眠りの巫女と野良狐

碧野葉菜

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歪みの原因はそれでしたか。

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「いや、見張りはしなくていい、すぐに行けるよう近くにいれば問題ない」
「え? でも、それじゃ墓荒らしが来てもわからないじゃない」

 影雪が腰を低くし両腕を前に用意すると、それが合図となり夢穂が体重を預ける。
 口に出さなくても、もう当然のようにお姫様抱っこの流れができている。今朝の騒ぎはなんだったのか。

「八重太を感覚でつければいい」
「そんなことできるの?」

 足音も立てず軽やかに、月明かりに照らされた森の中を影雪が行く。

「普通の状態では無理だが、神経を研ぎ澄ませばできるはずだ、知っている匂いならなんとかなるだろう」

 影雪が立ち止まったのは霊園から一番近い野山だった。
 とはいえそれなりの高さと距離があるので、霊園を見下ろすような形になる。
 紫がかったドーム型の薄い膜に覆われたそこは、町一つ分あるように思われ、夢穂は改めてその面積に驚かされていた。
 
「ここからなら目でも見えるしな」
「え、ええっ!? 見えるの? ここから?」
「蝶の数くらいならわかる」

 ならば誰かが霊園に入れば間違いなく気づくだろう。
 しかし、夢穂がどれだけ目を凝らしても、夜闇に浮かぶ残月の妖力しか見えなかった。
 影雪の視力はどうなっているのか、自動調整の利く望遠鏡のようなものだろうか、と夢穂は想像した。

「でも、目で確認するにしても感覚で追うにしても、影雪は眠れないじゃない?」
「俺は夢穂のところでずいぶん寝溜めをさせてもらったからな、二、三日眠れなくても平気だ」
「そ、そう? ならいいけど」

 影雪は夢穂を下ろすと「こっちだ」と促しながら足を進めた。
 柔らかな草村を踏みしめながら、夢穂は影雪の後をついて歩く。
 そうするとすぐ前方に洞穴ほらあなが見えて来た。
 大人が優に五、六人は入れるだろうか?
 奥行きはさほどないが、丸い形をした出入り口は広々としていた。
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