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獣人国
ガーゴイル偵察中 〈シャアアッ(やってやるです)〉
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氷潜水艦を抜け出し、港に潜入したガーゴイルは大きな建物の屋根の上に降り立ち、地上の様子を伺う。気付かれないように肉体を煉瓦に擬態して兵士達を観察し、彼等が何を話しているのかを聞き取る。人間よりも聴覚に優れたガーゴイルならば地上で行動する人間達の会話を聞き取る事は容易く、ガーゴイルと感覚を共有化させているリディアが指示を出す。
(無事に着いたわね。気付かれていないでしょうね?)
頭の中にリディアの声が響き渡るようにガーゴイルは彼女の意思を感じ取り、声を上げずに頷く。別に身体を動かさずともガーゴイルが何を考えているのかはリディアも分かるのだが、彼女は早速ガーゴイルに指示を出す。
(もう少し近づきなさい……馬鹿、身を乗り出し過ぎよ!!)
ガーゴイルに指示を与える事は出来ても肉体を操作する事は出来ないため、リディアはガーゴイルに言葉で誘導させる。屋根の上から地上の様子を確認し、都合が良い事に人気が存在しない路地裏を発見した。
(あそこに移動しなさい。違う、そっちじゃないってば!!路地よ路地!!)
リディアが何を示しているのかはガーゴイルに伝えるには言葉を脳内に伝えるしかなく、彼女の考えている事はガーゴイルには伝わらない。それでもどうにかガーゴイルを路地に移動させると、壁に張り付かせて煉瓦に擬態させる。
「ふうっ……おい、荷物はこれで終わりか?」
「ああ、とりあえずはな。それにしてもどうしてこんなに大量の荷物を船に乗せる必要があるんだ?」
「お前、隊長の話を聞いていなかったのか?ケモノ島に逃げ出した第二王子を捕まえるために船が必要なんだよ」
丁度いい具合に荷物を馬車で運び込む二人の兵士が路地の前で立ち止まり、会話を始める。ガーゴイルは馬車に搭載されている木箱の臭いを嗅ぐと、まるで死体が詰められているのか死臭を感じ取った。
「それにしても酷い臭いだよな……くそ、なんであいつら海に住んでいる癖に陸上の魔物の肉が好物なんだよ」
「文句を言うな。ケモノ島に向かうには水竜の力が必要なんだ」
「それにしたってわざわざ殺した魔物を箱に詰めて運び出す必要なんてあるのかよ?適当にマモウ(牛型の魔獣)を引っ張り出して餌を与える時に殺して食わせればいいんじゃねえのか?」
「あいつらは新鮮な肉よりも腐敗した肉が好みなんだとよ。もういいから行くぞ、また隊長に怒られるのは御免だ」
会話を切り上げた兵士達が船の方に向けて馬車を移動させ、彼等の会話を聞いていたガーゴイルは「水竜」という言葉に首を傾げるが、リディアは心当たりがあるのか戸惑いの声をあげる。
(水竜ですって?確か竜種の中でも比較的に大人しくて水場に生息する竜種のはず……あいつら、水竜まで従えてるの?)
職業柄、魔物に関する知識が豊富なリディアは兵士達の話した言葉の中に「水竜」という名前の魔物が出てきた事に不思議に思い、港を占拠する獣人国の軍隊は竜種さえも従えているのかと疑問を抱く。
(もう少し調べたいわね。ちょうどいいわ、あいつらの荷車に忍び込みなさい)
リディアの指示にガーゴイルは即座に立ち去ろうとした二人の兵士が操作する馬車の中に乗り込み、積み上げられている木箱に身を隠す。ガーゴイルが乗り込んだ事で馬車の移動速度が急激に落ちるのではないかとリディアは心配したが、兵士達は特に気付いた様子はない。
「……なあ、ここだけの話なんだがお前はガルル王子の事をどう思っている?」
「どうって……どういう意味だよ?」
「このままあの人に従っていてもいいのかって事だよ……」
「お前……まだあの村の事を気にしているのか?しょうがねえだろ、俺達にはどうしようもなかったんだよ」
ガーゴイルが乗り込んだことにも気付かずに兵士達は会話を始め、少し気になったリディアはガーゴイルに盗み聞きさせる。馬車を操作する二人の兵士は深いため息を吐き出し、暗い表情で話し合う。
「でもさ、お前だって忘れられないだろ……あの村にどれだけの住民が居たと思う?その中には子供まで居たんだぞ……」
「仕方ねえだろ!!従わなかったら俺達がどんな目に遭わされていたか……それにあの村の連中が第二王子を匿っていた疑惑があったのは事実なんだ。もう気に病むなよ……」
「そうだな……」
片方の兵士が会話を無理やりに切り上げると、丁度馬車が湾内に到着し、中年男性の兵士が馬車の前に立ち止まる。
「止まれ!!どこの部隊だ?」
「はい!!こちらはA班です!!大将軍の指示通りに水竜用の餌を持ち込みました!!」
「うっ……死骸か、いいだろう。早く通れ!!」
軍船の警備を任された兵士が馬車に近づくが、すぐに運び込まれてる木箱から放たれる強烈な死臭を感じ取り、荷物検査も行わずに軍船に運び込むように指示を出す。基本的に獣人族は嗅覚が優れているため、普通の人間よりも悪臭に敏感である。だからこそ検査を行うために木箱の中身を確認すれば悪臭を自分達で嗅いでしまう事を嫌がり、碌な検査も行わずに荷物を軍船に運び込ませた。
(……適当な奴等ね。まあいいわ、お陰で見つからずに済みそう)
馬車が軍船の前に停車すると、兵士達は木箱を船の中に運び出す。そのどさくさに紛れてガーゴイルは馬車から抜け出し、車体の下に隠れる。流石に船の中に忍び込む事は難しく、聞き耳を澄まして兵士達の会話を盗み聞きする。
「それにしても本当にケモノ島に第二王子……いや、反逆者のガウが隠れているのか?」
「それは間違いないだろう。ガウの側近の兵士を脅して吐かせた情報だ。ガルル様は本気で殺す気だろう」
「だけど、兄弟なのに殺し合うなんて……」
「仕方がないさ……国王様がどちらかを継承者に決める前に死んでしまったからな。せめて遺言状さえ残っていれば……」
「今更そんな事を言ってもしょうがないだろうが。俺達はウォン様の言う通りに動けばいいんだよ」
兵士達の会話の内容を聞いてもガーゴイルには理解出来ず、彼等が何を話し合っているのかさえも分からない。しかし、ガーゴイルと感覚を共有化させているリディアは兵士達の会話から現在の獣人国の状況を理解した。
(無事に着いたわね。気付かれていないでしょうね?)
頭の中にリディアの声が響き渡るようにガーゴイルは彼女の意思を感じ取り、声を上げずに頷く。別に身体を動かさずともガーゴイルが何を考えているのかはリディアも分かるのだが、彼女は早速ガーゴイルに指示を出す。
(もう少し近づきなさい……馬鹿、身を乗り出し過ぎよ!!)
ガーゴイルに指示を与える事は出来ても肉体を操作する事は出来ないため、リディアはガーゴイルに言葉で誘導させる。屋根の上から地上の様子を確認し、都合が良い事に人気が存在しない路地裏を発見した。
(あそこに移動しなさい。違う、そっちじゃないってば!!路地よ路地!!)
リディアが何を示しているのかはガーゴイルに伝えるには言葉を脳内に伝えるしかなく、彼女の考えている事はガーゴイルには伝わらない。それでもどうにかガーゴイルを路地に移動させると、壁に張り付かせて煉瓦に擬態させる。
「ふうっ……おい、荷物はこれで終わりか?」
「ああ、とりあえずはな。それにしてもどうしてこんなに大量の荷物を船に乗せる必要があるんだ?」
「お前、隊長の話を聞いていなかったのか?ケモノ島に逃げ出した第二王子を捕まえるために船が必要なんだよ」
丁度いい具合に荷物を馬車で運び込む二人の兵士が路地の前で立ち止まり、会話を始める。ガーゴイルは馬車に搭載されている木箱の臭いを嗅ぐと、まるで死体が詰められているのか死臭を感じ取った。
「それにしても酷い臭いだよな……くそ、なんであいつら海に住んでいる癖に陸上の魔物の肉が好物なんだよ」
「文句を言うな。ケモノ島に向かうには水竜の力が必要なんだ」
「それにしたってわざわざ殺した魔物を箱に詰めて運び出す必要なんてあるのかよ?適当にマモウ(牛型の魔獣)を引っ張り出して餌を与える時に殺して食わせればいいんじゃねえのか?」
「あいつらは新鮮な肉よりも腐敗した肉が好みなんだとよ。もういいから行くぞ、また隊長に怒られるのは御免だ」
会話を切り上げた兵士達が船の方に向けて馬車を移動させ、彼等の会話を聞いていたガーゴイルは「水竜」という言葉に首を傾げるが、リディアは心当たりがあるのか戸惑いの声をあげる。
(水竜ですって?確か竜種の中でも比較的に大人しくて水場に生息する竜種のはず……あいつら、水竜まで従えてるの?)
職業柄、魔物に関する知識が豊富なリディアは兵士達の話した言葉の中に「水竜」という名前の魔物が出てきた事に不思議に思い、港を占拠する獣人国の軍隊は竜種さえも従えているのかと疑問を抱く。
(もう少し調べたいわね。ちょうどいいわ、あいつらの荷車に忍び込みなさい)
リディアの指示にガーゴイルは即座に立ち去ろうとした二人の兵士が操作する馬車の中に乗り込み、積み上げられている木箱に身を隠す。ガーゴイルが乗り込んだ事で馬車の移動速度が急激に落ちるのではないかとリディアは心配したが、兵士達は特に気付いた様子はない。
「……なあ、ここだけの話なんだがお前はガルル王子の事をどう思っている?」
「どうって……どういう意味だよ?」
「このままあの人に従っていてもいいのかって事だよ……」
「お前……まだあの村の事を気にしているのか?しょうがねえだろ、俺達にはどうしようもなかったんだよ」
ガーゴイルが乗り込んだことにも気付かずに兵士達は会話を始め、少し気になったリディアはガーゴイルに盗み聞きさせる。馬車を操作する二人の兵士は深いため息を吐き出し、暗い表情で話し合う。
「でもさ、お前だって忘れられないだろ……あの村にどれだけの住民が居たと思う?その中には子供まで居たんだぞ……」
「仕方ねえだろ!!従わなかったら俺達がどんな目に遭わされていたか……それにあの村の連中が第二王子を匿っていた疑惑があったのは事実なんだ。もう気に病むなよ……」
「そうだな……」
片方の兵士が会話を無理やりに切り上げると、丁度馬車が湾内に到着し、中年男性の兵士が馬車の前に立ち止まる。
「止まれ!!どこの部隊だ?」
「はい!!こちらはA班です!!大将軍の指示通りに水竜用の餌を持ち込みました!!」
「うっ……死骸か、いいだろう。早く通れ!!」
軍船の警備を任された兵士が馬車に近づくが、すぐに運び込まれてる木箱から放たれる強烈な死臭を感じ取り、荷物検査も行わずに軍船に運び込むように指示を出す。基本的に獣人族は嗅覚が優れているため、普通の人間よりも悪臭に敏感である。だからこそ検査を行うために木箱の中身を確認すれば悪臭を自分達で嗅いでしまう事を嫌がり、碌な検査も行わずに荷物を軍船に運び込ませた。
(……適当な奴等ね。まあいいわ、お陰で見つからずに済みそう)
馬車が軍船の前に停車すると、兵士達は木箱を船の中に運び出す。そのどさくさに紛れてガーゴイルは馬車から抜け出し、車体の下に隠れる。流石に船の中に忍び込む事は難しく、聞き耳を澄まして兵士達の会話を盗み聞きする。
「それにしても本当にケモノ島に第二王子……いや、反逆者のガウが隠れているのか?」
「それは間違いないだろう。ガウの側近の兵士を脅して吐かせた情報だ。ガルル様は本気で殺す気だろう」
「だけど、兄弟なのに殺し合うなんて……」
「仕方がないさ……国王様がどちらかを継承者に決める前に死んでしまったからな。せめて遺言状さえ残っていれば……」
「今更そんな事を言ってもしょうがないだろうが。俺達はウォン様の言う通りに動けばいいんだよ」
兵士達の会話の内容を聞いてもガーゴイルには理解出来ず、彼等が何を話し合っているのかさえも分からない。しかし、ガーゴイルと感覚を共有化させているリディアは兵士達の会話から現在の獣人国の状況を理解した。
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