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第4章
4話:レディーの準備は時間がかかる
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魔王すら恐れる、ね。
「……なぜ笑っている?」
カリオスに言われて俺は口元を触ると、彼に言われた通り笑っているようだった。
森を出てから強敵という強敵に出会っていなかった。それゆえに、戦いたくなったのだろう。
「随分と楽しそうではないか」
「クククッ、それはエイシアス、お前もだろう?」
見るとエイシアスも、俺と同じように笑みを浮かべていた。
強者がいるのなら、是非とも会ってみた。
「なあ、カリオス。その魔女をどうしてほしいんだ?」
「あの山脈は、魔女が居座るまで商人や旅人の交通に使われていた。商人の利用も多かったらしい」
「つまり、通れるようにしてほしいと」
「そういうことだ。魔女の生死は問わないが、可能なら帝国の戦力にしたいと考えている」
「魔王軍に備えてか? それとも侵略の戦力か?」
「今はもう領土など必要ない。領土が広ければ、飢えは満たされるだろうが……魔王軍もそうだが、我が国在り方的には防衛戦力が欲しいだけだ」
「そうか。まあ、好きにしたらいいさ」
俺には関係ないことだし。
「武神祭の開催は?」
「四日後だな。二人は参加するのか?」
「しない。観戦だよ。四日後か……」
何かあった場合、四日だと厳しいだろう。ならば、武神祭のあとがいいか。
そのことを伝えるとカリオスは了承した。するとリオナスが近くの者に地図を持ってくるように言っていた。
程なくして地図が持ってこられ、テーブルに広げられた。
「ここからは私が説明します」
リオナスがそう言って地図のある地点を指差す。
「ここが、帝都アルグラシアです。ここから北方にあるこの山脈。この麓、といえばいいのでしょうか。中腹あたりに城があると思います」
「城?」
「はい。氷の城です」
「なるほど。氷雪の女王と聞いて考えてはいたが、やはりそうか」
エイシアスの発言に、リリアが「やはりとは?」と尋ねた。
「彼女は単一魔術しか扱えない可能性がある。氷の大精霊とでも契約したのではないか? あるいは一体化」
「大精霊と一体化?」
俺の疑問にエイシアスは「そう」と頷いた。
「大精霊とはこの世界に一体しか存在しない」
「ん? 待て。もしかして、俺がペンダントに封じたのは……」
「八体いる大精霊のうちの六体だね。氷と雷がいなかったから、どこかにいるとは思っていたけどね」
「理解できたよ」
俺はとんでもないものをあの王女、いや女王に渡してしまったのではなかろうか?
まあ、過ぎた話だしもういいか。愉快で生意気な大精霊たちだけど。
「まあ、武神祭が終わったら会いに行ってみるよ」
「頼む。さて、話しは終わりだな。食事にしようか。当然、一緒に食べるだろう?」
カリオスの申し出に俺とエイシアス頷いた。
城仕えの料理人によるフルコースを堪能し、部屋に戻りその日は就寝した。
翌朝、メイドの朝食の準備ができていると報せで起床した。
案内に従い、昨夜会食した場所へとやってきた。
「起きたようだ」
「テオ様、エイシアス様。おはようございます」
「おはようございます」
カリオスとリリア、リオナスが挨拶をしてきたので、俺とエイシアスも「おはよう」と返して席に着いた。
席に着くと、食事が運ばれてきたので食べ始めることに。
食べ始めて少しして、リリアが訪ねてきた。
「テオ様、本日のご予定をお伺いしても?」
「今日か……」
俺は手に持ったスプーンをくるくると回しながら考える。
今日は特に考えてなかったが、行くとすれば街中を見て回るくらいだろうか?
そのことを伝えると、リリアは少し悩んでいたが、すぐに「そうです!」と両手を胸の前で合わせる。
「私がアルグラシアを案内いたします!」
「おい……」
俺がカリオスを見ると、驚いた表情をしていたが「いいんじゃないか?」と答えた。
それでいいのか、皇帝……
兄であるリオナスにも顔を向けてみるが、やれやれといった表情を浮かべていた。
エイシアスを見ると、どっちでも良さそうにしていた。
「おい、カリオス。護衛は必要ないのか?」
「はははっ、何を言っている? テオがいれば十分じゃないか。まさか、娘を殺すつもりか?」
「喧嘩や敵意を抱くようなら殺すが、そうではないなら何もしない」
「まさか! バルデリア帝国の王家は、テオとエイシアス。二人と友好関係でいたい。そもそも、二人に喧嘩を売ったら帝国は滅びる。皇帝としてそれは良しとしない」
「ははっ、益々気に入ったよ。それじゃあリリア。案内を頼もうか」
「喜んで」
朝食が済むと、リリアは準備をすると言うので、呼びに来るまで待っていた。
二時間ほど部屋で待っていると、メイドが呼びに来た。
「やっとか……」
「主、レディーの準備には時間がかかるものだよ」
「お前、出かける準備したことないだろう? 何万年も城にいたじゃないか」
「……さすがの主でも、行っていいことと悪いことがあるんだぞ?」
「……すまんかった。早く行くぞ」
「うむ」
俺とエイシアスは部屋を出ていくのだった。
「……なぜ笑っている?」
カリオスに言われて俺は口元を触ると、彼に言われた通り笑っているようだった。
森を出てから強敵という強敵に出会っていなかった。それゆえに、戦いたくなったのだろう。
「随分と楽しそうではないか」
「クククッ、それはエイシアス、お前もだろう?」
見るとエイシアスも、俺と同じように笑みを浮かべていた。
強者がいるのなら、是非とも会ってみた。
「なあ、カリオス。その魔女をどうしてほしいんだ?」
「あの山脈は、魔女が居座るまで商人や旅人の交通に使われていた。商人の利用も多かったらしい」
「つまり、通れるようにしてほしいと」
「そういうことだ。魔女の生死は問わないが、可能なら帝国の戦力にしたいと考えている」
「魔王軍に備えてか? それとも侵略の戦力か?」
「今はもう領土など必要ない。領土が広ければ、飢えは満たされるだろうが……魔王軍もそうだが、我が国在り方的には防衛戦力が欲しいだけだ」
「そうか。まあ、好きにしたらいいさ」
俺には関係ないことだし。
「武神祭の開催は?」
「四日後だな。二人は参加するのか?」
「しない。観戦だよ。四日後か……」
何かあった場合、四日だと厳しいだろう。ならば、武神祭のあとがいいか。
そのことを伝えるとカリオスは了承した。するとリオナスが近くの者に地図を持ってくるように言っていた。
程なくして地図が持ってこられ、テーブルに広げられた。
「ここからは私が説明します」
リオナスがそう言って地図のある地点を指差す。
「ここが、帝都アルグラシアです。ここから北方にあるこの山脈。この麓、といえばいいのでしょうか。中腹あたりに城があると思います」
「城?」
「はい。氷の城です」
「なるほど。氷雪の女王と聞いて考えてはいたが、やはりそうか」
エイシアスの発言に、リリアが「やはりとは?」と尋ねた。
「彼女は単一魔術しか扱えない可能性がある。氷の大精霊とでも契約したのではないか? あるいは一体化」
「大精霊と一体化?」
俺の疑問にエイシアスは「そう」と頷いた。
「大精霊とはこの世界に一体しか存在しない」
「ん? 待て。もしかして、俺がペンダントに封じたのは……」
「八体いる大精霊のうちの六体だね。氷と雷がいなかったから、どこかにいるとは思っていたけどね」
「理解できたよ」
俺はとんでもないものをあの王女、いや女王に渡してしまったのではなかろうか?
まあ、過ぎた話だしもういいか。愉快で生意気な大精霊たちだけど。
「まあ、武神祭が終わったら会いに行ってみるよ」
「頼む。さて、話しは終わりだな。食事にしようか。当然、一緒に食べるだろう?」
カリオスの申し出に俺とエイシアス頷いた。
城仕えの料理人によるフルコースを堪能し、部屋に戻りその日は就寝した。
翌朝、メイドの朝食の準備ができていると報せで起床した。
案内に従い、昨夜会食した場所へとやってきた。
「起きたようだ」
「テオ様、エイシアス様。おはようございます」
「おはようございます」
カリオスとリリア、リオナスが挨拶をしてきたので、俺とエイシアスも「おはよう」と返して席に着いた。
席に着くと、食事が運ばれてきたので食べ始めることに。
食べ始めて少しして、リリアが訪ねてきた。
「テオ様、本日のご予定をお伺いしても?」
「今日か……」
俺は手に持ったスプーンをくるくると回しながら考える。
今日は特に考えてなかったが、行くとすれば街中を見て回るくらいだろうか?
そのことを伝えると、リリアは少し悩んでいたが、すぐに「そうです!」と両手を胸の前で合わせる。
「私がアルグラシアを案内いたします!」
「おい……」
俺がカリオスを見ると、驚いた表情をしていたが「いいんじゃないか?」と答えた。
それでいいのか、皇帝……
兄であるリオナスにも顔を向けてみるが、やれやれといった表情を浮かべていた。
エイシアスを見ると、どっちでも良さそうにしていた。
「おい、カリオス。護衛は必要ないのか?」
「はははっ、何を言っている? テオがいれば十分じゃないか。まさか、娘を殺すつもりか?」
「喧嘩や敵意を抱くようなら殺すが、そうではないなら何もしない」
「まさか! バルデリア帝国の王家は、テオとエイシアス。二人と友好関係でいたい。そもそも、二人に喧嘩を売ったら帝国は滅びる。皇帝としてそれは良しとしない」
「ははっ、益々気に入ったよ。それじゃあリリア。案内を頼もうか」
「喜んで」
朝食が済むと、リリアは準備をすると言うので、呼びに来るまで待っていた。
二時間ほど部屋で待っていると、メイドが呼びに来た。
「やっとか……」
「主、レディーの準備には時間がかかるものだよ」
「お前、出かける準備したことないだろう? 何万年も城にいたじゃないか」
「……さすがの主でも、行っていいことと悪いことがあるんだぞ?」
「……すまんかった。早く行くぞ」
「うむ」
俺とエイシアスは部屋を出ていくのだった。
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