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第一章 遥華
6 探検してみた
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終わると、蛍子は何事もなかったかのようにさっさと服を着て、先に立って歩き始めた。
俺も慌てて服を着て後を追った。服は、脱ぐのも着るのも簡単だった。
脇道を出て、元々の方向へ足を進めると、T字路の正面に扉があった。蛍子が前に立つと、扉はひとりでに開いた。
その部屋には、今入ったものを含めて四方に一つずつ扉があった。どれも同じ色形である。そこで蛍子は初めて振り向いた。
「どれにしようか」
「左から開けてみれば」
自信ありげに歩いていた割には、道を知らないらしい。俺は適当に答えた。蛍子は左手にある扉に手を触れた。扉が自動的に開く。蛍子が先に中へ入った。
「きゃあ」
俺は慌てて奥へ近付いた。中を覗くと、広い部屋の真ん中に、千手観音をロボットにしたような物体があり、うち2本の腕が蛍子を捕まえ、宙づりにしていた。
「助けて!」
呆気にとられた俺の耳に、蛍子の悲鳴が届いて我に返った。
しかし、助ける方法がわからない。情けなくも、おろおろと見る間に、脱げやすい蛍子の服が床に落ち、山ほどある腕が蛍子の体をなで回し始めた。身悶えする蛍子。
ヘルメットのせいで表情が読み取れず、苦しんでいるのか喜んでいるのかよくわからない。ロボットの腕がいやらしく見える。
「この、エロ・ロボットめ」
俺はとにかくロボットにとりついた。たちまち腕に取り囲まれる。しかも、蛍子にかかっている腕は一向に動きを止めない。千手観音並みの本数である。同時にいろいろなことができるのだ。
上の方に掲げられた腕の一本が、鍵らしき物を握っているのに気付いた。絡み付く腕を振り払い、足蹴にしながら、その腕を目指してよじ登った。
しかし何分、腕は多く、ついに俺もがんじがらめにされてしまった。俺の服も床に落ちる。腕は蛍子だけでなく、俺の体も愛撫し始めた。
「どうなっているんだ、これは」
悔しいことに、ロボットの愛撫はなかなか気持ちがよかった。金属製の腕なのに、触れる加減が絶妙で、俺は恥ずかしながら達してしまった。
2人が十分に堪能したところで、腕ロボットは静かに2人の体を床に下ろした。
離れて向き合ったまま、俺と蛍子は服を着るのも忘れ、互いに見つめ合った。
「そうだ、鍵」
先に我に返った俺の言葉に反応したかのように、ロボットの腕から鍵が放たれた。鍵は派手な金属音を立てて、2人の間に落ちた。
早速拾い上げ、蛍子のヘルメットの鍵穴に合わせる。鍵は、穴に入りもしなかった。
「この鍵ではないみたいだ」
俺が鍵を放り投げると、蛍子がふらふらと拾いに行き、戻って俺に差し出した。
「いつか何かに使えるかもしれんから、とっときましょうがね」
「これを握りしめて行くの?」
「袋に入れりゃあいいでしょう」
「袋がどこにあるの」
蛍子が指差した先は、例の腕ロボットであった。
山ほど腕を持つロボットは、よく見れば、鍵の他にもおかしな物をいろいろ手に握っていた。背負袋も持っている。
袋は欲しいが、また腕に捕まえられてはたまらない。俺がためらっていると、蛍子がロボットの後ろから、長い棒を引きずり出した。
「ついでだで、全部落としましょう」
服を着終えた蛍子が棒でつつくと、面白いように物が落ちた。木の実を採っているみたいだ。
俺は物が当たらないよう、部屋の隅に避けていたが、蛍子のヘルメットは頑丈なのか、物が当たって大きな音がしても平気な様子であった。
あらかた落としたところで近付いてみる。どこの国の物かわからない金貨の入った袋や、おもちゃの銃に似た形の物まであった。わけのわからない物は除き、持てるだけ手分けして身につけると、その部屋を出た。
「次はどの扉を開ける?」
「左の扉にしよう」
来た時には正面にあった扉を俺が指すと、蛍子は無防備に扉の前に立った。
「気を付けて」
声をかけ終えるまでに、蛍子は部屋の中へ入ってしまった。俺は急いで後に続いた。
今度の部屋には何もいなかった。額縁のように、水流を模した彫刻を施された金属扉の前に、蛍子が立っている。
「さっきの鍵をちょうだい」
扉には把手がなく、鍵穴だけがあった。渡した鍵はぴったりと合い、がちゃりと鍵の動く音がした。
鍵の刺さったまま、扉が横に滑り開く。
外側は、白塗りの壁からなる通路であった。視線を走らせた先にも壁が見える。行き止まりか、左右へ直角に折れ曲がっているか、どちらかである。
蛍子が振り返った。
「どうする?」
「行ってみよう」
蛍子が先に立とうとするのを、俺は止めた。
「危ないから、僕が先に行くよ」
「ありがとう」
蛍子は微笑んで後ろに回った。白塗りの通路を突き当たりまで進むと、やはりT字路となっており、左右に通路がつながっていた。どちらへ進んでも、ここから見る限り扉もなく、同じ形の通路が続いている。俺は左へ曲がった。
突き当たりで通路は右へ折れていた。すぐ先に広くなった部屋があった。左右に握りのついた扉がある。左側の扉に耳をつけて音を聞いた。何も聞こえなかった。
そっと握りを回し、扉を手前に引いた。動かない。押したら開いた。
「ユーキ!」
蛍子の叫び声が聞こえた。何が起こったのか、すぐにはわからなかった。
扉から体が引きはがされ、部屋に引きずり込まれたと分かったのは、服を脱がされ、自分の下半身の辺りにブロンド女の顔を認めた時であった。起き上がろうにも起き上がれない。
ふと上を見ると、どうやってか知らないが、人型の枠にすっぽりはまっているのが見えた。天井が鏡張りなのである。蛍子がわめきながら俺の人型にとりつくのを、ブロンド女が邪慳に振り払う。
蛍子は紙のように吹っ飛び、壁に当たって動かなくなった。俺は焦って体を動かすが、上半身は人型に、下半身は女にしっかり固定されて身動きできない。
蛍子はすぐに起き上がった。良かった、無事だった。
ところが何を思ったか、今度は服を脱いで女の背後からとりついておかしな動きを始めた。今度は女も振り払わない。何かエロい。
不覚にも、俺は興奮してしまった。すると人型がすっぽり抜けた。待ち構えていたように、女が絡み付いてくる。
結局3人で一緒になって、蛇の交尾みたいなことになってしまった。どっちの口に何を入れたか、もうぐちゃぐちゃである。
俺は何をやっているんだろう、と思ったのは、均等に出した後である。
終わると、女は屈託のない笑顔で、鍵を差し出した。
受け取って、蛍子のヘルメットにある鍵穴に当てはめてみる。穴には入ったが、鍵が回らない。これも違う鍵であった。
「きっとこっちの鍵だわ」
蛍子が鍵を奪いとるようにして、新しい扉の穴に差し込んだ。
扉はすんなり開き、蛍子は扉の向こうに消えた。
俺はブロンド女に礼を言うのもそこそこに、服を着て後を追った。何に対しての礼なのか、考えると混乱するので止めた。
閉まりかけの扉の隙間から向こうへ飛び込むと、扉はひとりでに閉まり、跡形もなく消えた。危ないところだった。
そこは、きっちり積み上げられた煉瓦造りの建物の内部であった。
天井から床まで同じ色の煉瓦が敷き詰められている。煉瓦の箱を思わせる。
蛍子の姿はどこにもない。
「蛍子」
呼んでも返事はなかった。どこを見ても均一の煉瓦が続く。赤茶色の長方形を、白い目地が囲む。その集合体も長方形を形作っている。目がちかちかしてきた。
通路が続くと思しき正面に向かって進むと、いくらも進まないうちに行き止まりとなった。距離感がおかしい。振り返ってみても、出入り口は見えない。
突き当たりの壁を両手で押してみた。ぐらりと体が揺れたと思ったのは、壁がぐるりと回転したせいだった。勢い余った俺は、壁の向こうへ転がった。
「はあい、いらっしゃい」
色っぽい声に目を上げて、俺は絶句した。壁も天井も煉瓦であることには変わりない。広い煉瓦色の部屋の中に、様々な年齢層の、髪の色、目の色も様々な女たちが居て、ひしめくように俺を迎えたのであった。
ほとんどの女が裸である。後ろの方に、白いフリフリレースのエプロンだけつけた者や、ガーターだけをつけた者がいるのが目についた。
純粋な東洋系はいない。どういうわけか、外見が俺とかけ離れたタイプばかり集まっている。
「誰でも好きな人を選んでいいのよ。1人じゃなくてもいいのよ」
話しかけてくるのは日本語である。そういえば、白塗り鏡張りの部屋にいた女も、西洋系の顔立ちなのに日本語で、良い良いとか言っていた。
「蛍子知らない? フルフェイスのヘルメットを被った女の子」
あまりに非現実な光景に出くわし、俺は現実逃避のように当初の目的を思い出した。
俺が問い返した女は、形のよい胸を突き出し、栗色の髪を長い指で掻き上げながら、気を悪くした風もなく答えた。
「あたしたちを満足させてくれたら、教えてあ、げ、る」
「全員?」
一生かかっても、これほど大勢の女に迫られることはない。荷が重すぎると潰れてしまう。
俺は嬉しさを遥かに通り越して、顔が強ばるのを感じた。
どんな男性でも、全員をこの場で満足させることなど不可能だろう。いくらなんでも多すぎる。
くすくす、と女は両手で自分の胸を弄びながら、笑った。柔らかそうな胸が、たぷたぷ揺れる。
「好きなだけでいいわ。なるべく、たくさんお願いね」
「ユーキは恥ずかしがり屋さんみたいだから、あちらのベッドへ行ってしましょう」
女たちの群れが二手に分かれ、天蓋付きの豪奢なベッドが現れた。洋風の衝立も置いてある。これで目隠しのつもりなのか。
普通、こういう状況で、できるものなのだろうか。
そして、自分はどこまでできるものなのか。
女たちが、本当に蛍子の行方を知っているかどうか、知っていても教えてくれるかどうかは、約束を信じるしかない。
俺は、最初に話しかけた女の手をとり、決然としてベッドへ進んだ。
それにしても、何故俺の名前を知っているのだろう。一瞬だけ疑問が頭を掠めたが、食い尽くそうとせんばかりに唇を塞がれて、考えるのを止めた。
俺も慌てて服を着て後を追った。服は、脱ぐのも着るのも簡単だった。
脇道を出て、元々の方向へ足を進めると、T字路の正面に扉があった。蛍子が前に立つと、扉はひとりでに開いた。
その部屋には、今入ったものを含めて四方に一つずつ扉があった。どれも同じ色形である。そこで蛍子は初めて振り向いた。
「どれにしようか」
「左から開けてみれば」
自信ありげに歩いていた割には、道を知らないらしい。俺は適当に答えた。蛍子は左手にある扉に手を触れた。扉が自動的に開く。蛍子が先に中へ入った。
「きゃあ」
俺は慌てて奥へ近付いた。中を覗くと、広い部屋の真ん中に、千手観音をロボットにしたような物体があり、うち2本の腕が蛍子を捕まえ、宙づりにしていた。
「助けて!」
呆気にとられた俺の耳に、蛍子の悲鳴が届いて我に返った。
しかし、助ける方法がわからない。情けなくも、おろおろと見る間に、脱げやすい蛍子の服が床に落ち、山ほどある腕が蛍子の体をなで回し始めた。身悶えする蛍子。
ヘルメットのせいで表情が読み取れず、苦しんでいるのか喜んでいるのかよくわからない。ロボットの腕がいやらしく見える。
「この、エロ・ロボットめ」
俺はとにかくロボットにとりついた。たちまち腕に取り囲まれる。しかも、蛍子にかかっている腕は一向に動きを止めない。千手観音並みの本数である。同時にいろいろなことができるのだ。
上の方に掲げられた腕の一本が、鍵らしき物を握っているのに気付いた。絡み付く腕を振り払い、足蹴にしながら、その腕を目指してよじ登った。
しかし何分、腕は多く、ついに俺もがんじがらめにされてしまった。俺の服も床に落ちる。腕は蛍子だけでなく、俺の体も愛撫し始めた。
「どうなっているんだ、これは」
悔しいことに、ロボットの愛撫はなかなか気持ちがよかった。金属製の腕なのに、触れる加減が絶妙で、俺は恥ずかしながら達してしまった。
2人が十分に堪能したところで、腕ロボットは静かに2人の体を床に下ろした。
離れて向き合ったまま、俺と蛍子は服を着るのも忘れ、互いに見つめ合った。
「そうだ、鍵」
先に我に返った俺の言葉に反応したかのように、ロボットの腕から鍵が放たれた。鍵は派手な金属音を立てて、2人の間に落ちた。
早速拾い上げ、蛍子のヘルメットの鍵穴に合わせる。鍵は、穴に入りもしなかった。
「この鍵ではないみたいだ」
俺が鍵を放り投げると、蛍子がふらふらと拾いに行き、戻って俺に差し出した。
「いつか何かに使えるかもしれんから、とっときましょうがね」
「これを握りしめて行くの?」
「袋に入れりゃあいいでしょう」
「袋がどこにあるの」
蛍子が指差した先は、例の腕ロボットであった。
山ほど腕を持つロボットは、よく見れば、鍵の他にもおかしな物をいろいろ手に握っていた。背負袋も持っている。
袋は欲しいが、また腕に捕まえられてはたまらない。俺がためらっていると、蛍子がロボットの後ろから、長い棒を引きずり出した。
「ついでだで、全部落としましょう」
服を着終えた蛍子が棒でつつくと、面白いように物が落ちた。木の実を採っているみたいだ。
俺は物が当たらないよう、部屋の隅に避けていたが、蛍子のヘルメットは頑丈なのか、物が当たって大きな音がしても平気な様子であった。
あらかた落としたところで近付いてみる。どこの国の物かわからない金貨の入った袋や、おもちゃの銃に似た形の物まであった。わけのわからない物は除き、持てるだけ手分けして身につけると、その部屋を出た。
「次はどの扉を開ける?」
「左の扉にしよう」
来た時には正面にあった扉を俺が指すと、蛍子は無防備に扉の前に立った。
「気を付けて」
声をかけ終えるまでに、蛍子は部屋の中へ入ってしまった。俺は急いで後に続いた。
今度の部屋には何もいなかった。額縁のように、水流を模した彫刻を施された金属扉の前に、蛍子が立っている。
「さっきの鍵をちょうだい」
扉には把手がなく、鍵穴だけがあった。渡した鍵はぴったりと合い、がちゃりと鍵の動く音がした。
鍵の刺さったまま、扉が横に滑り開く。
外側は、白塗りの壁からなる通路であった。視線を走らせた先にも壁が見える。行き止まりか、左右へ直角に折れ曲がっているか、どちらかである。
蛍子が振り返った。
「どうする?」
「行ってみよう」
蛍子が先に立とうとするのを、俺は止めた。
「危ないから、僕が先に行くよ」
「ありがとう」
蛍子は微笑んで後ろに回った。白塗りの通路を突き当たりまで進むと、やはりT字路となっており、左右に通路がつながっていた。どちらへ進んでも、ここから見る限り扉もなく、同じ形の通路が続いている。俺は左へ曲がった。
突き当たりで通路は右へ折れていた。すぐ先に広くなった部屋があった。左右に握りのついた扉がある。左側の扉に耳をつけて音を聞いた。何も聞こえなかった。
そっと握りを回し、扉を手前に引いた。動かない。押したら開いた。
「ユーキ!」
蛍子の叫び声が聞こえた。何が起こったのか、すぐにはわからなかった。
扉から体が引きはがされ、部屋に引きずり込まれたと分かったのは、服を脱がされ、自分の下半身の辺りにブロンド女の顔を認めた時であった。起き上がろうにも起き上がれない。
ふと上を見ると、どうやってか知らないが、人型の枠にすっぽりはまっているのが見えた。天井が鏡張りなのである。蛍子がわめきながら俺の人型にとりつくのを、ブロンド女が邪慳に振り払う。
蛍子は紙のように吹っ飛び、壁に当たって動かなくなった。俺は焦って体を動かすが、上半身は人型に、下半身は女にしっかり固定されて身動きできない。
蛍子はすぐに起き上がった。良かった、無事だった。
ところが何を思ったか、今度は服を脱いで女の背後からとりついておかしな動きを始めた。今度は女も振り払わない。何かエロい。
不覚にも、俺は興奮してしまった。すると人型がすっぽり抜けた。待ち構えていたように、女が絡み付いてくる。
結局3人で一緒になって、蛇の交尾みたいなことになってしまった。どっちの口に何を入れたか、もうぐちゃぐちゃである。
俺は何をやっているんだろう、と思ったのは、均等に出した後である。
終わると、女は屈託のない笑顔で、鍵を差し出した。
受け取って、蛍子のヘルメットにある鍵穴に当てはめてみる。穴には入ったが、鍵が回らない。これも違う鍵であった。
「きっとこっちの鍵だわ」
蛍子が鍵を奪いとるようにして、新しい扉の穴に差し込んだ。
扉はすんなり開き、蛍子は扉の向こうに消えた。
俺はブロンド女に礼を言うのもそこそこに、服を着て後を追った。何に対しての礼なのか、考えると混乱するので止めた。
閉まりかけの扉の隙間から向こうへ飛び込むと、扉はひとりでに閉まり、跡形もなく消えた。危ないところだった。
そこは、きっちり積み上げられた煉瓦造りの建物の内部であった。
天井から床まで同じ色の煉瓦が敷き詰められている。煉瓦の箱を思わせる。
蛍子の姿はどこにもない。
「蛍子」
呼んでも返事はなかった。どこを見ても均一の煉瓦が続く。赤茶色の長方形を、白い目地が囲む。その集合体も長方形を形作っている。目がちかちかしてきた。
通路が続くと思しき正面に向かって進むと、いくらも進まないうちに行き止まりとなった。距離感がおかしい。振り返ってみても、出入り口は見えない。
突き当たりの壁を両手で押してみた。ぐらりと体が揺れたと思ったのは、壁がぐるりと回転したせいだった。勢い余った俺は、壁の向こうへ転がった。
「はあい、いらっしゃい」
色っぽい声に目を上げて、俺は絶句した。壁も天井も煉瓦であることには変わりない。広い煉瓦色の部屋の中に、様々な年齢層の、髪の色、目の色も様々な女たちが居て、ひしめくように俺を迎えたのであった。
ほとんどの女が裸である。後ろの方に、白いフリフリレースのエプロンだけつけた者や、ガーターだけをつけた者がいるのが目についた。
純粋な東洋系はいない。どういうわけか、外見が俺とかけ離れたタイプばかり集まっている。
「誰でも好きな人を選んでいいのよ。1人じゃなくてもいいのよ」
話しかけてくるのは日本語である。そういえば、白塗り鏡張りの部屋にいた女も、西洋系の顔立ちなのに日本語で、良い良いとか言っていた。
「蛍子知らない? フルフェイスのヘルメットを被った女の子」
あまりに非現実な光景に出くわし、俺は現実逃避のように当初の目的を思い出した。
俺が問い返した女は、形のよい胸を突き出し、栗色の髪を長い指で掻き上げながら、気を悪くした風もなく答えた。
「あたしたちを満足させてくれたら、教えてあ、げ、る」
「全員?」
一生かかっても、これほど大勢の女に迫られることはない。荷が重すぎると潰れてしまう。
俺は嬉しさを遥かに通り越して、顔が強ばるのを感じた。
どんな男性でも、全員をこの場で満足させることなど不可能だろう。いくらなんでも多すぎる。
くすくす、と女は両手で自分の胸を弄びながら、笑った。柔らかそうな胸が、たぷたぷ揺れる。
「好きなだけでいいわ。なるべく、たくさんお願いね」
「ユーキは恥ずかしがり屋さんみたいだから、あちらのベッドへ行ってしましょう」
女たちの群れが二手に分かれ、天蓋付きの豪奢なベッドが現れた。洋風の衝立も置いてある。これで目隠しのつもりなのか。
普通、こういう状況で、できるものなのだろうか。
そして、自分はどこまでできるものなのか。
女たちが、本当に蛍子の行方を知っているかどうか、知っていても教えてくれるかどうかは、約束を信じるしかない。
俺は、最初に話しかけた女の手をとり、決然としてベッドへ進んだ。
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