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高校生編side晴人 好きな人が、自分を好きかもしれない。

77.初デートへ

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バシッ

「一本!そこまで!」

礼をして面を外すと、評価をもらいに竹田先輩の元へ行く。

「啓太は前回伝えた足運びがだいぶ良くなってるから、その調子だ。
晴人はーーー集中力が欠けてるな。
…何かあったのか?」

竹田先輩は大学3年生で、剣道部のOBだ。

俺が中学の頃からの付き合いだから気心が知れてて、俺達の事を良く見てくれてる。

だからこそ、鋭い。

「竹田先輩、プライベートな事をお話ししても良いでしょうか。」

啓太が「先輩」へ許可を取り、認められると「お兄ちゃん」に対するような話し方に変えた。

「晴人はね、クリスマス近いからソワソワしてんの。」

啓太がニヤニヤ笑う。

「あー…デートなのか?」

竹田先輩もニヤニヤする。

黒髪に爽やかな顔、筋肉質では無いのに大学の剣道部では副将を務める手練れ。

そんな憧れの先輩に揶揄われて、俺は真っ赤になる。

「よし、まぁそっちは頑張れ!
でも部活は集中しろ!いいな!」

「ハイッ!!」

反省と共に大きな返事をして、その日の部活は終わった。





剣道部の足りない備品は、蓮の伝手と竹田先輩の大学の物を借りる事で何とか補えた。

部活再開のために尽力してくれた先輩には事件の顛末を話してて、無茶するなって叱られちゃったけど。

大会までには名前入りの防具も間に合いそうで、何とか一段落した感じ。

俺達は気合いも新たに練習に励んでる。



…励んでるつもりなんだけど、どうしても。

週末に控えた蓮との「デート」がチラつくんだよぅ!



蓮のバイトと俺の部活の予定が合わなくて、誘われてから2週間が経過したこの週末にやっと行ける事になった「デート」。

季節は12月に突入!

街はクリスマスモード!!

行き先は水族館!!!

しかも、蓮のバイクの後ろに乗って!!!


蓮と出かけた事はたくさんあるけど、二人っきりで水族館とか初めてだ。

これってク、クリスマスデートってやつ⁉︎

デートって何着ていけばいいの??


悩んだ俺は「デート」とは言わず、蓮と水族館に行くからって服装のアドバイスを頼んだ訳なんだけど…。

『デート服のコーデね!任せて!』

いい笑顔のサッキーが啓太も巻き込んで、三人で買い物に繰り出す展開になった。

アドバイスもらって、バイクでも防寒バッチリ且つお洒落な服も買えたんだけどさ。

『いやぁ、バイトの件はどうなるかと思ったけど良かった!俺、マジで蓮に殺されると思ってたから!』

その節はごめん、サッキー。

『デートじゃないんだってば!ただ出掛けるだけ!』

だってさ、デートって恋人同士が出掛ける事でしょ?
俺と蓮はそんな関係じゃない。

少なくとも、恋人ではないもん。

必死に言う俺の言葉はサッキーと啓太には届かず。

『クリスマスデートに浮かれる奴』の完成である。


う、浮かれてなんか…ちょっとしか無いから!



だってさ、楽しみなんだもん。


最近の俺の生活聞いてくれる?


暫く朝練が無かったから、毎朝蓮が迎えに来てくれてさ。

朝一でイケメンの笑顔を堪能して。

電車では相変わらず壁ドン(ドアドン?)して周りから守ってくれるし。

寒がってたら、自分のマフラーを俺に巻いてくれて。

改めてバイト先に呼んでくれて、キャラメルラテ奢ってくれて。
(完全に余談なんだけど、蓮のバイト先、コーヒー1杯800円する!!)

半個室みたいになってるスペースで閉店までのんびりして、バイト終わりの蓮と帰って。

別れ際とか。暗くて周りに誰もいない時は、
そのーーあれ。

毎回キスされるようになった。

『キスしていい?』って聞いて来る時は、蓮がちょっとイジワルな時。

何も考えられなくなっちゃうくらい深くキスされるから、落ち着くまで家に入れない。

なのにさ、涙目の赤い顔で呼吸を整えてると、また軽くキスしてくるからなかなか収まらなくて。

俺が「もう無理!」って降参するまで続けられるから困る。

…なら早めに降参すればいいじゃんって思った?

俺もそう思う。

思うんだけどさ…離れるのが寂しいんだよ。

もっと一緒にいたくて、つい許しちゃう。

それに、蓮のキスは優しいし気持ちいいし…。

困るけど、やめてほしくは無くて。。



ご、ごめん。
クリスマスとか関係なく、とんだ浮かれ野郎だわ、俺。



と、とにかく!

そんなこんなで、日を重ねる度に蓮への「好き」が大渋滞な訳だ。

蓮も前よりさらに優しいって言うか…。

相変わらず口は悪いんだけど、俺を見詰める目が甘いーーー気がする。


あ、やっぱり浮かれ野郎かな?
流石に反省しよう。



だけどね、溢れる「好き」をどうしたらいいか分かんないんだ。

これって、伝えるべきなのかな。

実は俺の一方通行で、断られて気まずくなる…とかあり得る?

それは絶対に嫌だ。

この幸せな毎日が壊れるなら、このままでいい。

そんな風に思っちゃうんだよね。



因みに、ブルボンヌ先生の最後の問いはこう。

『10.彼は貴方といる時、幸せそう?』


イエス、だと思いたい。
少なくとも俺にはそう見えるから。

でも、これって俺の主観だもんね?

都合のいいように解釈してるってパターンもある訳で。。。

結局、1~10の質問を通しても蓮が俺の事好きかどうかは分からず。


現状、俺は何もできないヘタレ野郎ですーー。








「晴、準備できてるか?」

迎えに来た蓮の声にハッと思考を止めた。

ついに今日はデート当日!

水族館を羨ましがる父さんに見送られて、俺は家を出た。

「私服で会うの久々だよな。そのコーデすげぇ似合ってる。」

俺の全身を眺めた蓮が誉めてくれる。

この間、美優さんにちょっと整えてもらっただけの髪型にも気付いた蓮。

モテる男はやっぱり違うぜ…。

「あ、ありがと。蓮も、その…カッコイイよ。」

対して、全くスマートにできない非モテ代表の俺。

それでも蓮は嬉しそうに笑ってくれた。

あぁ、今日もイケメンが過ぎる。


「わ!このバイクなんだ!凄いね!」

初めて見た蓮のバイクは、結構大きい。

「18歳まではこれが限界だからな。いつかもっとデカイの欲しいわ。」

そう言いながら、シート下から防寒着を取り出す。

「寒いから上にこれ着て。」

防寒用の上着を着せられて、ヘルメットもつけてくれた。

ヒラリと、長い脚でバイクに跨る蓮。

初めて見るその姿は、何だか大人びて見える。

「晴?どした?」

「あ、何でもない!」

思わず見惚れてた俺は慌てて後ろに乗った。

「もっとしっかり腕回せ。」

おずおずと蓮の腰に手を回す俺の腕を、蓮がしっかり巻きつける。

「俺の背中に体重かけていいから。ピッタリくっついてて。」

「は、はい。」

「ふっ、照れてんの?」

「ちーがーう!は、初めてだから緊張する!」

そう言うと、蓮は振り返ってチラリと俺を見た。

「大丈夫。気持ち良くて癖になるようにしてやるよ。」

バ、バイクで走るのが、ね?

なんか…いやなんか言い方アレじゃない⁉︎

流し目で言われるとアレなんですが⁉︎

赤くなった俺を見て、蓮が笑ってる。


あ、また揶揄われた!

「怒んなって。ほら、行くぞ!」

そんな楽しそうにされたら怒ってられない。


だって、俺も楽しいんだもん!



軽快に走るバイクの心地いい振動と共に、俺達のデートは始まった。






●●●
水族館を提案したのは蓮。
お洒落なお店もたくさん知ってますが、晴人が楽しめる事を最優先にしました。
グッジョブ。
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