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ランチデート

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御影みかげの婚約者のフリをする。

恋愛初心者というわけではないけれど、こんなに完璧な彼氏がいたことは一度もない。
今までの私の恋愛は、酒やお金にだらしない男、浮気者等々、ろくな男を相手にしたことがなかった。


「高身長、高学歴、高収入」の上、人目を引くほどの魅力的なルックスの持ち主。
つかみどころのない性格だけれど、終始落ち着いていて穏やか、料理もできるハイスペックの色男。

隣を歩く御影を見つめながら、思わず見惚れてしまう。


「何?俺の顔に何かついてる?」

私が見惚れているとわかっていて、そんな意地悪を言ってくる彼に、「別に。」と一言、そっけなく返した。


仕事の打ち合わせで、御影の会社の近くまで来た私は、彼をランチに誘ってみたのだ。

最近、私と御影が仲良くしていると、浅葱あさぎの機嫌が悪くなることが多い。
婚約者のフリをするということが、彼は相当気に入らないらしく、ことあるごとに突っかかってきた。


「お前から誘ってくれるなんて、思ってなかったな。」

「家だと何だか話しにくいでしょう。浅葱の目が気になっちゃって。」

「浅葱はお前のことが大好きだから、婚約者の”フリ”でも嫌なんだよ。お前を俺に取られるみたいで。」


(え・・・?そっち・・・・?嘘、それは胸キュンすぎる・・・♡)


てっきり、汚い大人社会の事情に平伏ひれふす私たち大人が、彼の正義感に触れてしまったのだとばかり思っていた。


「浅葱は、そうまでして仕事が欲しい汚い大人に腹立ててるだけでしょう・・?」

「お前は、本当に何もわかってないね。」


お店に向かって斜め前を歩く御影が、私の手を取った。

(手・・・!!手繋いでる・・・!?な、何、急に・・・?!)


ミステリアスなイケメン、御影の考えることは全く理解できない。
予測不能な彼の行動に、私はいつも振り回されてばかりだった。


「婚約者なんだから、手くらい繋ぐのが普通でしょ?」

「そ・・・そうかもしれないけど・・・」

「何?手を繋ぐだけで、照れちゃうんだ?」

「ち、違うけど・・・・!」

クスクスと笑う彼は、私を揶揄からかって遊ぶのが好きなのだ。
私の戸惑う顔を見て、心底楽しそうだった。


「俺の指であんなに乱れてたくせに、まだそんな純情なとこ見せてくれるんだね。」

「な・・・っ・・・・」


昼間のオフィス街。
周りにたくさん人がいると言うのに、彼は涼しい顔で私に耳打ちする。


彼のスーツ姿は完璧で、どこからどうみても仕事のできるハイスペック社会人。
理性と知性で武装した彼の表情と、私の身体をもてあそんだあの夜の妖艶な表情のギャップに、私は思い切り赤面した。


「こんなとこで、そんなエッチな顔するなよ。他の男に見られるだろ?」

私の背後に回ってお店のドアを引いた彼が、後頭部に口付けてくる。

(こんなとこで・・辞めてよ、もう・・・っ!!)


私はいつだって、この色男に振り回されてばかりだ。




同じ家で生活しているのに、一時間しか会えない。
お昼休みのその限定感が、とても新鮮に思える。

婚約者として振る舞う御影は、とても魅力的だった。
日曜日の展示会が終われば、それも終わり。

そう思うと、少しだけ寂しいような気持ちなる。


「土曜日、浅葱が友達と出かけるらしいんだけど、俺らも二人でどこか行こうか。」

「え・・・?」

「たまには外でデートもいいだろ?・・・それとも、二人きりの家で、他のことしようか?」


(他のことって・・・・何・・・?!)

一瞬にして、エッチな妄想が頭を駆け巡る。


サラリーマンやOLでにぎわうランチタイムの店内で、にっこりと笑う御影はその場に馴染んでいるのが不思議なくらい、大人の男のエロさ全開だった。








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