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1巻
1-2
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「他の皆さんも見たのでは? 召喚される時、皆さんの足元には魔法陣が浮かび上がった。ですが、キリサキ殿にはそれがなかった」
デキンは軽蔑するようにルノを睨みつける。
「勇者ではないと分かった以上、キリサキ殿の能力は期待できませんな!」
「能力が期待できないって……どういうことなんですか?」
思わずルノが尋ねると、デキンは苛立たしそうに言う。
「ちっ……仕方ないな。いいか、よく聞け」
デキンがルノに教えたのは、次のような内容だった。
初級魔術師は希少であるものの、はずれ職である。長所といえば、魔術師の中でトップクラスの魔力容量を持ち、治癒魔導士のように回復魔法を多少扱えること。だが、それ以外のすべての点であらゆる職業に劣るという。
そもそも魔術師は、強力な魔法を使えるからこそ後方支援役として有用なのだが、初級魔術師は初級魔法だけしか使えないため、それが期待できないとのことだった。
「初級魔法……?」
「一般的には『生活魔法』と呼ばれる、普通の人間でも扱える魔法だ。火の玉を生みだしたり、氷の塊を作りだしたりする程度のな! 本来、魔術師は『砲撃魔法』を覚えられるのだ。砲撃魔法こそが魔術師の魔法。初級魔術師はこの砲撃魔法を覚えない……何しろ、初級魔法専門の魔術師だからな!」
ルノはちょっとした反発心から、少し言い返してみる。
「……でも、魔力容量が多いのは良いことなんじゃ」
「初級魔法自体が大して魔力を消費しない生活魔法だ! せいぜいタバコの火を点ける程度の魔法で、魔力などいらん。そんなもので魔物と戦えると思うのか?」
「……」
「信じられないなら試してみるがいい。ステータスに表示されている魔法の名前を唱えるだけで、魔法は発動できるからな!」
デキンに強い口調で促され、ルノは恐る恐るステータス画面を開く。そして表示されている魔法を確認すると、そのうちの一つを唱えてみる。
「『風圧』」
ルノの手のひらから、小さな竜巻が発生した。
その竜巻は、ルノの目の前にいたデキンに襲いかかった。風を受けたデキンは身体をよろめかせ、ルノ自身も体勢を崩して倒れてしまう。
「ぬおっ!? き、貴様っ!!」
「うわっ!?」
怒ったデキンが杖を振り上げ、ルノに殴りかかろうとすると、佐藤が止めに入る。
「霧崎君!?」
「いったい何が……あ、あれ……?」
ルノは地面に腰を下ろしたまま、目を回していた。
「霧崎君、どうしたんだ?」
「大丈夫!?」
「いや、急に身体から力が抜けて……」
佐藤に続いて花山も心配してくる。ルノがぐるぐる回る視界に戸惑いながらそう口にすると、デキンは蔑むように告げる。
「ふんっ、それは魔力枯渇と呼ばれる状態だな。魔力を消耗しすぎると、精神面・肉体面に影響が出てくるんだ。今の魔法を使っただけでそうなってしまうとは」
ルノはクラスメイト達に手を貸してもらい、何とか立ち上がる。
デキンは嫌味ったらしくため息を吐きだすと、小馬鹿にしたような態度を取る。
「はぁ……どうやら本当に、ただの一般人が召喚されたようだな。まあいい、他の勇者様を訓練場にお連れしろ。私はこの男を処理する」
「はっ!!」
デキンに指示されて集まってきた男達が、クラスメイトを取り囲む。
「ちょっ、ちょっと待ってください!! 何をするんですか!?」
「くそっ、離しやがれっ!!」
「いやっ、やめてっ、どこ触ってるのよ!?」
「うわぁあっ!?」
クラスメイト達が大勢の男達に連行されていく。その光景を目にしながら何もできず、ルノは声を上げる。
「みんなっ」
「貴様はこっちだ。おい、この男を城の外に追い払え!!」
一人残されたルノに向かってデキンはそう言うと、見下した態度のまま兵士に指示を出す。
「はっ」
「ちょ、ちょっと!?」
兵士達がルノのもとに駆け寄り、彼を無理やり拘束しようとした時――広間に女性の声が響き渡った。
「おやめなさい!!」
その場にいた全員が、声のほうを振り向く。
そこには、銀色のドレスを纏った美しい女性が立っていた。また、彼女の側には日本人のような黒髪の女騎士が付き添っている。
銀色のドレスの女性が声を上げる。
「デキン大臣!! これは何の騒ぎですか?」
「こ、これは王女様!! 本日もお美しく……」
「私の質問に答えなさい!! いったい何をしていたのですか?」
王女と呼ばれた女性は、デキンを責めるような厳しい目をした。
王女は金色に輝く髪の毛を腰元まで伸ばし、人形のように整った顔立ちをしている。瞳は宝石のように美しい碧眼。胸は大きく膨らんでいるが、腰はキュッと細い。その身体は女性らしい滑らかな曲線を描いていた。
彼女はデキンの側にいるルノに視線を向け、その服装を見て目を見開いた。そして、慌てて跪きだしたデキンを問いただす。
「この方は? もしや、今日召喚されたという勇者様ではないのですか?」
「い、いえ。この男は違います! 本当の勇者様は現在は訓練場のほうに……」
「どういうことですか? では、この御方は何者なのですか?」
「そ、それは……」
デキンは冷や汗を流し、先ほどまでの高圧的な態度から一変してあたふたしだす。
ルノは戸惑いながらも王女に視線を向ける。そして、彼女に助けを求めて話しかけようとしたところ、先にデキンが口を開いた。
「こ、この人物は勇者様の召喚に巻き込まれた一般人なのです! ですから、勇者としての力は何一つ持っていません!」
「一般人……!? どういうことですか?」
「じ、実は先ほどこの場所で勇者様全員に儀式を行ったのですが、この男の職業が初級魔術師でして」
「初級魔術師?」
「あの不遇職の……」
王女が驚いたような表情を見せ、隣にいた黒髪の女騎士は眉間に皺を寄せる。
彼女達はルノに同情するような視線を向けた。デキンはわざとらしく辛そうな雰囲気を出しながら口を開く。
「彼が一般人だったことは残念ではありますが、我等としても戦力にならない者をこの王城に置いておくことはできません。そこで、彼には城外で暮らしてもらうよう、話し合いをしていたのです」
「本当ですか? 私には兵士を使って彼を追いだそうとしていたように見えましたが」
「そ、そんなことはありませんっ」
王女に指摘され、デキンは大げさに首を横に振って否定した。王女はため息を吐きつつ、ルノのほうへ顔を向ける。
「……そこの御方、名前は何というのですか?」
「え、あ、霧崎ルノです」
彼女は、ルノを安心させるように優しく微笑みかけ、彼の手を取った。
「私の名はジャンヌと申します。一つお聞きしたいのですが、こちらの大臣の言葉に嘘偽りはありませんか? もし彼が嘘を吐いて誤魔化そうとしているのなら、後で罰を与えなければなりませんが」
「お、王女様!! そのような男の話など……」
慌てたデキンが、ルノとジャンヌの間に割って入ろうとする。しかし、側にいた女騎士が腰の長剣に手を伸ばして、デキンを止める。
「貴公は黙っていてもらおう。それとも、まさか王女様に異議を申し立てるつもりではないだろうな?」
デキンは護衛の女を忌々しげに睨みつけ、悔しげに歯を食い縛った。
ルノが、このジャンヌならこれまでの経緯を伝えれば助けてくれるのではないかと考えた時――ジャンヌは握りしめていたルノの手を離し、口元を押さえて膝をついた。
「うっ……げほっ、かはっ……!!」
「えっ!?」
「王女様!?」
ルノとデキンが呆然とする中、ジャンヌは胸元を押さえて屈み込む。女騎士が駆け寄って、ジャンヌに肩を貸す。
「大丈夫ですかっ? またご病気が」
「へ、平気です……く、こんな時にっ……」
ジャンヌはすでに意識を失いかけていた。
女騎士がデキンを睨みつける。
「私は王女様を病室に運びます。デキン大臣! 先ほどの話が本当ならば、そこの御方を城外へ案内し、当面の生活を賄える資金を渡すはずですよね!?」
「くっ!! わ、分かっておる!!」
女騎士に厳しく問われ、デキンは反射的に答えた。
「それを聞いて安心しました。さあ、王女様はこちらへ」
「も、申し訳ありません……」
黒髪の女騎士は、王女を連れて広間を立ち去っていった。
取り残されたルノは、彼女達の後ろ姿を呆然と見つめていたが、デキンが自分を睨みつけていることに気づく。
ルノが恐る恐る振り返ると、デキンは忌々しげに舌打ちしながら懐に手を伸ばした。デキンが取りだしたのは茶色の小袋である。
デキンは、その小袋を地面に投げつけた。
「さっさと拾えっ!! 王女様のご厚意に感謝しろ。それだけあれば数日は過ごせるだろう。その間に、仕事を探して生き残る術でも探せっ!!」
「えっ?」
「ちぃっ……さっさと出ていけ!! ここを真っ直ぐ進めば正門に出て、そこから先は城下町が広がっている。二度とこの城に戻ってくるんじゃないぞ!!」
デキンは言いたいことだけ告げると、不機嫌な表情のまま立ち去っていった。
ルノはしばらく呆然としていたが、はっとして我に返ると地面に落ちていた小袋を手に取った。袋の中を見てみると、銀貨と銅貨が入っている。
硬貨を見つめながら、ルノはこれまでのことを思い返す。
「いったい何だったんだ……」
異世界に召喚されたかと思ったら、強制的に奇妙な儀式を受けさせられた。
その儀式で能力が低いと判断され、城の人の態度が急変。城から追いだされかけてしまった。それからなんと王女が現れ、大臣から硬貨の入った小袋を投げつけられた。そして、自ら出ていくように指示され……とにかく、短い間にいろいろな出来事が起きた。
ルノはまだ混乱していたが、早くここから出ないといけないということは分かった。改めて小袋の中身を確認すると、城の正門に向かう。
「これ、いくらぐらいなんだろう?」
小袋の中には、銀貨が数枚と銅貨が十数枚入っていた。
しかし、それぞれの硬貨の価値が分からないので、これでどのくらい生活できるのか判断できない。またそれ以前に、城下町に出てどう暮らしていけばいいのか、まったく想像できなかった。
デキンは最後に仕事を見つけろと言っていたが、ルノは元の世界では普通の高校生に過ぎない。こちらの世界でちゃんとした職を見つけられるのかさえ不明だった。
誰かに助けを求めたいが……
ルノはふと気配を感じて周囲を見渡す。
すぐに後方から自分を尾行している兵士がいることに気づいた。兵士は一定の距離を保ちつつ、ルノの様子を窺っている。
デキンの指示で、ルノが城を出ていくのかどうか見張っているのだろう。
これでは助けを求めるのは不可能だ。
人の好さそうな皇帝か、あるいは先ほど助けてくれた王女に会えれば城に残してもらえるかもしれないが……兵士に監視されていては城内を歩けない。
いろいろと考えている間にもルノは歩き続け、王城の城門の前までやってきてしまった。門の左右には、見張りの兵士がいる。
兵士はすでに報告を受けていたのか、何も語らずに首だけを動かして、ルノに城門の外に移動するように指示した。
ルノはため息を吐き、歩を進める。
「はあっ……」
ルノが門を潜り抜け終えると、すぐに扉が閉じられた。
本当に、彼を受け入れるつもりはないらしい。
ルノは一度だけ振り返ったが、その場に残っても無駄だと悟り、そのまま城から立ち去った。
2
「うん……まあ、分かってはいたけど、日本じゃないな、ここ」
ルノは城下町の光景を見て、改めて自分がいる場所が日本ではないことを再認識した。
正確に言えば、日本どころか、自分が知っている世界ですらない。
彼の前には、頭に獣の耳を生やし、尻から尻尾を生やした存在が歩いている。
さらには、身長が軽く三メートルを超える巨人、耳が細長い容姿の美しい種族などが堂々と行き来していた。どう考えても普通の人間ではない。
そんな光景を目の当たりにし、ちょっとパニックになったルノは頭を押さえつつ、人気の少ない路地裏に逃げ込んだ。
自分がマルテアという異世界にいることは、先ほど王城で教えてもらったので分かっている。ルノは頭では理解したつもりだった。
だが、それでもその現実を受け止めきれずにいた。
「どうすれば元の世界に戻れるんだ……」
彼はそう呟くと、召喚に巻き込まれる直前に見た魔法陣のことを思いだす。
この世界で最初に訪れたのは、王城の玉座の間である。そこには、皇帝と大臣の他に、魔術師と思われる人達がいた。
彼等であれば何か知っているかもしれない。ルノはそう思いついたものの、それと同時に王城に戻る危険性について考えた。
ルノは思案しつつ、現状の自分の能力を調べることにした。
「ステータス」
ルノの目の前に画面が表示される。
ルノはスマートフォンを操作するように、指先で画面に触れる。このような状況でありながら、気分的にはゲームでもしているような感覚だった。
霧崎ルノ
「職業」初級魔術師(固定)
「状態」普通
「SP」1
「レベル」1
「技能スキル」
・翻訳――あらゆる種族の言語、文字を理解できる。
「戦技」
・風圧――風属性の初級魔法(熟練度:2)。
・火球――火属性の初級魔法(熟練度:1)。
・氷塊――水属性の初級魔法(熟練度:1)。
・電撃――雷属性の初級魔法(熟練度:1)。
・土塊――地属性の初級魔法(熟練度:1)。
・闇夜――闇属性の初級魔法(熟練度:1)。
・光球――聖属性の初級魔法(熟練度:1)。
「固有スキル」
・なし
「異能」
・成長――経験値を通常よりも高く獲得できる。
「あれ? 熟練度が上がってる。あ、さっき魔法を使ったからかな?」
初めてステータスを見た時『風圧』の熟練度は1だったはずだが、2に上昇していた。
ルノはさっそく試してみようと思い、手のひらを前に構える。そして先ほどのように『風圧』の魔法を発現させてみる。
「『風圧』!!」
吹き飛ばされないように気をつけつつ、手のひらに意識を集中させると、さっきよりも強い『風圧』を生みだせた。
「ん? あんまりきつくない?」
王城で『風圧』を発動させた時は、立てなくなるほどの疲労感に襲われたが、今回はそうした感覚はなかった。
熟練度が上昇したことが関係しているのだろう。ルノは深くは考えず、そう納得することにした。
「他の魔法はどうなんだろう」
それから彼は、画面に表示されていた初級魔法をすべて試していった。
「『火球』……おおっ」
手のひらから火の玉が現れる。火の玉は自分の意思で自由に動かすことができた。『風圧』と比べて長時間の発動が可能で、数十秒は保たせられるようだ。
「次は……『氷塊』」
彼の手元に、宝石のように輝く氷の塊が生まれる。
この『氷塊』も『火球』と同様に操作でき、大きさも変えられた。大きくしたり複雑な形にしたりすると、多くの魔力を消費するらしい。
『氷塊』の操作で遊びすぎてしまい、ルノはちょっとふらついてしまう。休憩を挟んだ後、四つ目の魔法に挑む。
「ふうっ……よし! 『電撃』!!」
魔法名を唱えた直後、手のひらに電流が迸った。
ルノは手のひらに現れた電流を見て感心しつつも、自分が感電しないことを不思議に思う。
「そういえば今までの魔法もそうだったな。身体に触れても何も起きなかった」
実際に、『風圧』で手を切ったり、『火球』で火傷したり、『氷塊』で凍傷になったりすることはなかった。
彼は、唱えた魔法で自分自身は傷ついたりしないのではないかと考え、試しに電流を発していないほうの手で電流に触れてみる。
思った通り痛みは感じなかったが、電流がルノが着ている学生服の上を走り、バチバチと火花を散らす。
「あちちっ! ああ、少し焦げた」
学生服の袖が軽く焦げてしまった。
ともかく、自分が生みだした魔法では自分の肉体は傷つかないようだ。ただし、装備している物に関してはその限りではないらしい。
続いて、ルノは土属性の初級魔法を唱える。
「『土塊』!! あれ……『土塊』?」
だが、魔法が発動する気配はない。
不思議に思った彼は、ステータス画面を開いて『土塊』の項目を読む。土に関係する魔法ということは知っているがそれ以上のことは分からない。
ルノはふと思いついて、地面に手のひらを置いてから再び唱えてみた。
「『土塊』」
手のひらから紅色の光が放たれ、前方の土砂が盛り上がる。その一方で、手前の地面が軽く沈んでいった。
「今までの魔法と比べると、何だか地味だな」
そう言いつつもルノは、地面を陥没させて落とし穴を作ったり、地面を盛り上げて土壁を作ったり、意外と便利そうだと考えた。
「次は、『光球』と『闇夜』か。あ、口にしちゃったよ」
無意識に魔法を唱えてしまい、ルノの手のひらが光り輝く。右手から光の球体、左手から黒い霧が生みだされる。
両手からそれぞれ別の魔法を同時に発動してしまい、彼は慌てた。しかし、特に害などはなさそうなので、そのままどんな魔法なのか調べることにした。
「『光球』は『火球』と同じように動かせるな。だけど、こっちのほうが『火球』より輝きが強い。触れても熱くも冷たくもないから、攻撃するには向いていないのかな」
右手から生みだした『光球』は自由に操作できたが、それ以外に特別な使い方は今のところ見つけられなかった。
「こっちのは何だろう?」
左手の黒い霧のほうは、煙のように放出され続けていた。
ルノはふと思いついて、左手で側の建物の壁に触れてみた。黒い霧は粘着性があるようで、壁に張り付いた。
「あ、面白い。ということは、人の顔に張り付ければ、目隠しみたいに使えるかも」
一通り魔法の確認を終えたが、さすがに魔法を使いすぎたようだ。急激な疲労感に襲われたルノは、それと同時に空腹を感じた。
大臣からもらった小袋の硬貨を確認し、彼は何か食べようと考えた。
路地裏から抜けだし、食事できる場所を探す。
(というか、武器を持っている人が当たり前のようにいっぱいいるな。平和そうだけど、意外と治安が悪いのか)
街道を行き交う人々の中には、武器を装備している者だけでなく、明らかに柄の悪そうな者達もいる。
ルノは通りを歩くのは危険だと考え、また路地裏に戻ろうとした。しかしいつまでもそうしていても仕方ないと思い、覚悟を決めて街道を歩きだす。
そうして歩を進めながら、道を行き交う人々と自分の格好のギャップに気づく。
(あれ? この格好でも別に怪しまれないな。どうしてだろう?)
ルノは学生服を着て、学生鞄を提げていた。当然だが、周囲を見渡しても自分と同じような格好をした人はいない。
それにもかかわらず、道行く人々は彼に反応を示さなかった。
不思議に思いながら歩いていると、屋台の男が声をかけてくる。
デキンは軽蔑するようにルノを睨みつける。
「勇者ではないと分かった以上、キリサキ殿の能力は期待できませんな!」
「能力が期待できないって……どういうことなんですか?」
思わずルノが尋ねると、デキンは苛立たしそうに言う。
「ちっ……仕方ないな。いいか、よく聞け」
デキンがルノに教えたのは、次のような内容だった。
初級魔術師は希少であるものの、はずれ職である。長所といえば、魔術師の中でトップクラスの魔力容量を持ち、治癒魔導士のように回復魔法を多少扱えること。だが、それ以外のすべての点であらゆる職業に劣るという。
そもそも魔術師は、強力な魔法を使えるからこそ後方支援役として有用なのだが、初級魔術師は初級魔法だけしか使えないため、それが期待できないとのことだった。
「初級魔法……?」
「一般的には『生活魔法』と呼ばれる、普通の人間でも扱える魔法だ。火の玉を生みだしたり、氷の塊を作りだしたりする程度のな! 本来、魔術師は『砲撃魔法』を覚えられるのだ。砲撃魔法こそが魔術師の魔法。初級魔術師はこの砲撃魔法を覚えない……何しろ、初級魔法専門の魔術師だからな!」
ルノはちょっとした反発心から、少し言い返してみる。
「……でも、魔力容量が多いのは良いことなんじゃ」
「初級魔法自体が大して魔力を消費しない生活魔法だ! せいぜいタバコの火を点ける程度の魔法で、魔力などいらん。そんなもので魔物と戦えると思うのか?」
「……」
「信じられないなら試してみるがいい。ステータスに表示されている魔法の名前を唱えるだけで、魔法は発動できるからな!」
デキンに強い口調で促され、ルノは恐る恐るステータス画面を開く。そして表示されている魔法を確認すると、そのうちの一つを唱えてみる。
「『風圧』」
ルノの手のひらから、小さな竜巻が発生した。
その竜巻は、ルノの目の前にいたデキンに襲いかかった。風を受けたデキンは身体をよろめかせ、ルノ自身も体勢を崩して倒れてしまう。
「ぬおっ!? き、貴様っ!!」
「うわっ!?」
怒ったデキンが杖を振り上げ、ルノに殴りかかろうとすると、佐藤が止めに入る。
「霧崎君!?」
「いったい何が……あ、あれ……?」
ルノは地面に腰を下ろしたまま、目を回していた。
「霧崎君、どうしたんだ?」
「大丈夫!?」
「いや、急に身体から力が抜けて……」
佐藤に続いて花山も心配してくる。ルノがぐるぐる回る視界に戸惑いながらそう口にすると、デキンは蔑むように告げる。
「ふんっ、それは魔力枯渇と呼ばれる状態だな。魔力を消耗しすぎると、精神面・肉体面に影響が出てくるんだ。今の魔法を使っただけでそうなってしまうとは」
ルノはクラスメイト達に手を貸してもらい、何とか立ち上がる。
デキンは嫌味ったらしくため息を吐きだすと、小馬鹿にしたような態度を取る。
「はぁ……どうやら本当に、ただの一般人が召喚されたようだな。まあいい、他の勇者様を訓練場にお連れしろ。私はこの男を処理する」
「はっ!!」
デキンに指示されて集まってきた男達が、クラスメイトを取り囲む。
「ちょっ、ちょっと待ってください!! 何をするんですか!?」
「くそっ、離しやがれっ!!」
「いやっ、やめてっ、どこ触ってるのよ!?」
「うわぁあっ!?」
クラスメイト達が大勢の男達に連行されていく。その光景を目にしながら何もできず、ルノは声を上げる。
「みんなっ」
「貴様はこっちだ。おい、この男を城の外に追い払え!!」
一人残されたルノに向かってデキンはそう言うと、見下した態度のまま兵士に指示を出す。
「はっ」
「ちょ、ちょっと!?」
兵士達がルノのもとに駆け寄り、彼を無理やり拘束しようとした時――広間に女性の声が響き渡った。
「おやめなさい!!」
その場にいた全員が、声のほうを振り向く。
そこには、銀色のドレスを纏った美しい女性が立っていた。また、彼女の側には日本人のような黒髪の女騎士が付き添っている。
銀色のドレスの女性が声を上げる。
「デキン大臣!! これは何の騒ぎですか?」
「こ、これは王女様!! 本日もお美しく……」
「私の質問に答えなさい!! いったい何をしていたのですか?」
王女と呼ばれた女性は、デキンを責めるような厳しい目をした。
王女は金色に輝く髪の毛を腰元まで伸ばし、人形のように整った顔立ちをしている。瞳は宝石のように美しい碧眼。胸は大きく膨らんでいるが、腰はキュッと細い。その身体は女性らしい滑らかな曲線を描いていた。
彼女はデキンの側にいるルノに視線を向け、その服装を見て目を見開いた。そして、慌てて跪きだしたデキンを問いただす。
「この方は? もしや、今日召喚されたという勇者様ではないのですか?」
「い、いえ。この男は違います! 本当の勇者様は現在は訓練場のほうに……」
「どういうことですか? では、この御方は何者なのですか?」
「そ、それは……」
デキンは冷や汗を流し、先ほどまでの高圧的な態度から一変してあたふたしだす。
ルノは戸惑いながらも王女に視線を向ける。そして、彼女に助けを求めて話しかけようとしたところ、先にデキンが口を開いた。
「こ、この人物は勇者様の召喚に巻き込まれた一般人なのです! ですから、勇者としての力は何一つ持っていません!」
「一般人……!? どういうことですか?」
「じ、実は先ほどこの場所で勇者様全員に儀式を行ったのですが、この男の職業が初級魔術師でして」
「初級魔術師?」
「あの不遇職の……」
王女が驚いたような表情を見せ、隣にいた黒髪の女騎士は眉間に皺を寄せる。
彼女達はルノに同情するような視線を向けた。デキンはわざとらしく辛そうな雰囲気を出しながら口を開く。
「彼が一般人だったことは残念ではありますが、我等としても戦力にならない者をこの王城に置いておくことはできません。そこで、彼には城外で暮らしてもらうよう、話し合いをしていたのです」
「本当ですか? 私には兵士を使って彼を追いだそうとしていたように見えましたが」
「そ、そんなことはありませんっ」
王女に指摘され、デキンは大げさに首を横に振って否定した。王女はため息を吐きつつ、ルノのほうへ顔を向ける。
「……そこの御方、名前は何というのですか?」
「え、あ、霧崎ルノです」
彼女は、ルノを安心させるように優しく微笑みかけ、彼の手を取った。
「私の名はジャンヌと申します。一つお聞きしたいのですが、こちらの大臣の言葉に嘘偽りはありませんか? もし彼が嘘を吐いて誤魔化そうとしているのなら、後で罰を与えなければなりませんが」
「お、王女様!! そのような男の話など……」
慌てたデキンが、ルノとジャンヌの間に割って入ろうとする。しかし、側にいた女騎士が腰の長剣に手を伸ばして、デキンを止める。
「貴公は黙っていてもらおう。それとも、まさか王女様に異議を申し立てるつもりではないだろうな?」
デキンは護衛の女を忌々しげに睨みつけ、悔しげに歯を食い縛った。
ルノが、このジャンヌならこれまでの経緯を伝えれば助けてくれるのではないかと考えた時――ジャンヌは握りしめていたルノの手を離し、口元を押さえて膝をついた。
「うっ……げほっ、かはっ……!!」
「えっ!?」
「王女様!?」
ルノとデキンが呆然とする中、ジャンヌは胸元を押さえて屈み込む。女騎士が駆け寄って、ジャンヌに肩を貸す。
「大丈夫ですかっ? またご病気が」
「へ、平気です……く、こんな時にっ……」
ジャンヌはすでに意識を失いかけていた。
女騎士がデキンを睨みつける。
「私は王女様を病室に運びます。デキン大臣! 先ほどの話が本当ならば、そこの御方を城外へ案内し、当面の生活を賄える資金を渡すはずですよね!?」
「くっ!! わ、分かっておる!!」
女騎士に厳しく問われ、デキンは反射的に答えた。
「それを聞いて安心しました。さあ、王女様はこちらへ」
「も、申し訳ありません……」
黒髪の女騎士は、王女を連れて広間を立ち去っていった。
取り残されたルノは、彼女達の後ろ姿を呆然と見つめていたが、デキンが自分を睨みつけていることに気づく。
ルノが恐る恐る振り返ると、デキンは忌々しげに舌打ちしながら懐に手を伸ばした。デキンが取りだしたのは茶色の小袋である。
デキンは、その小袋を地面に投げつけた。
「さっさと拾えっ!! 王女様のご厚意に感謝しろ。それだけあれば数日は過ごせるだろう。その間に、仕事を探して生き残る術でも探せっ!!」
「えっ?」
「ちぃっ……さっさと出ていけ!! ここを真っ直ぐ進めば正門に出て、そこから先は城下町が広がっている。二度とこの城に戻ってくるんじゃないぞ!!」
デキンは言いたいことだけ告げると、不機嫌な表情のまま立ち去っていった。
ルノはしばらく呆然としていたが、はっとして我に返ると地面に落ちていた小袋を手に取った。袋の中を見てみると、銀貨と銅貨が入っている。
硬貨を見つめながら、ルノはこれまでのことを思い返す。
「いったい何だったんだ……」
異世界に召喚されたかと思ったら、強制的に奇妙な儀式を受けさせられた。
その儀式で能力が低いと判断され、城の人の態度が急変。城から追いだされかけてしまった。それからなんと王女が現れ、大臣から硬貨の入った小袋を投げつけられた。そして、自ら出ていくように指示され……とにかく、短い間にいろいろな出来事が起きた。
ルノはまだ混乱していたが、早くここから出ないといけないということは分かった。改めて小袋の中身を確認すると、城の正門に向かう。
「これ、いくらぐらいなんだろう?」
小袋の中には、銀貨が数枚と銅貨が十数枚入っていた。
しかし、それぞれの硬貨の価値が分からないので、これでどのくらい生活できるのか判断できない。またそれ以前に、城下町に出てどう暮らしていけばいいのか、まったく想像できなかった。
デキンは最後に仕事を見つけろと言っていたが、ルノは元の世界では普通の高校生に過ぎない。こちらの世界でちゃんとした職を見つけられるのかさえ不明だった。
誰かに助けを求めたいが……
ルノはふと気配を感じて周囲を見渡す。
すぐに後方から自分を尾行している兵士がいることに気づいた。兵士は一定の距離を保ちつつ、ルノの様子を窺っている。
デキンの指示で、ルノが城を出ていくのかどうか見張っているのだろう。
これでは助けを求めるのは不可能だ。
人の好さそうな皇帝か、あるいは先ほど助けてくれた王女に会えれば城に残してもらえるかもしれないが……兵士に監視されていては城内を歩けない。
いろいろと考えている間にもルノは歩き続け、王城の城門の前までやってきてしまった。門の左右には、見張りの兵士がいる。
兵士はすでに報告を受けていたのか、何も語らずに首だけを動かして、ルノに城門の外に移動するように指示した。
ルノはため息を吐き、歩を進める。
「はあっ……」
ルノが門を潜り抜け終えると、すぐに扉が閉じられた。
本当に、彼を受け入れるつもりはないらしい。
ルノは一度だけ振り返ったが、その場に残っても無駄だと悟り、そのまま城から立ち去った。
2
「うん……まあ、分かってはいたけど、日本じゃないな、ここ」
ルノは城下町の光景を見て、改めて自分がいる場所が日本ではないことを再認識した。
正確に言えば、日本どころか、自分が知っている世界ですらない。
彼の前には、頭に獣の耳を生やし、尻から尻尾を生やした存在が歩いている。
さらには、身長が軽く三メートルを超える巨人、耳が細長い容姿の美しい種族などが堂々と行き来していた。どう考えても普通の人間ではない。
そんな光景を目の当たりにし、ちょっとパニックになったルノは頭を押さえつつ、人気の少ない路地裏に逃げ込んだ。
自分がマルテアという異世界にいることは、先ほど王城で教えてもらったので分かっている。ルノは頭では理解したつもりだった。
だが、それでもその現実を受け止めきれずにいた。
「どうすれば元の世界に戻れるんだ……」
彼はそう呟くと、召喚に巻き込まれる直前に見た魔法陣のことを思いだす。
この世界で最初に訪れたのは、王城の玉座の間である。そこには、皇帝と大臣の他に、魔術師と思われる人達がいた。
彼等であれば何か知っているかもしれない。ルノはそう思いついたものの、それと同時に王城に戻る危険性について考えた。
ルノは思案しつつ、現状の自分の能力を調べることにした。
「ステータス」
ルノの目の前に画面が表示される。
ルノはスマートフォンを操作するように、指先で画面に触れる。このような状況でありながら、気分的にはゲームでもしているような感覚だった。
霧崎ルノ
「職業」初級魔術師(固定)
「状態」普通
「SP」1
「レベル」1
「技能スキル」
・翻訳――あらゆる種族の言語、文字を理解できる。
「戦技」
・風圧――風属性の初級魔法(熟練度:2)。
・火球――火属性の初級魔法(熟練度:1)。
・氷塊――水属性の初級魔法(熟練度:1)。
・電撃――雷属性の初級魔法(熟練度:1)。
・土塊――地属性の初級魔法(熟練度:1)。
・闇夜――闇属性の初級魔法(熟練度:1)。
・光球――聖属性の初級魔法(熟練度:1)。
「固有スキル」
・なし
「異能」
・成長――経験値を通常よりも高く獲得できる。
「あれ? 熟練度が上がってる。あ、さっき魔法を使ったからかな?」
初めてステータスを見た時『風圧』の熟練度は1だったはずだが、2に上昇していた。
ルノはさっそく試してみようと思い、手のひらを前に構える。そして先ほどのように『風圧』の魔法を発現させてみる。
「『風圧』!!」
吹き飛ばされないように気をつけつつ、手のひらに意識を集中させると、さっきよりも強い『風圧』を生みだせた。
「ん? あんまりきつくない?」
王城で『風圧』を発動させた時は、立てなくなるほどの疲労感に襲われたが、今回はそうした感覚はなかった。
熟練度が上昇したことが関係しているのだろう。ルノは深くは考えず、そう納得することにした。
「他の魔法はどうなんだろう」
それから彼は、画面に表示されていた初級魔法をすべて試していった。
「『火球』……おおっ」
手のひらから火の玉が現れる。火の玉は自分の意思で自由に動かすことができた。『風圧』と比べて長時間の発動が可能で、数十秒は保たせられるようだ。
「次は……『氷塊』」
彼の手元に、宝石のように輝く氷の塊が生まれる。
この『氷塊』も『火球』と同様に操作でき、大きさも変えられた。大きくしたり複雑な形にしたりすると、多くの魔力を消費するらしい。
『氷塊』の操作で遊びすぎてしまい、ルノはちょっとふらついてしまう。休憩を挟んだ後、四つ目の魔法に挑む。
「ふうっ……よし! 『電撃』!!」
魔法名を唱えた直後、手のひらに電流が迸った。
ルノは手のひらに現れた電流を見て感心しつつも、自分が感電しないことを不思議に思う。
「そういえば今までの魔法もそうだったな。身体に触れても何も起きなかった」
実際に、『風圧』で手を切ったり、『火球』で火傷したり、『氷塊』で凍傷になったりすることはなかった。
彼は、唱えた魔法で自分自身は傷ついたりしないのではないかと考え、試しに電流を発していないほうの手で電流に触れてみる。
思った通り痛みは感じなかったが、電流がルノが着ている学生服の上を走り、バチバチと火花を散らす。
「あちちっ! ああ、少し焦げた」
学生服の袖が軽く焦げてしまった。
ともかく、自分が生みだした魔法では自分の肉体は傷つかないようだ。ただし、装備している物に関してはその限りではないらしい。
続いて、ルノは土属性の初級魔法を唱える。
「『土塊』!! あれ……『土塊』?」
だが、魔法が発動する気配はない。
不思議に思った彼は、ステータス画面を開いて『土塊』の項目を読む。土に関係する魔法ということは知っているがそれ以上のことは分からない。
ルノはふと思いついて、地面に手のひらを置いてから再び唱えてみた。
「『土塊』」
手のひらから紅色の光が放たれ、前方の土砂が盛り上がる。その一方で、手前の地面が軽く沈んでいった。
「今までの魔法と比べると、何だか地味だな」
そう言いつつもルノは、地面を陥没させて落とし穴を作ったり、地面を盛り上げて土壁を作ったり、意外と便利そうだと考えた。
「次は、『光球』と『闇夜』か。あ、口にしちゃったよ」
無意識に魔法を唱えてしまい、ルノの手のひらが光り輝く。右手から光の球体、左手から黒い霧が生みだされる。
両手からそれぞれ別の魔法を同時に発動してしまい、彼は慌てた。しかし、特に害などはなさそうなので、そのままどんな魔法なのか調べることにした。
「『光球』は『火球』と同じように動かせるな。だけど、こっちのほうが『火球』より輝きが強い。触れても熱くも冷たくもないから、攻撃するには向いていないのかな」
右手から生みだした『光球』は自由に操作できたが、それ以外に特別な使い方は今のところ見つけられなかった。
「こっちのは何だろう?」
左手の黒い霧のほうは、煙のように放出され続けていた。
ルノはふと思いついて、左手で側の建物の壁に触れてみた。黒い霧は粘着性があるようで、壁に張り付いた。
「あ、面白い。ということは、人の顔に張り付ければ、目隠しみたいに使えるかも」
一通り魔法の確認を終えたが、さすがに魔法を使いすぎたようだ。急激な疲労感に襲われたルノは、それと同時に空腹を感じた。
大臣からもらった小袋の硬貨を確認し、彼は何か食べようと考えた。
路地裏から抜けだし、食事できる場所を探す。
(というか、武器を持っている人が当たり前のようにいっぱいいるな。平和そうだけど、意外と治安が悪いのか)
街道を行き交う人々の中には、武器を装備している者だけでなく、明らかに柄の悪そうな者達もいる。
ルノは通りを歩くのは危険だと考え、また路地裏に戻ろうとした。しかしいつまでもそうしていても仕方ないと思い、覚悟を決めて街道を歩きだす。
そうして歩を進めながら、道を行き交う人々と自分の格好のギャップに気づく。
(あれ? この格好でも別に怪しまれないな。どうしてだろう?)
ルノは学生服を着て、学生鞄を提げていた。当然だが、周囲を見渡しても自分と同じような格好をした人はいない。
それにもかかわらず、道行く人々は彼に反応を示さなかった。
不思議に思いながら歩いていると、屋台の男が声をかけてくる。
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