金瞳の王子は黒猫少年を溺愛する

小鳥遊ゆう

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19 王宮

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「えぇい!!まだ見つからんのか!もう1ヶ月も経つんだぞ!!」

「…申し訳ありません、陛下。リヒテル王子は必ず、私が見つけ出します。」

「当たり前だっ!!」

もういいと言う陛下に頭を下げ王の執務室からでる。
俺の名前はタイラー。この国の第二王子、リヒテル様の護衛をしていた。…1ヶ月前のあの日俺は護衛を何人かつけリヒテル様と共に国を巡回していた。リヒテル様は王子であり騎士団の次期団長という立場にありながら何より国民のことを気にかけている素晴らしいお方だ。
この日も騎士団としての訓練の後、民の様子を見に行くと言ってデリアの町まで出かけたのだ。そしてその帰り、リヒテル様は近道だと言って森を突き抜けようとしたのだ。その時のことを思い出すとなんでリヒテル様を止めなかったのかと今でも後悔している。

そして盗賊に襲われるリヒテル様をなんとか逃そうと戦い、全員捕らえたところで戻ってきたのは、リヒテル様の愛馬だけだった。

「リヒテル様は…?どこだ!!探せ!!」

他の護衛と血眼になって探したが結果は全滅。痕跡さえ見つからなかった。
あれから1ヶ月騎士団員や護衛たちと毎日探しているが未だ見つかっていない。

「リヒテル様…無事でいてください。」

そう願い探し続けるしか今の自分には出来ない。


ーーー


陛下と第一王子・ルーカス様とリヒテル様は常に対立していた。
王宮の利益を第一に考える陛下とルーカス王子、民の幸せを常に願うリヒテル様では考え方がどうしても違い、よく言い争う声も聞こえた。

陛下はリヒテル様が見つからないことによって、だんだん周りの臣下達が不信感を現してることを心配して探せと命令しているだけだ。現にルーカス様は何一つ心配していない。

ーーはぁ…陛下もルーカス様も、もう少しリヒテル様の心配をしてくださればいいのに…。

そう考えながら王宮の廊下を俯いて歩いていると向かいから、あの日同じ護衛としてリヒテル様と共にいたエリックが声をかけてきた。

「タイラー!」

「エリックか…」

「陛下と会ったんだろ?」

「あぁ、まぁな。」

「どうせ、またお小言言われたんだろ?……大丈夫だ、リヒテル様は必ず生きてる!」

「っ!当たり前だ!」

そうムキになった所で、エリックは悪戯っ子のような顔で笑った。

「やっとこっち向いたな!…じゃあやる事はわかってるよな?」

「リヒテル様を探す!必ず見つける!」

そうこなくっちゃと俺の肩に腕を回すエリック。

「明日、朝から騎士団員を連れてリヒテル様を捜索する。お前も来いよ?」

当たり前だ、と言う視線を向けるとエリックは黙って俺に拳を突き出した。俺は迷わずそれに自分の拳を合わした。

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