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なんだかんだ、仲良くなります。
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頭の後ろに組んだ両手を枕にし、空を見上げたまま沈静を守っている影雪を前にした夢穂は、しばらく固まったのち、ついに吹き出してしまった。
「あ、あははっ、な、何してるのよ」
「俺は休もうとしただけなのだが」
特に嫌がる様子もなく小鳥たちにされるがまま集られていた影雪が、なんともおかしかった。
小鳥たちが群れを成して飛び去った後、影雪はゆっくりと立ち上がると、夢穂の正面まで歩いた。
「お前、笑えるのだな」
お腹を抱えて笑っていた夢穂は、一瞬怪訝な顔をした。
「何よそれ、失礼ね、笑うに決まってるでしょ」
「いや、ずっと怒られてばかりだったから」
確かにそうかもしれないが、そうなるには理由があるので、ただの短気な人のように言うのはやめてほしい、と夢穂は思った。
「それは影雪が私を怒らせるようなことをするからでしょうが」
「そうか、気をつける」
「……もう、別にいいけどね」
夢穂は肩の力を抜き、また自然と笑顔になっていた。
いつもはもっと時間がかかる草摘みも影雪のおかげで早く終わり、感謝はしても文句を言う必要などまったくない。
「ありがとうね、綺麗な薬草がたくさん摘めたわ、影雪のおかげよ」
「そう、なのか?」
「当たり前でしょ、私一人じゃできなかったもの、助かったわ」
初めて夢穂に褒められた影雪は、足がふわふわするような、心地よい浮遊感を味わった。
「役に立てたならよかったが」
「そうよ、影雪ってやる気さえあればなんでもできるんじゃない? そんな気がするわ」
裏庭に戻る夢穂の小さな背中を、影雪は静かに眺めながら歩く。
「お兄ちゃんも野生の動物には好かれるけど、あそこまで集まられてるのは初めて見たわ。他のあやかしもそうなの?」
「いや、俺だけだな。あちらにいても、その辺で寝ているとよく動物が寄ってきた」
やっぱりそうか、と夢穂は心の中で納得した。
野鳥たちが単に獣に近いからという理由で、影雪を好んだわけではないと察していたからだ。
業華もそうだが、飾らない美は人間だけではなくすべての生き物に有効だと感じた。
「あ、あははっ、な、何してるのよ」
「俺は休もうとしただけなのだが」
特に嫌がる様子もなく小鳥たちにされるがまま集られていた影雪が、なんともおかしかった。
小鳥たちが群れを成して飛び去った後、影雪はゆっくりと立ち上がると、夢穂の正面まで歩いた。
「お前、笑えるのだな」
お腹を抱えて笑っていた夢穂は、一瞬怪訝な顔をした。
「何よそれ、失礼ね、笑うに決まってるでしょ」
「いや、ずっと怒られてばかりだったから」
確かにそうかもしれないが、そうなるには理由があるので、ただの短気な人のように言うのはやめてほしい、と夢穂は思った。
「それは影雪が私を怒らせるようなことをするからでしょうが」
「そうか、気をつける」
「……もう、別にいいけどね」
夢穂は肩の力を抜き、また自然と笑顔になっていた。
いつもはもっと時間がかかる草摘みも影雪のおかげで早く終わり、感謝はしても文句を言う必要などまったくない。
「ありがとうね、綺麗な薬草がたくさん摘めたわ、影雪のおかげよ」
「そう、なのか?」
「当たり前でしょ、私一人じゃできなかったもの、助かったわ」
初めて夢穂に褒められた影雪は、足がふわふわするような、心地よい浮遊感を味わった。
「役に立てたならよかったが」
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