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『好きな人の好きな人』(SIDE 雫)
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「好きな人に好きな人がいたら・・雫さんはどうする?」
何気なく泰莉君が口にした言葉に、傷口を抉られたような気持ちになった。
浮気されたという経験は、ただ単に心が傷つくだけじゃなく、必要のない被害者意識を植え付ける。
「・・・諦めるかな。」
実際はそう簡単じゃない。
経験からそうわかっているし今もぐだぐだ悩んで答えが出せずにいる俺にとって、その答えは嘘以外の何物でもなかった。
「そうするしかないよな、やっぱり。」
深刻そうに眉間に皺を寄せてため息を吐き出した彼が、カフェの木目テーブルに頬杖をつく。
「弥弦さんに、好きな人がいるってこと?」
彼が俺と同じ悩みを抱えているのだとしたら、苦しくて見ていられない。
そう思ったけれど・・彼が打ち明けようとしている以上、自分には聞く義務があるように思えた。
運命共同体。
彼といると、そんな気持ちになるから不思議だ。
「千種 美影って、弥弦さんの相方。なんかあるんじゃないかってずっと思ってんだけど、」
「根拠はあるの?」
食い気味に質問してしまった俺に、泰莉君が驚いて顔をあげる。
頬杖をついていた彼の肘が、宙に浮いて止まった。
「二人の視線・・・?こう・・なんつーか、視線が交差する時に、熱っぽい何かを感じる?みたいな。」
抽象的な物言いだけれど、それは確かに何かある、と俺は確信した。
巧が梓先生と視線や言葉を交わす時の、二人の空気を思い出して脱力する。
「俺にも経験あるから、わかるよ。」
「はぁ?マジで?雫さんが恋人なのに、浮気する奴なんていんの?」
彼が本気で驚いたのがわかって、なんだかくすぐったい気持ちになった。
「俺が恋人だからじゃない?退屈になるんじゃないかな。」
「雫さんが恋人で、退屈になるわけねーじゃん。」
庇ってくれているわけじゃなく、彼の本心からの言葉だとわかるから、胸が痛い。
無防備に心をさらけ出してくれる彼の懐に、飛び込んでしまいたくなる時がある。
「泰莉君みたいなハンサムで優しい彼氏がいるのに浮気する人は、相手が誰でもきっと浮気するんだろうね。」
庇ったり慰めたりしたいわけじゃなく、俺も本心からそう思っていた。
彼の優しさで満たされない人がいるのなら、誰にも満たすことができない。
泰莉君のことを全て知っているわけでもないのに、俺はそう確信していた。
何気なく泰莉君が口にした言葉に、傷口を抉られたような気持ちになった。
浮気されたという経験は、ただ単に心が傷つくだけじゃなく、必要のない被害者意識を植え付ける。
「・・・諦めるかな。」
実際はそう簡単じゃない。
経験からそうわかっているし今もぐだぐだ悩んで答えが出せずにいる俺にとって、その答えは嘘以外の何物でもなかった。
「そうするしかないよな、やっぱり。」
深刻そうに眉間に皺を寄せてため息を吐き出した彼が、カフェの木目テーブルに頬杖をつく。
「弥弦さんに、好きな人がいるってこと?」
彼が俺と同じ悩みを抱えているのだとしたら、苦しくて見ていられない。
そう思ったけれど・・彼が打ち明けようとしている以上、自分には聞く義務があるように思えた。
運命共同体。
彼といると、そんな気持ちになるから不思議だ。
「千種 美影って、弥弦さんの相方。なんかあるんじゃないかってずっと思ってんだけど、」
「根拠はあるの?」
食い気味に質問してしまった俺に、泰莉君が驚いて顔をあげる。
頬杖をついていた彼の肘が、宙に浮いて止まった。
「二人の視線・・・?こう・・なんつーか、視線が交差する時に、熱っぽい何かを感じる?みたいな。」
抽象的な物言いだけれど、それは確かに何かある、と俺は確信した。
巧が梓先生と視線や言葉を交わす時の、二人の空気を思い出して脱力する。
「俺にも経験あるから、わかるよ。」
「はぁ?マジで?雫さんが恋人なのに、浮気する奴なんていんの?」
彼が本気で驚いたのがわかって、なんだかくすぐったい気持ちになった。
「俺が恋人だからじゃない?退屈になるんじゃないかな。」
「雫さんが恋人で、退屈になるわけねーじゃん。」
庇ってくれているわけじゃなく、彼の本心からの言葉だとわかるから、胸が痛い。
無防備に心をさらけ出してくれる彼の懐に、飛び込んでしまいたくなる時がある。
「泰莉君みたいなハンサムで優しい彼氏がいるのに浮気する人は、相手が誰でもきっと浮気するんだろうね。」
庇ったり慰めたりしたいわけじゃなく、俺も本心からそう思っていた。
彼の優しさで満たされない人がいるのなら、誰にも満たすことができない。
泰莉君のことを全て知っているわけでもないのに、俺はそう確信していた。
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