異世界でひっそりと暮らしたいのに次々と巻き込まれるのですが?

WING

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第1章

第2話:黒歴史は増やしたくない

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 俺はゴブリンの攻撃から必死で逃げ回っていた。逃げても逃げても追いかけて来る。そんなゴブリンに俺は何か良い打開策がないか思考を巡らせていた。

『作戦提案があります』
「ッ!?」

 突然脳内に響き渡った無機質な女性の声に、俺は驚きながらもその声に問いかけてみた。

「あんたが誰かは知らないが、何か案があるのなら教えてくれ!」
『了解しました。ではこれから言う指示通りに動いて下さい』
「わかった! もうあんた頼りだ! 任せたぞ!」
『了解。それではそのまま直進して下さい』

 俺は転生してスグに死にたくは無いので、言われるがままひたすら真っすぐに突き進む。

『次に左へと曲がって下さい』

 左へと曲がる。振り返るとゴブリンは追いかけてくる。ずっと走っているので体力的にも疲れ始めてきた。

「ちょっ、もう、もう走れない……」

 俺が脳内の声に走れない事を言う。

『思案中………わかりました。では5メートル先で右に曲がりましたら落ちている木の枝を拾ってください』

 言われた通り5メートル先で右に曲がり落ちている木の枝を手に取る。

「はぁ、はぁ、拾った、ぞ……」
『そこの岩の陰でゴブリンを待ち伏せして下さい。ゴブリンが出て来ましたらそれをゴブリンの目へと突き刺して下さい』
「狙いは難しいが、分かった」
『計算上それでゴブリンを倒す事が可能です』
「……分かった」

 俺は岩の陰でゴブリンを待つも、緊張で心臓の鼓動がドクドクと早くなり始める。
 日本で生きていて決して味わう事の無い死への恐怖。
 そして俺は、殺さないと俺が死ぬかもしれないと言うこの状況に、ある意志を二つ立てた。
 一つ、それは勝てないと分かっている相手には全力で逃げること。
 二つ、敵には容赦をしないこと。
 この二つを誓った。
 でなければここでは生きていけないからだ。


 ――その時が来た。

『接敵5秒前、4、3、2、1――今です』

 不敵に口角が弧を描く。
 ゴブリンは俺が曲がった所を曲がってくる。
 そこで茂みに隠れて待っていた俺は茂みから出て、手に持っていた鋭利な木の枝でゴブリンの眼球目掛けて躊躇無く突き出した。ゴブリンは躱そうとしたが躱すことが出来なく右目に枝が突き刺った。

 グギャァァァッ!?

 ゴブリンは目に突き刺さった痛みに耐えられなく悲鳴を上げる。だが俺は枝を更に深く深く突き刺した。突き刺してしばらくするとゴブリンの悲鳴は止まった。同時に声が聞こえた。

『レベルが上がりました。ステータスを確認して下さい。それと同時にユニークスキル《略奪者》にてゴブリンが持っていたスキル《身体強化(S)》を獲得しました』

 俺はそう言われるが確認の仕方が分からなく尋ねる。それになんかスキル奪って習得したらしい。

「どうやって確認するんだ?」
『秋人様のスキル《天眼》でステータスと強く念じて確認してみて下さい』

 言われた通り念じると目の前に半透明の画面が出現する。そこには俺のステータスが書かれていた。


 名前:柊秋人
 レベル:21
 種族:人間
 ユニークスキル:経験値増加 略奪者 幸運 叡智 アイテムボックス 天眼
 スキル:身体強化(S)
 称号:転生者


「なんかレベルが高くないか? 最初は1だもんな?」
『はい。最初は1からです。ですが先程のゴブリンのレベルは103でした』
「……え、103? まじで? そうそう。あんたは一体誰なんだ? 俺をこんなにサポートしてくれるし」
『私は秋人様のスキル《叡智》から作り出された疑似人格です』
「そ、そうなのか。少し信じ難いが、まあそうなか。にしてもそれは凄いな。それと『様』を付けるのは止めてくれ。俺には合わない」
『了解。それでは『秋人様』改め、『マスター』と呼ばせていただきます』
「その方がいいかな。それとこの世界ではさっきのゴブリンのレベルが普通なのか?」
 だってレベル103とかおかしいし……
『いえ。通常はレベル3~15となっております』
「……あのゴブリンが異常なだけか?」
『違います。この森のゴブリンは全てのレベルが100~120となっており、この森で最弱な魔物です』
 どうやらこの森が異常なだけのようだ。
 それとあのレベル帯のゴブリンがうじゃうじゃいると聞いて俺は戦慄した。あれが最弱の魔物だなんて。叡智から聞いたゴブリンのステータスはこんな感じだ。

 名前:ゴブリン
 レベル:103
 スキル:身体強化(S) 

 俺はこの森で一番レベルが高い魔物を聞いた。叡智から返ってきた答えは。

『この森の最高レベルは8600です。その魔物の種族は竜王種です』 
「は、8600!? 俺なんてゴブリンのレベルにも及ばないこの森で最弱の人間だぞ!?」
『その通りです。マスターはスキル《略奪者》で倒した時に奪ったスキル、《身体強化(S)》を持っておりますがまだ互角ではありません。今はまだゴブリン相手に罠から不意打ちしか通じません』
「ゴブリン相手に罠を使っての不意打ちしか通じないって………」

 だがこんなところでごちゃごちゃ言ってられない。まずは自分の拠点となる場所を探し作らなければなのだ。

「どこか拠点に出来そうな場所はあるか?」
『思考中……発見。ここから西に10キロ離れた洞窟には魔物はいなく拠点には最適かと思われます』

 少し離れているが俺は行くと即決した。
 それから俺は出会ったゴブリン相手に叡智の作戦を使い倒して行く。
 拠点まであと1キロと言うところで隣から大きな音がした。確認して見るとそれは──“山”からだった。先程まではそこにあったそれはこちらへとゆっくりと動き始めていた。

「な、なんだよアレ……」
『あの魔物の名前はマウンテンタートルです』
「あっ、ご丁寧に説明ありがとうございます」
『レベルは3470です』
「それを早く言えーーーーッッ!!」

 俺は全力の全力で走って逃走する。ステータスが上がったからか走る速度が段違いに早くなっていた。
 100メートル3秒弱という速度だ。俺のレベルが上がればさらに早くなるので、これには陸上選手も真っ青な顔をするレベルである。

 走っているとじょくううに影が差した。自分が居た場所が突然暗くなったことに不安になりつつ空を見上げると──巨大な鳥がいた。見た目は鷹の姿そっくりなそれはマウンテンタートルに向かって急降下した。

 マウンテンタートルは突然襲い掛かって来た鷲の姿をした魔物に、背負っている山を『噴火』させた。噴火によってマグマや火山弾が鷲の姿をした魔物に襲い掛かる。
 鷲の姿をした魔物は急降下をしたからか、それを避けられなくマグマへと突っ込み一瞬で溶け絶命した。
 それは後ろを振り返った一瞬の出来事だった。

「この場所ヤバすぎだろ!? てか火山弾がこっちに降って来てるじゃねぇーか!」

 俺は火山弾を避けながら逃げる。頭の真上を通ったり目の前に落ちたりとそれはもう散々だった。それでも俺はなんとか目的地の洞窟までなんとか辿り着いた。

「はぁ、はぁ……ここが、そうなのか?」

 荒い呼吸のまま俺は叡智へと尋ねた。

『はい。こちらが目的地の拠点で安全地帯となる洞窟です。マップをご覧下さい』
「マップ? 確か《天眼》にはマップ機能が……」
『はい。意識すればマップが表示できます。無くなるように念じれば消すことも可能です』
「わかった」

 そう言われ俺は念じてマップを出し確認する。入口は人が一人通れる程度。中に入ると真っ暗だった。それもそうだろう。ここは洞窟なのだから。

「暗いな……」
『スキル《魔法(S)》を申請中………承諾を確認。《魔法(S)》を習得しました。これでマスターは全ての魔法が使用可能です』

 なんか叡智さんが頑張ってくれたお陰で魔法を獲得しました……

 え? マジで?

 叡智さんの説明だと、この世界の基本属性魔法は火、水、風、地、光、闇の6属性となっている。これに生活魔法や今は無いとされる空間魔法などがあるが、俺は叡智さんのお陰(?)で全てを取得している。

 それと気になっていたスキルレベルの階級はこうなっている。
 S>A>B>C>Dとなっている。

 俺は取得たばかりの魔法を使用し、光魔法にて光源を作り出す。魔法だが取得した時に魔法に関しての詠唱や技名など、全ての情報が脳内へと流れ込んできた。

 俺の精神などはスキルの叡智が管理してくれているので、一気に情報が流れ込んで来ても耐えられるようだ。
 そして俺は人生で初めての魔法を発動させる。

「大いなる光よ、闇を照らしたまえ――ライト!」

 すると目の前に10センチ程の光の玉が出現し光輝き、洞窟の中が見渡せるようになった。
 洞窟内の天井までの高さは約2.5メートル。奥行は15メートル程だ。それよりも……

「詠唱するのが恥ずかし過ぎるだろ!?」

 俺は地面をゴロゴロと転がり先程の詠唱を思い出していた。

「あれは恥ずかしすぎる……俺は異世界に来ても黒歴史を作る事になるのか!!」
『スキル《無詠唱》を申請中………承諾を確認。スキル《無詠唱》を習得しました』

 叡智さんは俺の為に頑張ってくれています。これで黒歴史を作らなくて済んだ俺は心からホットするのだった。



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