23 / 40
第三章 明巴
8 別荘に招かれた
しおりを挟む俺を咲樹から受け取ったレイは、下へは降ろさずに、そのまま自分の腕に座らせるように俺を抱える。
咲樹は、自力でガルムからヒラリと降りた。
「何であの状況で普通にしてられるのよ」
咲樹がレイを睨む。
あの状況?
「獣化してると、風の抵抗とかあまり感じなくなるんです」
風の抵抗?話が全然見えないのだが。
とりあえず、そろそろ降ろして欲しい。
「新幹線の車外かと思ったわよ!」
「目も開けてられないって、危うく首から上がなくなるとこだったじゃん!」
「あのスピードじゃ、ただの枝も凶器よ!」
「貧弱な召喚師じゃ、呼吸困難必至じゃんか!オレの事も少しは考えてあげて!」
けたたましく話すミロとココアに、何かはわからないが大変だった事だけは理解した。
でもミロ、貧弱ではないよな。前に舞闘家からサモナーに転職したって言ってたし。
「オレちゃんの舞闘家は、ココアの武闘家と違って、優雅に舞うように戦うんだよ」と自慢げに言ってたよな。
その後、ココアが自分の一撃必殺の素晴らしさを延々と語って、二人で戦闘談義してたよな。
ウザい酔っ払い二人の面倒を、オーベに押し付けたのでよく覚えている。
ワイワイと四人が話していると、衛兵が一人、コッソリと近付いて来る。
目が合った。
「あの~、それで話を聞いても良いですかね?」
多分責任者なのだろう。他の衛兵よりも鎧がちょっと豪華だ。
頷いてみせると、衛兵の視線がリルへ向く。
そうだよな。見た事のない魔獣だし、ガルムよりも大きい魔獣なんてここでは見ないだろう。
「すまん。もっと街から離れた所で一度止まるつもりだったのだが……」
俺の予想以上に速かった。車位のスピードかと思いきや、ココアの言葉を引用すると新幹線並みだったらしい。
「これは、俺の従魔だ。これからギルドに登録する」
俺の言葉に合わせて、リルがペコリと頭を下げる。空気を読む事はできるらしい。
「身分証はお持ちでいらっしゃいますでしょうか?」
ちょ、言葉遣いが更に馬鹿丁寧に!
ギルドカードを渡すと、既に見慣れた行動をされる。だから、何度見直しても年齢は変わらないっての。
いっそ現実の免許証みたいに、写真付きにした方が良いのじゃないか?
「お返しいたします」
両手でカードを返された。
「このまま冒険者ギルドの方へ、おいでになられますでしょうか?」
「そのつもりだ。それから、俺はただの冒険者だから、その言葉遣いはやめてくれ」
背筋がムズムズするから、その馬鹿丁寧な言葉遣いはやめて欲しい。
「いや、しかし……」
衛兵の視線がチラリとリルを見る。ガルムは先程の伏せ状態で大人しくしているからか、衛兵の今の関心はリルだけだ。
そのリルは、初めて見るものに興味津々なのか、お座り状態で周りをキョロキョロ見回し、目をキラキラさせている。
これが傍から見たら、獲物を狙うギラギラした目に見えているのかもしれんが……
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/essay.png?id=5ada788558fa89228aea)
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/youth.png?id=ad9871afe441980cc37c)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる