【解決編更新中】桜の記憶 幼馴染は俺の事が好きらしい。…2番目に。

中学生編 side晴人

4.混乱と快感

「ーーー⁉︎」

驚いて押し返そうとするけど、ビクともしない。
蓮の奴いつの間にこんなに力が強くなってたんだ⁉︎

力がダメなら言葉だと、抗議しようとするとーー

「んむっ⁉︎」

開いた僅かな隙間から、ぬるりと何かが入ってくる。
これ、もしかし…なくても蓮の舌か⁉︎

「…んぅっ……」

熱い舌に絡めとられて、思わず鼻から抜けたような甘ったるい声が出る。
ピクッと蓮の肩が反応したのを感じた直後、舌の動きが増した。
ザラリと上顎をなぞられて身体が震える。

嫌悪じゃない。
気持ちいいーーー。

抵抗していた俺の手はいつの間にか蓮の学ランを握り締めていた。

「晴ーーー。」

ゆっくり唇を離した蓮が耳元で俺の名前を呼ぶ。
たったそれだけなのに、頭の中が痺れるこの感覚は何だーーー。

「な…んで。」

必死で呼吸を整えると少しずつ理性が戻って来た。
蓮が俺にキスした。
幼馴染で男の俺に…。

どうしてこんなことになった⁉︎
蓮は何考えてるんだ⁉︎


俺は、目の前の蓮に何て言えばいいんだ…。

「…気持ち悪かった…？」

ポツリと言った蓮の言葉に、俺は当たり前だろ！と返そうとして、できなかった。

全然気持ち悪くてなんかなかった。
むしろ……。
顔に一気に熱が集まる。


「う、わぁぁぁぁぁぁぁぁぁ！！！！」


完成にキャパオーバーになった俺は絶叫して逃げ出した。
蓮の顔も見ず、言葉も聞かず。
置き去りにしてーーー。



家の前まで走り続けて、荒い息を吐く。
口元を拭おうとして蓮の唇の感触を思い出した。

「ど…どう…しよう…。」

ズルズルと座り込む俺の髪から、桜の花弁がフワリと舞ったーーーー。



次の日から、俺は蓮を避けた。
朝は先に家を出て朝練に励み、授業の合間は身を隠し、昼休みは部室で過ごす。
帰りカチ合うとまずいと思っていたけど杞憂に終わった。
校庭の整備でサッカー部は暫く休みらしい。

蓮には、俺の父さんから部活が忙しいと伝えてもらってる。
父さんは絵本作家で基本在宅ワークだから、もし蓮が来たらと思ってもお願いしておいた。

流石に気まずいだろうし来る訳ないかと思ったんだけど、あの日の翌日も蓮はいつも通り俺を迎えに来たらしい。

「喧嘩でもしたの？蓮くん元気なかったよ。」

「まぁ、そんなとこ。」

心配する父さんに曖昧に返す。
言える訳ないよな、蓮にキス…それもベロチューされたなんて。

って言うか俺、ファーストキスだったんだけど！
それをあんな軽々と奪いやがって！
あれ？でも待てよ？
蓮だって、多分初めてだったんじゃないか？
妙に手慣れてたけど、今まで一緒にいてそう言う経験があるなんて聞いたことないな。

ってことは、蓮のファーストキスの相手も俺って事か…。

それって、何か悪くない気がする。

…訳ないだろ！！
どうした落ち着け俺！
何考えてんだ！！

大体、キスって言うのは好きな人とするものだ。
お互い合意の上で気持ちを確かめ合うためにするもの…だよね？

「晴、ドラマ始まったよ。」

父さんの声に我に返ると、リビングのTVでドラマが始まっていた。
このドラマ、超流行ってて観ないと次の日学校での話題に乗り遅れる。

俺は気を取り直して、父さんと二人ソファに座ってドラマを見始めた。（因みに母さんは夜勤。）
あー、やっぱ可愛いよなぁカッキー。
画面に映るのは国民的女優。
そこにこれまた大人気の俳優が現れて、カッキーの腕を引っ張る。
そして、キスーーー。

『お前が好きなんだ！』

『そんな、急に言われても…。考えさせて！』


ーーーーーーーは？？

これって男側の片想いだよね？
でもキスしたの？
え、キスってそう言うのもありなの？？

飲みかけのコーラのボトルを持ったまま茫然とする。

じゃ、じゃあ蓮は…。


もしかして、俺の事が、好き？


ボタボタボタ


「わー！！晴！コーラ溢してるから！
早くティッシュ！！」


父さんがめちゃめちゃ焦ってるけど、俺にはその声がどこか遠くに聞こえていた。

まさか、そんなーーー。

まさか、だよね？