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二人きりの土曜日

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「本当に、俺の婚約者にならない?」

土曜日、浅葱あさぎが出かけた後、二人きりのリビングでコーヒータイム。
ソファーに並んで座る御影みかげが、突然真顔でそう口にした。

すぐには言葉の意味が飲み込めず、呆然と彼の顔を見つめる私は、相当間の抜けた顔をしていたらしい。

彼は真顔から急にふっと力が抜けたように、思い切り破顔した。

「なんだよその顔・・・そんなに驚いた?」

(何その笑顔・・・!?眩しすぎるってば・・・・!)

あはは、と声をあげて笑う御影に、悔しいやら恥ずかしいやらで、私は言葉を返せずに黙り込む。

(あぁ、もうそんな顔で笑っちゃって・・・!人の気も知らないで・・・・っ!)


私は昔から、御影の笑顔に弱いのだ。
美しい顔立ち、成績優秀、スポーツ万能、料理もできて面倒見が良い。
非の打ち所のない彼が、幼馴染であるという優越感と、劣等感。

私が彼を想う時、手放すことができない二つの感情。


彼は人前で微笑むことはあっても、大笑いするようなタイプではない。
私にだけ見せてくれる素の御影の笑顔が、私は大好きだった。

笑っている御影の手首をがっしりと掴んで、思い切り口付ける。

やられっぱなしじゃ、悔しすぎる。
そんな子どもじみた、対抗心。

彼の笑顔に乱された私の心は、ドキドキとうるさく鳴り響いて静まらない。

御影の笑い声が、キスと同時に止んで、彼の笑顔がスッと男の表情に変わる瞬間を見た。


自分で仕掛けたくせに、怖気付おじけづく。
私は本当に、昔から何の成長もしていない。
負けず嫌いの、ただのバカだ。


「お前・・・俺を本気にさせるんだ・・・?」

唇が離れた瞬間、彼は私の耳元に唇を寄せて、そう囁いた。
彼の低い声に、ぞくりと、背筋が震える。

「後悔しても、知らないよ?」


形勢逆転。
今度は私が手首を掴まれて、ソファーに押し倒される。

恐ろしく美しいイケメンが、私の身体の上に乗ってこちらを見下ろしていた。

浅葱は友達の家に出かけていて、不在。
まずい、と思った時にはもう、引き返せない状況だった。


唇が重なる。
少しずつ深くなっていく角度に、私は息を飲む。

ちゅ、ちゅ、っと唇が触れ合う音が、クチュクチュと舌を絡め合う音に変わる。
妙になまめかしくリビングに響いて、身体が熱におかされていく。


「御影・・・っ、待って・・・」

「自分が今、どんな顔してるかわかってる?・・・そんなんじゃ、逆効果だよ?」

私の体のラインを探るように、彼の手が上下に動く。
触れられた部分、全てが燃えるように熱い。


「自分で脱ぐ?・・・それとも、俺に脱がされたい?」

御影の綺麗な指が、私のブラウスのボタンを一つだけ、ゆっくりと外す。
その仕草の卑猥ひわいさに、じわりと、愛液が溢れ出すのを抑えられなかった。

(い・・・いやらしい・・・!御影、、エロすぎ・・・っ!!!!)

彼の表情。
上気した頬、唇からチラリと覗く赤い舌。

瞳の奥深くには、雄の激しい欲情が見え隠れしている。

「や・・やだ・・・っ・・・」

「お前が嫌だって言うときは、もっとシて欲しい時なんだよね。俺は知ってるよ?」

器用にブラウスのボタンを外していく。
確かに御影の言う通りだ。
私は、彼の指が下までボタンを外し切って、彼に身体を暴かれていくのをただ黙って見ている。

彼に触れて欲しいと、心の奥ではそう懇願していたから。

露わになった肌に、彼は満足げに唇を落とすと、きつく吸って痕を残した。



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