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20 甘い時間 アリン視点

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「ん…」

「おはよう、アリン」

「フェアン…」

「体、大丈夫?」

ーーそうだった、僕昨日…

昨夜のことを思い出して顔中が真っ赤になる。どんな顔したらいいんだろう恥ずかしすぎる。腕枕をされたままちらっとフェアンの顔を見るとまるで宝物を見るような柔らかい笑みを浮かべて見つめるフェアンと視線が交わった。

「アリン?大丈夫?」

「えっ…あっ、だいじょ……っ!いった…」

身を捩ると下半身が痛んだ。特にお尻はズキズキして動けそうにもない。

「やっぱり。昨夜は我慢できなくて…無理をさせてしまった。」

そう言い僕の猫耳や腰を優しく撫でてくるフェアンは眉をハの字にして心配そうに僕を見た。フェアンに対して素直になると決めてから僕はすごく涙脆くなったみたい。フェアンが愛しくて愛しくて、目に涙を浮かべたまま、そのままぎゅうっとフェアンに抱きついた。暫くそんな僕を抱きしめ返してくれていたけど、泣いてることに気づいたフェアンが慌てた声で僕の顔を覗き込んだ。

「泣くほど痛いか!…医者を呼んだ方がいいな。よし、今から…」

「ち、違うから!…いや痛いのは確かだけど…。泣いてるのは違うよ。」

「じゃあどうして?」

「ふふっ……とっても幸せで…。幸せすぎで気持ちが溢れちゃった!」

医者を呼びに行こうとベッドを出ようとするフェアンを引き留め、そう言うとフェアンの目から涙がポロポロ溢れ頬をつたった。そしてベッドで横たわる僕をゆっくりとシーツの上に座らせ、逞しい体で痛いくらいに抱き締めてきた。

「絶対!…絶対幸せにするから!!アリン好きだよ。」

「…僕も。僕も大好き。」

「俺の方が大好き。愛してる。」

…まるで砂糖菓子が溶けるような甘い時間だった。こんな満たされる気持ちになるなんて…5年前なら想像も出来なかった。
暫く抱き合った後、どちらともなく見つめ合いフェアンが僕の額にチュッと優しくキスを落とし腕を解いた。

「そんな名残惜しそうな顔をしないでおくれ。」

「えっ…そんな…」

「ふふっ…何か食べれる物をとってくるよ。」

「僕も行くよ!」

「いや、無理をさせたのは俺だ。今日はアリンのお世話させてくれ…仕事もお互い休みで良かった。家事は俺が全部するから…ゆっくり休んで欲しい。ほら、何食べたい?」

あたたかい表情で見つめられるともう何も言い返せなかった。

「……りんご。うさぎさんに切ったりんごと、あったかい紅茶が飲みたい!」

「了解した!」

優しい笑顔でそう言うと僕の手の甲に一つキスを落とし、あっという間に服を着替え部屋から出て行ってしまった。



キスをされた場所が熱い。腰やお尻の痛みさえも幸せでしかない。
ーーこんなに愛してもらえて僕は幸せ者だ…


…それなのに僕はまだ両親の事を言えないでいる。でも、これは自分で伝えなければいけない。誰かから伝わってしまう前に…。
フェアンになら言える。両親の事故のこと。

フェアンが部屋に戻ってきたら話をしよう。そう心に決めぎゅっと目を瞑った。



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