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『共犯者』(SIDE 泰莉)
しおりを挟む「なぁ、雫さんて、巧さんと付き合ってんの?」
ふと自然に口に出してしまった自分に驚く。
真相を知りたいと思っていたけれど、簡単に口に出せる内容じゃないしな・・なんて臆していたのに。
「うん、そうだよ。」
もっと驚いたのは、彼が普通に答えたことだ。
戸惑うでも繕うでもなく、ごく自然に肯定の言葉を口にした。
「やっぱりそうか。」
「幼馴染にしては仲良すぎだよね。同じ部屋で寝てるし。」
「隠さないんだ、雫さん。それにびっくりした。」
「泰莉君だもん、隠さないよ。」
雫さんの距離の詰めかたは、独特だった。
俺に近づこうと馴れ馴れしくしてくる奴は沢山いるし、気を引こうと媚びてくる女も沢山いる。
不自然な距離の詰めかたに、俺は嫌気がさしていた。
雫さんは気付くともう、俺のすぐそばにいる。
ずっと昔からいつも彼がいたような、そんな気がしてくる。
「俺も・・弥弦さんと、付き合ってる。」
白状するのがフェアだと、そう思った。
彼のそばにいると、秘密を打ち明けたいという衝動に駆られる。
秘密を吐けと力で強要するより、秘密を打ち明けたいと思わせれば勝ち。
そんな言葉が、脳裏に浮かんだ。
「そうなんだね。お互い、辛いね。」
突き刺さったその言葉が、じんわりと俺の心臓を溶かしていく。
その日から俺と雫さんは、秘密を共有する共犯者になった。
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