【完結まで残り1話】桜の記憶 幼馴染は俺の事が好きらしい。…2番目に。

あさひてまり

文字の大きさ
上 下
94 / 252
高校生編side晴人 好きな人が、自分を好きかもしれない。

78.花火とキスと、それから…

しおりを挟む
バイク最高じゃん!

初めての感想はこの一言に尽きる。

もっと寒いと思ってたんだけど、蓮が貸してくれた上着が防寒性バッチリで全然大丈夫だった。

しかもね、身体が冷えないようにって途中でカフェに寄って、めちゃめちゃ美味しいホットチョコレートご馳走してもらっちゃった。

俺の好物だから、バイト仲間に美味しいお店を聞いてくれたらしい。

めちゃめちゃ優しくない??


安全のために、合法的に蓮の背中にピッタリくっ付けるのも嬉し恥ずかし。

デートって途中段階もこんな楽しいの⁉︎



そんな訳で、水族館到着の時点で既に満足しちゃってたんだけど。


事前にチケットを買ってた蓮が、スマホのワンタッチで入場させてくれまして。

慌ててチケット代を払おうとしたら「俺はバイトしてんだからいいんだよ。」なんて言われちゃいまして。


お金を出そうとお財布を探ってた手を取られて、そのまま中に誘われてーーー。


ス、スマートすぎない⁉︎

「どした?」

蓮が顔を覗き込んで来る。

「や、その、何か手慣れてんなと思って。」

蓮、もしかしてデート初めてじゃないのかも。

そうだよ。中3の夏祭り、蓮は遥と2人でーー

「俺の母親誰だと思ってんだよ。」

「へ?」

全く予期してなかった回答にポカンとする。

蓮母…?
あぁそっか。

「ガキの頃からこう言うの叩き込まれてんだって。『勉強より大事』とか言って、どんな親だよ。」

呆れたような蓮の言い方に思わず笑ってしまう。

「ま、役に立ってるからいいけどな。」

「うんうん、めっちゃスマート!モテる男は違うね!」

俺が茶化すと、蓮は繋いだままの俺の手をグッと引いた。

「晴にしか発揮しないけどな?」

耳元でそう言われて、意味を考えて。

まるで『特別だ』って言われてるみたいで、狼狽えて蓮を見ると…笑ってる。

あ!また揶揄われた!

「む~~!……えっ!待ってシロクマいるじゃん!」

秒速で怒りが鎮まる。

「デカッ!!ねぇ、蓮見てーーー」

振り返って、心臓がドキリと跳ねる。

蓮は少しもシロクマなんか見てなくてーー優しい瞳で俺を見てた。

「めっちゃハシャぐじゃん。」

目が合った事に気付いた蓮が、そう言いながら俺の頭をぽんぽん叩く。

「そりゃハシャぎもしますて!
間違っても子供みたいとか言うなよ⁉︎」

「言わない。普通に可愛い。」

「か…かわっ…⁉︎」

「チッ。人いなかったらキスできたのに。」

「へっ⁉︎」

赤くなった頬をスリっと撫でられる。

こんなに満たされたように微笑む蓮を見るのは初めてでーー。


なぁ、蓮。

俺が蓮にその表情をさせてるんだって、自惚れてもいいのかな。


「ほら、行こうぜ。」

手を引く蓮の温もりに胸が高鳴る。

「ひ、人に見られるから…」

「ここ水族館だぜ?海のお友達に夢中で、誰も俺らなんか見てねぇよ。」

強気な蓮に言われて、そのままずっと手を繋いで過ごした。

2人で色んな生き物を見ながら話したり笑ったり、本当に楽しくて。

お昼は館内のレストランで食べて(ここは俺が払うって譲らなかったよ!)午後はイルカショー。

座席に並んで座ると、腰に手を回された。

「れ、蓮…見られ」「ねぇ席選んだから大丈夫だろ?」

慌てる俺の言葉を遮った蓮。

前の方が空いてるのに一番後ろに座ったのは、このためだったらしい。

「寒くないか?」

そう言って、空いてる方の手で俺の手を暖める。

ショーの会場は吹き曝しで、12月の空気は冷たい。

なのに、俺は顔が熱くてしょうがないよ。

包まれた手も、密着した身体も。

それから、胸の奥もーーー。




ショーを堪能した後はまた少し館内を見て、外に出た。

「ヤバイ!めちゃめちゃ楽しかったな!」

「ん。なら良かった。何かアトラクション乗ろうぜ。」

この水族館は外に遊園地が併設されてる。

「やった!ジェットコースター乗ろう!」

時刻は16時。
冬の空はもう日も暮れてきてるけど、絶叫系は制覇したいよね。

走り出す俺を、蓮が笑いながら追って来る。

その姿はいつもより少し幼く見えてーー。

バイクに乗ってるときはいつもよりさらに大人っぽく見えたのに。

そのギャップにまたドキドキする。

ダメだ…今日ずっと蓮に惚れ直しっぱなしだ。

デートってこんな風に好きを更新していくイベントなの⁉︎

世の中のカップルってこんな楽しい事してるの⁉︎

最高じゃんか!!



身悶えるようなその気持ちを、思う存分ジェットコースターで発散して。

フリーホールとか、グルグル回る奴(名前が分かんない!)とか色々乗って。


ちょっと休憩しようって事になって、温かい飲み物を買ってベンチに座る。

月と星が見えるほど暗くなった園内。

少し先の方には、クリスマス時期らしくイルミネーションが輝いてる。

ポツンと置かれたベンチの周りには人影がない。


「朝家出てもう夜か。すげぇあっと言う間だったな。」

「ほんとだよね!あと10時間は遊べるわ!」

蓮の言葉に興奮気味に重ねる。

「マジ?そんなに楽しかった?」

「いや最高でしょ!…蓮も楽しかった…よな?」

一人でハシャいでたんじゃないかと不安になって、蓮に問いかける。

「当たり前だろ。お前と一日中過ごせたんだから。」

そう言われて安心したら、頬に手を添えられた。


あ、これキスされるやつかも…。


そう思ったけど、人の目とかは気にならなかった。

暗いし、ここに人の気配が無いのもそうなんだけど…。

ただ、蓮に触れたくて。
触れられたくて。

キス、して欲しいなーーー。


そう思った顔が、グイッと横に向けられる。

「へ?」

「晴、あっち見てろ。」

何?

混乱する俺の目の前で、イルミネーションがフッと消えた。


そしてーーー




ドォン!!




大きな音と共に、真っ暗な空に光りが弾ける。



「花火!!」



キラキラ輝くそれに見惚れる。

冬の花火は空気が澄んでるから余計に綺麗って本当だったんだな。


その感動を伝えたくて、蓮の方を向くとーー。

蓮と目が合った。

偶然?
それとも、ずっと俺の事見てた?

花火の色が蓮の瞳に映って綺麗で。

微笑まれて、もうどうしようもない位に「好き」が溢れる。


蓮が俺の事をどう思ってるか知りたかったけど…。

それは関係ないんだって気付いた。

蓮の想いが何処にあったとしても、俺は伝えたい。

優しくて、時々イジワルで、でも俺を大事にしてくれて。

一緒にいるとこんなに幸せを感じる。



そんな蓮の事が、好きなんだって。



「蓮……んっ…。」


想いのままを口にしようとした唇が塞がれた。


俺の髪を梳く蓮の手つきも、触れるだけのキスも泣きたくなるほど優しくてーー。





「好きだ。」







離れた唇から落ちてきた言葉に、時が止まる。




「晴が好きだ。幼馴染じゃ足りない。
晴の、恋人になりたい。」




溢れる想いを音にしたのは、蓮だった。










●●●
94話かかってやっと!!
ついに両思い!…なのか??
























































しおりを挟む
感想 86

あなたにおすすめの小説

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

言い逃げしたら5年後捕まった件について。

なるせ
BL
 「ずっと、好きだよ。」 …長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。 もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。 ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。  そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…  なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!? ーーーーー 美形×平凡っていいですよね、、、、

【幼馴染DK】至って、普通。

りつ
BL
天才型×平凡くん。「別れよっか、僕達」――才能溢れる幼馴染みに、平凡な自分では釣り合わない。そう思って別れを切り出したのだけれど……?ハッピーバカップルラブコメ短編です。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

俺にとってはあなたが運命でした

ハル
BL
第2次性が浸透し、αを引き付ける発情期があるΩへの差別が医療の発達により緩和され始めた社会 βの少し人付き合いが苦手で友人がいないだけの平凡な大学生、浅野瑞穂 彼は一人暮らしをしていたが、コンビニ生活を母に知られ実家に戻される。 その隣に引っ越してきたαΩ夫夫、嵯峨彰彦と菜桜、αの子供、理人と香菜と出会い、彼らと交流を深める。 それと同時に、彼ら家族が頼りにする彰彦の幼馴染で同僚である遠月晴哉とも親睦を深め、やがて2人は惹かれ合う。

からかわれていると思ってたら本気だった?!

雨宮里玖
BL
御曹司カリスマ冷静沈着クール美形高校生×貧乏で平凡な高校生 《あらすじ》 ヒカルに告白をされ、まさか俺なんかを好きになるはずないだろと疑いながらも付き合うことにした。 ある日、「あいつ間に受けてやんの」「身の程知らずだな」とヒカルが友人と話しているところを聞いてしまい、やっぱりからかわれていただけだったと知り、ショックを受ける弦。騙された怒りをヒカルにぶつけて、ヒカルに別れを告げる——。 葛葉ヒカル(18)高校三年生。財閥次男。完璧。カリスマ。 弦(18)高校三年生。父子家庭。貧乏。 葛葉一真(20)財閥長男。爽やかイケメン。

処理中です...