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包容力

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車の中で、他愛もない話をする。

俺たち脳外科医は、仕事の話となると難しい手術の話なんかが多いから、
努めて軽めの話を選択した。


「看護師たちが、相良さがら先生はすごいってみんな言うんで、俺ちょっと妬いてました。」

「あはは、みんな俺を買い被りすぎなんだよ。」

苦笑した彼の横顔が、男らしくてカッコ良い。

彼は医師には珍しく、自信家でもないし、嫌味っぽくもない。
後輩に説教口調で話したりもしないし、いざという時はさりげなく助けてくれる。


「休みの日は、何してるんですか?」

「俺はいつも仕事ばかりだな。」

理性的で人格者、誰にでも優しくて包容力がある。
確かに久我原の言う通りだ。

恋人はいるんだろうか?
モテないはずがない。
看護師が本気で彼に想いを寄せているという話を聞いたのは、一回や2回じゃない。


「恋人は・・いるんですか?」

「いないよ。仕事と両立出来るくらい、器用だったら良いんだけどな。」

「・・・よかったら、家に、寄っていきませんか?」

相良先生の、医師じゃないプライベートの素顔を見てみたいと思った。
運転する彼の逞しい腕や、真剣な目、アクセルを踏む脚を見ていたら、ムラムラしてしまう。

彼の穏やかじゃない一面を、どうしても見てみたいと思ってしまった。

興奮して息を荒げ、自分の欲望を満たすことしか考えられない彼の姿を見てみたい。
相良先生がどんなセックスをするのか、どうしても知りたくなってしまった。


「嬉しいけど、急にお邪魔するのは、気がひけるな。」

「相談したいことが・・・あるんです。」

こう言えば、彼は断れないだろう。そう思った。

「お前から相談されるなんて光栄だな。」

嘘をついたことに罪悪感を覚えてしまうような純粋な笑顔で、彼は笑った。


♢♢♢

「相良先生、料理まで出来るんですね。完璧すぎだろ・・・」

週に数回泊まりに来る弘樹が買い置きしていた食材で、彼はオムライスを作ってくれた。
食べた後、食器洗いまで手際よくやってのけた先生に、俺は本気で惚れ惚れしてしまう。


俺は衝動に突き動かされて、後ろから彼に抱きついていた。


「相良先生・・・・すげぇ良いにおいする・・・」

彼の肩に顔を埋める。
背後から抱きつかれた相良先生に、動揺は見られなかった。

「王寺・・・どうした?」

「先生と一緒にいたら・・・すげぇ癒された・・・。すみません、急にこんなこと。」

「・・・構わない。人に甘えたくなる時は、誰にでもあるもんだよな。」

腹部に回していた俺の手に、手を重ねると子どもをあやすように、ポンポンと撫でてくれる。


(こ、これは惚れるだろ・・・・っ!!!)


相良先生の包容力。
久我原の言葉を思い出す。


俺は相良先生の大人の魅力にすっかりやられてしまった。


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