機兵大戦

福澤賢二郎

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魔王4

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父上と剣術の稽古をしていた。
もう、何度も打ちのめされて、ふらふらだった。
意識も飛びかかっている。
「覚えているか。上段の構えだ。攻撃のみに特化した構えだ。生にすがるな。それが迷いとなり、躊躇を生む」


イリアの声が聴こえる。
「全軍でノブナガを守れ。我等の望みだ」
正面に紫色の機体の背面が見える。
周りをデルシュタイン軍の機体が囲っている。
アルベルトの声だ。
「死んでも退路を確保しろ」
機体の両脇を抱えられ、脚を引きずるように移動している。
そうだ。思い出した。俺は奴と戦っていたんだ。
機体を立て直して、自ら立った。
「ノブナガ様、気づかれましたか」
「ノブナガ、気づいたか?ケガは?」
軽く頭が痛く、ぼーとしているが、クリアな感じもする。
「すまない。デルシュタイン軍の被害は?」
「そんな事は良い。下がれ」
「イリア様、このままでは、デルシュタイン軍は全滅します。ノブナガ様の力が必要です」
「イリア、俺は大丈夫だ」
「わ、わかった。日ノ国は相当に強い。お前を守りながら、後退しているが、我等を弄ぶかのように攻撃している。もう、半数近くが倒されている」
「俺のせいだな。後は任せろ」
「結局、お前に頼ってしまうな」
「違うな、助けられているのは俺の方だ。今度は俺の番だ」
イリアの機兵を押し退け、前線に出た。
左右から日ノ国の機兵が襲いかかってきた。
右の機兵を上か斬り倒し、すぐさま、左から迫る敵機を下から上に斬り上げた。
周りは日ノ国の機兵が多く見られた。
デルシュタイン軍だけでなく、西連合軍が劣勢のようだった。
黒色の重機兵が表に出てきた。
奴だ。
「お目覚めか? お前が俺を倒せなかったせいで西連合軍はボロボロだぞ。もう、立て直せないだろうな。そして、奴隷となり、一生惨めな人生を過ごす事となる。全てはお前のせいだな」
「言いたい事はそれだけか?」
上段に構えた。
この構えは胴ががら空きとなり、守りなど一切考えていない。
全てを最始の一撃にかける攻撃に特化した剣だ。
生きる、死ぬなど、頭の中から抜けていた。
ただ、一撃を放つ事に集中出来ていた。
周りの音が消えた。
周りの景色が消えた。
暗闇に奴の機兵だけが見える。
少しずつ間合いを詰める。
一気に前に飛ぶ。
グレートロングソードを右手一本で頭上から振り降ろす。
黒色の重機兵は後方に跳んだ。
致命傷は与えられ無かった。
負けたと思ったが、攻撃は来なかった。
奴の頭部の甲が縦に割れ、
ボディーにも浅い亀裂が入っている。
あの頭部の壊れ方はカメラも一緒に壊れている。
今、アイツは見えていない。
チャンスだ。
「全軍、攻撃を仕掛けろ」
俺も攻撃を仕掛ける為に間合いを詰める。
重機兵のボディー部分が開き、奴の姿が露になった。
切れ長の鋭い目が冷酷な印象を与える。
うっすらと笑った。
黒色の重機兵は大きく後方へジャンプした。
逃がさない。
追おうとしたが、他の機兵が遮る。
斬っても斬っても、次から次と現れる。
もう、追い付かないだろう。

デルシュタイン軍は巻き返しもしたが、かなりのダメージを追っていた。

大地を赤く染めて、日が暮れていく。
次第に星が輝きだす。
何人もの命が今日も失われた。
イリア達がいなければ、俺も殺られていた。

     
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