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中学生編 side晴人
5.衝撃
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まさかそんな訳がないと思いつつ、俺はますます蓮と顔を合わせ辛くなった。
油断するとぐるぐる考えてしまう。
5月の初めに修学旅行があったけど、そこでも話さなかった。
元々クラスが違うから一緒に行動はできないけど、いつもの蓮だったら夜は俺の部屋に来たんじゃないかな、なんて思ってしまう。
旅行中、時折目にする蓮はいつも違う女の子と居た。
と言っても蓮がチャラチャラしてる訳じゃない。
女の子達からある物を貰って欲しいと言われていたのだ。
それは、我が校伝統の告白手段だったりする、旅行先のとある神社で売られている桜の形のお守りだ。
薄いガラス製で見た目が可愛くて人気がある。
特徴的なのは…ちょっと桜の花を想像して欲しいんだけど、500円玉サイズのそれが真ん中でパカッと等分されてるんだよね。
半分はピンク、もう半分はブルーで、組み合わせると一つになる。
カップルで半分こする、ハート型のストラップとかあるじゃん。
アレの桜ヴァージョンって言うと伝わりやすいかな?
その桜はそれぞれ裏に名前を彫ることができる。
ただし、ローマ字で4文字まで。
例えば意中の相手がタカシ君なら『taka』って具合になる訳だ。
タカシ君の意中の相手がリサちゃんなら、ブルーの方に『taka』、ピンクの方に『risa』と彫ってもらう。
その石の自分の名前の方を相手に贈り、相手の名前の方を自分が持つと永遠に一緒にいられる…って言うのがこの「桜守り」
どうでもいいけど、例題に「タカシ君」を登場させちゃうのって日本人の癖だよなぁ。
まだ永遠の愛を誓えない中学生からしても、
自分の名前の彫られた方を渡す=告白
になる。
勇気が出なくて好きとは言えなくても相手に好意が伝わる、先輩達が作りし素晴らしい伝統。
まぁ、俺には全く関係ないけどね…。
ただし、蓮には関係大有りだった。
噂によると、少なくとも10人の女子に貰って欲しいと言われて全て断ったそうだ。
蓮がますますモテてるのが分かってモヤモヤする。
自分から避けといてあれなんだけど、俺は蓮と話せなくて寂しいんだ。
だからこんなにモヤモヤするんだろうな…。
そうこうしてるうちに修学旅行も終わってしまい、季節は梅雨に入ろうとしている。
ダメだ!考えたって埒があかない!
蓮とちゃんと話そう!!
良く考えたらあの日、蓮の話しも聞かずに逃げ出したのは俺だ。
すぐに理由を聞いていればこんなに拗れなかったかもしれない。
出来心だったとか、冗談だったって言われても大丈夫なように心の準備はしてある。
もし万が一、蓮が俺を好きなんだとしたら…それはその時考えよう。うん。
ウジウジ悩む割に突き抜けると短絡的になる俺は、
その日の放課後すぐに蓮を探した。
だけど全然見つからなくて、校舎には人気がすっかり無くなってしまった。
教室に鞄があったから、まだ帰ってはいないはずだ。
探し回って四階まで来た時、四階から屋上へ続く階段から声が聞こえた。
屋上は封鎖されているから、ここには生徒も先生も近付かないはず。
不審に思って気付かれないように階段下から覗くと、踊り場に人影が見えた。
見付けた。蓮だ。
こんな所で何してるんだろう?
近付こうとした時、その奥にもう一人誰かがいるのが見えた。
顔は分からないけど女子みたいだ。
あ、これ告白かも。
ピンときた俺は、邪魔しちゃ悪いと思うのにその場から動けない。
蓮は断るよね?いつもそうしてるし…。
女子の手が見えて、蓮はその子から掌サイズの小さな巾着のような物を受け取っていた。
薄いブルーのそれは、母さんがアクセサリーを持ち運ぶのに使ってるような奴だ。
蓮が受け取ったことに何故かモヤモヤして、蓮の顔が見えるようにそっと角度を変えた俺の目に飛び込んで来たのは、女子に壁ドンしてる蓮。
そしてーーー。
ーーーーキス、してる。
蓮と奥にいる女子の唇が重なっていた。
金縛りにあったかのように動けなくなった俺の耳に、唇を離した女子の声が聞こえた。
「ーーー!ーーにもーーーーね。」
小声だから会話の内容までは分からない。
分からないけど、この、声は…。
息を殺して少しだけ近付くと、それは確信に変わる。
その瞬間、俺は踵を返して駆け出した。
めちゃくちゃに走って、気付いたら剣道部の部室にいた。
部活が休みの部室には誰もいない。
俺は内側から鍵をかけると、床に蹲る。
何でーー。何でーー⁉︎
蓮とキスしていたのは、遥だった。
間違いない。俺が遥を見間違える訳がない。
『オレ、好きな奴いるから。』
以前、彼女を作る気がないのか聞いた俺に対して蓮が言っていた言葉が蘇った。
それが、遥?
確かに二人は仲がいい。
三人で話していても、二人にしか分からない会話をしてたり、アイコンタクトしている時がある。
ただ、いつもケンカ腰だし言いたいことも遠慮なく言い合うから、兄妹みたいな感じなんだと思っていた。
だけど、違ったんだーーー。
蓮は、遥の事が好きなんだーー。
油断するとぐるぐる考えてしまう。
5月の初めに修学旅行があったけど、そこでも話さなかった。
元々クラスが違うから一緒に行動はできないけど、いつもの蓮だったら夜は俺の部屋に来たんじゃないかな、なんて思ってしまう。
旅行中、時折目にする蓮はいつも違う女の子と居た。
と言っても蓮がチャラチャラしてる訳じゃない。
女の子達からある物を貰って欲しいと言われていたのだ。
それは、我が校伝統の告白手段だったりする、旅行先のとある神社で売られている桜の形のお守りだ。
薄いガラス製で見た目が可愛くて人気がある。
特徴的なのは…ちょっと桜の花を想像して欲しいんだけど、500円玉サイズのそれが真ん中でパカッと等分されてるんだよね。
半分はピンク、もう半分はブルーで、組み合わせると一つになる。
カップルで半分こする、ハート型のストラップとかあるじゃん。
アレの桜ヴァージョンって言うと伝わりやすいかな?
その桜はそれぞれ裏に名前を彫ることができる。
ただし、ローマ字で4文字まで。
例えば意中の相手がタカシ君なら『taka』って具合になる訳だ。
タカシ君の意中の相手がリサちゃんなら、ブルーの方に『taka』、ピンクの方に『risa』と彫ってもらう。
その石の自分の名前の方を相手に贈り、相手の名前の方を自分が持つと永遠に一緒にいられる…って言うのがこの「桜守り」
どうでもいいけど、例題に「タカシ君」を登場させちゃうのって日本人の癖だよなぁ。
まだ永遠の愛を誓えない中学生からしても、
自分の名前の彫られた方を渡す=告白
になる。
勇気が出なくて好きとは言えなくても相手に好意が伝わる、先輩達が作りし素晴らしい伝統。
まぁ、俺には全く関係ないけどね…。
ただし、蓮には関係大有りだった。
噂によると、少なくとも10人の女子に貰って欲しいと言われて全て断ったそうだ。
蓮がますますモテてるのが分かってモヤモヤする。
自分から避けといてあれなんだけど、俺は蓮と話せなくて寂しいんだ。
だからこんなにモヤモヤするんだろうな…。
そうこうしてるうちに修学旅行も終わってしまい、季節は梅雨に入ろうとしている。
ダメだ!考えたって埒があかない!
蓮とちゃんと話そう!!
良く考えたらあの日、蓮の話しも聞かずに逃げ出したのは俺だ。
すぐに理由を聞いていればこんなに拗れなかったかもしれない。
出来心だったとか、冗談だったって言われても大丈夫なように心の準備はしてある。
もし万が一、蓮が俺を好きなんだとしたら…それはその時考えよう。うん。
ウジウジ悩む割に突き抜けると短絡的になる俺は、
その日の放課後すぐに蓮を探した。
だけど全然見つからなくて、校舎には人気がすっかり無くなってしまった。
教室に鞄があったから、まだ帰ってはいないはずだ。
探し回って四階まで来た時、四階から屋上へ続く階段から声が聞こえた。
屋上は封鎖されているから、ここには生徒も先生も近付かないはず。
不審に思って気付かれないように階段下から覗くと、踊り場に人影が見えた。
見付けた。蓮だ。
こんな所で何してるんだろう?
近付こうとした時、その奥にもう一人誰かがいるのが見えた。
顔は分からないけど女子みたいだ。
あ、これ告白かも。
ピンときた俺は、邪魔しちゃ悪いと思うのにその場から動けない。
蓮は断るよね?いつもそうしてるし…。
女子の手が見えて、蓮はその子から掌サイズの小さな巾着のような物を受け取っていた。
薄いブルーのそれは、母さんがアクセサリーを持ち運ぶのに使ってるような奴だ。
蓮が受け取ったことに何故かモヤモヤして、蓮の顔が見えるようにそっと角度を変えた俺の目に飛び込んで来たのは、女子に壁ドンしてる蓮。
そしてーーー。
ーーーーキス、してる。
蓮と奥にいる女子の唇が重なっていた。
金縛りにあったかのように動けなくなった俺の耳に、唇を離した女子の声が聞こえた。
「ーーー!ーーにもーーーーね。」
小声だから会話の内容までは分からない。
分からないけど、この、声は…。
息を殺して少しだけ近付くと、それは確信に変わる。
その瞬間、俺は踵を返して駆け出した。
めちゃくちゃに走って、気付いたら剣道部の部室にいた。
部活が休みの部室には誰もいない。
俺は内側から鍵をかけると、床に蹲る。
何でーー。何でーー⁉︎
蓮とキスしていたのは、遥だった。
間違いない。俺が遥を見間違える訳がない。
『オレ、好きな奴いるから。』
以前、彼女を作る気がないのか聞いた俺に対して蓮が言っていた言葉が蘇った。
それが、遥?
確かに二人は仲がいい。
三人で話していても、二人にしか分からない会話をしてたり、アイコンタクトしている時がある。
ただ、いつもケンカ腰だし言いたいことも遠慮なく言い合うから、兄妹みたいな感じなんだと思っていた。
だけど、違ったんだーーー。
蓮は、遥の事が好きなんだーー。
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