60 / 65
第2章
第59話:筆頭宮廷魔法師
しおりを挟む
――翌日。
フィアを送り届けた俺とゼノアは、一緒に学院に向かっていた。
学院の正門が見えると、そこには一台の馬車があった。
あの紋章は……
そう思っていると馬車の扉が開き下りてきた。
下りてきたのは勿論――
「やっぱりクレアか」
「うむ。ゼノアじゃの」
ゼノアも同じことを思っていたようだ。
俺とゼノアの声に気が付いたクレアがこちらに振り返った。
「あっ、アキトさんにゼノアさん! おはようございます!」
「おはようクレア」
「クレアおはようなのじゃ」
「一緒に行きましょう」
「ああ」
「うむ」
そのまま俺とゼノアはそのままクレアと共に教室へと向かった。
向かう途中、聞こえてくるのは……
「アイツだぞ。なんかすごい魔法を使ったっていうやつ」
「聞いた聞いた。でもインチキって噂もあるみたいだ」
「マジかよ」
……うん。そこまで気にする必要はなかったみたいだ。
別に俺の事をインチキ呼ばわりするなら構わないが、身内や友達を馬鹿にされていたら少しイラついていた。
教室に着くと、みんなが挨拶をしてくる。
なにかと魔法実技の授業の後、クラスメイト達から話しかけられることが多くなり、昨日の今日で打ち解けていた。
「今日は王国の筆頭宮廷魔法師様が直々に俺達に魔法を教えてくれるらしい!」
「本当か!?」
そんな会話が聞こえてきた。
気になった俺は隣にいるクレアに聞いてみた。
「なあクレア」
「なんですか?」
「さっきからみんなが言っている筆頭宮廷魔法師っていうのは?」
「そういえばアキトさんはファナティオに会ってなかったですね」
「ファナティオ?」
俺はクレアが言った人名を聞き返した。
「はい。先ほど噂になっている筆頭宮廷魔法師の人ですよ。魔法の扱いではこの国一ですよ」
えっへん、と誇らしげに胸を張るクレア。
そうなのか。
「でも何故王城で会わなかったんだ?」
王城に行っていたから会っていても可笑しくはないはず。
だが答えはすぐにわかった。
「ファナティオは遠方の方にお仕事で行っており、つい最近帰ってきたばかりなんですよ」
「なるほどな」
しばらくすると担任のザインがやってきた。
「みんな席に着け~」
ザインが来たことで全員が自分の席に座る。
全員が座ったことを確認したザインは口を開いた。
「知っている人もいると思うが、今日は外部から魔法の講師を呼んでいる。筆頭宮廷魔法師のファナティオさんだ」
すると教室から歓喜の声が上がる。
「ファナティオ様がくるのか!」
「世界でも数人しかいない指折りの魔法士だ」
「そんな人から授業を受けられるとはな~」
話を聞く限りファナティオさんというのは相当な魔法の使い手らしい。
俺も何か学びたいところだ。
授業が始まった。
「では講師のファナティオさんだ。どうぞ」
「失礼します」
教室の扉が開き入ってきたのは、長い金髪の美人であった。
俺達の前に立つと自己紹介を始めた。
「始めまして。今回外部講師をやらせていただきます、筆頭宮廷魔法師、ファナティオ・アグレシラといいます。本日はよろしくお願いします」
お辞儀をするファナティオ。顔を上げたファナティオと一瞬目が合った気がした。
気のせい、だよな?
気のせいだろう。
ファナティオの挨拶に俺達も「お願いします」と返事を返した。
ザイン先生が口を開いた。
「ではファナティオさん、お願いします」
「はい。それではまず、魔力制御に関してです」
みんなが「魔力制御?」と疑問の声を上げる。
「あの、何故魔量制御なのでしょうか?」
一人の男子がファナティオへと質問した。
「魔力制御。それは魔法を扱う上でとても重要な事です。何故重要なのか? わかる人はいますか?」
教室の中を見渡すファナティオ。
手を上げたのは俺の隣にいるクレアのみ。ファナティオがクレアを指した。
「ではクレア様」
「はい」
席を立ちを口を開く。
「魔力制御は魔法のコントロール、魔力量を上げるのにとても重要な行いです。魔力の制御が出来なければより上位の魔法行使が難しくなるからです」
「その通りです。だから魔力制御はとても大事なのです。では魔法とはなんですか? わかる人」
「はい」
手を上げたのはクラスメイトの男子、アウストだった。
「アウストと言います。魔法は不可能を可能にするものです」
「違います。いや、不可能を可能にする、と移転に関していえばその通りですね。他に誰かいますか?」
俺は挙手する。
「では君。名前も一緒に」
「はい。アキトです。魔法は己のイメージを具現化することのできるものであり、不可能を可能にするもの」
「イメージ、ですか……」
「はい。どんな魔法でもイメージさえできていれば詠唱など不要です」
「どんな魔法でも詠唱が不要?」
俺はファナティオの返しに「はい」と肯定し続ける。
「イメージさえできていれば魔法は詠唱無しで行使が可能です。ですが、イメージ不足ですと詠唱時よりも魔法の威力は激減してしまい、使用魔力量も多くとられてしまいます」
「……ではあなたは全ての魔法を無詠唱で扱えるのですか?」
「一通りは出来ますね。要は明確なイメージさえできれば魔法は無詠唱で扱えるという事です」
そう言って俺は席に着いた。
隣に座るゼノアも「その通りじゃな」と頷いていた。
クレアや他のクラスメイト達も唖然と言った感じであった。
「そうですか。では何か見せていただけますか?」
「いいですよ。ザイン先生、ここでいいのですか?」
「いや、訓練場でやるとしよう。その方がファナティオさんもやりやすいでしょうし」
「そうですね」
ファナティオも了承したことで、俺達は訓練場へと移動をした。
訓練場に到着してさっそく、ファナティオが俺に向かって口を開いた。
「ではアレに向かって魔法を放ってください」
そういってファナティオは訓練場に設置されている的を指差した。
「魔法は?」
「なんでもいいです。全力でやりなさい」
「……いいの?」
俺はクレアの方を振り返る。
「ファナティオ、流石に全力は……」
俺の魔法がどれだけヤバいかを知っているクレアは止めようとする。
「構いません。あれだけ言うのです。どれだけ凄いのか見てあげますよ」
なんか上から目線なんだが……まあいいか。
「あの、アキトさん」
「なんだ?」
「せめて威力だけは調整してくださいね?」
「わかってる。学院を消し飛ばしたくないからな」
「は、ははっ……た、頼みましたよ?」
「ああ」
俺は的から20メートル離れた場所に立たつのだった。
フィアを送り届けた俺とゼノアは、一緒に学院に向かっていた。
学院の正門が見えると、そこには一台の馬車があった。
あの紋章は……
そう思っていると馬車の扉が開き下りてきた。
下りてきたのは勿論――
「やっぱりクレアか」
「うむ。ゼノアじゃの」
ゼノアも同じことを思っていたようだ。
俺とゼノアの声に気が付いたクレアがこちらに振り返った。
「あっ、アキトさんにゼノアさん! おはようございます!」
「おはようクレア」
「クレアおはようなのじゃ」
「一緒に行きましょう」
「ああ」
「うむ」
そのまま俺とゼノアはそのままクレアと共に教室へと向かった。
向かう途中、聞こえてくるのは……
「アイツだぞ。なんかすごい魔法を使ったっていうやつ」
「聞いた聞いた。でもインチキって噂もあるみたいだ」
「マジかよ」
……うん。そこまで気にする必要はなかったみたいだ。
別に俺の事をインチキ呼ばわりするなら構わないが、身内や友達を馬鹿にされていたら少しイラついていた。
教室に着くと、みんなが挨拶をしてくる。
なにかと魔法実技の授業の後、クラスメイト達から話しかけられることが多くなり、昨日の今日で打ち解けていた。
「今日は王国の筆頭宮廷魔法師様が直々に俺達に魔法を教えてくれるらしい!」
「本当か!?」
そんな会話が聞こえてきた。
気になった俺は隣にいるクレアに聞いてみた。
「なあクレア」
「なんですか?」
「さっきからみんなが言っている筆頭宮廷魔法師っていうのは?」
「そういえばアキトさんはファナティオに会ってなかったですね」
「ファナティオ?」
俺はクレアが言った人名を聞き返した。
「はい。先ほど噂になっている筆頭宮廷魔法師の人ですよ。魔法の扱いではこの国一ですよ」
えっへん、と誇らしげに胸を張るクレア。
そうなのか。
「でも何故王城で会わなかったんだ?」
王城に行っていたから会っていても可笑しくはないはず。
だが答えはすぐにわかった。
「ファナティオは遠方の方にお仕事で行っており、つい最近帰ってきたばかりなんですよ」
「なるほどな」
しばらくすると担任のザインがやってきた。
「みんな席に着け~」
ザインが来たことで全員が自分の席に座る。
全員が座ったことを確認したザインは口を開いた。
「知っている人もいると思うが、今日は外部から魔法の講師を呼んでいる。筆頭宮廷魔法師のファナティオさんだ」
すると教室から歓喜の声が上がる。
「ファナティオ様がくるのか!」
「世界でも数人しかいない指折りの魔法士だ」
「そんな人から授業を受けられるとはな~」
話を聞く限りファナティオさんというのは相当な魔法の使い手らしい。
俺も何か学びたいところだ。
授業が始まった。
「では講師のファナティオさんだ。どうぞ」
「失礼します」
教室の扉が開き入ってきたのは、長い金髪の美人であった。
俺達の前に立つと自己紹介を始めた。
「始めまして。今回外部講師をやらせていただきます、筆頭宮廷魔法師、ファナティオ・アグレシラといいます。本日はよろしくお願いします」
お辞儀をするファナティオ。顔を上げたファナティオと一瞬目が合った気がした。
気のせい、だよな?
気のせいだろう。
ファナティオの挨拶に俺達も「お願いします」と返事を返した。
ザイン先生が口を開いた。
「ではファナティオさん、お願いします」
「はい。それではまず、魔力制御に関してです」
みんなが「魔力制御?」と疑問の声を上げる。
「あの、何故魔量制御なのでしょうか?」
一人の男子がファナティオへと質問した。
「魔力制御。それは魔法を扱う上でとても重要な事です。何故重要なのか? わかる人はいますか?」
教室の中を見渡すファナティオ。
手を上げたのは俺の隣にいるクレアのみ。ファナティオがクレアを指した。
「ではクレア様」
「はい」
席を立ちを口を開く。
「魔力制御は魔法のコントロール、魔力量を上げるのにとても重要な行いです。魔力の制御が出来なければより上位の魔法行使が難しくなるからです」
「その通りです。だから魔力制御はとても大事なのです。では魔法とはなんですか? わかる人」
「はい」
手を上げたのはクラスメイトの男子、アウストだった。
「アウストと言います。魔法は不可能を可能にするものです」
「違います。いや、不可能を可能にする、と移転に関していえばその通りですね。他に誰かいますか?」
俺は挙手する。
「では君。名前も一緒に」
「はい。アキトです。魔法は己のイメージを具現化することのできるものであり、不可能を可能にするもの」
「イメージ、ですか……」
「はい。どんな魔法でもイメージさえできていれば詠唱など不要です」
「どんな魔法でも詠唱が不要?」
俺はファナティオの返しに「はい」と肯定し続ける。
「イメージさえできていれば魔法は詠唱無しで行使が可能です。ですが、イメージ不足ですと詠唱時よりも魔法の威力は激減してしまい、使用魔力量も多くとられてしまいます」
「……ではあなたは全ての魔法を無詠唱で扱えるのですか?」
「一通りは出来ますね。要は明確なイメージさえできれば魔法は無詠唱で扱えるという事です」
そう言って俺は席に着いた。
隣に座るゼノアも「その通りじゃな」と頷いていた。
クレアや他のクラスメイト達も唖然と言った感じであった。
「そうですか。では何か見せていただけますか?」
「いいですよ。ザイン先生、ここでいいのですか?」
「いや、訓練場でやるとしよう。その方がファナティオさんもやりやすいでしょうし」
「そうですね」
ファナティオも了承したことで、俺達は訓練場へと移動をした。
訓練場に到着してさっそく、ファナティオが俺に向かって口を開いた。
「ではアレに向かって魔法を放ってください」
そういってファナティオは訓練場に設置されている的を指差した。
「魔法は?」
「なんでもいいです。全力でやりなさい」
「……いいの?」
俺はクレアの方を振り返る。
「ファナティオ、流石に全力は……」
俺の魔法がどれだけヤバいかを知っているクレアは止めようとする。
「構いません。あれだけ言うのです。どれだけ凄いのか見てあげますよ」
なんか上から目線なんだが……まあいいか。
「あの、アキトさん」
「なんだ?」
「せめて威力だけは調整してくださいね?」
「わかってる。学院を消し飛ばしたくないからな」
「は、ははっ……た、頼みましたよ?」
「ああ」
俺は的から20メートル離れた場所に立たつのだった。
21
お気に入りに追加
4,829
あなたにおすすめの小説
スキルポイントが無限で全振りしても余るため、他に使ってみます
銀狐
ファンタジー
病気で17歳という若さで亡くなってしまった橘 勇輝。
死んだ際に3つの能力を手に入れ、別の世界に行けることになった。
そこで手に入れた能力でスキルポイントを無限にできる。
そのため、いろいろなスキルをカンストさせてみようと思いました。
※10万文字が超えそうなので、長編にしました。
異世界転生は、0歳からがいいよね
八時
ファンタジー
転生小説好きの少年が神様のおっちょこちょいで異世界転生してしまった。
神様からのギフト(チート能力)で無双します。
初めてなので誤字があったらすいません。
自由気ままに投稿していきます。
生産性厨が異世界で国造り~授けられた能力は手から何でも出せる能力でした~
天樹 一翔
ファンタジー
対向車線からトラックが飛び出してきた。
特に恐怖を感じることも無く、死んだなと。
想像したものを具現化できたら、もっと生産性があがるのにな。あと、女の子でも作って童貞捨てたい。いや。それは流石に生の女の子がいいか。我ながら少しサイコ臭して怖いこと言ったな――。
手から何でも出せるスキルで国を造ったり、無双したりなどの、異世界転生のありがちファンタジー作品です。
王国? 人外の軍勢? 魔王? なんでも来いよ! 力でねじ伏せてやるっ!
感想やお気に入り、しおり等々頂けると幸甚です!
モチベーション上がりますので是非よろしくお願い致します♪
また、本作品は小説家になろう、エブリスタ、カクヨムで公開している作品となります。
小説家になろうの閲覧数は170万。
エブリスタの閲覧数は240万。また、毎日トレンドランキング、ファンタジーランキング30位以内に入っております!
カクヨムの閲覧数は45万。
日頃から読んでくださる方に感謝です!
加護とスキルでチートな異世界生活
どど
ファンタジー
高校1年生の新崎 玲緒(にいざき れお)が学校からの帰宅中にトラックに跳ねられる!?
目を覚ますと真っ白い世界にいた!
そこにやってきた神様に転生か消滅するかの2択に迫られ転生する!
そんな玲緒のチートな異世界生活が始まる
初めての作品なので誤字脱字、ストーリーぐだぐだが多々あると思いますが気に入って頂けると幸いです
ノベルバ様にも公開しております。
※キャラの名前や街の名前は基本的に私が思いついたやつなので特に意味はありません
平民として生まれた男、努力でスキルと魔法が使える様になる。〜イージーな世界に生まれ変わった。
モンド
ファンタジー
1人の男が異世界に転生した。
日本に住んでいた頃の記憶を持ったまま、男は前世でサラリーマンとして長年働いてきた経験から。
今度生まれ変われるなら、自由に旅をしながら生きてみたいと思い描いていたのだ。
そんな彼が、15歳の成人の儀式の際に過去の記憶を思い出して旅立つことにした。
特に使命や野心のない男は、好きなように生きることにした。
チート転生~チートって本当にあるものですね~
水魔沙希
ファンタジー
死んでしまった片瀬彼方は、突然異世界に転生してしまう。しかも、赤ちゃん時代からやり直せと!?何げにステータスを見ていたら、何やら面白そうなユニークスキルがあった!!
そのスキルが、随分チートな事に気付くのは神の加護を得てからだった。
亀更新で気が向いたら、随時更新しようと思います。ご了承お願いいたします。
異世界転生したら何でも出来る天才だった。
桂木 鏡夜
ファンタジー
高校入学早々に大型トラックに跳ねられ死ぬが気がつけば自分は3歳の可愛いらしい幼児に転生していた。
だが等本人は前世で特に興味がある事もなく、それは異世界に来ても同じだった。
そんな主人公アルスが何故俺が異世界?と自分の存在意義を見いだせずにいるが、10歳になり必ず受けなければならない学校の入学テストで思わぬ自分の才能に気づくのであった。
===========================
始めから強い設定ですが、徐々に強くなっていく感じになっております。
家族もチート!?な貴族に転生しました。
夢見
ファンタジー
月神 詩は神の手違いで死んでしまった…
そのお詫びにチート付きで異世界に転生することになった。
詩は異世界何を思い、何をするのかそれは誰にも分からない。
※※※※※※※※※
チート過ぎる転生貴族の改訂版です。
内容がものすごく変わっている部分と変わっていない部分が入り交じっております
※※※※※※※※※
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる