眠りの巫女と野良狐

碧野葉菜

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歪みの原因はそれでしたか。

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 そもそもなぜこの世界は綺麗に分断されていないのだろう。
 すっぱり切り離されていれば、互いの世界を監視し合うような遣い人も不要ではないか。
 間を繋ぐパン粉のようなもの、業華はそう言っていた。
 連れて行かれては大変だ、とも。
 まるで次元の狭間そのものが、生き物であるかのように。

「そう難しい顔をするでない」

 残月の声に、夢穂はハッと目を覚ます気持ちだった。

「悩んだところで事態は好転せぬ、我が思うに貴様は今までの眠りの巫女の中で最も可能性を秘めておる、期待しておるぞ」

 ――今までの眠りの巫女?
 ――何に対する可能性と期待?
 夢穂は許容量を越える謎に、頭が混乱してしまった。

「そんな断片的に言われても、何もはっきりわからないんだけど」
「あまり口を滑らせると貴様のところの遣い人に何をされるやわからぬゆえな、仏のような奴ほど怒らせると厄介なものよ」

 一段上から笑ってみせるような残月に、夢穂は不満いっぱいに頬を膨らませた。
 それを見た影雪は、ついその丸い空気を指先で押し出してみたくなるが、実行すれば叱られるだろうな、と考えていた。

「とりあえずはこの世界の眠りが回復したことを祝い、祭りを開いてやろう」

 驚いた夢穂の口から、ぷすっと気体が漏れる音がした。
 今度は何を言い出すかと思えば、影雪の突拍子がないところは、父の残月譲りなのだろうか?
 そんなことを考えながら、夢穂は当然即座に断った。
 目的を果たしたらすぐに帰る、と業華と約束してきたことも話した。
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