森に捨てられた俺、転生特典【重力】で世界最強~森を出て自由に世界を旅しよう! 貴族とか王族とか絡んでくるけど暴力、脅しで解決です!~

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第4章

15話:復讐か未来か

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「私は、今は亡きアルベルティア王国の王女だった」

 イシュリーナのその言葉に、広間がざわめいた。しかし、彼女が続けて話し出すと、誰もが息を潜めて耳を傾けた。

 かつてイシュリーナは、氷雪の美しさと優雅な文化で知られた小国「アルベルティア」の王女だったらしい。だが、そのアルベルティアは帝国の侵攻によって滅ぼされた。国も家族も、すべてを奪われたのだという。

「最期の一瞬まで戦いました。しかし、帝国の圧倒的な軍事力の前には、どうにも抗えなかった」

 語る彼女の声には、あの日の記憶が甦っているかのような苦痛が混じっていた。
 城が落ちる瞬間まで戦い続け、家族を目の前で失いながらも、彼女は生き延びるために逃げるしかなかったのだ。

 復讐の念に囚われた彼女は、もはやかつての優雅な王女ではなかった。
 氷のように冷たい表情と、暗く凄惨な瞳――彼女は新たに「氷雪の魔術」を手にした。
 絶望と怒りから生み出されたその魔術は、彼女の意思で瞬時に周囲の温度を氷点下へと落とし、敵を氷の檻に閉じ込めるほどの強力な力を持っていた。
 やがてイシュリーナは、帝国の追跡を逃れるようにガルガット山脈に姿を消し、そこで一人、氷の宮殿を築き上げた。

 俺は彼女の話を黙って聞いていたが、彼女がなぜその場所を選んだのかが理解できた。
 ガルガット山脈の厳しい自然環境と冷気は、まさに彼女の絶望をそのまま具現化したような場所だ。人を寄せつけず、ただ氷と冷たい風だけが支配するその地で、彼女は己の魔術をさらに研ぎ澄ませたのだろう。

「アルベルティアの栄光を取り戻すつもりだったのか?」

 俺の問いかけに、イシュリーナはわずかに頷いた。

「ええ……宮殿は私にとって、失われた国の象徴のようなもの」

 彼女が見上げる視線の先には、かつての栄華を思わせるような遠い記憶が垣間見えた。
 その氷の宮殿で、イシュリーナはただ一人、孤独と復讐の念に囚われ、誰も寄せつけずに己の心まで凍らせて過ごしていたのだ。

 その後、魔王軍が彼女の領域に侵攻してきたこともあったが、彼女はその冷酷な力で撃退してみせた。
 それ以来、彼女は「氷雪の女王」として恐れられ、周囲から一層孤立していったらしい。

 彼女の物語を聞き終えたとき、俺は冷ややかな微笑を浮かべていた。
 確かに、彼女の力と覚悟は並のものではない。だが、今は俺に従順な部下となったのだ。

「帝国に復讐がしたいか?」

 俺の言葉に、彼女は一瞬驚いた表情を浮かべつつも答えた。

「テオ様とエイシアス様が許していただけるのなら、復讐したいわ」

 復讐したいという発言に、広間の空気が張り詰める。
 今ここで俺が許可を出せば、この場は地獄絵図と化すだろう。瞬く間に、首都は氷で覆われることになる。

「それは俺が決めることじゃない。本人と帝国で決めるべきだろう。なあ、カリオス?」

 俺は同意を求めるようにカリオスへと問いかける。
 要は「俺は止めるつもりないから、お前が止めてみろ」と言っているのだ。理解しているのか、カリオスは不服そうな表情を浮かべるも、すぐに真剣な表情に戻る。

「そうだな。決めるは帝国と氷雪の女王だ。帝国は、氷雪の女王――いや。イシュリーナ殿に、今は亡きアルベルティアの地を返そうと思う。帝国の領地だが、大公として扱うことも約束しよう。どうだ?」
「それで、死んでいった者たちが報われると思っているの? 私と帝国が戦っても、私が勝つことは明白よね?」

 その発言に、今まで黙っていた高官たちが声を荒げる。

「ふざけるな! 戦争で得た地を返せだと⁉ 先祖たちが命を賭して得た地を、なんの対価もなく」
「ならば戦って散っていった方が名誉になる!」
「黙らんか! イシュリーナ殿の実力を考えてものを言わんか! 悔しいが、争ったところでこちらの負けは見えている。力ある者が絶対なのだ。それが分からないお前たちではあるまい?」
「で、ですが……」

 頭ではわかっているのだろう。過去は過去であっても、侵略者は自分たちだったと。

「イシュリーナ殿、どうすれば怒りを鎮めていただける? こちらは可能な範囲で条件を飲むつもりだ。数百年も経っているが、アルベルティアの王家の血を引く者がいる」

 その一言が広間に重く響いた。イシュリーナは思わずその言葉に反応し、目を見開いてカリオスを見つめる。

「王家の血を引く者……?」

 イシュリーナの声には、驚きと疑念が入り混じっていた。何かが心の奥で引っかかるような、そんな様子だった。

 カリオスは静かに頷き、手をひとつ上げて会議の場にいる高官たちを黙らせる。

「そうだ。何代も前に、アルベルティアの王家は他の国と血を交わすことで存続を図ろうとした。しかし、後に帝国がその血筋を潰し、王家は断絶したとされている。しかし、記録には、王族に近い血筋が今も帝国のどこかに生きているとの噂がある」

 その言葉に、広間は再び静まり返った。イシュリーナはその噂に食い入るように耳を傾け、しばらく黙って考えていた。

「それが本当だとしても、何の意味があるの?」

 彼女は冷たい声で言った。復讐を果たすために、王家の血筋が生きていようと死んでいようと、彼女にとってはどうでもいいことのように思えた。


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