KAKERU 世界を震撼させろ

福澤賢二郎

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駆の章

アルゼンチン戦の幕切れ

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《デメル.アスエラ》
空山隆之介がピッチに倒れている。
メッシーがデメルの側きに来て睨んだ。
「何をやってるんだ!」
「わざとじゃないぜ」
「俺にはわかる」
「まあ、いいじゃないか。これで奴は終わったんだからよ」
その時、スタジアムに歓声が沸き起こる。
空山隆之介が立ち上がった。
そのまま、審判からボールを受け取り、足元にボールを置いた。
デメルは空山隆之介の正面に立った。
「寝ていれば、痛い思いもしなかったのによ」
「黙れグズ、今から俺とお前の差を見せつけてやるよ」
「な、なに!ソラヤマ、いい気きなるなよ」
「俺の名前はカケル.タニヤマだ覚えておけ」
「な、何を言ってる!」
空山隆之介はボールを軽く前に蹴りだした。
「俺からボールがとれるか?」
「当たり前だろ!」
デメルはボールを取りに空山隆之介に近づこうとした時、空山隆之介はドリブルでデメルの右横を凄まじい速さで駆け抜けた。
「さよなら」
「待ちやがれ」
デメルは振り返り、必死に追うが、追い付かない。
アルゼンチンにのミッドフィルダーは城戸や柴咲のパスコースを消しながら空山隆之介との距離を詰めようとして来るが、空山隆之介のドリブルがあまりに速く、詰めきる前に間を抜かれた。
すぐに別のミッドフィルダーが空山隆之介の前に立ち遮る。
空山隆之介はそのミッドフィルダーの左側を抜けようと体重移動をした。
「やらせるか」
ミッドフィルダーはボールに対して足を出そうとしたが、空山隆之介の足元にボールが無い。
そのまま、空山隆之介は左側を抜けて行った。
だが、その足元にはボールがあった。
ボールはミッドフィルダーの股下を抜けて、再び空山隆之介の足元に戻っていた。
そのまま、置き去りにする。
最終ラインの二人が空山隆之介に迫る。
ディフェンダーは一定の距離を保ち、進行方向を防ごうとするが、
容赦なく空山隆之介はドリブルで突っ込んでくる。
仕方なく二人で囲み、その後ろにもフォローする者も回り込む。
空山隆之介はそのディフェンダーの間を風の様にすり抜けて行った。
その中の一人がもう無理と判断したのかユニフォームを掴んだ。
だが、そのディフェンダーを引きずりながらも空山隆之介はドリブルで突進する。隣で大海がパスをよこせと言っているが、空山隆之介は無視してドリブルをする。
ユニフォームが破れてディフェンダーが転んだ。
空山隆之介は何事も無かったかの様にゴールに迫る。
キーパーがシュートコースを無くすように大きく手を広げながら突っ込んで来る。
空山隆之介は爪先でボールの中央を押し出した。
ボールは低く速く芝を高速で滑り、キーパーの股下を抜いてゴールネットを揺らした。
デメルは怒り、裏から空山隆之介の足を蹴った。
完全にボールは空山隆之介から離れていたにも関わらず蹴ったのだ。
空山隆之介はそのまま、芝に倒れて動かない。
審判は直ぐにドクターを呼ぶ。
何故?
デメルは足を蹴ったのに足を痛がる素振りも無く倒れて、気を失っている。
空山隆之介はそのまま、コートから出されて病院へ緊急搬送され、デメルはレッドカードで一発退場。

自陣のゴール前から七人を抜き、ゴール。そして、気絶。
これはしばらくの間、伝説として語り継がれるシーンとなった。

《桐谷里帆》
里帆は直ぐVIP室から出て駆け降り、車で隆之介が搬送された病院へ向かった。
嫌な予感がする。

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