異世界でひっそりと暮らしたいのに次々と巻き込まれるのですが?

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第2章

第58話:フィアを迎えに行くと

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 実技授業でそこそこやらかした俺とゼノア。
 半日で授業が終わり、フィアは一日授業のようだった。なので先に帰り、クレア共に王城へと戻りフィリップさんにその事を話すと。

「ははは! アキト殿とゼノア殿はやってしまったのか」

 盛大に笑われた。
 実はあの第一訓練場には、他のクラスの人もおり相当目立っていたのだ。
 教室に戻るとクラスメイト達が、俺とゼノアの所に集まり話しかけられた。そのお陰か、当日で俺とゼノア、クレアはクラスに馴染む事ができていたのだ。

「だって先生が全力でやれって言っていたから、威力は相当抑えたんだぞ? まあ、初めて使った魔法だったけども……」

 全力でやっていたら王都の一部どころか、王都自体が地図から無くなってはいたのだが。
 それを付け加えて話すとフィリップさんは顔を青くしていた。

「ま、魔法は程々に、な? ゼノア殿も」
「分かってる」
「もちろんなのじゃ」

 ふぅー、と安堵するフィリップさんとクレア。

「まあでも、クラスに馴染めたのなら良かった」
「そこに関しては本当に良かったと思ってる」

 高校だったら恐らく友達はできてはいないだろう。
 てかいなかったし。

 前の事なんてどうでもいいのだ。
 ここは日本ではない。異世界なのだから。

「でもアキトさん。あの魔法って重力魔法、ですよね?」
「ああ。アレンジというか、オリジナルだな。コスパは良いな」

 コスパは良いと言うが、それは俺のレベルからするとだ。クレアとかが放つと魔力のほとんどが持っていかれるだろう。

 そんなこんなで俺たちは談笑をし、フィアを迎えに行く時間になった。

「そんなじゃフィアを迎えに行ってくるわ。クレアまた明日。フィリップさんもまた今度」
「またなのじゃ」
「はい。また明日」
「いつでも来てくれ」

 こうして俺とゼノアはフィアを迎えに学校へと行くのだった。

 学校に着き校門で待っていると、俺とゼノアを見つけたフィアが友達と一緒に向かってきた。

「お兄ちゃん! ゼノアお姉ちゃん!」
「おかえりフィア」
「おかえりなのじゃ」

 飛び付くフィアを俺は優しく受け止めた。
 フィアに続くかのように他の子も寄ってきた。

「フィアちゃん! あ、フィアちゃんのお兄さんとお姉さんだ!」

 そう言って来たのは、この前の入学式で会ったフィアの友達であるエミリーであった。

「こんにちはエミリーちゃん」
「こんちはなのじゃ」

 他にもう一人おり、その女の子はエミリーの後ろで隠れていた。なので俺は、フィアにその子の事を尋ねるため一度下に降ろした。

「フィアその子は? 新しいお友達かな?」
「そうなの! 名前はネイロちゃんなの!」

 フィアによって俺とゼノアの前に連れて来れられたネイロ。

「あ、あの……」

 ピンクの髪色が特徴のネイロは緊張なのか、オドオドしていた。
 俺はしゃがみ込んで目線を合わせる。

「初めまして。フィアの保護者のアキトだ。こっちはゼノア」
「初めましてなのじゃ。ゼノアなのじゃ」
「は、初めまして。ね、ネイロって言います……」

 そう言って直ぐにエミリーの後ろへと隠れてしまった。

「ネイロちゃんは人見知りなんです」

 エミリーが説明してくれた。
 チラチラと後ろからこちらを覗くネイロ。見ていて可愛らしい。心が浄化されていく気分だ。

「っとそうだ。二人は歩いて帰るのか?」
「違うの。パパが迎えに来てくれるの!」
「わ、私もです……」

 二人ともお父さんが迎えに来てくれるようだ。
 少しすると俺の後ろから名前を呼ぶ声が聞こえた。

「エミリー、お父さんが迎えに来たぞ~」
「ネイロ、お父さんだぞ~」

 俺は立ち上がり声が聞こえた方を振り向いて──

「「って、うちの娘に話しかけてんじゃねぇ!」」
「はぁ!?」

 ついそんな声を上げてしまった。
 殴りかかる二人の顔をよく見ると、どこかで見た事ある顔であった。

「どこかで……あっ! よく見るとグリファスの所にいる騎士じゃん」
「「死ねぇぇぇってあれ? ……アキトさん!?」」

 俺の一メートル手前で何とか踏み留まった二人。
 この二人はグリファスの所にいる騎士で、仲良しの二人組みである。金髪の方の名前はカインで、茶髪の方がピーターである。

「てか完全に俺を殴るつもりだったろ……?」
「「い、いやぁ~、何を言っているか分からないですね~」」

 とぼける二人。睨むと直ぐに頭を下げた。

「「す、すいませんでした!」」
「まあ、いいけどさ」

 ふぅ~、と安堵するカインとピーター。
 そんな俺たちに、エミリーが聞きてきた。

「あの、お兄さんはお父さんの事知ってるの?」
「まあね。俺もよく王城に行ってるから。騎士を鍛える側だけど」
「フィアちゃんのお兄さん凄いね!」

 ネイロも小さくコクリと頷いていた。

「うん!」と元気に頷くフィアを見て、カインとピーターへと振り返った。
 俺はスマイルを作り口を開いた。

「今度の訓練はハードにするか」
「「……え?」」

 キョトンとして目を丸くする二人は慌てて口を開いた。だってハードなのだから。

「ま、待って下さいよアキトさん!」
「は、ハードって……あ、あれよりもか?」

 二人は想像したのか顔を青くしていた。

「いやぁ~、フィリップさんも喜ぶだろうな~」
「「や、やるとは……」」
「グリファスも喜ぶなぁ~」
「「……」」

 真っ青を通り越して白くなる二人。
 グリファスから叱られるのを想像したのだろうか?

 そんなこんなで回復したカインはエミリーを連れ、ピーターはネイロを連れて各々自宅に帰るであった。
 帰り際に「ハードだけは止めて下さい」と言っていたが俺はスルーしておいた。

 これでいいのだ。これで。




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