微笑む似非紳士と純情娘

月城うさぎ

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第三部

13.意地悪な要求

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白夜が暴走……いろんな意味でがっつりいきます。苦手な方は回避してください。
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 黒く艶めく白夜の髪が、さらりと流れる。至近距離で見つめあうだけで、私の身体は切なく疼くようだ。
 こめかみにしてくれたキスだけじゃ物足りない。その大きな手で私の肌を撫でて、身体中を触ってほしい。情熱的な口づけで吐息さえも奪ってほしい。そんな欲求がふつふつとこみあげてきて、私は自分から引き寄せるように白夜の首に腕を巻き付けた。
 
 「白夜……キス、頂戴?」
 微かに頬を綻ばせた彼は、目尻を下げて私を見つめる。ゆっくりと耳元に口を寄せて、触れるようなキスを耳たぶに落とす。そしてくちゅりと私の耳を舐めた。

 「ひゃっ……!?」
 ぴくん、と身体が反応する。そんな私の姿に白夜は執拗に耳を攻めた。

 「あ……いや、違う……! 耳は、やぁ……」
 「嫌? こんなに感じている顔をしているのに?」

 ふるふると頭を振るのに、意地悪な彼はほしいところにキスをしてくれない。耳が弱いなんて今まで思ったこともなかったのに、白夜と触れ合ううちにどうやら私は自分の弱い部分が増えてしまったようだ。未開発の身体がどんどん白夜に染まっていくよう。私に覆い被さっている彼は、その後頬や首筋にキスを落とすくせに、どこにも触ってくれない。それがひどくじれったくて、私の身体にも熱が溜まる一方だ。

 さわさわと円をかくように、ゆっくりと胸に触れられた。それだけで全神経と熱が胸に集中する。柔らかく優しく触れる手つきはひどくもどかしい。もっと強く揉んで、触って。そう視線で訴えるのに、彼は笑みを崩さず私をじっと見下ろしてくる。
 ダメ、そんなのだけじゃ我慢できない。
 もう硬く主張を始めているであろう先端にも触れてほしい。それをわかっている癖に、白夜は私の望み通りには動いてくれないようだ。

 「白夜……もっと……」
 熱の籠った目で彼を見上げる。くすりと笑った白夜は、壮絶な色香を放ちながら一言「どうして欲しいのですか?」と問うてきた。
 そんなの、わかっているはずなのに……!
 彼は私に言ってほしいらしい。欲しい物は自分から欲しいと言いなさい、なんて優しい声音でとんでもない事まで言ってきた。

 なんて意地悪なの! 

 先ほどまでは確かに苦しげな顔をしていたのに、今はすっかり元通り。余裕の顔を崩さない。それがひどく悔しくて、私だけ乱れている気になってくる。それでも自分の熱には抗えなくて、彼に触れてほしいという欲求は止まることを知らない。

 ふと白夜は身体を起こして、寝そべったままの私を抱き起した。ベッドの上に座った形になった私に、白夜は静かな、でも絶対的な声で告げた。

 「上手に自分でできたら、あなたの望み通りにしてあげますよ」
 「……自分、で?」

 頭がぼうっとしている状態で言われてもいまいちピンとこない。きょとんとする私に白夜は頬に素早くキスをした後。睦言をささやくように直接耳朶に吐息を吹き込んだ。

 「ええ、麗が自分でその熱を慰めるのです。ドレスは着たままで結構ですよ」
 「わ、私が……?」

 困惑気味な顔で見つめるけれど、彼の命令は絶対で、曲げられるはずもない。中途半端に乱れたドレスのまま、自分で何をしろと?
 言っている意味がわかった瞬間。私の意識は遠のきかけた。でも白夜が静かに「麗?」と呼びかけてきて、顔を火照らせたまま若干涙目で見つめ返す。
 
 「ああ、ドレスはそのままでも、ちゃんと下着は脱いでくださいね? 自分でできないのなら私が脱がせますが」
 「……」
 消えるような声で、私は自分から脱ぐと答えた。

 ◆ ◆ ◆

 ぐちゅり、と室内に水音が響く。
 ベッドに座ってドレスを太ももの上にたくしあげたまま、両足は膝を立てて開脚している。ベッドに前には椅子に腰かけ、脚を組んで微笑む旦那様の姿が。軽く肘掛に片肘をついて頭を固定している姿でさえ絵になるようだ。
 そんな白夜がうっとりと目を細めながら甘い声音で告げる。

 「手が止まってますよ? ちゃんと奥までいじらないと」
 「っ!」

 なんて事をしているんだろう。
 自分で慰めている姿を愛しの旦那様に見せるなんて。高められた熱は体内で燻り続けて、どうする事もできない。自分で秘所を触るなんて慣れない行為を強要されて、しかもその姿をよく見せてまで言われるなんて……羞恥から身もだえそうになった。

 「見られているだけで感じているみたいですね……恥ずかしい方が麗は感じやすいのですか?」
 そんな風に時折声をかけられて、私はもう気絶寸前だ。すっかりディアナから麗に戻っている。さっきまではディアナが大半を占めていたのに。
 拙い動きで浅く秘所をいじっても、自分じゃうまくできない。白夜が与えてくれるような快感を得られないし、指が短くていい所にまで届かない。
 見られていると思うだけで愛液は溢れてくるのに、自分じゃどうしていいのかわからなくて私はいやいやと頭を振った。

 目の前に、すぐ近くに白夜がいるのに。
 触ってほしい、触りたい相手がいるのに。
 見られているだけじゃ足りない。直接彼の熱を感じたい。望む熱が得られないのがもしかして罰なのだろうか。白夜に触れてもらえない事がこんなにも辛くて苦しくて、切ないだなんて……

 次第に瞳が潤んでくる。視界がぼやけて、零れる吐息は熱っぽい。
 何で、何で白夜は触ってくれないの? 
 足りない、白夜じゃないと気持ちよくなれない。こんな風に自分で慰めたって、高まる熱は発散されない。私はもう泣く寸前だ。
 瞳に涙をいっぱいに溜めて、弱弱しく白夜に声をかけた。

 「っふぇ……びゃくやぁ……せつない……」
 ひっく、としゃっくりまで零れる。
 子供のように涙声で白夜の名前を紡ぎ、ぽろぽろと涙が頬を伝った。
 いつの間にか目の前にまで迫っていた白夜が、ふと蜜で濡れた私の手を取り、口許まで運んだ。

 「ひゃっ!?」
 ぺろり、と丹念にとろとろの蜜まみれの指に舌を這わせる。白夜の舌の感触が伝わってきて、舐められている指に神経が集中し始めた。

 「ぁっ……」
 零れる自分の息が艶っぽい。指をしゃぶられているだけなのに、それが何故こんなにも気持ちよく感じるの?

 ぎし、っと小さく音がする。ベッドの上に白夜が乗ったようだ。
 ふわりと抱きしめられて、白夜の匂いに包まれた。ああ、この匂い、この温もりが欲しかったの。上半身に服を纏っていないままの白夜の体温を直接感じられて、それだけで胸が満たされていく。下腹がきゅんと再び疼くようだ。

 舐められた手を握られたまま、口許まで持っていかれて、手の指先にキスを落とされる。そのままの姿勢で、上目遣いで見上げられて、壮絶な色気が感じられるようだ。私の視線は白夜から逸らせない。

 「ダメですね……どうやら、私はあなたの手にまで嫉妬してしまうようです」
 「手……?」

 身体を下へずらした白夜は、私の膝を再び立たせて、蜜で溢れさせる私の秘所に顔を埋めはじめた。
 
 「!?っあ……ん、やぁ……!」
 ぴちゃん、と水音がした後。彼の舌で舐めとられる感覚がする。その感触に背筋が粟立った。

 「麗の大事なここを愛するのは、私だけ……。私が傍にいなくて寂しくなっても、自分で慰めちゃダメですよ? いいですね?」
 「ぁっ……、そんなところで喋っちゃ、やだ……」
 
 微かな吐息さえ、毒だ。甘く感じて疼いてしまう。
 けど意地悪な旦那様は私がちゃんと了承するまで何度でもその場で囁く。口を開けば嬌声しか出てこない私は、口をつぐんでこくこくと頷いた。今はもう先ほどとは違う意味で真っ赤になって涙も浮かんでいる。

 「約束ですよ?」
 そう告げた白夜は、舌を抜き差しして私がこぼす蜜を啜った。

 「ぁああ……っ!」
 身体がもう支えられない。腕が、肘が、ぶるぶると震えて、力がもう入らない。快楽の波に飲み込まれてしまうんじゃないかって位、私の身体は極限まで高められて喘ぐことしかできないでいた。
 仰向けになってベッドで寝転がる私はもうぐったりしている。散々舐められて、待ち望んでいた白夜の指で秘所をいじられて、一度達してしまった後はもう理性などが働くはずもない。何も考えないで彼が与えてくれる甘い毒に侵されて、満たされるのを待ち望んでいるのだ。 

 力が入らない私を白夜は再び起こした。そして数歩ベッドから離れた場所まで移動させると、先ほど白夜が座っていた椅子に彼が腰掛ける。そして私も白夜の膝の上にまたがるように座らせられてしまった。
 彼の適度に鍛えられた素肌の胸に寄りかかっていると、白夜は深く私の口を貪る。繋がりを求めて、お互いの唾液を飲み込むくらい激しく情熱的なキスをされて、トロトロに蕩けた私の身体はもう限界寸前。奥が疼いて仕方がない。もっと、もっと身体の奥にまで白夜を感じたくてたまらない。
 ゆっくりと唇が離された直後。白夜は私の身体を少しずらして告げた。

 「麗、私が欲しいなら欲しいと言って?」と。
 そんな掠れた声で問われたら、既にまともな思考を持っていない私に抗えられるはずがない。素直に「白夜が欲しい」と頷いた。

 満足そうな微笑を向けられた後。彼は私に更なる試練を与えた。
 つまり、欲しいのならこのままの体勢で私が乗って動け、と。

 ――戸惑うのは、一瞬だった。
 恥ずかしいとか、もうそんな事を考えられる余裕もない。お互い服を纏ったまま、身体を繋げる。今まで直視してこなかったけど、初めて触る白夜の分身はとても熱くて、既に硬さも十分だった。こんなのがよく私の中に入るな、なんて頭の片隅で思いながら、ふらつく身体を支えてもらってゆっくりと膣内に埋める。
 
 「あっ……ん……っ」
 初めは滑ってうまくいかなかったけれど、白夜に腰を支えてもらえば少しずつ埋まっていった。自分の重みで最後はずんと奥深くまで埋まり、普段は得られない感覚に息が止まりそうになる。

 「ああ、ちゃんとうまくできましたね……」
 よくできたと子供に褒めるように白夜に頭を撫でられて、それだけで胸の奥も子宮もキュンと高鳴るようだ。知らずに締め付けてしまったらしく、白夜の柳眉がわずかに寄った。

 「そんなにきつく締め付けられると、困りますが……それでは、麗。動いて?」
 初めは白夜に支えられて腰を上下に動かされた。私もぎこちない動作で腰が動く。でも次第にそれはお互いを貪欲に求め合う動きに変わり、喘ぐような呼吸と水音が室内に満ちた。

 「ああ、びゃくや、びゃくや……、もう」
 「っ……麗、私も限界です……」
 
 ズボンが汚れちゃうとか気にしたのは一瞬だった。身体の奥深くで感じた熱い飛沫に身震いした。じんわりと感じる彼の熱に身も心も満たされていく。

 ぎゅうっときつく抱きしめられて、私も力の限り抱き返した。
 幸福感に包まれながら、私はふっと意識を手放した。

 ◆ ◆ ◆

 涙目になりながら乱れる麗の姿を白夜は思い出す。
 未だにつながったままの状態で、意識を手放した麗が愛しくて仕方がない。中途半端に脱がせたままで、あんな顔を見せられれば。欲情するなという方が無茶だろう。

 さらりと黒いウィッグを撫でた。
 この姿の麗に会いたいが為にこの一泊旅行を計画したが、ここまで自分の無茶に付き合ってくれるとは流石に思わなかった。お仕置きを計画したのは、PV同様自分にも同じ格好で迫ってもらうところまで。その後は完全に麗の扇情的な姿に煽られた自分の思いつきだった。

 純粋無垢で聖女の姿の麗が小悪魔に変貌する瞬間を堪能できただけでも満足したが、その後の彼女の泣き顔にさらに煽られた。切ない、と呟いた麗が愛しくて、同時に純白が似合う清らかな存在を穢しているという背徳感を感じて、さらに欲望が高まった。彼女を想う気持ちに終わりがなくて、自分はどこまで彼女を求めてしまうのだろう? と寝顔の麗を見ながらふと思う。

 「少々やりすぎましたかね……」

 この姿も好きだが、やはり普段の麗が好きだと再認識した。どんな格好でも麗は麗だ。愛しく感じる気持ちも変わらない。
 名残惜しいが白夜は繋がりを解いて、麗をベッドにまで運んだ。内股を伝う情事の証に目をとめて、小さく笑みが零れる。後始末をさっとした白夜は、自身も同じようにベッドに寝転がり、きつく彼女を抱きしめたのだった。
















 
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……少々?
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