソーラー充電器も持っていた。
ドルトンはルノの説明を熱心にメモしながら、とても感心していた。
「素晴らしい品ですな! 灯りになるだけではなく、目の前の景色を一瞬にして記録してしまうとは。その他にも様々な機能が付いている……これほどの品ならば金貨二枚で購入しましょう!!」
「金貨二枚?」
ルノがよく分からずに首を傾げると、ドルトンは慌てたように告げる。
「おっと、これは手厳しい! やはり金貨二枚程度では満足できませんか? それでは金貨三枚でどうでしょうか? これ以上の金額は私の店では出せませんが……」
「あ、えっと……すみません。実は俺、別の国から来たばかりで、こちらの国の硬貨の価値がよく分からなくて」
「そういうことでしたか。これは失礼しました」
ドルトンは安堵した様子を見せると、ルノに帝国の硬貨の価値を教える。
帝国では五種類の硬貨が流通していて、下から鉄貨、銅貨、銀貨、金貨、白金貨の順で高額になっていくらしい。
それぞれの硬貨の価値は、ルノなりに日本のお金の価値に換算してみると、鉄貨=100円、銅貨=1000円、銀貨=1万円、金貨=10万円、白金貨=100万円といった感じのようだ。
ドルトンは何も知らないルノを面白がり、続けてこの世界にまつわる様々なことを説明してくれた。
ここはバルトロス帝国というところで、人族が支配する領域の中で最大規模の国家であるとのこと。ちなみにこの世界には、人族、森人族、獣人族、巨人族、人魚族、魔人族の六種類の種族が存在しているらしい。
バルトロス帝国以外に人間が治める国は、あと二つある。人間以外が治める国家は五つあり、基本的には、各種族それぞれが一つの国家を治めているようだ。
なお、ルノが今いる帝都には、人族に限らず世界中の様々な種族が集っているとのことだった。
ルノはドルトンに頭を下げる。
「いろいろと教えてくれてありがとうございます」
「いえいえ。他にお聞きになりたいことがありましたら説明しますよ」
ルノは一瞬考え、すぐに思いつく。
「あ、それなら、ここでは服って売ってますか? ……あとは食べ物とか水とかは、さすがにないですよね?」
「服はありますが、食料と水はちょっと……」
「服だけでいいです。このスマートフォンの代金から差し引いてください」
「分かりました。それではすぐに見繕いましょう」
ドルトンはそう言うと、ルノの身体のサイズに合わせた衣服を用意してくれた。
これで、ルノの服装もこの世界の一般人らしくなった。それから様々な道具を購入したが、それでも十分なおつりが返ってきた。
ルノはドルトンに別れを告げて質屋を離れると、その足で串焼き屋のもとに戻る。
「お、帰ってきたか、兄ちゃん。その様子を見ると金はできたのかい?」
「あ、はい。串焼きはおいくらですか?」
「一つ、鉄貨三枚だよ」
ルノは小袋の中から銅貨を取りだし、串焼き屋の男に手渡す。鉄貨三枚は日本円に換算すると300円である。
ルノはようやくありつけた串焼きを味わいながら、ふと思いつく。
この店主に、ステータスに表示されている、スキルについて聞いてみようと思ったのだ。
「変なことをお尋ねするかもしれませんが……あの、スキルについて教えてくれませんか?」
「は? スキル?」
思ってもみなかった質問をされ、眉根を寄せる店主。
ルノは、自分でもおかしなことを聞いてしまったと思いつつも、せっかくのチャンスなので質問を続ける。
「えっと、スキルの種類のことなんですけど……技能とか固有とか、どう違うのかなって……」
店主は呆れたような表情を浮かべる。
「兄ちゃん、もしかして箱入り息子か? 今どきスキルのことを知らないなんて、生まれてきたばかりの赤ん坊か、勉強嫌いのガキぐらいだぜ」
「はははっ。すみません」
ルノはそう謝りつつ、串焼きを再び購入した。店主が親切に説明してくれたのは、次のようなことだった。
スキルは基本的には「職業スキル」「技能スキル」「戦技」「固有スキル」の四つに分かれる。
「職業スキル」は、就いている職業が得意とするスキルである。
職業を設定していなければ、覚えられないスキルもあるが、必ずしもその職業でなければ使えないというわけではない。
「技能スキル」は、潜在的な才能のようなものである。
例えば「狙撃」を身に付ければ、弓矢や銃の命中力は上がる。しかし、弓矢や銃の扱い方を知らなければ利用できない。
「戦技」は、RPGゲームでお馴染みの魔法や技など、戦闘に役立つスキル。
職業が「剣士」であれば多彩な剣技を覚えることができ、「魔術師」であれば魔法を扱えるようになる。
「固有スキル」は特別な条件下でなければ修得できないスキルで、常時発動するパッシブスキルである。なお、自分の意思でオンオフの切り替えも可能。希少なため滅多に覚えている者はいないらしい。
「……というところだな。冒険者の奴等はたくさんのスキルを覚えてるらしいが、さすがに修得方法までは俺も知らねえな」
「そうなんですか。ありがとうございます」
「おう、また来てくれよっ!!」
その後、ルノは串焼き屋の店主から、値段が安くて食事を用意してくれる宿屋を紹介してもらった。
こうして彼は、ひとまず今日泊まれる場所を見つけるため歩きだすのだった。
3
ルノは、目的の宿屋にたどり着く。
なぜかその外観は、和風の旅館風だった。
この世界には、過去に召喚された勇者が持ち込んだという日本文化が残っており、日本建築を彷彿させる建物もいくつか存在していた。
宿屋の名前は黒猫旅館。その看板には、でかでかと黒猫の絵が描かれていた。
ルノは宿屋の入り口に立つと、恐る恐る声を上げる。
「す、すみません、誰かいますか?」
「うぃっす!! 今行きます!!」
慌ただしく階段を下りてくる足音が聞こえ、金髪の女性がルノの目の前に現れた。
年齢はルノの一、二歳ほど年上で、掃除の途中だったのか、両手に箒とチリトリを持っている。名前はエリナというらしい。
エリナはそそくさと掃除用具を片付けると、受付に入った。
「いらっしゃいませ! お客様は何名様でしょうか?」
「あ、一人です。えっと、値段はおいくらですか?」
「宿泊だけの料金は、一日のお泊まりで銅貨五枚。朝、昼、夜の三食の食事付きなら、銅貨八枚になりま~す」
日本円に換算してみると、食事なしは5000円で、食事付きならば8000円らしい。
ルノは迷うことなく後者を選択した。お金にそれほど余裕があるわけではないが、食事付きというのはそれだけでありがたい。
ルノはエリナに、ひとまず一週間ほど宿泊すると告げ、金貨を手渡した。
「おっ? お客さんは実は金持ちなんすか? 金貨なんて豪勢っすね」
「そうなの?」
「金貨なんて滅多に見ないっすからね。どんなに高額な支払いでも、金貨より銀貨を利用する人が多いっすよ。はい、おつり」
「どうも」
「では、部屋まで案内するっす」
おつりを受け取ったルノはエリナに案内され、二階の部屋に連れてこられた。彼女から鍵をもらい、食事の時は一階の食堂に来るように言われる。
エリナがいなくなると、ルノはベッドの上で横になった。
「ふぅっ、やっと落ち着けるな」
この世界を訪れてから初めて、身体を休められる安全な場所を確保できた。
そのことに安心したルノは、しばらく横になっていた。だがやがて身体を起こすと、荷物を確認することにした。
今持っている物は、質屋で購入した衣服と日用品だけ。金銭は、金貨一枚、銀貨八枚、銅貨と鉄貨が数十枚ある。
お金がこれだけあれば当面の生活費は問題ないだろう。そう思う彼だったが、いずれ尽きてしまうのは間違いなかった。
「早く元の世界に帰る方法を見つけたいけど……でもその前に、生きていくためにはお金を稼がないと」
ルノの所持金を日本円にすると20万円程度。決して少ない額ではないが、宿泊しているだけで一月も保たない計算になる。
ルノは硬貨を数えつつ、早めに働ける場所を探すことに決めた。
「しかし、何でこんなことになったんだろう……皆、心配してるかな」
ベッドの上に座りながら、ふとそんなことを考えてしまった。それから、元の世界の両親や友人達のことに思いを馳せたものの、頭を振って気持ちを切り替える。
ステータス画面を開き、今日上昇した魔法の熟練度を確認する。
彼は「成長」という能力を持っている。経験値を通常より多く獲得できるというものだ。その影響なのだろうか、熟練度の上昇率が異常に高いように感じられた。
『風圧』の魔法は数回使用しただけにもかかわらず、その熟練度は3まで上昇していた。
「戦技」
・風圧――風属性の初級魔法(熟練度:3)。
・火球――火属性の初級魔法(熟練度:2)。
・氷塊――水属性の初級魔法(熟練度:2)。
・電撃――雷属性の初級魔法(熟練度:2)。
・土塊――地属性の初級魔法(熟練度:2)。
・闇夜――闇属性の初級魔法(熟練度:2)。
・光球――聖属性の初級魔法(熟練度:2)。
それ以外の各属性の熟練度も上昇している。
ルノは、熟練度が一番上がっている『風圧』がどう変化したのか試してみようと考えた。さっそく彼は手のひらを前に出すと魔法を唱える。
「『風圧』……うん、前よりもだいぶ操作しやすくなったな」
風属性の初級魔法の変化を感じ取った彼は、今度は手のひらではなく指先に意識を集中させ、風を生みだしてみた。
指先から小さな風の渦巻が誕生する。そのまま指を動かし、フリスビーを投げるような感じで前方に放つ。
「あ、消えちゃった」
渦巻は二メートルくらい飛んだものの、呆気なく消失してしまった。
続いて彼は、別の使い方も試してみることにした。ルノは拳に意識を集中させると、そこに風を纏わせる。そして風に覆われた拳を突きだした。
風の渦巻が前方に向かって凄まじい勢いで飛んでいく。
「へえ、これは面白いな。あ、また熟練度が上がってる」
デキンは初級魔法は役に立たないと馬鹿にしていたが、そんなことないように感じる。ルノは実際に初級魔法を使ってみて、その自由な可能性に気づきつつあった。
『風圧』の熟練度がどこまで上昇するか確かめるため、さらに試してみることにした。ちなみに熟練度が上がると精度が高まるだけでなく、魔力の消費量まで減少するのは確からしい。
ルノは風の渦巻を操作しながら呟く。
「今度は形状を変えられないかな? えっと、こんな感じか?」
それから彼は部屋の窓を開け、外の様子を見る。
外に目立つ物が何もないのを確認し、窓から離れた場所に移動して手のひらを構える。そして渦巻以外の形状にすべく、彼は意識を集中させる。
「『風圧』!!」
ルノの手のひらから発生したのは、三日月形の風の刃だった。
刃は開け放たれた窓をすごい勢いですり抜け、向かいの民家の屋根を掠めて飛んでいった。
「お、おおっ。何かすごいのが出た気がする」
ルノは戸惑い、窓が壊れていないか確かめる。
窓には異常はなかったものの――彼は目の端に映ったステータス画面に違和感を覚えた。よく見てみると、『風圧』の熟練度がとんでもないことになっていた。
「あれ? 熟練度がいつの間にか10になってる……何だこれ?」
さらに別の画面が現れる。
《『風圧』の熟練度が限界値に到達しました。これにより強化スキル『暴風』が解放されます》
熟練度が限界値に到達?
よく分からなかったが、どうやらそのことで「強化スキル」というのを覚えたようで、固有スキルの項目に『暴風』というのが追加されていた。
「戦技」
・風圧――風属性の初級魔法(熟練度:10)。
・火球――火属性の初級魔法(熟練度:2)。
・氷塊――水属性の初級魔法(熟練度:2)。
・電撃――雷属性の初級魔法(熟練度:2)。
・土塊――地属性の初級魔法(熟練度:2)。
・闇夜――闇属性の初級魔法(熟練度:2)。
・光球――聖属性の初級魔法(熟練度:2)。
「固有スキル」
・暴風――風属性の魔法の威力を上昇させる。
ルノは魔法を試したに過ぎない。魔物と戦ったわけでもなければ、激しい修業をしたわけでもない。それにもかかわらず彼は、風属性の魔法の熟練度を限界値である10まで上げ、新たな能力まで獲得してしまった。
手に入れたのは、風属性の魔法を強化するものらしい。さっそくその能力を試してみることにして、再び手のひらを構える。
「威力を上昇させるか……どれくらい上がるんだろう」
窓は開いたままである。ルノが先ほどのように窓に向けて魔法を発動させようとした、その瞬間――
さっきとは比べ物にならないほどの魔力が集まり、螺旋状の風が放たれた。
「うわっ!?」
衝撃でルノは後ろへ吹き飛ばされる。
一方、彼の手のひらから放たれた風の弾丸は猛スピードで窓を抜けると、向かいの建物の屋根を一瞬にして抉り取った。
その光景を見て、ルノは唖然とする。
「や、やばい。謝らなくちゃ。でもあの建物……」
よく見ると、向かいの建物はかなり古びている印象だった。どうやらルノが屋根を壊してしまう前から老朽化していたらしい。
彼は起き上がると慌ただしく部屋を出て、建物に向かう。
途中でエリナと遭遇する。
「お? お出かけっすか、お客さん?」
「あ、エリナさん! あの、聞きたいことがあるんですけど。この宿屋の向かい側の建物って、人が住んでたりしますか?」
「あ~、あそこは廃屋ですよ? 何年か前には住んでいた人がいたみたいですけど、全員失踪したようで、それ以降誰も住んでないっす」
「あ、そうなんですか」
ルノは、安堵の息を吐きだした。
彼の妙な反応に、彼女は不思議そうに首を傾げる。そして、変な人を見るような視線を向けながら業務に戻っていった。
安心したルノは部屋に帰ってきた。そしてさっきの不用意な行動を反省しつつ、先ほどの風の弾丸を思い返す。
「初級魔法は役に立たないって……やっぱりそうは思えないな」
ルノは呟くと、窓の外に視線を向ける。
古いとはいえしっかりした煉瓦製の屋根である。それがルノの魔法によって、綺麗に破壊されていた。
ルノのレベルは1だ。『風圧』の熟練度こそ限界に達しているが、魔術師としてまだそのスタートラインに立ってさえいない。
「初級魔術師……初級魔法しか扱えない魔法使いか」
デキンの言葉を思い返しながら、ルノは再びステータス画面を確認する。
画面には、『風圧』の他に、『火球』『氷塊』『電撃』『土塊』『闇夜』『光球』の六つの初級魔法が表示されていた。
これらすべての魔法の熟練度を限界まで伸ばしたらどうなるのか――
窓の外を見ると、すでに夕方を迎えようとしていた。
「……頑張れば、明日の朝までには全部上げられるかな」
『風圧』の熟練度を限界まで上げるのにかかった時間からすれば、それも可能かもしれない。
ルノは初級魔法がどこまで強くなるのか確かめるため、すべての初級魔法の熟練度を限界まで上げると決意する。
「でも危ないから別の場所に移動しよう。宿屋の裏庭でも貸してもらおうかな」
部屋の中だと宿屋に迷惑がかかってしまう。彼はそう考えて、できる限り広い場所に移動して、初級魔法の訓練を行うことにした。
11
お気に入りに追加
11,323
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
「お姉様の赤ちゃん、私にちょうだい?」
サイコちゃん
恋愛
実家に妊娠を知らせた途端、妹からお腹の子をくれと言われた。姉であるイヴェットは自分の持ち物や恋人をいつも妹に奪われてきた。しかし赤ん坊をくれというのはあまりに酷過ぎる。そのことを夫に相談すると、彼は「良かったね! 家族ぐるみで育ててもらえるんだね!」と言い放った。妹と両親が異常であることを伝えても、夫は理解を示してくれない。やがて夫婦は離婚してイヴェットはひとり苦境へ立ち向かうことになったが、“医術と魔術の天才”である治療人アランが彼女に味方して――
父が死んだのでようやく邪魔な女とその息子を処分できる
兎屋亀吉
恋愛
伯爵家の当主だった父が亡くなりました。これでようやく、父の愛妾として我が物顔で屋敷内をうろつくばい菌のような女とその息子を処分することができます。父が死ねば息子が当主になれるとでも思ったのかもしれませんが、父がいなくなった今となっては思う通りになることなど何一つありませんよ。今まで父の威を借りてさんざんいびってくれた仕返しといきましょうか。根に持つタイプの陰険女主人公。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。