眠りの巫女と野良狐

碧野葉菜

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歪みの原因はそれでしたか。

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 その後、夢穂と影雪は残月に促され御殿に向かった。
 影雪の部屋は出ていく前と変わらず清潔に保たれていた。
 自室は懐かしくもあったが、久しぶりすぎてなんとなく落ち着かない気もした。
 しかし隣に夢穂がいたことで、そんな違和感はすぐに掻き消えた。
 影雪の部屋は装飾がすべて銀色だった。
 残月が息子の毛並みに合わせ、銀狐仕様にしたらしい。
 「目がチカチカする、趣味が悪い」と愚痴る影雪に、夢穂は笑いながら「愛されてるじゃない」と言った。
 影雪が当然のように一緒に寝ようとすると、夢穂は照れ隠しに少し怒りながらも、遠慮がちに布団に入ってくれた。
 一人用の布団は狭いが、その分くっついていられるからいい。
 影雪がそう言うと、夢穂からすでに寝息が聞こえてきた。
 よほど疲れていたのだろう。
 すやすや寝息を立てる夢穂を見て、影雪も眠りに落ちていった。

 翌朝二人が目覚めた時には、すでに祭り騒ぎが始まっていた。
 御殿の窓から見下ろした町には、夜店のような屋台がずらりと並び、あやかしたちが集まっている。
 急いで外に出ると、夢穂を見るなり礼を言いに来るあやかしたちがたくさんいた。
 残月からの知らせで、夢穂が眠りの問題を解決したということが公然の事実となっていた。
 めでたいことがあった時は一日中どんちゃん騒ぎで、人間の食事にもお目にかかれるんだ、とみんな喜んでいた。
 確かに屋台にあるのは、綿アメやベビーカステラなど、夢穂がよく知っている食べ物ばかりだ。
 世界を行き来できる残月なら、お菓子の材料や作り方も容易に入手できるだろう。
 店番はあやかし同士で話し合い、交代で行っているようだ。争えば即終了と決まっているので、文句を言う者は誰もいない。

 一通り町を見て歩いてから、夢穂と影雪は森の近くにある道場に向かった。
 影雪が勢いよく扉を開くと、ちょうど飛び跳ねながら雑巾掛けをする獄樹に出会った。
 火がついたように顔を真っ赤にした獄樹は、わなわな震える手で影雪の顔面に雑巾を投げつけた。
 よほど影雪が道場に来るのを、楽しみにしていたようだ。
 温度差のありすぎる二人に、夢穂は込み上げる笑いを堪えるのが大変だった。
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