50 / 58
第50 初めまして、愛される日々 7
しおりを挟む
リオネル様の買い物は早かった。あっけなく終わって、馬車に乗り込もうとしていたマエリス様がリオネル様を振り返る。
「そう言えば、あちらとの商談はどうでしたの?」
商談? 私はマエリス様とリオネル様を見比べながら首を傾げた。カナトス家も様々な商会やギルドとの取引はある。きっとその1つだろう。
「上手くいきました。だいぶ王都への進出をしたかったようで、思った以上に簡単に済みました」
だけど、その言葉にお父様を連想してしまうのだ。そうだという確証はなかった。でも誰の名前も出てこないその会話こそが、そうだと言っているようだった。
だけど、それならなぜリオネル様がお父様と商談を行っているのだろう。分からないまま私はジッとリオネル様の顔を見つめていた。
「まぁ、それでは契約は当初予定の通り?」
「はい、王都内で販路を開くのにかかる費用を我が家が貸し付けて、その見返りとして売り上げの3分の1は彼女の名義とするように書面を交わしています」
契約が上手くいったと伝える口元は、ちゃんと笑みが浮かんでいる。それなのに、どこかその目は冷たく感じる眼差しだった。
「そのまま紹介させて頂いたテナント公爵から、さっそく王都内に拠点となる屋敷を1つ買い付けて、次回の晩餐会の仕入れ等も請け負っていたようなので、もう引くにも引けない状態だと思います」
その言葉に思わず緊張してしまう。引くに引けない状態なのは、いったい誰のことなのだろう。
でもそんな私の緊張に反して、マエリス様はリオネル様の説明に不思議そうな顔をしただけだった。
「テナント公爵はことの真相はご存知だったと思っていたのですが……」
「えぇ、ご存知でいらっしゃいますよ。ただあの方は面白いことがお好きな方ですから」
そう言って笑うリオネル様に「そう言うことなのね」とマエリス様は苦笑されていた。
「……あの」
「どうしたのかしら?」
こんな風に会話に割り込むなんて、みっともないことだった。でも、いつもと様子の違うリオネル様が心配だった。もしも私のために何か無茶なことをしていたら。そう思うと私は声を掛けずにはいられなかった。
「……そのお話しは、私の実家とのお話しではありませんか?」
「あら、どうしてそう思ったのかしら?」
あぁ、やっぱりそうなのだ。
いつもと変わらない様子のマエリス様に、私は確信してしまう。
だって違っているなら否定してしまえば良いだけなのだから。質問に質問で返すのは、暗に肯定しているような状況だった。
「……いえ、ただの勘でございます。違っていたのなら申し訳ございません…」
それでも私に告げないのは、私が知らない方が良いと思ってのことなのだろう。
なぜそんな商談を行ったのか、どういった契約だったのかは全く分からなかった。でもとても優しい人達なのだ。私のためだと、そんな予感がとてもした。
私のせいでカナトス家の人達に何か起きてしまったら、私は一生後悔し続けるだろう。
「…ですが、どうか無茶はされないでください。お願いします……」
だから私はそう言って頭を下げるしかなかった。
「そう言えば、あちらとの商談はどうでしたの?」
商談? 私はマエリス様とリオネル様を見比べながら首を傾げた。カナトス家も様々な商会やギルドとの取引はある。きっとその1つだろう。
「上手くいきました。だいぶ王都への進出をしたかったようで、思った以上に簡単に済みました」
だけど、その言葉にお父様を連想してしまうのだ。そうだという確証はなかった。でも誰の名前も出てこないその会話こそが、そうだと言っているようだった。
だけど、それならなぜリオネル様がお父様と商談を行っているのだろう。分からないまま私はジッとリオネル様の顔を見つめていた。
「まぁ、それでは契約は当初予定の通り?」
「はい、王都内で販路を開くのにかかる費用を我が家が貸し付けて、その見返りとして売り上げの3分の1は彼女の名義とするように書面を交わしています」
契約が上手くいったと伝える口元は、ちゃんと笑みが浮かんでいる。それなのに、どこかその目は冷たく感じる眼差しだった。
「そのまま紹介させて頂いたテナント公爵から、さっそく王都内に拠点となる屋敷を1つ買い付けて、次回の晩餐会の仕入れ等も請け負っていたようなので、もう引くにも引けない状態だと思います」
その言葉に思わず緊張してしまう。引くに引けない状態なのは、いったい誰のことなのだろう。
でもそんな私の緊張に反して、マエリス様はリオネル様の説明に不思議そうな顔をしただけだった。
「テナント公爵はことの真相はご存知だったと思っていたのですが……」
「えぇ、ご存知でいらっしゃいますよ。ただあの方は面白いことがお好きな方ですから」
そう言って笑うリオネル様に「そう言うことなのね」とマエリス様は苦笑されていた。
「……あの」
「どうしたのかしら?」
こんな風に会話に割り込むなんて、みっともないことだった。でも、いつもと様子の違うリオネル様が心配だった。もしも私のために何か無茶なことをしていたら。そう思うと私は声を掛けずにはいられなかった。
「……そのお話しは、私の実家とのお話しではありませんか?」
「あら、どうしてそう思ったのかしら?」
あぁ、やっぱりそうなのだ。
いつもと変わらない様子のマエリス様に、私は確信してしまう。
だって違っているなら否定してしまえば良いだけなのだから。質問に質問で返すのは、暗に肯定しているような状況だった。
「……いえ、ただの勘でございます。違っていたのなら申し訳ございません…」
それでも私に告げないのは、私が知らない方が良いと思ってのことなのだろう。
なぜそんな商談を行ったのか、どういった契約だったのかは全く分からなかった。でもとても優しい人達なのだ。私のためだと、そんな予感がとてもした。
私のせいでカナトス家の人達に何か起きてしまったら、私は一生後悔し続けるだろう。
「…ですが、どうか無茶はされないでください。お願いします……」
だから私はそう言って頭を下げるしかなかった。
172
あなたにおすすめの小説
「本当に僕の子供なのか検査して調べたい」子供と顔が似てないと責められ離婚と多額の慰謝料を請求された。
佐藤 美奈
恋愛
ソフィア伯爵令嬢は、公爵位を継いだ恋人で幼馴染のジャックと結婚して公爵夫人になった。何一つ不自由のない環境で誰もが羨むような生活をして、二人の子供に恵まれて幸福の絶頂期でもあった。
「長男は僕に似てるけど、次男の顔は全く似てないから病院で検査したい」
ある日、ジャックからそう言われてソフィアは、時間が止まったような気持ちで精神的な打撃を受けた。すぐに返す言葉が出てこなかった。この出来事がきっかけで仲睦まじい夫婦にひびが入り崩れ出していく。
仕事で疲れて会えないと、恋人に距離を置かれましたが、彼の上司に溺愛されているので幸せです!
ぽんちゃん
恋愛
――仕事で疲れて会えない。
十年付き合ってきた恋人を支えてきたけど、いつも後回しにされる日々。
記念日すら仕事を優先する彼に、十分だけでいいから会いたいとお願いすると、『距離を置こう』と言われてしまう。
そして、思い出の高級レストランで、予約した席に座る恋人が、他の女性と食事をしているところを目撃してしまい――!?
狂おしいほど愛しています、なのでよそへと嫁ぐことに致します
ちより
恋愛
侯爵令嬢のカレンは分別のあるレディだ。頭の中では初恋のエル様のことでいっぱいになりながらも、一切そんな素振りは見せない徹底ぶりだ。
愛するエル様、神々しくも真面目で思いやりあふれるエル様、その残り香だけで胸いっぱいですわ。
頭の中は常にエル様一筋のカレンだが、家同士が決めた結婚で、公爵家に嫁ぐことになる。愛のない形だけの結婚と思っているのは自分だけで、実は誰よりも公爵様から愛されていることに気づかない。
公爵様からの溺愛に、不器用な恋心が反応したら大変で……両思いに慣れません。
【完結】記憶喪失の令嬢は無自覚のうちに周囲をタラシ込む。
ゆらゆらぎ
恋愛
王国の筆頭公爵家であるヴェルガム家の長女であるティアルーナは食事に混ぜられていた遅延性の毒に苦しめられ、生死を彷徨い…そして目覚めた時には何もかもをキレイさっぱり忘れていた。
毒によって記憶を失った令嬢が使用人や両親、婚約者や兄を無自覚のうちにタラシ込むお話です。
〈完結〉八年間、音沙汰のなかった貴方はどちら様ですか?
詩海猫(8/29書籍発売)
恋愛
私の家は子爵家だった。
高位貴族ではなかったけれど、ちゃんと裕福な貴族としての暮らしは約束されていた。
泣き虫だった私に「リーアを守りたいんだ」と婚約してくれた侯爵家の彼は、私に黙って戦争に言ってしまい、いなくなった。
私も泣き虫の子爵令嬢をやめた。
八年後帰国した彼は、もういない私を探してるらしい。
*文字数的に「短編か?」という量になりましたが10万文字以下なので短編です。この後各自のアフターストーリーとか書けたら書きます。そしたら10万文字超えちゃうかもしれないけど短編です。こんなにかかると思わず、「転生王子〜」が大幅に滞ってしまいましたが、次はあちらに集中予定(あくまで予定)です、あちらもよろしくお願いします*
両親に溺愛されて育った妹の顛末
葉柚
恋愛
皇太子妃になるためにと厳しく育てられた私、エミリアとは違い、本来私に与えられるはずだった両親からの愛までも注ぎ込まれて溺愛され育てられた妹のオフィーリア。
オフィーリアは両親からの過剰な愛を受けて愛らしく育ったが、過剰な愛を受けて育ったために次第に世界は自分のためにあると勘違いするようになってしまい……。
「お姉さまはずるいわ。皇太子妃になっていずれはこの国の妃になるのでしょう?」
「私も、この国の頂点に立つ女性になりたいわ。」
「ねえ、お姉さま。私の方が皇太子妃に相応しいと思うの。代わってくださらない?」
妹の要求は徐々にエスカレートしていき、最後には……。
フッてくれてありがとう
nanahi
恋愛
「子どもができたんだ」
ある冬の25日、突然、彼が私に告げた。
「誰の」
私の短い問いにあなたは、しばらく無言だった。
でも私は知っている。
大学生時代の元カノだ。
「じゃあ。元気で」
彼からは謝罪の一言さえなかった。
下を向き、私はひたすら涙を流した。
それから二年後、私は偶然、元彼と再会する。
過去とは全く変わった私と出会って、元彼はふたたび──
はずれのわたしで、ごめんなさい。
ふまさ
恋愛
姉のベティは、学園でも有名になるほど綺麗で聡明な当たりのマイヤー伯爵令嬢。妹のアリシアは、ガリで陰気なはずれのマイヤー伯爵令嬢。そう学園のみなが陰であだ名していることは、アリシアも承知していた。傷付きはするが、もう慣れた。いちいち泣いてもいられない。
婚約者のマイクも、アリシアのことを幽霊のようだの暗いだのと陰口をたたいている。マイクは伯爵家の令息だが、家は没落の危機だと聞く。嫁の貰い手がないと家の名に傷がつくという理由で、アリシアの父親は持参金を多めに出すという条件でマイクとの婚約を成立させた。いわば政略結婚だ。
こんなわたしと結婚なんて、気の毒に。と、逆にマイクに同情するアリシア。
そんな諦めにも似たアリシアの日常を壊し、救ってくれたのは──。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる