雌伏浪人  勉学に励むつもりが、女の子相手に励みました

在江

文字の大きさ
上 下
6 / 40
第一章 遥華

6 探検してみた

しおりを挟む
 終わると、蛍子は何事もなかったかのようにさっさと服を着て、先に立って歩き始めた。
 俺も慌てて服を着て後を追った。服は、脱ぐのも着るのも簡単だった。

 脇道を出て、元々の方向へ足を進めると、T字路の正面に扉があった。蛍子が前に立つと、扉はひとりでに開いた。

 その部屋には、今入ったものを含めて四方に一つずつ扉があった。どれも同じ色形である。そこで蛍子は初めて振り向いた。

 「どれにしようか」
 「左から開けてみれば」

 自信ありげに歩いていた割には、道を知らないらしい。俺は適当に答えた。蛍子は左手にある扉に手を触れた。扉が自動的に開く。蛍子が先に中へ入った。

 「きゃあ」

 俺は慌てて奥へ近付いた。中を覗くと、広い部屋の真ん中に、千手観音をロボットにしたような物体があり、うち2本の腕が蛍子を捕まえ、宙づりにしていた。

 「助けて!」

 呆気にとられた俺の耳に、蛍子の悲鳴が届いて我に返った。

 しかし、助ける方法がわからない。情けなくも、おろおろと見る間に、脱げやすい蛍子の服が床に落ち、山ほどある腕が蛍子の体をなで回し始めた。身悶みもだえする蛍子。

 ヘルメットのせいで表情が読み取れず、苦しんでいるのか喜んでいるのかよくわからない。ロボットの腕がいやらしく見える。

 「この、エロ・ロボットめ」

 俺はとにかくロボットにとりついた。たちまち腕に取り囲まれる。しかも、蛍子にかかっている腕は一向に動きを止めない。千手観音並みの本数である。同時にいろいろなことができるのだ。

 上の方に掲げられた腕の一本が、鍵らしき物を握っているのに気付いた。絡み付く腕を振り払い、足蹴あしげにしながら、その腕を目指してよじ登った。

 しかし何分なにぶん、腕は多く、ついに俺もがんじがらめにされてしまった。俺の服も床に落ちる。腕は蛍子だけでなく、俺の体も愛撫あいぶし始めた。

 「どうなっているんだ、これは」

 悔しいことに、ロボットの愛撫はなかなか気持ちがよかった。金属製の腕なのに、触れる加減が絶妙で、俺は恥ずかしながら達してしまった。


 2人が十分に堪能たんのうしたところで、腕ロボットは静かに2人の体を床に下ろした。
 離れて向き合ったまま、俺と蛍子は服を着るのも忘れ、互いに見つめ合った。

 「そうだ、鍵」

 先に我に返った俺の言葉に反応したかのように、ロボットの腕から鍵が放たれた。鍵は派手な金属音を立てて、2人の間に落ちた。
 早速拾い上げ、蛍子のヘルメットの鍵穴に合わせる。鍵は、穴に入りもしなかった。

 「この鍵ではないみたいだ」

 俺が鍵を放り投げると、蛍子がふらふらと拾いに行き、戻って俺に差し出した。

 「いつか何かに使えるかもしれんから、とっときましょうがね」
 「これを握りしめて行くの?」
 「袋に入れりゃあいいでしょう」
 「袋がどこにあるの」

 蛍子が指差した先は、例の腕ロボットであった。
 山ほど腕を持つロボットは、よく見れば、鍵の他にもおかしな物をいろいろ手に握っていた。背負袋も持っている。

 袋は欲しいが、また腕に捕まえられてはたまらない。俺がためらっていると、蛍子がロボットの後ろから、長い棒を引きずり出した。

 「ついでだで、全部落としましょう」

 服を着終えた蛍子が棒でつつくと、面白いように物が落ちた。木の実を採っているみたいだ。
 俺は物が当たらないよう、部屋の隅に避けていたが、蛍子のヘルメットは頑丈なのか、物が当たって大きな音がしても平気な様子であった。

 あらかた落としたところで近付いてみる。どこの国の物かわからない金貨の入った袋や、おもちゃの銃に似た形の物まであった。わけのわからない物は除き、持てるだけ手分けして身につけると、その部屋を出た。

 「次はどの扉を開ける?」
 「左の扉にしよう」

 来た時には正面にあった扉を俺が指すと、蛍子は無防備に扉の前に立った。

 「気を付けて」

 声をかけ終えるまでに、蛍子は部屋の中へ入ってしまった。俺は急いで後に続いた。

 今度の部屋には何もいなかった。額縁がくぶちのように、水流を模した彫刻を施された金属扉の前に、蛍子が立っている。

 「さっきの鍵をちょうだい」

 扉には把手とってがなく、鍵穴だけがあった。渡した鍵はぴったりと合い、がちゃりと鍵の動く音がした。
 鍵の刺さったまま、扉が横に滑り開く。

 外側は、白塗りの壁からなる通路であった。視線を走らせた先にも壁が見える。行き止まりか、左右へ直角に折れ曲がっているか、どちらかである。
 蛍子が振り返った。

 「どうする?」
 「行ってみよう」

 蛍子が先に立とうとするのを、俺は止めた。

 「危ないから、僕が先に行くよ」
 「ありがとう」

 蛍子は微笑んで後ろに回った。白塗りの通路を突き当たりまで進むと、やはりT字路となっており、左右に通路がつながっていた。どちらへ進んでも、ここから見る限り扉もなく、同じ形の通路が続いている。俺は左へ曲がった。

 突き当たりで通路は右へ折れていた。すぐ先に広くなった部屋があった。左右に握りのついた扉がある。左側の扉に耳をつけて音を聞いた。何も聞こえなかった。
 そっと握りを回し、扉を手前に引いた。動かない。押したら開いた。

 「ユーキ!」

 蛍子の叫び声が聞こえた。何が起こったのか、すぐにはわからなかった。

 扉から体が引きはがされ、部屋に引きずり込まれたと分かったのは、服を脱がされ、自分の下半身の辺りにブロンド女の顔を認めた時であった。起き上がろうにも起き上がれない。

 ふと上を見ると、どうやってか知らないが、人型の枠にすっぽりはまっているのが見えた。天井が鏡張りなのである。蛍子がわめきながら俺の人型にとりつくのを、ブロンド女が邪慳じゃけんに振り払う。

 蛍子は紙のように吹っ飛び、壁に当たって動かなくなった。俺はあせって体を動かすが、上半身は人型に、下半身は女にしっかり固定されて身動きできない。

 蛍子はすぐに起き上がった。良かった、無事だった。
 ところが何を思ったか、今度は服を脱いで女の背後からとりついておかしな動きを始めた。今度は女も振り払わない。何かエロい。

 不覚にも、俺は興奮してしまった。すると人型がすっぽり抜けた。待ち構えていたように、女が絡み付いてくる。
 結局3人で一緒になって、蛇の交尾みたいなことになってしまった。どっちの口に何を入れたか、もうぐちゃぐちゃである。

 俺は何をやっているんだろう、と思ったのは、均等に出した後である。

 終わると、女は屈託くったくのない笑顔で、鍵を差し出した。
 受け取って、蛍子のヘルメットにある鍵穴に当てはめてみる。穴には入ったが、鍵が回らない。これも違う鍵であった。

 「きっとこっちの鍵だわ」

 蛍子が鍵を奪いとるようにして、新しい扉の穴に差し込んだ。
 扉はすんなり開き、蛍子は扉の向こうに消えた。

 俺はブロンド女に礼を言うのもそこそこに、服を着て後を追った。何に対しての礼なのか、考えると混乱するので止めた。

 閉まりかけの扉の隙間から向こうへ飛び込むと、扉はひとりでに閉まり、跡形もなく消えた。危ないところだった。

 そこは、きっちり積み上げられた煉瓦れんが造りの建物の内部であった。
 天井から床まで同じ色の煉瓦が敷き詰められている。煉瓦の箱を思わせる。
 蛍子の姿はどこにもない。

 「蛍子」

 呼んでも返事はなかった。どこを見ても均一の煉瓦が続く。赤茶色の長方形を、白い目地が囲む。その集合体も長方形を形作っている。目がちかちかしてきた。

 通路が続くとおぼしき正面に向かって進むと、いくらも進まないうちに行き止まりとなった。距離感がおかしい。振り返ってみても、出入り口は見えない。

 突き当たりの壁を両手で押してみた。ぐらりと体が揺れたと思ったのは、壁がぐるりと回転したせいだった。勢い余った俺は、壁の向こうへ転がった。

 「はあい、いらっしゃい」

 色っぽい声に目を上げて、俺は絶句した。壁も天井も煉瓦であることには変わりない。広い煉瓦色の部屋の中に、様々な年齢層の、髪の色、目の色も様々な女たちが居て、ひしめくように俺を迎えたのであった。

 ほとんどの女が裸である。後ろの方に、白いフリフリレースのエプロンだけつけた者や、ガーターだけをつけた者がいるのが目についた。
 純粋な東洋系はいない。どういうわけか、外見が俺とかけ離れたタイプばかり集まっている。

 「誰でも好きな人を選んでいいのよ。1人じゃなくてもいいのよ」

 話しかけてくるのは日本語である。そういえば、白塗り鏡張りの部屋にいた女も、西洋系の顔立ちなのに日本語で、良い良いとか言っていた。

 「蛍子知らない? フルフェイスのヘルメットをかぶった女の子」

 あまりに非現実な光景に出くわし、俺は現実逃避のように当初の目的を思い出した。
 俺が問い返した女は、形のよい胸を突き出し、栗色の髪を長い指で掻き上げながら、気を悪くした風もなく答えた。

 「あたしたちを満足させてくれたら、教えてあ、げ、る」
 「全員?」

 一生かかっても、これほど大勢の女に迫られることはない。荷が重すぎると潰れてしまう。
 俺は嬉しさを遥かに通り越して、顔が強ばるのを感じた。

 どんな男性でも、全員をこの場で満足させることなど不可能だろう。いくらなんでも多すぎる。
 くすくす、と女は両手で自分の胸をもてあそびながら、笑った。柔らかそうな胸が、たぷたぷ揺れる。

 「好きなだけでいいわ。なるべく、たくさんお願いね」
 「ユーキは恥ずかしがり屋さんみたいだから、あちらのベッドへ行ってしましょう」

 女たちの群れが二手に分かれ、天蓋てんがい付きの豪奢なベッドが現れた。洋風の衝立も置いてある。これで目隠しのつもりなのか。

 普通、こういう状況で、できるものなのだろうか。
 そして、自分はどこまでできるものなのか。
 女たちが、本当に蛍子の行方を知っているかどうか、知っていても教えてくれるかどうかは、約束を信じるしかない。
 俺は、最初に話しかけた女の手をとり、決然としてベッドへ進んだ。

 それにしても、何故俺の名前を知っているのだろう。一瞬だけ疑問が頭を掠めたが、食い尽くそうとせんばかりに唇を塞がれて、考えるのを止めた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

今日の授業は保健体育

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。 その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。 ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

一夏の性体験

風のように
恋愛
性に興味を持ち始めた頃に訪れた憧れの年上の女性との一夜の経験

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

処理中です...