眠りの巫女と野良狐

碧野葉菜

文字の大きさ
上 下
126 / 175
歪みの原因はそれでしたか。

23

しおりを挟む
 そもそもなぜこの世界は綺麗に分断されていないのだろう。
 すっぱり切り離されていれば、互いの世界を監視し合うような遣い人も不要ではないか。
 間を繋ぐパン粉のようなもの、業華はそう言っていた。
 連れて行かれては大変だ、とも。
 まるで次元の狭間そのものが、生き物であるかのように。

「そう難しい顔をするでない」

 残月の声に、夢穂はハッと目を覚ます気持ちだった。

「悩んだところで事態は好転せぬ、我が思うに貴様は今までの眠りの巫女の中で最も可能性を秘めておる、期待しておるぞ」

 ――今までの眠りの巫女?
 ――何に対する可能性と期待?
 夢穂は許容量を越える謎に、頭が混乱してしまった。

「そんな断片的に言われても、何もはっきりわからないんだけど」
「あまり口を滑らせると貴様のところの遣い人に何をされるやわからぬゆえな、仏のような奴ほど怒らせると厄介なものよ」

 一段上から笑ってみせるような残月に、夢穂は不満いっぱいに頬を膨らませた。
 それを見た影雪は、ついその丸い空気を指先で押し出してみたくなるが、実行すれば叱られるだろうな、と考えていた。

「とりあえずはこの世界の眠りが回復したことを祝い、祭りを開いてやろう」

 驚いた夢穂の口から、ぷすっと気体が漏れる音がした。
 今度は何を言い出すかと思えば、影雪の突拍子がないところは、父の残月譲りなのだろうか?
 そんなことを考えながら、夢穂は当然即座に断った。
 目的を果たしたらすぐに帰る、と業華と約束してきたことも話した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

お飾りの侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
今宵もあの方は帰ってきてくださらない… フリーアイコン あままつ様のを使用させて頂いています。

【完結】化け猫拾いました。

はぴねこ
キャラ文芸
ちょっとオレ様気質な化け猫 & JKうようよコンビのハートフルコメディ。 迷子イタチを探したり、稲荷神社のお狐様とお話ししたり、化け猫を拾ったうようよの不思議な日常を描いています。 切りのいいところまで書いて、ひとまず完結としてあります。 文字数も少なく、一気読みに最適です! ※最後にちょっとだけホラー要素あります。苦手な方はご注意ください。

15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~

深冬 芽以
恋愛
 交際2年、結婚15年の柚葉《ゆずは》と和輝《かずき》。  2人の子供に恵まれて、どこにでもある普通の家族の普通の毎日を過ごしていた。  愚痴は言い切れないほどあるけれど、それなりに幸せ……のはずだった。 「その時計、気に入ってるのね」 「ああ、初ボーナスで買ったから思い出深くて」 『お揃いで』ね?  夫は知らない。  私が知っていることを。  結婚指輪はしないのに、その時計はつけるのね?  私の名前は呼ばないのに、あの女の名前は呼ぶのね?  今も私を好きですか?  後悔していませんか?  私は今もあなたが好きです。  だから、ずっと、後悔しているの……。  妻になり、強くなった。  母になり、逞しくなった。  だけど、傷つかないわけじゃない。

料理屋「○」~異世界に飛ばされたけど美味しい物を食べる事に妥協できませんでした~

斬原和菓子
ファンタジー
ここは異世界の中都市にある料理屋。日々の疲れを癒すべく店に来るお客様は様々な問題に悩まされている 酒と食事に癒される人々をさらに幸せにするべく奮闘するマスターの異世界食事情冒険譚

氷の騎士は、還れなかったモブのリスを何度でも手中に落とす

みん
恋愛
【モブ】シリーズ③(本編完結済み) R4.9.25☆お礼の気持ちを込めて、子達の話を投稿しています。4話程になると思います。良ければ、覗いてみて下さい。 “巻き込まれ召喚のモブの私だけが還れなかった件について” “モブで薬師な魔法使いと、氷の騎士の物語” に続く続編となります。 色々あって、無事にエディオルと結婚して幸せな日々をに送っていたハル。しかし、トラブル体質?なハルは健在だったようで──。 ハルだけではなく、パルヴァンや某国も絡んだトラブルに巻き込まれていく。 そして、そこで知った真実とは? やっぱり、書き切れなかった話が書きたくてウズウズしたので、続編始めました。すみません。 相変わらずのゆるふわ設定なので、また、温かい目で見ていただけたら幸いです。 宜しくお願いします。

死の予言のかわし方

海野宵人
恋愛
シーニュ王国第二王子を婚約者に持つアンヌマリーは、ある日、隣国の留学生からとんでもないことを耳打ちされた。 「きみ、このままだと一年後に婚約者から断罪されて婚約破棄された上に、一家そろって死ぬことになるよ」 ニナという名の義妹をメイドのように働かせて虐げた、と糾弾されることになると言う。 でも、彼女に義妹などいない。 ニナというメイドなら確かにいるが、「メイドのように働かせる」も何も実際メイドだ。糾弾されるいわれがない。 笑えない冗談かと、聞かなかったことにしようとしたが、少しずつ、少しずつ、彼から聞かされる予言の内容が現実になっていく。 アンヌマリーとその家族が、留学生たちの助けを借りながら、何とか予言から逃れるために選んだ方法は──。 ※「とある茶番劇の華麗ならざる舞台裏」のスピンオフ 共通した登場人物は多々いますが、物語としては独立しているので、あちらを読まなくてもお楽しみいただけるはずです。 というか、あちらを先に読むと割とがっつりネタバレしてます……。

処理中です...