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KARTE 3:松山大輔
覚悟
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《松山大輔》
窓から横浜の夜景を眺めていた。
ここは帝都医大の十階。
高額だが、日本最高の特別治療が受ける事ができる。
それでも駄目だった。
ドアのノックが聞こえた。
「藤堂だ」
「入ってくれ」
ゆっくりと振り向く。
「どうだった?」
「駄目だ。でも、覚悟が決まった。お前に賭けるよ」
「そうか。決行は明後日の深夜零時だ」
「わかった」
「果物ナイフで左手を切って、ナースコールをしろ。それが合図だ。あと、その晩に起こる事は誰にも言うなよ」
「わかった」
藤堂は親指を立てて、部屋を出て行った。
頼むぜ、親友よ!
《石垣由依》
由依は自宅で家族と夕食をしていた。
父親はセレブ向けの総合病院を経営しており、最新の医療を提供している。
兄二人は外科医として名医として業界内では有名だ。
特に長男の方は世界最高技術の持ち主で日本の至宝とも言われている。
母親は昨年に癌で亡くなっている。
次男の幸太郎が会話をしようと口を開く。
「四人が揃うなんて珍しいな」
父親が由依の方を睨む。
「由依、いつまでも帝都医大に勤めるんだ?早く結婚しろ」
「まだ、しません」
「麻酔医など医者じゃない」
長男の洋介が口を出す。
「父さん、言い過ぎだよ。私は重要な役割を担っていると思いますよ」
幸太郎が意地悪そうな顔で由依を見る。
「それに由依は結婚出来ないよ。だって、イケメンで優秀な洋介兄さんを身近で見ているんだ。なかなか、見つからないさ」
「イケメンかどうか別だけど、兄さん達より優秀かもしれないと思わせる人を見つけました」
「織田裕太だろ?」
「違います」
「じゃあ、唐沢雅明か?」
「違います」
洋介が反応する。
「帝都は全体の水準は高いが、天才を生み出す気質ではない。他所から来た者だな」
由依は洋介の鋭さにびっくりした。
父親が低い声で言う。
「どちらにしてもお前の結婚相手は優秀な外科医しかありえん。儂や洋介達と共に石垣総合病院をもり立てて、世界最高の病院としろ」
「私のパートナーは自分で選びたいです」
幸太郎が由依の様子を伺うように聞く。
「お前、その優秀な医師を意識しているな」
「そ、そんな事は無いです」
洋介が笑顔になる。
「来月、オープンオペをやる。その優秀な医師も連れて見学に来なさい。その後、食事でもしよう」
「洋介兄さん、帝都医大から引き抜くつもりか」と幸太郎が言った。
「それも、良いと思っているが、人間性と技術が由依のパートナーに相応しいと判断した場合のみだ」
「どちらにせよ。つまらない男に由依をやるつもりはない」
由依は父親を見る。
「じゃあ、どの様な方なら良いのですか?」
「優秀な外科医だ」
「内科医や麻酔医は駄目ですか?」
「話にならんな」
父親は由依を医師として認めていない。
いや、外科医以外は認めていない。
それが、いつも悲しかった。
窓から横浜の夜景を眺めていた。
ここは帝都医大の十階。
高額だが、日本最高の特別治療が受ける事ができる。
それでも駄目だった。
ドアのノックが聞こえた。
「藤堂だ」
「入ってくれ」
ゆっくりと振り向く。
「どうだった?」
「駄目だ。でも、覚悟が決まった。お前に賭けるよ」
「そうか。決行は明後日の深夜零時だ」
「わかった」
「果物ナイフで左手を切って、ナースコールをしろ。それが合図だ。あと、その晩に起こる事は誰にも言うなよ」
「わかった」
藤堂は親指を立てて、部屋を出て行った。
頼むぜ、親友よ!
《石垣由依》
由依は自宅で家族と夕食をしていた。
父親はセレブ向けの総合病院を経営しており、最新の医療を提供している。
兄二人は外科医として名医として業界内では有名だ。
特に長男の方は世界最高技術の持ち主で日本の至宝とも言われている。
母親は昨年に癌で亡くなっている。
次男の幸太郎が会話をしようと口を開く。
「四人が揃うなんて珍しいな」
父親が由依の方を睨む。
「由依、いつまでも帝都医大に勤めるんだ?早く結婚しろ」
「まだ、しません」
「麻酔医など医者じゃない」
長男の洋介が口を出す。
「父さん、言い過ぎだよ。私は重要な役割を担っていると思いますよ」
幸太郎が意地悪そうな顔で由依を見る。
「それに由依は結婚出来ないよ。だって、イケメンで優秀な洋介兄さんを身近で見ているんだ。なかなか、見つからないさ」
「イケメンかどうか別だけど、兄さん達より優秀かもしれないと思わせる人を見つけました」
「織田裕太だろ?」
「違います」
「じゃあ、唐沢雅明か?」
「違います」
洋介が反応する。
「帝都は全体の水準は高いが、天才を生み出す気質ではない。他所から来た者だな」
由依は洋介の鋭さにびっくりした。
父親が低い声で言う。
「どちらにしてもお前の結婚相手は優秀な外科医しかありえん。儂や洋介達と共に石垣総合病院をもり立てて、世界最高の病院としろ」
「私のパートナーは自分で選びたいです」
幸太郎が由依の様子を伺うように聞く。
「お前、その優秀な医師を意識しているな」
「そ、そんな事は無いです」
洋介が笑顔になる。
「来月、オープンオペをやる。その優秀な医師も連れて見学に来なさい。その後、食事でもしよう」
「洋介兄さん、帝都医大から引き抜くつもりか」と幸太郎が言った。
「それも、良いと思っているが、人間性と技術が由依のパートナーに相応しいと判断した場合のみだ」
「どちらにせよ。つまらない男に由依をやるつもりはない」
由依は父親を見る。
「じゃあ、どの様な方なら良いのですか?」
「優秀な外科医だ」
「内科医や麻酔医は駄目ですか?」
「話にならんな」
父親は由依を医師として認めていない。
いや、外科医以外は認めていない。
それが、いつも悲しかった。
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