37 / 69
第5章 ユミルの恋
37
しおりを挟む
エイドリアンが来てからというもの、ユミルは毎日を楽しく過ごしていた。
ユミルは当初、護衛が外出についてくるのは嫌だと思っていたが、エイドリアンは邪魔にならないように付いてきてくれるし、荷物も持ってくれる、ユミルの丁度いい話し相手(といってもユミルが一方的に話しているだけだが)にもなってくれるので、すっかりエイドリアンのことを気に入っていた。
それに、何しろ、エイドリアンは可愛いのだ。初めて見るものに目を輝かせ、美味しいものを食べれば顔を綻ばせる。
ユミルは田舎町に残してきた弟や妹を思い出し、ついつい街へお使いに出ると、寄り道をしてしまうようになった。
しかし、先日エイドリアンがただのユミルの話し相手ではないことを思い出させる事件が起きた。
「エイディー、今日はマフィンのお店に寄りたいの、良いでしょう?」
ロビンから頼まれたお使いの帰り道、ユミルはエイドリアンに食べさせてあげたいマフィンがあって、そう声をかけると、エイドリアンは微笑みながら頷いた。
(はわ~~めっちゃ可愛い。)
ユミルがご機嫌でお店までの道を歩いていた時、エイドリアンがいる方とは逆から腕を掴まれた。
「おい、姉ちゃん、今暇だr」
― ドカン!
ユミルが腕を掴んだ人が男だと認識した瞬間、かけられた言葉を最後まで聞く時間もなく、その男の体は店の外壁に向かって強く吹っ飛んだ。衝撃で外壁が少し凹んでいる。
「え?…え?」
ユミルはわけがわからずオロオロしていると、見たこともないほど眼光を鋭くしたエイドリアンが杖を男に突きつけた。
「エイディー!!ダメよ!」
エイドリアンはその男から目を離すことなく、首を横に振った。
「…何だよ、魔法使いの護衛がついてるのかよ!」
その男は怯えたようにエイドリアンを見上げると、ユミルの呼び止める声も聞かずに脱兎のごとく逃げて行った。
急なことにユミルはぽかんとしたが、我に返るとエイドリアンを叱った。
「エイディー、もしかしたら、あの人は道を聞きたかっただけかもしれないじゃない。
何も聞かずに攻撃しては、可哀そうよ。」
ユミルが言い聞かせるようにエイドリアンに言うと、エイドリアンは少し拗ねた顔をしながら首を横に振った。
「もし、質の悪い勧誘とかだったとしても、ある程度なら私だって軽くあしらえるもの。攻撃は最終手段よ。」
エイドリアンはなお、首を横に振る。
そして乱雑にポケットに手を突っ込むと、メモ帳とペンを取り出して、スラスラと何かを書き込んだ。
“この店は飲食代をふっかけるって噂です。あの人は最初から悪意がありました。”
「エイディー、貴方って街の治安に詳しいのね。」
メモの内容を読んで感心すると、エイディーは拗ねた顔を止めて、少しだけ自慢げに笑った。
「でも、やっぱり急に攻撃するのはダメよ。」
エイディーは再び拗ねたような顔をして首を横に振る。結局、このやり取りはお目当てのお店に着くまでずっと続いた。
エイドリアン曰く、レインから危険な芽は迅速に刈り取りように言われているのだという。
しかし、エイドリアンは魔法学園には通っていなかったというが、あの魔法の発動速度はかなり速い。あのレインが選んできたのだ、本来ならばユミルについていること自体、豚に真珠だ。
(とっても無垢な感じがするから、ついつい弟を連れて歩いているような気持ちになるけれど…、扱いには気を付けないとダメね。)
エイドリアンはレインの命令なら何でも排除しそうな勢いがある。
ユミルは少し心配になった。
ユミルは当初、護衛が外出についてくるのは嫌だと思っていたが、エイドリアンは邪魔にならないように付いてきてくれるし、荷物も持ってくれる、ユミルの丁度いい話し相手(といってもユミルが一方的に話しているだけだが)にもなってくれるので、すっかりエイドリアンのことを気に入っていた。
それに、何しろ、エイドリアンは可愛いのだ。初めて見るものに目を輝かせ、美味しいものを食べれば顔を綻ばせる。
ユミルは田舎町に残してきた弟や妹を思い出し、ついつい街へお使いに出ると、寄り道をしてしまうようになった。
しかし、先日エイドリアンがただのユミルの話し相手ではないことを思い出させる事件が起きた。
「エイディー、今日はマフィンのお店に寄りたいの、良いでしょう?」
ロビンから頼まれたお使いの帰り道、ユミルはエイドリアンに食べさせてあげたいマフィンがあって、そう声をかけると、エイドリアンは微笑みながら頷いた。
(はわ~~めっちゃ可愛い。)
ユミルがご機嫌でお店までの道を歩いていた時、エイドリアンがいる方とは逆から腕を掴まれた。
「おい、姉ちゃん、今暇だr」
― ドカン!
ユミルが腕を掴んだ人が男だと認識した瞬間、かけられた言葉を最後まで聞く時間もなく、その男の体は店の外壁に向かって強く吹っ飛んだ。衝撃で外壁が少し凹んでいる。
「え?…え?」
ユミルはわけがわからずオロオロしていると、見たこともないほど眼光を鋭くしたエイドリアンが杖を男に突きつけた。
「エイディー!!ダメよ!」
エイドリアンはその男から目を離すことなく、首を横に振った。
「…何だよ、魔法使いの護衛がついてるのかよ!」
その男は怯えたようにエイドリアンを見上げると、ユミルの呼び止める声も聞かずに脱兎のごとく逃げて行った。
急なことにユミルはぽかんとしたが、我に返るとエイドリアンを叱った。
「エイディー、もしかしたら、あの人は道を聞きたかっただけかもしれないじゃない。
何も聞かずに攻撃しては、可哀そうよ。」
ユミルが言い聞かせるようにエイドリアンに言うと、エイドリアンは少し拗ねた顔をしながら首を横に振った。
「もし、質の悪い勧誘とかだったとしても、ある程度なら私だって軽くあしらえるもの。攻撃は最終手段よ。」
エイドリアンはなお、首を横に振る。
そして乱雑にポケットに手を突っ込むと、メモ帳とペンを取り出して、スラスラと何かを書き込んだ。
“この店は飲食代をふっかけるって噂です。あの人は最初から悪意がありました。”
「エイディー、貴方って街の治安に詳しいのね。」
メモの内容を読んで感心すると、エイディーは拗ねた顔を止めて、少しだけ自慢げに笑った。
「でも、やっぱり急に攻撃するのはダメよ。」
エイディーは再び拗ねたような顔をして首を横に振る。結局、このやり取りはお目当てのお店に着くまでずっと続いた。
エイドリアン曰く、レインから危険な芽は迅速に刈り取りように言われているのだという。
しかし、エイドリアンは魔法学園には通っていなかったというが、あの魔法の発動速度はかなり速い。あのレインが選んできたのだ、本来ならばユミルについていること自体、豚に真珠だ。
(とっても無垢な感じがするから、ついつい弟を連れて歩いているような気持ちになるけれど…、扱いには気を付けないとダメね。)
エイドリアンはレインの命令なら何でも排除しそうな勢いがある。
ユミルは少し心配になった。
31
あなたにおすすめの小説
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。
国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。
悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。
侯爵夫人のハズですが、完全に無視されています
猫枕
恋愛
伯爵令嬢のシンディーは学園を卒業と同時にキャッシュ侯爵家に嫁がされた。
しかし婚姻から4年、旦那様に会ったのは一度きり、大きなお屋敷の端っこにある離れに住むように言われ、勝手な外出も禁じられている。
本宅にはシンディーの偽物が奥様と呼ばれて暮らしているらしい。
盛大な結婚式が行われたというがシンディーは出席していないし、今年3才になる息子がいるというが、もちろん産んだ覚えもない。
夫に顧みられない王妃は、人間をやめることにしました~もふもふ自由なセカンドライフを謳歌するつもりだったのに、何故かペットにされています!~
狭山ひびき
恋愛
もう耐えられない!
隣国から嫁いで五年。一度も国王である夫から関心を示されず白い結婚を続けていた王妃フィリエルはついに決断した。
わたし、もう王妃やめる!
政略結婚だから、ある程度の覚悟はしていた。けれども幼い日に淡い恋心を抱いて以来、ずっと片思いをしていた相手から冷たくされる日々に、フィリエルの心はもう限界に達していた。政略結婚である以上、王妃の意思で離婚はできない。しかしもうこれ以上、好きな人に無視される日々は送りたくないのだ。
離婚できないなら人間をやめるわ!
王妃で、そして隣国の王女であるフィリエルは、この先生きていてもきっと幸せにはなれないだろう。生まれた時から政治の駒。それがフィリエルの人生だ。ならばそんな「人生」を捨てて、人間以外として生きたほうがましだと、フィリエルは思った。
これからは自由気ままな「猫生」を送るのよ!
フィリエルは少し前に知り合いになった、「廃墟の塔の魔女」に頼み込み、猫の姿に変えてもらう。
よし!楽しいセカンドラウフのはじまりよ!――のはずが、何故か夫(国王)に拾われ、ペットにされてしまって……。
「ふふ、君はふわふわで可愛いなぁ」
やめてえ!そんなところ撫でないで~!
夫(人間)妻(猫)の奇妙な共同生活がはじまる――
捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。
蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。
これで、貴方も私も自由です。
……だから、もういいですよね?
私も、自由にして……。
5年後。
私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、
親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、
今日も幸せに子育てをしています。
だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。
私のことは忘れて……。
これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。
はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?
はじめまして、旦那様。離婚はいつになさいます?
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
「はじめてお目にかかります。……旦那様」
「……あぁ、君がアグリア、か」
「それで……、離縁はいつになさいます?」
領地の未来を守るため、同じく子爵家の次男で軍人のシオンと期間限定の契約婚をした貧乏貴族令嬢アグリア。
両家の顔合わせなし、婚礼なし、一切の付き合いもなし。それどころかシオン本人とすら一度も顔を合わせることなく結婚したアグリアだったが、長らく戦地へと行っていたシオンと初対面することになった。
帰ってきたその日、アグリアは約束通り離縁を申し出たのだが――。
形だけの結婚をしたはずのふたりは、愛で結ばれた本物の夫婦になれるのか。
★HOTランキング最高2位をいただきました! ありがとうございます!
※書き上げ済みなので完結保証。他サイトでも掲載中です。
お飾り王妃の死後~王の後悔~
ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。
王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。
ウィルベルト王国では周知の事実だった。
しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。
最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。
小説家になろう様にも投稿しています。
旦那様、政略結婚ですので離婚しましょう
おてんば松尾
恋愛
王命により政略結婚したアイリス。
本来ならば皆に祝福され幸せの絶頂を味わっているはずなのにそうはならなかった。
初夜の場で夫の公爵であるスノウに「今日は疲れただろう。もう少し互いの事を知って、納得した上で夫婦として閨を共にするべきだ」と言われ寝室に一人残されてしまった。
翌日から夫は仕事で屋敷には帰ってこなくなり使用人たちには冷たく扱われてしまうアイリス……
(※この物語はフィクションです。実在の人物や事件とは関係ありません。)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる