1,255 / 2,090
ダイン 監獄都市編
パールの見極め
しおりを挟む
「貴様等、邪魔をするなよ!!小僧……ここで決着を付けてやる!!」
「この野郎……さっき、僕に負けそうになってたくせに」
「ダインさん、こんな奴のいう事なんて聞く必要ありませんよ」
「いえ、駄目よ。ミイネちゃん、男の子にはね。どうしても戦わなければならない時があるのよ」
ガルルの言葉に流石のダインも我慢の限界を迎え、彼の元へ向かう。そんなダインをミイネは止めようとしたが、それをパールが制止する。ミイネとしてはこの状況を作り出したパールに恨みがましい視線を向けるが、パールとしても別にふざけているわけではない。
パールはダインを見た時から自分の義理の娘に相応しい存在かどうかを確かめるため、ここへ赴いたと言っても過言ではない。実を言えば彼女が飼っている鼠からだいたいの事情は伝わっている。
――実を言えば今までダインを援護してくれた鼠はパールの指示で彼の手助けを行っており、闘技場の時はパールが鼠を放ってダインの手助けをしてやった。但し、屋敷の一件に関しては完全にパールの予想外の出来事であり、偶然にも居合わせた鼠はダインを手伝う。
闘技場では鼠がダインを手助けしたのはパールの命令ではあるが、屋敷で手助けしたのは鼠の意志であり、実を言えばパールは前に鼠にダインの手助けをするように命じた。そこで命令を忠実に守った鼠は屋敷の中に忍び込んだダインの手助けを行う。
ダインを助けろという命令をパールがしていたお陰で今回の事態が出来上がった事は間違いなく、もしも鼠がいなければダインは今頃は女性の囚人達の間で袋叩きにされていただろう。そういう意味では鼠に命令を与えたパールは彼の恩人でもある。
(リボンちゃんがあの男の子をこんなに気に入るとは思わなかったけど、丁度いい機会だわ。ミイネちゃんを守るだけの力があるかどうか、見極めさせてもらうわね)
鼠の名前はパールはリボンと名付け、ちなみに性別は雌である。リボンはダインの事が気になるらしく、ミイネの頭の上に移動すると応援する様に手足を動かす。
「チュチュチュッ!!」
「ギギィッ!!」
「なんだかよく分からないが……坊主、やっちまえ!!」
「そうだそうだ!!俺達の家をむちゃくちゃにしやがって!!」
「ぶっ飛ばせ!!」
ダインを応援する者はミイネ達ばかりではなく、ギルや彼の配下の小髭族も加わる。一方でガルルの方は味方であるはずのグシャスや彼の配下からは何も言われず、むしろグシャスとしては都合が良かった。
「グシャス様……ガルルは勝つと思いますか?」
「十中八九はガルルが勝つだろう。あの小僧の影魔法の弱点は奴も知っている……だが、小僧が勝とうと儂にとっては都合がいい」
「邪魔者のガルルを排除できるからですね」
「そういう事じゃ。ガルルよりもあの小僧を殺すだけならば何とでもなる。ガルル、せいぜい頑張るがいい……」
グシャスからすれば自分の邪魔者二人が戦い合うため、邪魔をする事も止める理由もない。ガルルはそんなグシャスの考えを読み取ったように彼を見て鼻を鳴らし、改めてダインと向き合う。
ダインの方はグシャスと向かい合いながらも緊張はしておらず、むしろ落ち着いていた。やはりガルルはダインがこれまでに対峙した強敵と比べれば脅威でも何でもなく、それに彼の弱点もよく知っていた。
「おい、ガルル……降参するなら今の内だぞ」
「抜かせ、ガキがっ……一撃で終わらせてやる」
ガルルはダインの挑発を受けても無暗に近づく事はせず、常に彼の影に注意を行う。先ほどのように遠当てを放つ真似はせず、今度は確実にダインを仕留めるために精神を集中させる。
(この一撃で終わらせてやる……!!)
拳を握りしめて血管が浮き上がるほどにガルルは力を込めると、ダインの顔面を見つめる。これまでの攻防でダインは顔面には影で魔法を覆っていない事は把握済みである。仮に顔面の方も影で覆い込むとしても、位置的にダインの影から最も遠い顔面を狙うのは悪くはない。
ダインが影魔法を発動させた所で間に合わない速度で攻撃を行えばダインを倒す事が出来る。そう考えたガルルは次の一撃で確実に仕留めるため、拳を構える。その様子を見て誰もがガルルが拳で殴りつけようとしている事は理解できたが、それでもガルルは構えを変えない。
「これで終わらせてやる……がぁああああっ!!」
「くっ!?」
ガルルは気合の雄叫びを上げるとそれを見たダインは杖を構えるが、そんな彼に対してガルルは駆け出す。正面から挑むつもりなのかと誰もが思った時、ガルルは跳躍を行う。
「ふんっ!!」
「何だとっ!?」
「馬鹿なっ!?」
「跳んだっ!?」
巨人族であるガルルはこの場に存在する人間の誰よりも巨体で体重があるはずだが、彼はダインに目掛けて跳躍を行い、空中で回転しながら拳を振り下ろす。予想外のガルルの行動に誰もが呆気に取られる中、ダインも目を見開く。
「この野郎……さっき、僕に負けそうになってたくせに」
「ダインさん、こんな奴のいう事なんて聞く必要ありませんよ」
「いえ、駄目よ。ミイネちゃん、男の子にはね。どうしても戦わなければならない時があるのよ」
ガルルの言葉に流石のダインも我慢の限界を迎え、彼の元へ向かう。そんなダインをミイネは止めようとしたが、それをパールが制止する。ミイネとしてはこの状況を作り出したパールに恨みがましい視線を向けるが、パールとしても別にふざけているわけではない。
パールはダインを見た時から自分の義理の娘に相応しい存在かどうかを確かめるため、ここへ赴いたと言っても過言ではない。実を言えば彼女が飼っている鼠からだいたいの事情は伝わっている。
――実を言えば今までダインを援護してくれた鼠はパールの指示で彼の手助けを行っており、闘技場の時はパールが鼠を放ってダインの手助けをしてやった。但し、屋敷の一件に関しては完全にパールの予想外の出来事であり、偶然にも居合わせた鼠はダインを手伝う。
闘技場では鼠がダインを手助けしたのはパールの命令ではあるが、屋敷で手助けしたのは鼠の意志であり、実を言えばパールは前に鼠にダインの手助けをするように命じた。そこで命令を忠実に守った鼠は屋敷の中に忍び込んだダインの手助けを行う。
ダインを助けろという命令をパールがしていたお陰で今回の事態が出来上がった事は間違いなく、もしも鼠がいなければダインは今頃は女性の囚人達の間で袋叩きにされていただろう。そういう意味では鼠に命令を与えたパールは彼の恩人でもある。
(リボンちゃんがあの男の子をこんなに気に入るとは思わなかったけど、丁度いい機会だわ。ミイネちゃんを守るだけの力があるかどうか、見極めさせてもらうわね)
鼠の名前はパールはリボンと名付け、ちなみに性別は雌である。リボンはダインの事が気になるらしく、ミイネの頭の上に移動すると応援する様に手足を動かす。
「チュチュチュッ!!」
「ギギィッ!!」
「なんだかよく分からないが……坊主、やっちまえ!!」
「そうだそうだ!!俺達の家をむちゃくちゃにしやがって!!」
「ぶっ飛ばせ!!」
ダインを応援する者はミイネ達ばかりではなく、ギルや彼の配下の小髭族も加わる。一方でガルルの方は味方であるはずのグシャスや彼の配下からは何も言われず、むしろグシャスとしては都合が良かった。
「グシャス様……ガルルは勝つと思いますか?」
「十中八九はガルルが勝つだろう。あの小僧の影魔法の弱点は奴も知っている……だが、小僧が勝とうと儂にとっては都合がいい」
「邪魔者のガルルを排除できるからですね」
「そういう事じゃ。ガルルよりもあの小僧を殺すだけならば何とでもなる。ガルル、せいぜい頑張るがいい……」
グシャスからすれば自分の邪魔者二人が戦い合うため、邪魔をする事も止める理由もない。ガルルはそんなグシャスの考えを読み取ったように彼を見て鼻を鳴らし、改めてダインと向き合う。
ダインの方はグシャスと向かい合いながらも緊張はしておらず、むしろ落ち着いていた。やはりガルルはダインがこれまでに対峙した強敵と比べれば脅威でも何でもなく、それに彼の弱点もよく知っていた。
「おい、ガルル……降参するなら今の内だぞ」
「抜かせ、ガキがっ……一撃で終わらせてやる」
ガルルはダインの挑発を受けても無暗に近づく事はせず、常に彼の影に注意を行う。先ほどのように遠当てを放つ真似はせず、今度は確実にダインを仕留めるために精神を集中させる。
(この一撃で終わらせてやる……!!)
拳を握りしめて血管が浮き上がるほどにガルルは力を込めると、ダインの顔面を見つめる。これまでの攻防でダインは顔面には影で魔法を覆っていない事は把握済みである。仮に顔面の方も影で覆い込むとしても、位置的にダインの影から最も遠い顔面を狙うのは悪くはない。
ダインが影魔法を発動させた所で間に合わない速度で攻撃を行えばダインを倒す事が出来る。そう考えたガルルは次の一撃で確実に仕留めるため、拳を構える。その様子を見て誰もがガルルが拳で殴りつけようとしている事は理解できたが、それでもガルルは構えを変えない。
「これで終わらせてやる……がぁああああっ!!」
「くっ!?」
ガルルは気合の雄叫びを上げるとそれを見たダインは杖を構えるが、そんな彼に対してガルルは駆け出す。正面から挑むつもりなのかと誰もが思った時、ガルルは跳躍を行う。
「ふんっ!!」
「何だとっ!?」
「馬鹿なっ!?」
「跳んだっ!?」
巨人族であるガルルはこの場に存在する人間の誰よりも巨体で体重があるはずだが、彼はダインに目掛けて跳躍を行い、空中で回転しながら拳を振り下ろす。予想外のガルルの行動に誰もが呆気に取られる中、ダインも目を見開く。
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。