【番外編更新中】桜の記憶 幼馴染は俺の事が好きらしい。…2番目に。

あさひてまり

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解決編

28.(※エロあり)

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死に関する表現があります。

●●●


昼過ぎになると晴が目を覚ました。

「晴、ほら水。」

そう言ってペットボトルの水を口移しで与えれば、素直に嚥下する。

飲み終わると、明け方までしていた行為が尾を引いてるのかクタリと凭れ掛かってきた。

口付けた髪からは、俺と同じシャンプーの匂い。

風呂に入れてナカも掻き出しておいたから、パジャマに包まれた身体は清潔だ。

「晴、飯食うよな?」

「……?」

激しくヤッた次の日、晴の思考がままならない事は珍しくない。

大量に注文しておいたデリから数品を選んでベッドへ向かう。

「ほら、口開けろ。」

膝に乗せた晴の口許にスプーンを差し出して食べさせる。

「…おいし」

掠れて殆ど出ない声でそう言う晴は、それでもボンヤリしたままだ。

ーー嗚呼、凄くいい。

俺にされるがまま世話される姿に、口角が上がる。

常に晴をこの状態にしておくのもいいな。

そうすれば余計な事なんか考えられない。


晴を閉じ込める為に、家を買おう。

大学を辞めさせて、俺も辞めて。

在宅でできる仕事なんて幾らでもあるから、それで生計を立てればいい。

少し本気を出せば数千万稼ぐなんて、俺には容易い事だ。

厄介なのは身内…特に俺の父親。

警察に協力なコネがあるし、あらゆる伝手を使って居場所を突き止めてくる筈。

ならば、行き先は海外だ。

晴が大学に行ってない事がバレるまで、恐らく1ヶ月…長くて2ヶ月が限度。

その間に準備を進めなくては。

新しい家では、晴の足に鎖をつけよう。

家の中から出られないように、家の中を歩き回れるギリギリの長さで。

本当は寝室から出られないようにしたいが、多少の自由は与えておいた方が抵抗されにくい。

今ある晴の衣服や靴は全て処分する。

俺の服は鍵をかけてしまって…そうだな、晴には俺のシャツ1枚だけを着せて。

服が無ければ逃げる気力を削げるし、何より下着やズボンを脱がせる手間なくいつでも晴と愛し合える。

食事も風呂も、全部俺の手から与えて。

毎日快楽も与えて、可愛いがって。

そうして2人で、ヒッソリと生きていけばいい。

夢物語ではなく、これは実現可能な現実だ。

それを遂行する能力が自分にある事は、俺が1番良く理解しているからーー。


食事を終えて再び眠る晴を撫でながら、計画の算段をつける。

ふと、白い首から下がる物に目がいった。

中学の時に俺が渡した、京都から持ち帰った御守り。

何年経っても不思議と汚れないそれを、今でも晴は肌身離さずつけている。

普段ならヤる時、服と一緒にそれも剥ぎ取るが、昨日は余裕が無かった。

…これも、もういらないな。

腕を伸ばして、小さなそれに触れようとした時だった。

バチィッ!!

指先に走った痛みに、反射的に手を引っ込める。

…なんだ…今の。

試しにもう一度手を伸ばそうとして…触れる前に手を握り込んだ。

何故か胸がザワザワする。

ゆっくりと今度は晴の髪に手を伸ばすが、さっきのような衝撃は無かった。

…静電気か。

何となく安心して、それでも御守りには触れずに寝室を出た。

まだ痺れているような気がする指先を動かして、自室のパソコンで海外の物件を探す。

Wi-Fiさえ繋がれば仕事はできるから、都会だろうが田舎だろうが構わない。

ただ、家に晴を1人残さないようにする為には宅配が欠かせないだろう。

治安と物流が良く、同性婚に偏見のない国。

となると、だいぶ限られてくるな。

北欧が第一候補かーー?




ふと気が付くと、デスクに突っ伏していた。

どうやら、知らないうちに眠っていたらしい。

開きっぱなしのパソコンに表示された時刻は17時。

部屋を出ると、何か違和感がある。

燃える暖炉と、覚えのない家具、窓の外は一面の銀世界。

ーーあぁ、そうか。

晴と2人でこの地に移ってきたんだったな。

日本の夢を見たせいか、記憶がそっちに引っ張られているらしい。

ここでの生活は、あの時俺が理想としていた通りだった。

晴は一歩も外に出る事なく、俺の与える物の中で生きている。

最初は不満を爆発させる事もあったが、組み敷いてしまえば思考を奪うのは簡単だった。

『蓮、シたい…今すぐ挿れて…』

この生活に慣れた今では、晴の方から昼夜関係なく俺を求めてくる。

特に俺がどうしてもの用事で出かけたりすると、それは顕著になって。

毎回抱き潰してから出掛けるのに、帰る頃には玄関へ続く廊下に座り込んで俺を待っている。

『蓮…!何で置いていくの…!!』

涙を流しながら抱き着いてきて、必死にキスを強請って。

あやしてソファに座らせると、服の上から俺のモノに頬擦りしてくる。

そして、ローションの垂れる後孔を自分の手で開いて俺に見せ付けて。

『寂しくて、自分でしちゃったの。蓮が悪いんだよ、俺を1人にするから…。』

早く早くと急かされて、滾ったモノで一気に晴の中を貫いた。

嬌声を上げて快楽に咽ぶ晴は、もう俺無しでは生きていけないだろう。

大きな愉悦に口許を歪めて、一心不乱に腰を振る。

『蓮、中で出して…!』

望み通り大量の白濁を吐き出すと、晴はウットリと恍惚の表情を浮かべた。

それを確認して抜こうとすると、晴はグズる。

『やだぁ…はなれないで…』

明らかに眠そうなのに縋る晴が可哀想で可愛くて、俺のモノは直ぐに硬くなった。

『今度はベッドでしよう、な?』

そのまま抱き上げて寝室に運び、晴の意識が飛ぶまで愛し合ったのが今日の昼の話し。

そろそろ起きる頃合いかと、寝室へ向かい声をかけるが、返事はない。

まだ寝てるのか…?

何故か胸騒ぎがして、ゆっくりとドアを開く。

視界に飛び込んで来たのは、鮮烈な紅。

それは一死纏わぬ晴の白い肌から流れて、ベッド一面に赤黒い染み作っていた。

『晴!!』

叫んで抱き上げると、ゾッとする程の冷たさ。

そんな…

白い手に握られているのは、俺が隠していた筈の果物ナイフだった。

首筋から流れ続けるそれを止血しようとした時、晴が薄ら目を開けた。

焦点は定まっていない。

ただ、幸福そうに微笑んだ。

『父さん…母さん…』

会いたかった。

そう呟いて、ピクリとも動かなくなった。

そんな…そんな…

鼓動が弱まり、更に冷たくなっていく身体を抱えて呆然とする。

嘘だ…晴…!晴…!!

『あぁぁぁぁぁぁぁ!!』





「ーーッ!!ハァ…ハァ…」

自分の叫び声で身を起こすと、バランスを崩して床に身体を打ち付けた。

その痛みが頭を覚醒させて、自分が夢を見ていた事を悟る。

「…うっ…」

込み上げる吐き気にヨロヨロと身を起こして、洗面所で吐き戻した。

あまりにも残酷な夢だった。

自分の腕の中で弱っていく晴の体温を思い出すと震えが止まらない。

違う…あれは夢だ…。

繰り返し言い聞かせても鼓動が落ち着かないのは、それが現実になる可能性を示唆しているから。


かつて霊泉家が得意としていた『予知夢』は、実際には誰もが夢の中で行っている記憶の整理だ。

しかし、とりわけ記憶力に優れた人間のそれは、過去の記憶を基に算出した『起こり得る未来』を予測する事がある。

俺自身も何度か見た事があるが…殆どの場合それは当たっていた。

つまり、あの夢はーー。

晴はーー。


頭を抱えてズルズルと座り込んだ。


晴はあんな生活望まない。

俺に養われる事すら良しとしないその性格を、分かっていた筈なのに。

夢の中で自分に依存する晴に対して、悦びが無かったと言えば嘘になる。

俺がいないと生きていけない晴の姿に、確かな愉悦を抱いた。

だけど…

俺を映す瞳は、その実何も見てなくて。

楽しい事が大好きで、好奇心旺盛で、人と接する事が好きな晴。

そんな晴だからこそ、ブルーグレーは何よりも美しく輝く。

羽をもいで、足枷を付けて、目隠しをして。

そんな事をしたら、晴は晴じゃなくなってしまう。

『晴には晴の人生があるんだから』

煩い程にそう言っていた遥の言葉。

上辺だけ掬って理解したつもりになっていたその真意を、漸く悟る。

遥は、こう言う事が起こるのを危惧していたんだ。

俺が囲い込んで晴を追い込む事を。

病的なまでの執着心が、晴を壊してしまう事を。




何よりも大切にしなければいけないものを、自分の手で壊そうとしていた。

自己嫌悪でどうにかなってしまいそうだ。


晴が俺から離れて行くか事に怯えていたのが、馬鹿みたいだ。

一刻も早く

俺の残忍性が、晴を傷付ける前にーー。


部屋に戻って、いつも使っている鞄だけを引っ掴んだ。

静かに寝室のドアを開けて、薄い胸が上下している事に心底安堵する。

「晴、ごめん…ごめんな…。」

感情に任せて酷い抱き方をしてしまった。

それどころか、全てを取り上げようとすらして。

涙の痕が残る頬に触れようとして、寸前で手を握り込む。

俺には、そんな資格無いーー。

鼻の奥がツンとして、逃げるように顔を背けた。

キッチンに向かいペットボトルを持つと、目を覚ました晴が直ぐに喉の渇きを潤せるようにサイドボードに置く。

無理をさせた身体が心配だが、晴をここから出さないつもりで調達した食糧や飲料が大量にある。

皮肉なものだが、暫くは家から出なくても生活できるだろう。

何か言おうとして…結局何も言えずに、只々寝顔を見詰める。

細胞の一つ一つにまで、その姿を焼き付けるかのように。

それから、静かにマンションを出た。

一度も振り返らずにバイクを走らせて。

辿り着いたのが実家な辺りガキだが、基本的に人がいないここは都合がいい。

とにかく今は1人になりたかった。


晴はもう目を覚ましただろうか。

俺がいない事に気付いて、何を思うだろう。

心配?それとも、安堵?

手酷く抱いた俺に対して恐怖心はあるだろうか。

謝りたい。

だけど近付く事自体が危険だ。

今回は夢の影響で踏みとどまれたが、次同じ事があったら?

俺自身が俺を信じられないーー。

纏まらない思考と後悔が濁流のように押し寄せる。

スマホが着信を告げてドキリとしたが、表示されたのは父親の名前。

とてもじゃないが出る気にならなぬて、無視を決め込む。

それなのに、一向に鳴り止む気配がない。

一度切れても、数分後にはまた掛かってくる。

晴との事が伝わってる筈はないが…じゃあ何の用だ?

流石に気になって、6度目の着信で画面をタップした。

「な」「蓮、直ぐ病院に来てくれ。」

何?と言う間もなく伝えられた用件に、父親の常ならぬ様子を感じる。

「美優ちゃんがーー」

その続きは衝撃だった。


美優が




急いで向かった切藤総合病院では、秘書の笹森さんが俺を待っていた。

「こちらです。」

案内されたのは、7階フロアのVIPルーム。

政治関係者の入院等に使用されるこのフロアは、強固なセキュリティーが他の病院とは段違い。

そんな場所に、身内とは言え美優がいる事に嫌な予感がする。

病室では2人の看護師が忙しなく動き周り、その中心にベッドに横たわる美優がいた。

目を閉じて呼吸器をつけるその顔色は悪い。

「心因性のショックで気を失っていますが…命に別状はありません。」

らしくない歯切れの悪さに目で促すと、笹森さんは言いにくそうに続ける。

「お腹の子にとっては、あまりいい状態ではありません。」

つまり、この状態が続くと危険って事か。

「翔は?」

「勤務先の病院に連絡しましたが、緊急のオペ中との事で伝えられていません。こちらに着くのは深夜になるかと。」

何やってんだよ…翔。

少しも非はないと分かってるが、そう思わずにはいられない。

「親父は?」

「ここだ。少し待っててくれ。」

背後から現れた親父は看護師に2、3指示を出すと、俺達を理事長室へ促した。

ソファに全員が座ると、重苦しい声で話し始める。

「電話でも言ったが、美優ちゃんは階段から突き落とされた。運よく通りかかった人間に支えられて、転がり落ちるのは避けられたが…。」

妊婦にとっては数段でも危険極まりない。

「相手は?」

「目撃者の話しだと、中肉中背の男らしい。警察にも協力を仰いで、服装や顔の特徴を精査してる。」

「心当たりは?」

美優は接客業だから、人と知り合う機会はかなり多い。

美優だから狙ったのか、偶々そこにいたのが美優だったのかによっても捜査の方向性は変わるだろう。

そう思って父親を見ると、俯いて額を抑える。

これ程酷く憔悴している姿を見るのは初めてで、1番嫌な線の関与を予感した。

いや…まさかな…。

「そのまさかだ。」

心を読んだかのように、親父が告げる。


「…犯人は、ほぼ間違いなく霊泉家の人間だろう。」


ここ最近パタリと音沙汰が無くなっていた一族の名前に奥歯を噛み締める。

「…その根拠は?」

すると、親父が笹森さんを見て頷いた。

席を立った笹森さんが戻って来ると、その隣にはーー。

「…は?中野?」

やや緊張した面持ちで立つのは、間違いなく中野啓太。

「彼が美優ちゃんの命の恩人で…唯一の目撃者だ。」



●●●
蓮にお世話された後再び晴が目を覚ましたのは翌日の事。解決編『5』のラストで晴の意識と身体が回復してるのはこのタイムラグがあるからです。

























蓮、闇堕ち寸前でした。
不思議なお守り。。




































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