不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

文字の大きさ
1,070 / 2,090
真・闘技祭 本選編

資格無き者

しおりを挟む
「ミドル様の侮辱、これ以上は見過ごせん!!」
「覚悟しろ!!」
『ま、待ってください!!試合場に入るのは禁止……!?』


試合場に乗り込もうとする竜槍隊に対してラビットが慌てて彼等を引き留めようとした時、試合場に乗り込もうとした瞬間、巨大な影と突風が発生して竜槍隊の騎士達が吹き飛ぶ。


「ぬんっ!!」
「落ち着きなさい」
『ぐああああっ!?』


竜槍隊の乱入を妨げたのは牙竜のギルドマスターにして本選の出場者でもあるギガンと、氷雨のギルドマスターであるマリアであった。ギガンは騎士達を殴り飛ばし、一方でマリアは詠唱も行わずに魔法を発動させると騎士達を吹き飛ばす。

二人の妨害を受けた竜槍隊の騎士達は地面に叩きつけられ、苦痛と困惑の表情を浮かべる。そんな彼等に対してギガンは腕を組んで見下ろすと、険しい表情を浮かべて怒鳴りつけた。


「貴様等、いったい何の真似だ?」
「な、何の真似だと……貴様の方こそ、何故邪魔をする!!」
「我々の亡き主人が侮辱されたのだぞ!!これが黙っていられるか!!」
「愚か者がぁっ!!」


ギガンの一括に竜槍隊だけではなく、観衆全員が身体を震わせる。それほどまでに彼の放つ凄まじい気迫に震え上がり、中には失禁する観客も存在した。ギガンは竜槍隊の騎士達に対して彼等が自分の立場を弁えず、どれだけ愚かな行為をしているのかを叱りつける。


「お前達のしようとした事は、この闘技祭を汚す最も愚かな行為だ!!この試合場に立つ事が出来るのは厳しい予選を勝ち抜け、本選の出場を果たした強者のみ!!お前達に試合場立つ資格はない!!」
「ぐっ……!!」
「仮にお前達が試合場に乗り込み、そこにいる男を倒したとしても責任を取るのは誰だ!?貴様等が使える国の主であるナオ女王だという事を理解していないのか!!お前達は亡き主人の無念を晴らすために現在仕えている主を蔑ろにする気か!!」
『っ……!?』


竜槍隊の騎士達はギガンの言葉に動揺し、彼の言う通りにここで騒ぎを起こせば当然だが責任は竜槍隊が使える国の王であるナオにも迷惑が掛かる。しかも彼等はナオの命令を無視して試合場に乗り込もうとした。それは最早謀反と捉えられてもおかしくはない行為だった。


「あまりこういう事は言いたくはないのだけれど……貴方達、立場を弁えなさい。慕っていた主人を侮辱されて怒りを抱くのは仕方ないが事だとしても、感情に身を任せて今の主に迷惑を掛けるようでは騎士道に反するとは思わないの?」
「くっ……」
「も、申し訳ありません……女王陛下」


状況をやっと把握した竜槍隊の騎士達はナオに対して謝罪を行うが、そんな彼等を見てナオはため息を吐き出す。彼等の気持ちは分からなくはないが、ナオは女王として竜槍隊の行動は見過ごす事は出来なかった。


「お前達……今回の件は見過ごせん、女王としてお前達には処罰を後で言い渡す。だから今は大人しくしておけ」
「ナオ女王ちゃんは甘いね~僕ならすぐに打ち首にするのに」
「これ、よさんか」
「申し訳ありません、私の配下は少々おふざけが過ぎた様で……竜槍隊の皆様、私が彼の代わりに謝罪します」


特等席に座っていたキバ国王がナオの発言を聞いて軽口を叩き、それをデブリが注意するとヨシテルが竜槍隊に対して頭を下げる。試合場に出場した傀儡師は彼の配下であるため、主人であるヨシテルが代わりに頭を下げれば竜槍隊もこれ以上は何も言えなかった。

騒ぎを起こしたとして竜槍隊の騎士達はすぐに闘技場の兵士に連行されそうになるが、ナオの計らいで試合を見る事は許され、彼等は拘束されながらも観客席にて試合場の観戦だけは許された。竜槍隊の騎士達は憎々し気な表情を傀儡師に向けながらも、決して試合場に乱入するような素振りは見せない。


「たくっ、ナオ女王陛下も部下の躾がなっていないな。こんなおふざけに本気になるようなら国王の器もたかがしているな」
「お、お前……最低だな」
「ふん、俺にとっては誉め言葉だ。俺は傀儡師だが、同時に忍者でもある……知っているか?忍者にとって卑怯と最低という言葉は褒め言葉なんだよ。どんな手段を用いても目的を達成する、それが俺のやり方だ」
「……僕の思っている以上の悪党だった」


ダインは傀儡師を名乗る男と向き合い、未だに彼の名前を知らない事に気づく。そんなダインの様子を察して傀儡師の男は名乗りを上げた。


「そういえば名乗っていなかった、俺の名前はサスケ……和国の忍若頭を務めさせている」
「し、忍若頭?」
「要するに和国に所属する忍者の中で二番目に偉いってことだよ。ちなみに俺の親父が忍頭、つまりは一番偉い男だ。まあ、親父も年だからな……ヨシテル様!!もしも俺が優勝したら忍頭の地位を譲ってくださいよ!!」
「……考えておきましょう」


傀儡師の「サスケ」は和国の主にして自分の主人であるはずのヨシテルに対して堂々と声をかけると、ヨシテルの方はため息を吐き出す。珍しく面倒そうな表情を浮かべるヨシテルの態度を見てもサスケがどれだけの問題児なのか伺えた。
しおりを挟む
感想 5,092

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

異世界をスキルブックと共に生きていく

大森 万丈
ファンタジー
神様に頼まれてユニークスキル「スキルブック」と「神の幸運」を持ち異世界に転移したのだが転移した先は海辺だった。見渡しても海と森しかない。「最初からサバイバルなんて難易度高すぎだろ・・今着てる服以外何も持ってないし絶対幸運働いてないよこれ、これからどうしよう・・・」これは地球で平凡に暮らしていた佐藤 健吾が死後神様の依頼により異世界に転生し神より授かったユニークスキル「スキルブック」を駆使し、仲間を増やしながら気ままに異世界で暮らしていく話です。神様に貰った幸運は相変わらず仕事をしません。のんびり書いていきます。読んで頂けると幸いです。

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。