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QUEST27.ここは任せて

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「さてさて、急いで退散しないとダメそうだ」

 ノーフィスは、"メタリングダンサー"の足を避けつつも飄々と言ってのけた。さらには、ロイス達から少しずつ距離を空けていっているではないか。

「お兄さん……」

「わかった。そっちは任せるよ」

 セーラが何を言いたいのかロイスも理解し、"メタリングダンサー"の相手を担当してくれた。セーラとて、違和感に気づきこそすれレベルを置き去りにしてしまったミスを悔やんでいた。

 ロイスと再会できることが嬉しかった、などというのは言い訳にならない。

「クッ、うっとーしー……!」

 すぐにノーフィスを追いかけていきたかったが、すぐに足の狙いをロイスに引き渡すとマズいことになる。セーラはやきもきしながら、なんとかタイミングを見計らった。

 その間にもノーフィスはさっさとロイス達や足を引き離して、別れの挨拶さえして走り去ってしまう。

「じゃ、さよなら」

 上手い具合に岩壁に足が突き刺して、動けなくなったところを一気に走って逃げてしまった。常人よりもかなり早い程度だが、流石はS級冒険者といったところだろうか。

「あッ、ま、チッ!」

「もう任せて良いよ! 追いかけて」

「うん!」

 セーラが逃げ去るノーフィスを追いかけるために、ロイスが全ての足をひきつけてくれた。

 セーラは、先と同じように石柱を蹴って加速しながら移動する。

 ロイスは、"メタリングダンサー"がセーラを追いかけないよう足の前に躍り出て、蹴り落とし蹴り上げ蹴り返し時間を作っていく。

 時間稼ぎだけであればそれなりに自信はあったが、流石にそろそろ一休みしたいところだった。

「よし、こんなもんでしょ。後は、っと」

 ――ギュッギュッギュゥググゥゥゥゥゥゥゥゥッ!

 ロイスはひとしきり"メタリングダンサー"の足を押し返し、ブヨブヨの体を流線型の板で縫い止めた。ただ、それほど長くは足止めすることはできない。

 新たに動き出す前に駆け、距離を取るのが目的である。そして、1分もしたところで十ほどの足が飛んでくる。

 ――ギュギュウロロォォォォォォォォォォォォォォォッ!

「ッ……!!!」

 "メタリングダンサー"の鳴き声が響き渡った瞬間、ロイスは手足を、胴体を、首を切り離されてしまう。

 ――ギュギュギュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥーー!

 軟体を震わせて勝利の雄叫びを上げた。獲物を2匹も逃しておいてと、余裕があれば思っていたことだろう。

 とりあえずは、少しばかりの休息だ。

「……」

 ――ギュッギュルゥ……?

 思いの外あっさりと倒せたことが、"メタリングダンサー"は疑念を感じさせた。そこまでの知能があるかまで判断できないものの、明らかにロイスの遺体に警戒心を抱いていた。

 捕食しようか否か、迷う間に動き出す。転がったロイスの手足や頭部が。

 まず、それぞれが自らの欠けた部分を補おうとするかのように肉を構築していく。離れて転がったものも距離に関わらず骨肉血肉の増殖が起こり、またそれぞれが失われた部位へと向かっている。

 ――ギュッ!?

 これには単純な生物にも思える"メタリングダンサー"さえ、何事かと驚いている様子が見られた。

 そうこうしているうちに捕食の機会を逃し、手足はつながって不格好なわら人形のようになる。最後は余分な部分が収縮し元通り、いつものロイスの形を形成した。

「はぁ、復活っと。おはよう、スッキリとした良い目覚めだね」

 ロイスは言葉とは裏腹に、全身をだるそうにコキコキと鳴らした。爽やかとは言い難いであろう非常に気怠げな表情で言動だ。

 "メタリングダンサー"は無い脳みそで考える。

 なぜ、獲物はいつの間に背後へと回り込んだのか。

何か見ていた・・・・・かい?」

 ――ギュキュッ!?

 大きく鈍い体を必死に転回し、再度攻撃のために足を呼び寄せた。が、今更遅い。

 ロイスの振るったナイフがブヨブヨとした体を一部切り落とし、跳ね返した足のダメージと合わせて半分ほどを奪い取った。

「ふぅん」

 ロイスは感慨もなく攻撃を終わらせ、再び"メタリングダンサー"の足に目を向けた。

 与えたダメージのおかげで動きは鈍く、予定外だったが修正した予定通りに進むだろうと判断する。当初の目的通り、レベルのリハビリとして使うのだ。

 そのレベルが到着するまでは、これまでと同じく流線型の足を回避しながら待ちである。

「さて、早く送り届けてくれよセーラ」

 ロイスは、セーラが問題を解決してくれることを祈るしかなかった。"メタリングダンサー"の攻撃が遅くなったことと、一休みできたのでそれなりに時間稼ぎはできるが。

 しかし、セーラを信頼しているとはいえ相手はS級の数人であり、どれほどの時間がかかるかわかったものではない。

 ロイスは、椅子代わりにしていた"メタリングダンサー"の足から飛び降りつつあちら側を眺めるのだった。
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