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1章スローライフ準備編

57 閑話6

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「はぁ、そろそろザクセンとの夕飯に行かなきゃいけないね」

「ああ」

食前にあんなことするんじゃなかったと思うほど賢者に成り果て、疲労感がどっと襲う。

でも、行かなければ。タフな冒険者なのだから。

身体の各所に痛みを感じるが、外傷は無い。なら動ける!と言う脳筋的考えを気力で何とか保つ。

動けるならアセナともう一回、、、、


服を着て、軽く冒険者スタイルになる。
何となく得物を持ち歩いていないと少し自信がないのだ。
村では野生動物や雑魚モンスターに出会う可能性が無きにしも非ず。街では暴漢に出会う。まぁ余程のことがない限り、冒険者を襲うメリットはない。




「ここ、だよな?」
言われていた場所に到着すると、貴族街からほど近い平民区域にあるお洒落なレストランだった。

「みたいだな」
アセナもあの商人と食事なんて初めてだそうだ。

とは言っても入るのに気後れするほどの格式の高い店ではなさそうだ。


「いらっしゃいませ」
扉を開けると、店員が落ち着いた口調と態度で出迎えてくれた。

「ザクセンさんから招待をいただいた者です」

「かしこまりました、ザクセン様が先に到着なされているようです」

手で刺された方向を見ると、すでに席についているザクセンさんが見えた。


慌てはしないが、後から来た身分として、スムーズに着座する。



「緊張しなくても、、、いい」
若干の緊張が伝わったのかザクセンさんにそう言ってもらえた。

アセナも緊張したのだろうか?

それなら二人で一緒なのにね。

「こんないい店、いいのですか?」
こんな店に連れてきてもらえても、依頼の安請け合いなんてするつもりはない。

「二人は、特別な関係になったように見えた。だから、これも特別、です」

なるほど。

なら今日は楽しむとしよう。


コース式のようで、僕らの到着が確認されたら料理の提供が始まった。


まずはオードブル。
冒険者の胃袋をさえるにはちっとも足りないが、華やかさがある。

冒険前にこれを食っても3分しか動けないだろうなぁ。

そんなことを考えながら口に運べば、皿から料理は胃袋へ消えた。そして間髪入れずスープが提供される。

ここのオーナーは冒険者のことをよくわかっていらっしゃる。

この白くて濃厚で深みのある甘さのスープはポタトポテトからできているらしい。

ヴィシソワーズというやつだろうか?
あれ?でもヴィシソワーズは冷製なんだっけ?ってことはこれは違うのかもしれないが、そんなことどうでもいいや。

完飲後、しばらくして魚、肉の順で提供された。
フレンチのコースとスタイルはほとんど同じのようだ。

店の雰囲気に合う味わいで、とても美味しい。



アセナと舌鼓を打った後、宿へもどった。








そして村への帰り道はこのザクセンさんを引き連れて森を抜ける。

ザクセンさんはアセナと幾度となくこの荒れた道を通ったことがあるらしく、モンスターの量も減った今では、それなりの大きさのある荷台を馬に引かせていてもこれと言った困難はあまりない。

またアセナも困難と思わせる前に処理してくれる。

僕は僕でできると思った手伝いは積極的にするようにしている。

ただ、ザクセンさんはびっくりするほど物静かで、別に僕らのことを嫌っている雰囲気は感じないが、必要以上の会話を取ろうともしない。
そのスタイルがアセナと長くやっていけた理由なのだろう。
そして、寡黙になってしまうほど集中してないと、その辺の草に車輪を引っ掛けなねないというのもあるだろう。







そんなこんなで何の異常もなく森を抜けることができた。




「ご苦労だった、報酬はギルドから。今回の依頼はこれにて」

「ありがとうございました。お疲れ様です」


こうしてこの護衛クエストは終わった。
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